池田龍夫のマスコミ時評(117)「危うい日本」への貴重な講演録<オリバー・ストーンが語る日米史>(9/17)
2015/01/01
「危うい日本」への貴重な講演録(9/17)
池田龍夫(ジャーナリスト)
<オリバー・ストーンが語る日米史>を読んで、深く感銘させられた。
オリバーとピーター・カズニックアメリカン大学教授、乗松聡子さん(平和教育団体『ピース・フィロソフィー・センター』代表=在カナダ)の3氏が2013年夏来日。広島・長崎・沖縄・東京を精力的に回って講演、対談した記録をまとめた一書で、オリバー米映画監督を軸に、歯に衣着せぬ見事な著作である。その主要発言のごく一部を紹介し、参考に供したい。
米国のアジアでの共産主義との闘いの人質
オリバーは先ず「日本は米国のアジアにおける共産主義との闘いにおいて、(沖縄は)人
質として使われてきたのです。朝鮮戦争の出撃地点として利用され、その後もベトナム戦
争、イラク戦争などに利用されてきました」と指摘した(3㌻)。次いで、「2013年、この
戦争の亡霊がアジアに戻りつつあります。
オバマは安倍が大好きです。とりわけ今、尖閣諸島をめぐって紛争がありますけれども、このように価値のない島をめぐって争うという
のは本当にバカげています。しかし、もっと大きな問題は、それをめぐって安倍とそれを
取り巻くグループが、日本のナショナリズムを大きく復活させつつあるということです。
第2次世界大戦中のナショナリズムが、軍国主義的な考え方です。南京大虐殺や従軍慰安
婦などを否定するような考え方です」(42~43㌻)と、安倍政権の危うさに警戒信号を示し
た。
「核の傘」に頼らない平和国家構築を
ピーター教授も、「日本で問題のある家族の系譜があります。1960年に岸信介首相の下
で安保条約を改定し、弟の佐藤栄作の下では、沖縄が返還されました。沖縄返還の際、米
国と有事核持ち込みの密約を結んでいました。
そして今、岸の孫である安倍晋三首相はもっとも悪質な歴史否定主義者の一人です。・・・日本は核の傘ではない非核3原則と平和憲法の精神に則り、太平洋地域において紛争を解決し、平和な世界をつくるために指導的な役割を果たしてほしいです」(102~103㌻)と、岸3代の系譜をたどって、ズバリ指摘した筆法に感心した。
ベトナ戦争に従軍した2人だけに、「戦争の本質について話をしよう!」と全国行脚し
靖国参拝と尖閣紛争に米国はヤキモキ
乗松さんの平和に賭ける情熱もすごい。「13年、日米関係の亀裂を決定的にしたのは、安
た安倍首相をけん制した後でもあった。
米国の主要紙ニューヨークタイムズやワシントン・ポストにも安倍政権の政策の行き過ぎを批判する記事が続出した。14年4月には、オバマ大統領が安倍政権になって初めて来日したが、米国の一番の関心事であるTPP交渉で合意に至らないまま日米首脳会談は行なわれた。
オバマ大統領は、『尖閣の施政権は日本にあるが、領有権については米国は立場を取らない』と述べた。安保条約5条は尖閣に適用するという従来の米国の立場を繰り返したことは、安倍首相とメディアに喜ばれたようだ。大統領は日中間の対話を再三促し、エスカレーションを許すのは『深刻な過ちである』と、安倍首相に警告している」(180~181㌻・後書き)。
乗松さんのコーディネイトによって、各種講演や稲嶺進名護市長との対談など多彩な内容となった。「米国に幻想を抱いてはいけない」との教訓を、日本国民は噛みしなければならない。
関連記事
-
-
<2冊の書評>日本の新聞ジャーナリズムの構造的問題点を鋭く見据える
2000年6月30日付『読書人』掲載の<書評> …
-
-
世界を変えた大谷翔平「三刀流(投打走)物語➅」★『2018年渡米してオープン戦で大スランプに陥った大谷にイチローがアドバイスした言葉とは』★『自分の才能、自分の持っているポテンシャルにもっと自信をもて!』『イチローは現代の「宮本武蔵」なり「鍛錬を怠るな<鍛とは千日、錬とは一万日(30年)の稽古なり>
2021年11月27日、前坂 俊之(ジャーナリスト) …
-
-
葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をまねして『江の島沖の富嶽』★『逗子なぎさ橋珈琲テラスから富士山を眺めながらのスマホで撮影」(25 /12/06/am700)』
「逗子なぎさ橋珈琲テラスから富士山を眺めながらの講座」(25 /12/06/am …
-
-
モンゴルメディアの変容
民主化後のモンゴルメディアの変容 前坂 俊之 (静岡県立大学国際関係学部教授) …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(296)日本興亡学入門⑩1991年の記事再録★『百年以上前に<企業利益>よりも<社会貢献>する企業をめざせ、と唱えた公益資本主義の先駆者』ー渋沢栄一(日本資本主義の父)、大原孫三郎(クラレ創業者)、伊庭貞剛(住友財閥中興の祖)の公益資本主義の先駆者に学ぶ』
2019/01/09日本興亡学入門⑩記事再 …
-
-
米国・ロシアのスパイ大作戦―プリゴジンの「ワグネルの反乱」、プーチン激怒、粛清するのか!』★「第2次世界大戦」ーノルマンディー上陸作戦のスパイ大作戦「フォーティテュード欺瞞作戦」
●ノルマンディー上陸作戦のスパイ大作戦「フォーティテュード欺瞞作戦」 第2次世界 …
-
-
<クイズ>世界で最高にもてた日本人とは誰でしょうかーー「ハリウッドの王者に君臨した早川雪洲じゃよ」②
世界で最高にもてた日本人とは誰でしょうかーーー 「ハリウッドの王者に君臨した早川 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(102)』「パリぶらぶら散歩(2015/4/30-5/3)②―モンパルナス地区の南方、メトロMouton-Duvernet 駅近くの食料品店は早起き、カラフルでアートな商店街とその陳列を楽しむ②>
逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/11/am700) 2015/05/ …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(72)『大惨事招いた笹子トンネルのズサン管理』(12・5)『改憲狙う安倍自民、石原維新の会に要注意(12・3)
池田龍夫のマスコミ時評(72) ●『大惨事招いた笹 …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(30) 「情報公開(『知る権利』)」をめぐる重大な裁判ーー沖縄密約開示・控訴審の行方に注目
池田龍夫のマスコミ時評(30) 「情報公開(『知る権利』)」をめぐ …
