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『5年前の記事を再録して、時代のスピード変化と分析ミスをチェックする』-『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー 日本興亡150年史』(2)

      2018/05/05

★◎『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー

『リーダー不在の―日本興亡150年史』(2)
月刊『公評』2013年1月号掲載

前坂 俊之

(静岡県立大学国際関係学ぶ名誉教授)

 

「その点で、いまリーダー待望論、リーダーシップの論議が盛んですが、『坂の上の雲』を実現した明治のリーダーの凄さが改めて見直されていますね。ここで歴史に詳しい皆さんのリーダー論を聞きたいね」

 

(C)「明治維新は吉田松陰(30歳)の開国思想と松下村塾(高杉晋作(29才)、山県有朋、伊藤博文ら)、奇兵隊の突破力が幕府軍を破ったことに始まる。これに薩摩藩の西郷隆盛、大久保利通、土佐藩の坂本龍馬らが「薩長同盟」をつくって倒幕の流れとなった。

「維新三傑」は西郷、大久保、木戸孝允(桂小五郎)と言われているが、明治を興し、政府や各界でその後、活躍したトップリーダーの年齢をみると、いずれも貧乏下級武士出身で、20代の若者が中心であり、変革の情熱とエネルギーに満ちあふれていた。

最年長は西郷の40歳、大久保38歳、木戸35歳と続き明治天皇は若干16歳。この三傑に並ぶ年長者が
板垣退助(31)、大隈重信(30)、幕臣側では勝海舟(45)、福沢諭吉(33)ですね。
その後、明治政府のトップリーダーとなった伊藤(初代総理大臣)27歳、山県(首相・陸軍建設者、30歳)、
松方 正義(首相、財政の父)33歳、大山嚴(陸相、日露戦争での満州総司令官26歳)、山本権兵衛(首相、海軍建設の父)16歳、 桂 太郎(首相、日露戦争当時の総理大臣)20歳、児玉源太郎(日露戦争の参謀総長)16歳、
東郷平八郎(日本海海戦当時の連合艦隊司令長官)20歳、高橋 是清(首相、日露戦争での外債募集に成功)14歳、

財界人では渋沢栄一(日本資本主義の父)28歳、岩崎 弥太郎(三菱財閥創設者)31歳、中上川 彦次郎(三井財閥中興の祖14歳)、近代では最大のジャーナリスト・徳富蘇峰は5歳といった具合でいずれも若い。20歳代が原動力となったのです。やはり革命は若い人のエネルギーでないとできませんからね」

(B)「確かにね、今の日本は全く逆の超高齢社会となって老人が多すぎるよ。
高齢者は全人口の4人に1人の三千万人、老衰老害社会となっているのだから。ただし、革命や暴動はヤングパワーの産物としても、体験と知恵を積んだ老人パワーで単なる破壊ではなく、秩序のある変革、改革なら若者と協力して世の中をかえることは可能じゃないかな。

かっての学生運動や「全共闘」の連中もあの頃の保守官僚体制の打破の理念をもう一度思い出して老人革命家となって立ち上がるべきだね(笑)」

(C)「つまり、明治のリーダーは20歳代の貧乏な最下級の武士たちが西欧列強から中国のように植民地にされるという危機感があり、このまま鎖国を打ち破り攘夷から開国へと革命を起こしたのです。

寺子屋で学んだ「知合一致」的な真の行動的な学問があった。いまの空虚な看板だけの学歴ではなく、国内、外国人との戦い、交渉の修羅場をくぐった体験によって培われた本物の実力、胆力があったのです。
高杉晋作、大久保、木戸、伊藤、井上馨、勝海舟らはいずれも外国を真剣に研究し、みずから海外を渡っている。内向きではなく海外留学の国際体験があり、100年遅れていることを痛感した。そのために封建徳川幕藩体制を倒して、近代日本国家を建設するために、西欧をお手本に身分制度の廃止、廃藩置県、教育制度の導入など雇い外国人3千人以上を大臣並みの高給で雇い西欧の制度、システム、技術を導入し必死に近代化し、『富国強兵』『殖産振興』(経済発展)に取り組んだ。

[基本にあったのは英仏ロシアなど西欧列強から侵略されるのではないかという強烈な危機感ですね」

(B)「今の人から言わせると、中国、韓国は日本が侵略したのではないかと思っている人もあるが、明治維新の段階では日本は開国したばかりのアジアの貧乏小国で、中国(当時は清国で人口3億人)がアジア最大、世界最大の人口国、経済力も、軍事力も日本の何十倍も上回っていた。
日本は清国に侵略されるのではとの強い危機感、恐怖があったので、その点をよく見ないと、日清、日露戦争も侵略戦争と誤解してしまうね。」アジア太平洋戦争とは区別しないと・・』。

 

(A)「「坂の上の雲」を目指して、軍事力・国力差10倍の巨人ロシアと子供の戦争の日露戦争(1904年)に勝ったわけで、この意味はそれまでいわゆるヨーロッパの白人種に有色人種は全敗だったのに、初めて日本が勝ってアジア、イスラム、アフリカの民族に希望と勇気を与えた訳で世界史を変えた大事件ですよ。

今で言えばサッカーのワールドカップに初出場したアジアの無名のマイナーチームがFIFAランク1位のロシアに世界中の予想を裏切って歴史的な大金星をあげたようなもんだね。そのほうが、今の若い人には良くわかると思う。」

『独立してわずか40年後にロシアを破り、アジアの3等国か一躍西欧列強に伍してアジア代表の1等国にのし上がった,舞い上がってしまった、わけですが、日露戦争の勝利の理由は一体何だったんだろうか』

 

(A)『それは第一にあげられるのは当時のトップリーダーたち明治維新をたたかった百戦錬磨の勇士がベテランとなり、第一線にずらりといたからですね。
明治維新で平均20才前後の志士たちが50代と脂が乗り切り、国際的な見識と行動力、修羅場をくぐった胆力と決断力に磨きがかったことですね、明治天皇52歳,伊藤65歳、山縣68歳、山本 権兵衛54歳、桂太郎58歳、児玉源太郎52歳、東郷平八郎56歳、戦費を集めるのに国際金融市場で活躍した高橋 是清50歳です。
革命と戦争の体験の中で、極東の小国の悲哀をなめながら、追いつけ、追い越せで鍛え、磨き上げられてきたインテリジェンスと判断力を備えたベテランの指導者、リーダーが適材適所で力を発揮したチームプレーによって奇跡的な勝利となった。

それに

伊藤、山県、松方、井上、大山らの元老たちのチームワークが緊密であった。特に幼友達の伊藤と山県は政治思想、外交路線ではことごとく対立しながら、国難に当たっては一致協力し、オールジャパンで臨み国民これに結束したことが大きいですね。
今のように民主、自民党も日本がつぶれるかという国難に遭遇しているのに全く党利党略を優先しているのは全く「アンビリーバル!」だ。これこそ亡国の政治の惨状だよ、悲しくなるね」

(C)「日露戦争では日本は『勝った』との大きな思い違いがあると思う。日露戦争は満州で戦争した訳で、ロシア領には攻め込んでいない。バルチック艦隊は撃滅しても陸軍は勝っていない、5分5分で日本は兵力、弾薬が尽きて停戦したのであって、それを『勝った』と思い違いして、日本の陸海軍は世界一と思いあがってしまった。

それが、太平洋戦争の敗因につながる。昭和戦後の場合も同じパターンで裸一貫から『坂の上の富国』をめざしてしゃにむに働いて、「ジャパン・イズ・ナンバーワン」『世界第2位の経済大国』でピークに達した1990年ころは世界一と驕ってしまい再び負けパターンに陥る。『何度でも負ける日本病』が克服できていないんですよ」

(B)『「坂の上の雲」(司馬遼太郎)も、多くの日露戦争本もそうですが、情報戦、インテリジェンスの視点が欠落しているのですね。

日露戦争の最大の勝因はインテリジェンス(智慧、情報、諜報、スパイ)の勝利で、その国家戦略を1人で立案したのは、陸軍参謀総長・川上操六です。彼はドイツ参謀本部のモルトケ参謀総長に弟子入りして、ナポレオンを敗った。

『クラウゼヴイツ』の戦略を学んで、陸軍参謀本部を作り替えた福島安正、明石元二郎、宇都宮太郎、田中義一、広瀬武夫、荒尾精、花田仲之助などの優秀な情報将校をヨーロッパ、ロシア、中国、満州に派遣し諜報網を張って、情報作戦を展開したおかげなんですね。

川上参謀総長の功績は明治史の中では評価されていませんね、実におかしなことですよ』

決定的な勝因は「日英同盟」による軍事秘密協定にあった

(B)『当時の覇権国・イギリスからの日英同盟というバックアップが、何よりもつよい味方となったことは事実だね。

これは最近明らかになったことですが、日英同盟の裏には極秘の軍事協商が結ばれたのです。情報の全面交換、協同暗号、英国側の石炭燃料の提供、海底ケーブルの敷設などを結んで、バルチック艦隊が地球を半周して日本くるまでに、英国の植民地を経由してくる訳ですから、英国側があるゆる妨害工作をして、到着を遅らせて、同艦隊の士気を挫いた。日本海海戦までにすでにバルチック艦隊は英国の情報妨害戦にクタクタになっていた。

日本海海戦でも当時最新のマルコニー無線通信を連合艦隊には装備し、海底ケーブルを日本までつないで戦闘情報を逐一大本営に連絡した。無線通信・IT技術を駆使して世界海戦史上、最高の勝利を得たのです。秋山真之、東郷平八郎が最新技術にも明るかったのが勝利につながったのですね」

(A)「外交インテリジェンスでは伊藤博文がルーズベルト米大統領とハーバード大学時代の同窓生の金子堅太郎(元農商務相)を開戦と同時に米国へ派遣して、米国世論を味方につける広報外交を工作するのど、驚くほど緻密、用意周到な外交戦を行った。

ルーズベルトに支援を頼み、ポーツマス講和条約では仲介役に引っ張りだすなどが外交戦でも勝利したのです。このところの民主党、自民党の『オウンゴール外交』とは大違い。つまり、明治のトップリーダーには外交戦略と対外交渉術にたけたタフネゴシエイター(強力な交渉人、外交家)がそろっていたということです」

日露戦争の勝ったというおごり、過信がアジア太平洋戦争の負けにつながり、成功は失敗の基、失敗は成功の基のくりかえし

(C)「これが太平洋戦争ではどうなったのか、開戦に引きずり込まれ、ストップできなかったリーダーの東条英機をはじめ指導者は大体50歳歳代ですよ。

明治のリーダーとくらべても、ごりごりの視野の狭い軍人たちで対中認識、対米知識の不足、国際的な視野や知識が決定的に欠如していた。中国に対する根拠なきおごり、米国に対してもその力の差を認識することなく、大和魂の精神主義1本槍となっていた。経験不足ですね。

これに現場で暴走したのは下剋上による若手の陸軍軍人、将校たちです。これを甘やかしたのは無能、老害の大将たちで、明治の指導者の見識、判断力、若手の暴走を叱り倒すリーダーシップは持ち合わせておらず、自滅につながったのです。」

(B)「『海軍の神様』『最長老』となった東郷平八郎の成功体験(日本海海戦勝利)から大鑑巨砲主義、戦艦大和の建設に固執して、時代は航空機と航空母艦の時代に入っているのに、時代遅れの艦隊決戦主義にこだわって大敗北を喫する。

特攻隊、全員玉砕の大和魂ばかりを強調して、これも日露戦争の二〇三高地、旅順の攻撃の肉弾攻撃をそのまま引き継いだもので、兵器の近代化、レーダーの開発など情報技術の研究をまるで行わなかった。敵性語の禁止を行って英語の使用もアメリカの研究も禁止するというアナクロニズムですね。

明治のトップリーダーの2世3世はこんなにダメだったのは、いまの人材難を考えれば、日本は何度同じ失敗を重ねるのかーといいたいですね、結局、成功は失敗の基、失敗は成功の基なんですね。興亡歴史のサイクルはほぼ7、80年というのは正しいという結論です。』

 

ここで、話題を変えて、現在の問題に入りましょう。昔の戦争は、今や「人口戦争」、人口減少とどう戦って国の衰退を止めるかという方に問題点が移っていますよね、

(A)「英国エコノミスト誌は以前から『日本は歴史上存在したどの国よりも速いペースで高齢化しているのに、なぜ何の手もうたずに傍観しているのか』と警告を発している。

1億3000万人弱の人口は、今後40年間で3800万人減少し、2050年までに日本人の4割は65歳以上の高齢者となる『超高齢者国家』にね。この人口動態(Demography)が4つの「Dワード」を悪化させるというわけだ。つまり「債務(debt)」、「赤字(deficits)」、「デフレ(deflation)」を悪化させることは間違いない。今は、この負のスパイラルに陥っているわけよ。少子化対策、移民受け入れに失敗した「決められない政治、変えられない政治の罪は大きいね。これまた『オウンゴール国家』ですよ」

(つづく)

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

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