★「 熊本地震から2ゕ月」(上)『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知にことごとく失敗した。(上)<ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の 「地震予知はできない」の正論>
2016/06/11
「 熊本地震を考える」
『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を
つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『
巨大地震』の予知にことごとく失敗した。(上)
<ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の
「地震予知はできない」の正論>
前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)
1・・熊本で巨大地震発生!
「また、熊本で震度7以上の大地震があったわよ!」―
4月16日午前5時前から鎌倉海でカヌーフィッシングに出ていて午後2時頃、自宅に帰ってきた私を見るなり妻が大声で知らせた。
「何!震度7の巨大地震だって!?」とタブレットで即座にGoogleニュースを開いて、被害状況を一覧すると、これは東日本大地震に匹敵するぞと背中に冷たいものが走った。
熊本市には大学以来、50年の親友A君が住んでいる。早速、ケイタイで連絡して、安否を確認、無事と聞いてひとまずホットした。 『熊本市内は被害はさほどではないが、震源地の益城町はひどいよ。熊本城の石垣の倒壊、天守閣の屋根の崩落もすごい』との説明を聞き、テレビをつけっぱなしにしていると阿蘇山周辺も大きな被害を出している。
テレビは刻々と被害状況、被災者の様子を伝え、TV、ネットに1日中、釘付けとなった。いてもたってもいられない気分になった。 3年前にA君を訪ねて、熊本市内で3日間、阿蘇山で2日間ほどすごしたが、その時、案内してもらった巨大で勇壮華麗な熊本城も大きな被害を受け、阿蘇山へのドライブ途中の阿蘇大橋が赤茶色の生々しい土石流で押し流され崩壊した映像には衝撃を受けた。
ついこの4月初めにもA君から満開の桜に包まれて外国人観光客でにぎわう優美な熊本城のビデオをおくってもらいYoutubeにアップした直後だけに、その変わり果てた姿にショックは大きかった。
私は2011年の3・11東日本大震災、福島原発事故を経験して以来、一人でも何かできることはないかと考えた末、動画で脱原発、災害救援、地球環境を守るキャンペーン情報を伝える「Youtube」(動画)ライターにジャーナリスト(新聞記者)から転身した。
文章を書くだけのジャーナリストより写真もとり、ビデオも回し、自分でしゃべりか解説して音声もすべて編集したビデオ情報の方が圧倒的に事実への訴求力がある。
それをYoutubeにリアルタイムに流すことによって、世界中の40億人に直接、訴えることが出来る。 キャンペーンをやるのにYoutubeほど最強、最大のメディアはないと気がついた。しかも、Youtubeにチャンネルを持つのには無料で登録できる。ビデオカメラとパソコン1つあれば、誰でも、どこでも、どんな状況の中からでも自由な発想と方法論、創造力で動画ジャーナリストとして世界で勝負できるのだ。
私は知り合いに『「Youtube」ライターとなってキャンペーンをやろうよ』と呼びかけたが、真っ先に協力してくれたのがA君だった。それ以来、A君はビデオカメラ片手に熊本県内、九州各地を撮りまくった動画を毎週のように送ってきて、すでに800本を超えた今回も地震直後から、熊本市内の被災情報や避難所の様子、ライフラインの状況などを解説したビデオ現地レポートを毎日のように記録して、ギガファイルで私に送ってきた。
地震後、道路事情が悪く、悪天候にたたられて益城町にはなかなか行けなかったが、やっと23日に入り、激震で倒壊家屋の続出の生々しい被災状況を歩いてビデオで撮影し解説つきでを送ってきた。 (http://www.maesaka-toshiyuki.com/history/16480.html)
テレビの場合はニュースの枠は短いため、地震の被害状況を詳細に見ることはできないが、その点、Youtube何時間でも映すことも、アップすることも自由自在に出来るので万能といっていい。
動画は保存されて、データーベース化されており、いつでも検索でき「オン・デマンド」ビデオであり、世界最大の動画ライブラリー、自分の動画クラウドにもなる。 A君はこれを機会に地震対策、今後の震災からの復興情報を流していく自分のHP,ブログを立ち上げて、そこでYoutube情報をながしていくことを決断した。
彼は自治体の部長で退年退職した団塊世代だが、この地震をきっかけに新たなチャレンジに踏み出すことになった。
2・・再び『想定外』とされた熊本地震!?
今回の地震は震度7以上は2回、震度5弱以上の揺れも17回に、3以上が400以上、震度1以上は5月10日現在まで1400回を超えるというこれまで経験したことのない多い振動大地震であった。
5年前の東日本大震災3・11原発事故では『想定外』という考え方が大きな問題となった。『想定外』とは『思考外』にすること、つまり『考えない』ことである。『原発は安全なので、事故はない』と想定外にする。地震についても『熊本では確率の低い震度7の巨大地震は起きないであろう』と想定外にして、考えない、防災対策も十二分に立てない。今回もこの『想定外』のワナに陥った。
① この<想定外>問題の中核になるのは自治体の姿勢だが、起こる確率が低いと、まあ起こらないだろうと勝手に「想定」をして、財政難を理由に防災拠点の耐震化などを先送りにして、住民への防災啓発活動もしていなかった。
② こうした『東北、関東、本州にあっても九州には大地震は来ない』という勝手な思い込みを住民、自治体、企業も持っており防災対策を怠っていたのではないか。
③ 台風の通過ルートである九州の建物は屋根を重くして、風には強いが地震には弱かった。耐震構造の家屋は全国平均を下回っていた、という。
④ それ以上に問題なのは九州新幹線の脱線である。新幹線に不可欠な脱線防止ガードが現場には設置されておらず、車両台車側の逸脱防止ストッパーも取り付けられていなかった。もし、乗客を乗せて高速運転中の地震だったら、間違いなく大惨事になっていた、という。
⑤ しかも、この地震震源から半径約百五十キロ圏内に三つの原発がある。鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原発、佐賀県玄海町の九州電力玄海原発、愛媛県伊方町の四国電力伊方原発である。
だれもが、地震発生の瞬間に『原発は大丈夫か』と心配したが、丸川珠代環境相兼原子力防災担当相は19日に国会の質問に対して一早く「「安全宣言」を出していた。その後も、地震が頻発しているのに、早すぎる『想定外』の安全宣言ではなかと疑問の声があがった。
⑥ もし、これが原発事故につながり、原発周辺の住民の緊急、集団避難となった場合に、肝心の九州縦貫道路も、九州新幹線もストップする中で、マヒした交通網の中で大混乱となり被災住民の輸送は不可能となってしまったのではないかと、思う。
3・・地震予知はできるのか、できないのか
今回の熊本地震は4月14日は震度7と16日は7.3と立て続けに震度7以上が2度起こった。連続巨大地震の発生は日本の地震歴史上でも、きわめて珍しいという。気象庁も、当初は16日が余震と認定したが、14日が前ぶれと変更し16日を本震とするなど混乱した。
その後の地震発生件数もこれまでに例のないほど活発なもので、世界の巨大地震の発生の20パーセントが日本に集中している日本列島で、地殻変動が活発化しているのであろう。
ただし、今回の熊本地震も予測できた地震学者はまたもやいなかった。 気象庁に地震予知連絡会が発足したのは1969年で、1978年から『東海地震』の予知体制がスタートした。これまでに3000億円以上の予算をつぎ込んで観測体制を整備して何とか予知できる体制づくりを努力してきた。
それ以来、日本海中部地震(1983年)
北海道南西沖地震(1994)、北海道南西沖地震(1993)、
阪神・淡路大震災(1995)、新潟中越地震(2004)、
新潟県中越沖地震(2007)、宮城内陸地震(2008)
東日本大震災(2011)、御獄山噴火(2014)
など大地震おきたが、予知できたものは1件もなかった。今回の熊本地震も予知できなかった。3000億円をつぎ込んだ大プロジェクトは失敗に終わったのである。
政府地震調査研究本部は『全国地震動予測地図』(ハザードマップ)を作成している。これは地震発生の長期的な確率評価と強震動の評価とを組み合わせた「確率論的地震動予測地図」、特定の地震に対して、ある想定されたシナリオに対する詳細な強震動評価による「震源断層を特定した地震動予測地図」の2種類の地図で「今後30年以内に震度6弱以上の揺れ」が起きる確率が都市別に並んでいる。
これによると、熊本市の確率は8%で、横浜市78%、千葉市73%、高知市70%など比べると、10分の1という地震発生の確率が低い。と認定されている。この数字に安心して『熊本では大きな地震は起こらない』と人々が受け止め、自治体の防災対策の遅れの原因の1つとなったではないか。 つまり、政府、気象庁、大学、研究機関、地震学者が一体となって取り組んでいる『地震予知、予測地図』なるものが、全くの大外れであったということだ。
熊本地震以後、こうした地震学者たちが、予知できなかったことへの反省のかけらもなく新聞、テレビ、週刊誌などに再び登場して、『後出しジャンケン』よろしく結果論について科学的なデータに基づかない推理・推測を再び並べている。
マスコミもこうした『エセ専門家』のノイズ(雑音)をそのまま垂れ流している惨状である。 新聞。週刊誌。雑誌から拾ってみると、『今回の熊本の地震は、ステージ3の南海トラフ地震の「前奏曲的」な意味合いが強い。2020年東京オリンピックまでに、南海トラフ地震の発生が懸念される状況にある』
『南海トラフ地震の津波被害者は、47~50万人である。熊本地震を単体のものとしてとらえず、日本全体の「危機の前兆」と認識し、対策を講ずる必要がある。熊本地震は九州以南の特異で大規模な地殻変動を背景に起きたもので、南海トラフ地震とは仕組みが異なり、影響を与えることはない」
『昨年12月19日、政府の『全国地震動予測地図』(ハザードマップ『ハザードマップ(地震予知図)では東京・新宿の東京都庁の周辺で、今後、震度6弱以上の大地震が起こる確率は20%上昇。 横浜市役所が78%(前回13年版66%)、さいたま市役所が51%(同30%)、千葉市役所が73%(同67%)と軒並み上がっている。これは、太平洋プレートの深さはこれまでより10㎞浅く、20~30㎞と判明し、地震の確率があがったためだ』
など、など。 30年前の予知できなかった「東海地震」の騒動に続いて、今度は「関東直下型地震」や「南海トラフ巨大地震」迫っているという予測情報(?)が規定事実かのように報道されている。真偽不明のニュース、解説が国民の不安心理と油断を引き起こしている。
4・・ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の
「地震予知はできない」の正論
こうした政府地震調査研究本部のメンバーや多くの地震学者によって『後出しジャンケン』のような見解に対して、真っ向から批判しているのがロバート・ゲラー東京大学理学系教授である。
同教授は阪神淡路地震の前から予知研究会、ハザードマップを一貫して批判している唯一といっていい地震学者である。そのため、政府からも学会、メディアからも異端者扱いで排除されているが、熊本地震について4月18日、『シアター・テレビジョンの緊急特番!ロバート・ゲラー博士出演★武田邦彦『現代のコペルニクス』なぜ、熊本に地震が起こったのか?」(Youtube)に出演し、こう語った。
(https://www.youtube.com/watch?v=hctWUtfH1l0)
「熊本地震が起きてしまい、多くの方が被災されたのは本当に残念です。しかし、『地震は予測不可能なもの』で今回も予知できなかった。これまでの大地震はすべて『ハザードマップ』で震源の確率が低いとされた地区で起きています。
予知できない以上、いたずらに人を惑わすハザードマップは廃止すべきだし、研究者は国民と政府に、特定の地域に言及することなく、日本全土が地震の危険にさらされており、『想定外のリスクに備えること』を、勧告すべきでしょう」
つづく
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