前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(505)勝海舟の政治外交力⑦「政治には学問や知識は二の次 」「●八方美人主義はだめだ」

      2015/01/01

  日本リーダーパワー史(505

 

 

いま米国の一国支配構造は崩れ、中国の躍進で国際秩序は大きく変化

している。そんな中で、憲法改正、集団的自衛権の論議、TPP加入問題、

尖閣問題などによる日中韓との対立の長期化懸念―など外交的懸案

が山積しているが、<外交力のある政治家>がいないのである。

明治維新の国難で幕府側の外務大臣(実質首相兼任)の、

勝海舟の政治外交力を見習え。⑦

◎政治には学問や知識は二の次

●八方美人主義はだめだよ>

 

 

前坂俊之(ジャーナリスト)

 

「海舟先生氷川清話」(吉本襄 撰著 大文館書店 1933)にみる勝海舟「外交談」

 

 

◎政治には学問や知識は二番目

 

 政治をするには、学問や知識は、二番めで、至誠奉公の精神が、一番肝腎だ。といふことは、しばしば話す通りであるが、旧幕時代でも、田沼(意次)といふ人は、世間ではかれこれいふけれども、やはり人物サ。

 

とにかく政治の方針が一定して居ったヨ。

 

 この時分について、面白い話があるが、この頃、聖堂がひどく壊れて居たから、林大学頭から修理の事を申し出たが、その書面の中に「文宜公の廟云々」といふことがあった。

 

すると右筆らは集まって、文宜公(ふせんこう)とは、どんな神様であらうかといろいろ評議をしたけれども、時の智者を集めた右筆仲間で、文宣公(ふせんを知って居るものがなかった。

 

そこで、文宣公とはどこの神だ、と付箋をして書面を返却した。大学頭はすぐに文宜公とは、唐土の仲尼(ちゅうじ)の事だといってやったけれども、それでもまだ分らない。そこで、大学頭もたまらず、仲尼とは「子白くの孔夫子の事だ」といった。

 

それで右筆も漸く合点が行つたといふことだ。

 

  

 この話は旧平戸藩(ひらと)で明君と聞えた松浦静山公

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%B5%A6%E6%B8%85

 

が、儒者を集めて、種々の講をさせて、それを筆記した『甲子夜話』といふ随筆で見たが、なかなか面白い。

 

全体その時代の真面目は、正史よりも、かへってこんな飾り気のない随筆などで分るものだ。

                                  

 この話は、実に面白いではないか。右筆といへば、今の秘書官だが、宰相の片腕ともなるべきこの右筆が、孔子の名さへ知らないといへば、その人の学問もたいていは知れる。

 

 

 これに較べると、今の秘書官などは、外国の語も二つや三つは読めるし、やれ法律とか、やれ経済とか、何一つとして知らないもののはない。

 

しかるに、不思議のことは、孔子の名さへ知らない右筆を使った時の政治より、万能膏の秘書官を使う時の政治が、格別優っても居ないといふ事だ。

 

畢竟、これも政治の根本たる至誠奉公といふ精神の関係だらうヨ。

  

 

●八方美人主義はだめ

 

 またすべて世の中を治めるには、大量寛宏(かんこう) =心が広いこと。寛大=でなくては駄目サ。

 

八方美人主義では、その主義の奏効にばかり気を取られて、国家のために大事業をやることは出来ない。

 

戊辰戦争の事だつってさうだ。もしあの時、各藩に紛起した議論を一々気に懸けて、いづれへも当り障りのないやうにせうとでも思ったなら、とても今日のごとき結果は、見られなかったゞらうヨ。

 

自分に一定の見識がありさへすれば、いかなる事が起らうとも、一向構ふことはない。

 

天下国家をして、正当な針路を進ませうといふ、大きい割出しがあるなら、区々たる小人の議論などは、聞かなくてもよいのだ。

 

                              続く

 - 人物研究 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『オンライン講座/さらばトランプ政権4年間の暴走・犯罪・没落を回顧する』★『読書カフェ動画『世界で最も危険な男ー「トランプ家の暗部」を姪が告発ー』(メアリー・トランプ著)、三室勇さんの動画解説』★『歴史上、重大な役割を演じてきたのは妄想家、幻覚者、精神病者である。瞬時にして権力の絶頂に登りつめた神経症患者や偏執狂者たちは登りついたスピードと同じ速度で没落した』(「現代史を支配する病人たち」(新潮社、1978年刊)

大阪自由大学講座 ★『読書カフェ動画『世界で最も危険な男ー「トランプ家の暗部」を …

no image
<日本風狂伝②昭和文壇の奇人ベストワンは永井荷風だよ>

                   2009,6,10 日本風狂人伝②昭和文壇 …

『Z世代のための安保防衛(戦争)論の歴史研究講座』★『世界・日本リーダーパワー史(537)三宅雪嶺(第一回文化勲章受章)の「日英の英雄比較論」―「東郷平八郎とネルソンと山本五十六」

 2015/01/15日本リーダーパワー史(537)記事再録 三宅雪嶺 …

no image
日本リーダーパワー史(700)日中韓150年史の真実(6) 「アジア・日本開国の父」ー福沢諭吉はなぜ「脱亜論」に一転したかー<長崎水兵事件(明治19年)ー『恐清病』の真相、 この事件が日清戦争の原因の1つになった>

日本リーダーパワー史(700) 日中韓150年史の真実(6) 「アジア・日本開国 …

『Z世代のための日韓国交正常化60年(2025)前史の研究講座②』★『井上角五郎は勇躍、韓国にむかったが、清国が韓国宮廷を完全に牛耳っており、開国派(朝鮮独立党)は手も足も出ず、孤立無援の中でハングル新聞発行にまい進した>②』

2016/04/12  日本リーダーパワー史(696)記事再 …

no image
『地球環境大異変の時代へ②』ー「ホットハウス・アース」(温室と化した地球)★『海面がそびえ立つほど上昇する地球の気温の上昇がギリギリの臨界点(地球上の森林、海、地面が吸収するCO2吸収のフィードバックプロセス)を超えてしまうまで、あとわずかしかない』

  「ホットハウス・アース」の未来   世界の気候科学者は現 …

★『アジア近現代史復習問題』・福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む』(4)ー「北朝鮮による金正男暗殺事件をみていると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」●『(朝鮮政略) 一定の方針なし』(「時事新報」明治27年5月3日付〕』★『朝鮮は亡国寸前だが、李鴻章は属国として自由に意のままに支配しており、他国の侵攻の危機あるが、緊急の場合の日本側の対応策、政略は定まていない』★『北朝鮮リスクとまるで同じ』

 ★『アジア近現代史復習問題』 ・福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む(4)  「 …

no image
日本リーダーパワー史(271)鈴木大拙は1945年『日本亡国の3つの『日本病』を上げたが、これを克服できず日本は再び崩壊中!

日本リーダーパワー史(271)   『日本沈没・崩壊は不可避なのか』- …

「Z世代のための日本宰相論」★「桂太郎首相の日露戦争、外交論の研究①」★『孫文の秘書通訳・戴李陶の『日本論』(1928年)を読む』★『桂太郎と孫文は秘密会談で、日清外交、日英同盟、日露協商ついて本音で協議した①』

2011/08/29 日本リーダーパワー史(187)記事再編集 以下に紹介するの …

no image
★『世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記(2015 /10/10-18>「インカ帝国神秘の魔宮『マチュピチュ』の全記録、一挙公開!」水野国男(カメラマン)④

    2015/11/01 &nbsp …