前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(558)アジア開銀(AIIB)参加で安倍外交は「近衛外交の大失敗」の轍を踏んだ。「今からでも遅くない,日本は6月までに参加すべき」である。

   

 日本リーダーパワー史(558)

アジア開銀(AIIB)参加問題は中国外交の大勝利となり、

安倍外交は「支那事変後の近衛外交失敗」の轍を踏んだ。

「今からでも遅くない,日本は6月までに参加すべき」である。

前坂俊之(ジャーナリスト)

 

①「満州事変後に国際連盟から脱退し、世界から孤立して五族共和政策を唱えて満州帝国を建設した失敗(1932年)、「日中戦争後の近衛外交<中国は相手にせず>の失敗例」の苦い教訓

②第2次世界大戦で破竹のドイツ軍の進撃、勝利に目がくらみ『バスに乗り遅れるな』と日独伊三国同盟に邁進した歴史と今回の、ヨーロッパ、世界各国が「競って乗ったバス」を1人、米国の顔色を見ながら乗り過ごした日本の情勢判断は失敗に終わった。

③英国の最初の参加表明を日本側は「裏切り」などと批判しているが、各国とも自国の国益を最大限追求しギリギリの外交駆け引きを展開するのであって、インテリジェンスもないのに他国に一方的に従う従属外交が成功するわけはない。日英防衛情報保護協定を結んだからと言って、安心して、ウイリアム王子の日中訪問、習近平・キャメロン会談などのサインも全く見落とす相変わらずのノー天気ぶりである。

④財務省の判断ミスはAIIB発足で既得権のADBの存在感が希薄になることへの危惧からである。ADB歴代総裁は現在まで9人が全て財務省出身者などで天下りポストある。1ヵ月前に中国側は「副総裁級ポストを用意して参加を要請してきたが、日本側は(成算ありとみて)これを断っていた」というから情報の読み違えである。

④麻生財務相は「参加しないと日本側の損にならないか」という記者の質問に「ADBの金で開発をやる場合でも、日本企業が受注する比率は0・5%ぐらい」と指摘。「ADBが資金協力した工事などの契約を日本企業が受注した割合は、2013年で0・21%。一方、中国企業が受注した割合は20・9%で、日本企業が主に価格競争で敗れている。AIIB関連の入札で日本企業が受注するのは難しい」と答えたという。

この発言には失望した。日本のゼネコン、建設企業がいかに国際競争力がないか、国内公共事業大きくに依存して、筋肉質に脱皮できておらず、今後のアジアインフラ競争には勝てないこと、財務省、経産省はこんな企業を育ててきたことの証明ではないか。「世界で勝てる企業を育てること」「世界でもうける力を持つ企業に金を出す」必要がある。

⑤また、日米同盟1点張りの外務省は米国の顔色を見るばかりで、今回も「多国間外交」に失敗、そのインテリジェンスの無能を証明した。私は安倍首相の登場以来「近衛外交の失敗」の轍をくりかえしてはならないと、再三書いてきた。

⑥近衛文麿の日中外交の失敗に学ばなければならない、近衛日中外交には3段階ある。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%A1%9B%E5%A3%B0%E6%98%8E

第1次近衛声明は日中戦争半年後の1938年(昭和13)1月にトラウトマン工作を断って「中国はすぐ倒せる」との軍部の甘い判断に引きずられ「国民政府を対手とせず」と一方的な声明を発表し、自ら外交交渉を打ち切って、泥沼の長期戦争に突っ込んだ。「オウンゴール外交」の典型である。

⑦第2次近衛声明――日本軍は武漢など次々に占領しても中国は広大な国で、あくまで点と線の占領に過ぎず、勝利は見えず泥沼に陥った。失敗に気が付いて昭和38年11月に前言をひるがえし「国民政府といえども東亜新秩序の建設に来たり参ずるにおいては、あえてこれを拒否するものに非ず」と歩み寄った。

⑧第3次近衛声明――しかし、国民政府はこれを拒否、昭和13年12月22日、近衛は第3次声明(対中国和平における3つの方針<善隣友好、共同防共、経済提携>)を示して態度を変えたが、国民政府側はこれもを拒否、日中和平は不可能となった。第三次近衛声明の2週間後、内閣総辞職したのである。

⑨安倍外交は「日米同盟安保外交」「メンツ外交」「価値観外交」から「多国間・国益(経済)重視外交」に徹して「負けるが勝ち」「君子は豹変す」「一歩前進、2歩後退、3歩前進」の柔軟な2枚腰、3枚腰ねばり外交を展開しなければならない。

 

◎「AIIBは世界史を書き換える出来事、もっと議論を!―日本は国家の隆盛に興味を失い内籠りを始めたのか

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43422

 

[AIIBは「中国外交の完全勝利」。間違った安倍首相は、官邸で財務省、外務省幹部を怒鳴った!http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42761

 

◎「日本メルダウン脱出法(650)「メンツを立てに目の前の<アジア巨大インフラ市場>を西欧勢にさらわれる経済外交(損得勘定)は成功か、失敗かhttp://www.maesaka-toshiyuki.com/history/5927.html

 

「日本メルダウン脱出法(648)「中国のアジア開銀(AIIB)参加問題で、日本は米国に追随し、外交失敗をするか、近衛外交<中国は相手にせず>の二の舞を踏むのかhttp://www.maesaka-toshiyuki.com/history/5849.html

 

 

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(387)本田選手の『個人力』こそ日本人に一番欠ける、グローバリゼーションで日本沈没の原因

 日本リーダーパワー史(387) ◎【Wカップ出場決定戦にみる日本の課 …

no image
日本リーダーパワー史(242)『150年かわらぬ日本の弱力内閣制度の矛盾』(日本議会政治の父・尾崎咢堂のリーダーシップ)

日本リーダーパワー史(242)   <日本議会政治の父・尾崎咢堂 …

no image
『なぜ日中韓150年の戦争・対立は起きたのか』/『原因」の再勉強ー<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は、一つは主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回議会で演説した。これは当時の国際法で認められていた国防概念でオーストリアの国家学者・シュタインの「軍事意見書」のコピーであった。

記事再録/日本リーダーパワー史(701) 日中韓150年史の真実(7) 「福沢諭 …

no image
世界、日本メルトダウン(1011)-「地球規模の破壊力示したトランプ─1人の人間が終末時計を進めたのは初めて」★『トランプ外交、親イスラエルが火種 エルサレムに大使館移転検討 中東諸国の反発必至』

 世界、日本メルトダウン(1011)- 「地球規模の破壊力示したトランプ──1人 …

no image
速報(113)『日本のメルトダウン』『小沢一郎氏討論会-「震災は国民主導最大のチャンスーウォルフレンと対談』、小出裕章情報

速報(113)『日本のメルトダウン』 『小沢一郎氏公開討論会-「震災は国民主導最 …

no image
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか⑪「韓国人の行動形式は①日本への敵愾心②自文化への過度の自己満足③中国崇拝」(英タイムズ)

「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など  外国紙は「日韓併合への道』をどう …

no image
『世界の新型コロナワクチン接種競争勃発』ー「日本が新型コロナからの日常生活が戻るのは22年4月で先進国では一番最後となる」(英医療調査会社予測)

  「日本が新型コロナから日常生活が戻るのは22年4月で先進国では一番 …

no image
速報(199)●『小出裕章さんの北九州市での講演』◎『上関の町長選挙の結果』★『裁判官の世界も、国を困らせない』

速報(199)『日本のメルトダウン』 ●『小出裕章さんの北九州市での講演』◎『上 …

no image
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』-『2018年、米朝戦争はあるのか』⑥『「米朝戦争」の可能性は、なくなっていないこれから考えられる2つのシナリオ』★『 焦点:消えぬ米朝戦争懸念、トランプ政権にくすぶる先制攻撃論』★『元自衛艦隊司令官が警告「米朝戦争、空爆はこの時期に実行される」そのとき、在韓邦人は…』★『「米朝開戦の可能性は100%」元外交官がこう断言する理由金正恩政権「滅亡の日」は近いのかも…』

『2018年、米朝戦争はあるのか』⑥ 「米朝戦争」の可能性は、なくなっていないこ …

no image
中国への旅―新旧中国の歴史・現在・将来への3Dの旅

中国への旅―新旧中国の歴史・現在・将来への3Dの旅 前坂 俊之(ジャーナリスト) …