池田龍夫のマスコミ時評(79) 「国会事故調の提言を生かせぬ怠慢(4・17)「普天間飛行場」 早期返還の望み断たる(4/14)
◎「国会事故調の提言を生かせぬ怠慢(4・17)」
●『沖縄日米合意・「普天間飛行場」
早期返還の望み断たる(4/14)』
ジャーナリスト 池田龍夫
国会事故調の提言を生かせぬ怠慢・(4・17)
衆院の原子力問題調査特別委員会は4月8日、東京電力福島第1原発事故に関する国会事故調査委員会の黒川清・元委員長(元日本学術会議会長)らを参考人招致した。国会が、国会事故調の元委員から調査についての説明を直接聞くのは初めて。
政、官、財の〝原発安全神話〟の罪
黒川氏は「事故はまだ収束していない。実地調査も実現せず、被害者に対する対応も遅々として進まない。世界も日本政府の対応に非常に厳しい見解を述べている」と政府の対応を批判した。その上で、「原子力関係は世界中が注目しているが、独立したプロセスを積極的に活用することが三権分立だ」と語り、国会事故調が設置された意義を強調した。
国会事故調は昨年7月に「規制当局を監視する常設委員会の設置」など調査報告書をまとめ、7つの提言を政府に要請、解散した。報告書は「想定できたはずの事故が何故起こったのか。日本が高度成長を遂げたころにまで遡る。
政府、官界、財界が一体となり、国策として共通の目標に進む中、複雑に絡まった「規制の虜」が生まれた。そこには、ほぼ50年にわたる一党支配と、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった官と財の際立った組織構造と、それを当然とする日本人の思い込みがあった。経済成長に伴い、「自信」は次第に「おごり、慢心」に変わり始めた。
入社や入省年次で上り詰める「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった。この使命は、国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされた」と、〝原発神話〟を煽った日本国家の構造的欠陥に言及している。異論をはさむ余地のない見事な分析である。
国会の監視機能は全くお粗末
日本新聞協会の招きに応じた黒川氏は3月11日、「最終報告書の趣旨を国会活動に実践しない怠慢」を厳しく指摘した。国会事故調は、東京電力や政府(行政府)から独立した調査を、国会(立法府)の下で行うために設置された。憲政史上初の調査委員会だった。
調査結果に基づく7つの提言が国会に提出されたが、「国会の監視」について、衆議院に特別委員会が設置された以外は、全く国会での議論が進んでいない。国会で真剣に討議した形跡はなく、行政府を監視する立法府の役割を果たしていない。また黒川氏は、国会が機能を果たせるかどうかについて、ジャーナリストの監視が必要なことも指摘した。
国会事故調に賭けた黒川氏の情熱に反論の余地はなく、国会も報道機関も実効ある監視機能を確立してもらいたい。
沖縄日米合意・「普天間飛行場」早期返還の望み断たる(4・15)
日米両政府は4月5日、沖縄米軍基地返還計画を発表した。安倍晋三首相の「返還基準と時期を明記してほしい」との要請に応えたもので、6施設返還の見通しが示されたこと
は一応評価できる。ただ、世界最大の危険な飛行場といわれる普天間飛行場の返還について「返還は2022年度またはその後」と、またまた先延ばしされたことに、沖縄県民の失望感は拭いきれない。
「普天間固定化と同じ」と、沖縄県知事
1996年のSACO(沖縄に関する行動委員会)合意から17年、何とも長すぎる年月ではないか。「広大な嘉手納基地に普天間を一時移転させて、宜野湾市民の不安を解消する」などの便法をとれなかったか、両政府の〝沖縄差別〟の現実が透けて見える。仲井真弘多知事は4月6日、「何時になるか分からない、としか読めない。普天間を固定化するのと同じ」と語り、県外移設を改めて主張した。
朝日新聞4月7日付社説は、米政府内からは「海兵隊のグアム移転と普天間移設の前進によって、嘉手納基地以南の多くの土地の返還が可能になる」(国防総省報道官)といった発言が聞かれる。そんなやり方では何も進まないのが、この間の教訓だ。膠着状態が続けば県民の反発はさらに強まり、米軍の駐留が難しくなる恐れこそ出てこよう。東アジア情勢が不安定さを増すなか、日米両政府とも、そんなことは望んでいないはずだ」と指摘していた。
レビン氏らが「沖縄の兵力引き揚げ案」提示
琉球新報4月3日付社説は、「軍事予算の大幅削減にさらされている米オバマ政権のお膝元、ハワイ州知事の重要な発言が繰り出された。沖縄の負担軽減と、ハワイへの在沖海兵隊の受け入れ提案だ。レビン米上院外交委員長は、「私はシフトしない。沖縄の兵力の削減を目指すべきだ」と述べている。
レビン氏は何度も沖縄に足を運んだ〝知日派〟。「辺野古移設は不可能と唱え、沖縄の兵力を本土に戻すべきだと強調している。一方、アバクロンビー・ハワイ州知事は、州有地に2500戸を整備する計画を具体化し、ヘーゲル国防長官らに直接働きかけている。日米同盟強化を錦の御旗に見立て、対米追従姿勢の安倍首相は、現実性の乏しい日米合意にしがみつくのをやめるべきだ。
米国の地殻変動を見据えないと、沖縄の基地問題の対策を見誤る失策に帰する」と、米国側が大胆な打開策を示している現実を紹介しているのに驚いた。
日本政府は「辺野古移設案」にしがみつくだけでなく、ドラスティックな政策を提示するチャンスと捉えて、独自案を示すべきである。
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・
紙面審査委員長など。
関連記事
-
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変①』-『ドイツ、ロシア、フランス、イギリスらの中国侵略に民衆が立ち上がった義和団事件が勃発』★『連合軍の要請で出兵した日本軍が大活躍、北清事変勝利の原動力となった』
明治150年歴史の再検証 『世界史を変えた北清事変①』 義和団事件の発生 18 …
-
★7『警世の名講演』 国際ジャーナリスト・前田康博氏の目からウロコの講義(動画60分)ー「朝鮮半島クライシス5つの要素」★(1)金正恩の核ミサイルに特化した新戦略 (2)文在寅の南北和解策の成否 (3)習近平の対米・朝鮮半島政策 (4)トランプ暴走から迷走へ一米国の分裂 (5)安倍政権、朝鮮半島分断の固定狙う」で日本の危機を学ぶ
国際ジャーナリスト・前田康博氏の目からウロコの名講義ー 『金正恩の核ミサイルに特 …
-
池田龍夫のマスコミ時評(25) 日本の安全保障政策転換に影響を及ぼす新安保懇報告(要旨)
池田龍夫のマスコミ時評(25) 日本の安全保障政策転換に影響を及ぼす新安保懇報告 …
-
『リーダーシップの日本近現代史』(152)再録/『知的巨人の長寿学』の牧野富太郎(94)に学べ<植物研究と山歩きで、世界的な植物学者になる>★『学歴差別をものともしなかった「日本の植物学の父」』
2010/10/31 記事再録 …
-
★Z世代へのための<日本史最大の英雄・西郷隆盛を理解する方法論>講義㉑』★『「米国初代大統領・ワシントンとイタリア建国の父・ガリバルディと並ぶ19世紀世界史の三大英雄・西郷隆盛の国難リーダーシップに学ぶ』★『「廃藩置県」(最大の行政改革)「士農工商・身分制の廃止」『廃刀令」「奴隷解放』などの主な大改革は西郷総理大臣(実質上)の2年間に達成されたのだ。』
2019/07/27 日本リー …
-
『リーダーシップの日本近現代史』(172)記事再録/『100歳でロッキー山脈を滑った生涯現役スキーヤー・三浦敬三氏(101歳)は三浦雄一郎のお父さん』★『ギネスブックの百歳冒険家の超人親子』
2015/03/27 /「百歳・ …
-
『大谷翔平「三刀流(打投走)」のベーブ・ルース挑戦物語➂』★『2018/04/9本拠地初登板で全米メディアも『完全試合未遂』に大興奮『本当に人間か?』★『メジャー席巻の大谷翔平は「ハンサムで好感」米経済紙が“商品価値”を絶賛』★『 ペドロ・マルティネスが二刀流大谷のメジャーでの成功の秘密を解説!』
2018/04/10 /大谷選 …
-
『日本一の刑事弁護士は誰か!」『棺を蓋うて』ー冤罪救済に晩年を捧げた正木ひろし弁護士を訪ねて』★『世界が尊敬した日本人―「司法殺人(権力悪)との戦いに生涯をかけた正木ひろし弁護士の超闘伝12回連載一挙公開」』
2017/08/10 『棺を蓋 …
-
速報(441)『日本のメルトダウン』『ネット時代の大型書店の現状と未来』◎『工藤恭孝氏(丸善・ジュンク堂社長)× 加藤嘉則氏の対談
速報(441)『日本のメルトダウン』 ●『 …