前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉒「 朝鮮で再び問題起きる」 (英「ノース・チャイナ・ヘラルド」)

      2015/01/01

  


『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史

日中韓のパーセプションギャップの研究

 

 


日中150年戦争のルーツは中国が冊封体制によって属国としていた

『琉球王朝』(日中両方に朝貢していた)を明治維新
後に一方的に「琉球処分」して、日本が沖縄県に編入したことが

対立の発火点なのである。

これが「壬午事変」(明治15年)「甲申事変」

(明治17年)とエスカレートして、「日清戦争」(明治27年)へと爆発する。

 

この三国関係の外円には西欧列強の英国、フランス、ロシア,アメリカ、ドイツ

が加わって中国、日本、朝鮮をターゲットに19世紀の帝国主義的領土、

経済利権の分捕り合戦、戦争が繰り広げられた。

 

東アジアのバルカン半島がまさしく朝鮮半島なのである。

 

1885(明治18)年1223日   英「ノース・チャイナ・ヘラルド」

 

朝鮮で再び問題起きる

 

朝鮮と日本の関係について,両国から伝わってくるうわさは,決していいものではない。先に起こった暴行行為の償いとして合意された賠償金が,朝鮮によって支払われていないために,東京政府は怒りを募らせており,日本人の中でも,手に余る.不穏な人々の問で不満が噴出している。

 

彼らは,ソウルで井上馨伯爵が結んだ協定,それに天津で伊藤博文伯爵が結んだ協定を不満に思っている。また彼らは長年にわたり戦いを起こしたくてうずうずしてきた連中なのだ。花房公使に対する襲撃事件が起きた後に,最初の井上協約が結ばれたが,これによれば,朝鮮政府は50万ドルの賠償額を支払うことになっていた。

 

これはその後,日本政府によっていったん免除されたものの,今年初め,王宮で痛ましい事件が起き,たくさんの日本人が陰謀者たちの犠牲になるに及んで.賠償は再度請求されることになった。だが多くの人たちが,この賠償額に不満を持ち,この額では朝鮮側の背信によってかかった費用の一部分さえも賄えないと考えていることを思えば,そして実際には,賠償金が(その額が妥当かどうかにかかわらず)全く払われていないことを考えてみれば,世論の影響力が日ごとに増大している回で,政府が微妙で厄介な立場に陥るのも

当然と言えば当然だ。

 

この事件の場合も,それ以前に起きた数々の事件同様,事を荒立てているのはサムライだ。愛国的だが,問題ばかり起こしているこれら暴漢たちは,封建制度の下で安楽な生活を送り.大名たちから俸給を受け取り,ほとんどきつい仕事をすることもなく過ごしていた。最近では彼らは,超リベラル党とも言うべき自由党の相当な部分を占めている。彼らの自由に対する考え方は.極端でほとんど急進主義に匹敵するものだが.内部の意見衝突や.ひどい運営の不手際で,今は混乱状態にある。

 

彼らがその昔受けていた訓練と言えば,おおかた軍事訓練だけで,革命の到来で解雇された後は,暮しを支えていくだけの技量も商業知識もなかった。そのため,彼らは.いっも政府にとっては頭痛の

種だった。

 

彼らが,勝手に朝鮮に攻撃をかけようとしている今,政府にとってこれほど迷惑なことはなかろう。この階級の間で.組織が作られ.朝鰍に攻撃を仕掛けるという秘密の合意ができたとのうわさも持ち上がっている。

 

さらに,たくさんの者たちがこの謀略に乗り,各地のサムライたちが長崎に集結し.そこから,2人,3人と朝鮮に渡り.機会をうかがっているとのうわさもある。この驚くべき陰謀について,もしそれが本当ならわれわれがここまで詳しく知らされている限り,政府が知らないわけがない。もちろん.深刻な危害が生じないよう細心の対策がとられるだろうし,朝鮮当局は前もって警告を受けるだろう。同時に.両国民の間の関係(両国政府間とは言わないが)は,あまりに悪化しているので.ソウルで問題が起きたとしても驚くには足

らない。

 

ソウルは,外交面での問題を除外しても,内政面での争いが起きる可能性を十分に秘めた街なのだ。王妃と大院君が,平和のうちに,同じ街の壁の内側に住める可能性はほとんどない。

 

それぞれには.党がついているのだが,この2つの党は真っ向から争っている。大院君が.反動主義者によって大歓迎を受けたとすれば,それはとりもなおさず,進歩主義者からは怒りと嫌悪で迎えられたということになるのだ。

 

大院君が朝鮮の地を踏んだとたんに,その支持者であり友人である2人の人間が.王妃によって処刑されたという事実は.彼に反対する者たちによる直接的(そして不必要な)挑戦であり,少なくとも懐柔的とは言えない気持を表したものと見てよかろう。

 

両者の間の平和が,どれだけ長く続くかは予想がつかない。だが.これだけは確かだ。不和が起きれば,そっと日本から朝鮮にやってきて,潜伏しているサムライたちが姿を現し,紛争に加わってくるのだ。

ソウルの情勢があまりに不安定なために,数週間前,中国の駐在官が急ぎ天津に戻り,李中堂に,ボディガードとして分遣隊をつけてほしいと申し出たほどだ。

 

その要求は受け入れられたが,これは,本来,伊藤条約の条項に違反するものなので,よほどしっかりした裏付けがあってのことなのだろう(でなかったら認められなかったはずだ)。

 

これは,つまり,中国人はソウルに兵隊を送り込んでいるのに,日本は.同じような安全対策をとっていないということになる。それどころか.日本には.刻一刻と危険が迫っている-政治的に不穏な空気をかき立てることで,なにも失わずして利するところがあると考える危険きわまりない.無節操なギャングたちによって危機に陥れられる可能性があるのだ。それが私たちが知る限りの現状だ。ここ数週間のうちに事件が起きようとも,なんの不思議もないということを言っておく。

 - 戦争報道 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ ウオッチ(231)』(2018/03/21 ) ★再録『懐かしのエルサレムを訪問、旧市街のキリスト教徒垂涎の巡礼地、聖墳墓教会にお参りす』★『キリスト絶命のゴルゴダの丘跡地に設けられた教会内部と褥』

    ・ハイファ〜エルサレム 間は正式ガイドのドライバーに …

『Z世代のための<日本安全保障史>講座⑤」『日露戦争は民族戦争・宗教戦争ではなく防衛戦争』★『ドイツ・ロシアの陰謀の<黄禍論>に対して国際正義で反論した明治トップリーダーのインテリジェンス戦略に学ぶ』★『英国タイムズ紙、1904(明治37)年6月6日付記事を読めばよく分かる』

2013/05/04 /日本リーダーパワー史(380)記事再録編集        …

●『徳川封建時代をチェンジして、近代日本を開国した日本史最大の革命家・政治家は一体だれでしょうか講座④『西郷隆盛の即断即決のリーダーシップ➂』『山県有朋が恐る恐る相談すると、西郷は言下に「至極、結構なこと」と了解し、断固実行した」(徳富蘇峰『近世日本国民史』(明治の三傑))

2012-03-24 /日本リーダーパワー史(246)記事再録   & …

『Z世代のための独ベルツによる「日中韓」500年史講座③』★『世界からは尊敬され、韓国からは逆恨みされ暗殺された伊藤博文(初代総理大臣)の悲劇』★『日韓コミュニケーションギャップ、反日韓国のパーセプションギャップ(誤解、逆恨み)ルーツがここにある』

  2019/10/21  日本リーダーパワー史(107)記 …

no image
★『明治裏面史』/ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー, リスク管理 ,インテリジェンス(51)★『陸軍参謀本部の俊英・明石元二郎と宇都宮太郎のコンビが日露戦争勝利の情報謀略戦に活躍②』★『宇都宮大佐はロンドンでポーランド社会党首領のヨードコーらと接触、帝政ロシアの支配下からポーランドを解放し、第1次世界大戦後、新興ポーランドの元首となったユゼフ・ピウスツキ、特にその兄と親交があった』

 ★『明治裏面史』/ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー, リスク …

no image
日中韓異文化理解の歴史学(4)<最重要記事再録>日中のパーセプションギャップ、コミュニケーションギャップの深淵』★『(日清戦争開戦1週間前ー「戦いに及んでは持久戦とすべきを論ず」(申報)』★『120年前の日清戦争で近代科学思想、合理的精神の西欧列強に一歩でも近づこうとした日本と、1000年にわたる封建的、儒教精神の旧弊で風水の迷信に凝り固まった「中華思想」、メンツから一歩も発展していない清国(中国)が戦端を開いてみれば、どんな結果になったか ー新聞『申報』のバックナンバーを読むとよくわかる。』

2014/09/09の記事再録 『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 …

『Z世代への伊藤博文による明治維新講義①』★『なぜ、ワシは攘夷論から開国論へ転換したのかその理由は?ーわしがイギリスに鎖国の禁を破って密航し、ロンドン大学留学中に 「英タイムズ」で下関戦争の勃発を知り、超大国イギリスと戦争すれば日本は必ず敗れると思い、切腹覚悟で帰国したのだ』

★『1897年(明治30)3月20日に経済学協会での『書生の境遇』講演録から採録 …

『オンライン講座/勝海舟(75)のリーダーシップ論』★『勝海舟の健康・長寿・修行・鍛錬10ヵ条」』★『余裕、綽綽(しゃくしゃく)として、物事に執着せず、拘泥せず、円転・豁達(かったつ)の妙境に入りさえすれば、運動も食物もあったものではないのさ』★『学問に凝り固まっている今の人は、声ばかりは無暗に大きくて、胆玉(きもったま)の小さい。まさかの場合に役に立つものは殆んど稀だ。』

2015/01/01百歳学入門(92) 勝海舟(75)の健康・長寿・修行・鍛錬1 …

no image
日本史の復習問題/『日本で最高のリーダ―シップを発揮した英雄は・・西郷隆盛です』―『山県有朋から廃藩置県の相談を受けた西郷隆盛は「結構」と一言の基に了承、断固実行した➀』

    記事再録2012/03/23 /日本リーダーパワー史 …

『Z世代のための朝鮮問題講座」(上)★「日本開国の父」「民主主義者」「アジア解放の先駆者」福沢諭吉の義侠心からの「韓国独立支援」はなぜ逆恨みされたか「井上角五郎伝」から読み解く①」★最新刊「時事新報社主 福沢諭吉」(平山洋著、法律文化社、466頁 22年11月刊) は福沢研究の決定版、古典である」

  「時事新報社主 福沢諭吉」(平山洋著、法律文化社、466頁 202 …