前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「タイムズ」からみた「日中韓150年戦争史」(61)『(日清戦争開戦4週間後)-『日本の朝鮮侵略(下)』

      2015/01/01

  

 

『「申報」「タイムズ」からみた「日中韓150年戦争史」

日中韓のパーセプションギャップの研究』61

 

  1894(明治27)年828日英『タイムズ』

『(日清戦争開戦4週間後)-『日本の朝鮮侵略(下)』

 

 

  日本政府は朝鮮遠征に対して1つの理由しかあげていない-自国領土から「石を投げれば届く」近さにある国の国内行政を改革することは急務であるという理由だ。日本の立場を解説する人々は,信頼すべきか否かはともかく,朝鮮の改革を阻害しているのは中国だと付け加える。日本政府がソウル駐在公使を通じてとっている外交措置は.この公式見解と軌を一にする。

 

 朝鮮に対して出された要求は最高の手腕をもって作成されていた。というのは.朝鮮の全制度の根幹に触れ,特権の核心を揺るがし,高位高官の罷免を狙ったものでありながら,一見したところ害のない,必要な行政改革の装いを保っているのだ。

 

しかし仮に日本が成功するとすれば.これは改革ではなく革命でさえなく.日本が現在,実際にそこまで考えているか否かにかかわらず.必然的な結果として文字どおり徹底した従属化ということになるはずだ。

 

 

 ところで朝鮮政府の改革は,それが前もって仕組まれた征服の口実でなく理非曲直による忌憚のない提案であれば,文明世界の共感を呼ばずにはおかない事柄だ。地球上でこれほど悪弊にむしばまれた擬似文明社会はないからだ。

 

上は玉座にある王から下は同朋に対してつかのまの権威を振りかざす最も卑劣な連中に至るまで,強請が法律であり残酷さが裁可だ。国民はなんの公民権も持たず,個人の財産が安全でないために勤勉になる動機を奪われている。こう

したことが.この国の貧困と不潔と停滞の原因だとされている。少なくともそれが一般に信じられている教説で,これに疑いを挟むのはとんでもない異端ということになる。

 

 しかし,できる限り情状を酌量しても朝鮮政府が腐敗の巣であることに変わりはなく国民はつらい運命を背負っている。彼らは惨めというより死んでいると言ったほうがいいくらいで,白い麻服を着た男たちがしかつめらしい様子で通りをうろついたり妻たちが仕事をしている傍らで何人か集まってあばら屋の床にしゃがみ込んだりしているのを見ると,朝鮮人にとって人生はどんな特別の魅力があるのだろうと不思議になる。

 

男たちが怠惰であることは確かだが,屈強な体つきをしているし,見たところ栄養も良さそうだし,背中につけたきわめて実用的な荷ぐらで商品を運ぶ.道行く苦力の集団を見ればわかるように,主人のために働く意欲もある。

潜在的な奴隷使いにとって,朝鮮で皮鞭の洗礼を待っている多くの筋肉は大き過ぎるほどの誘惑だ。土地は肥沃で気候も良く,人口は少ない。

それならばなんらかの方法でその御しやすい筋肉と優しい大地を払,その結果両者が実を結んで豊かに繁殖することになれば,そして商業が育成されて富が増大することになれば,それは神々しいとさえ言える事業ではないだろうか。そういった種類の改革の幻像が多くの進歩的日本人の空想を刺激している。この伝道的野心を最初にとがめる資格があるのはイギリスの血を受けた人々ではない。

 しかし.友好国に対して突然の根本的改革を求める日本の熱意,改革を強行するために朝鮮に軍隊を派遺せざるを得なかったほどの熱意は,現実的な政治家たちによってその本来の価値へと引き下げられるだろう。本物であるには少しばかり善良過ぎ,実際的であるには徹底し過ぎている上人間の進歩に関する既知の方法に背いているのだ。

 

半ば神話的な神功皇后の征伐までにはさかのぼらなくとも,明確な典拠のある歴史をたどるだけで300年を超す長い朝群との交流の中で日本はかつて1度も朝鮮を改革しようと試みたことはない。

 

1度ならず朝鮮を侵略し,征服者,それもアジア的征服者としての権利を十全に行使したことはある。だが改革は?1度もない。同様に中国-朝鮮王国の伝統的保護者-も内政改革を試みたことはない。

多分中国は自国を改革するのに.能力もしくは意欲を超えた課題を抱えていたのだろう。けれども.朝鮮の改革に向けて,弱々しくためらいがちながらも1歩だけ踏み出したのは中国であって日本ではないことを認めておかなければならない。

 

朝鮮が1882年に外国貿易に対して門戸を開放したとき.中国政府は朝鮮王の大臣たちに新しく振りかかってくる状況に応じるため何か手を打つ必要があると見た。大臣たちは対外通商の経験が皆無だったからだ。朝鮮の制度を改めて新体制に適応させなければならないことを中国は明瞭に理解していた。

 

中国が自国の能率的な税関組織による業務代行を朝鮮王に申し出たのは,朝鮮が自力ではできないことを肩代わりしようという考えからだった。その後10年間、税関は朝鮮でただ1つの定期的国庫収入源となった。

これと同じ目的で中国は有能な外国人顧問を何人か選び,諸外国と全く新しい関係に入る朝鮮政府の補佐役と同時に,政府に進歩の道を歩ませる指導役に任じた。この計画の実効がその意図より見劣りがしたからといって,それを中国の罪とすることはできない。

 

中国は自らの能力に応じて最善の判断に従って行動したのだ。肝心な点は.中国が朝鮮の改革に好意的であることを自ら証明したことにある。朝鮮の状況を改善する上で中国がほとんどなにもできなかったとしても.他の国は全くなにもしなかった,あるいは.武力介入の口実が必要となるまではなにもしなかったのだ。

 これまで朝鮮には中国の手が重くのしかかっていたとする,当局筋の発言ではないが日本政府の側に立った主張は,真相とは正反対に近い。主張とは裏腹に中国は保護国に対して物わかりがよすぎた。朝鮮との関係では利己的でなさすぎ,多くを与えて見返りをほとんど要求しなかったと言ってもいいくらいだ。反乱は権力乱用に対する機械的治療法なので.中国は反乱の影響が及ばないように朝鮮王を保護したことによって改革の道をふさいだとする見方には一理ある。

 

 朝鮮王政府は条件を押しっけてくる強大勢力に屈する以外.選択の余地を持たない。条件の各項が別添の最後通告で補強されていようが,全院委員会のアイルランド自治法案のように各々の特殊協議事項に分かれていようが,それともひとまとめに出されようが.結局はほとんど同じことだ。

 

1000万人の文明人から成る国家がどうしてこのように嘆かわしい立場に陥ったのかという問題は,興味深い政治研究の対象となろう。現在の朝鮮は,2大隣国の長い抗争のもたらした結果であると見て初めて理解できる。

16世紀に朝鮮を侵略した日本軍は7年の破壊行為の後中国軍に撃退されたが,それは武器の力よりはむしろ侵略者と侵略された国がともに消耗してしまったことの方が大きい。朝鮮は中国に対するこの借りを17世紀に返した。満州族と

戦った明朝の援護に駆けつけたのだ。中国史上最良の支配者となった満州族は.朝鮮との友好を帝国の政策の基本原則とした。

 

 日本の攻勢が.朝鮮の宗主国であり.王を守るために現に軍隊を朝鮮に駐屯させている中国に対する意図的な挑戦であることは確かだ。そして,中国沿岸に住む外国人たちは連日.戦争の起きるのを予期している。だがけんかをするには2人の人間がいる。また東洋では「名誉の問題」について西洋はどやかましくない。それに中国は.熟考した上でどういう行動をとるにせよ.挑戦者選んだ時と場所でいやおうなしに受けて立たされるようなことはしない。

 

商業・産業社会である中国はたいていの事業を現金ベースに還元することに慣れており,敵に金を払って事を収めるほうが敵と戦ってその10倍の額を使うよりましだと思うだろう。

 

このブルジョワ的な物の見方は.1874年に日本軍が台湾を急襲した際の対応に如実に表れていた。これについては故サー・ハリー・バークスの書簡の中で見事に解説されている。実際,今回の戦争勃発の「内実」を理解しようと思うなら,先ごろ出版されたサー・ハリーの伝記の中の上記の部分を読むにしくはない。

 

 

 朝鮮と2つの隣国との関係について書かれた記録文書がlつもなかったとしても,その歴史は今日の国民の一般感情から推し測ることができよう。中国人は朝鮮半島のどこでも歓迎される。住民から歓待と保護が得られることをいっも確信して,国中を気ままに巡り歩くことができる。

 

住民は「小国」が恩義を受けている「大国」に属す人として中国人を尊敬する。先に朝鮮で起きた内乱騒動のおりに蜂起の現場へ派遣された中国人使者は.武装した住民に賓客のもてなしを受けた。首脳部にいくらかでも知恵があったなら.この間題は中国の影響力を通じて楽な条件で処理することができたはずだ。あさにこれまで言われてきたとおり,朝鮮には中国が宗主国であるとの意識がしみ込んでいる。

 

 中国人に対するこの友好的感情と意味深い対照をなしているのは.日本人に対する朝鮮国民の本能的嫌悪だ。300年前に受けた苦しみの記憶が語り伝えられて今日に生きている。また現世代の日本人にしても,その品行は必ずしも期待されるほど思慮深いものではない。現在日本軍はソウルと釜山を結ぶ新しい電信線敷設工事を進めているが,朝鮮人苦力がそこで働くのを拒否したことはこのことの証拠だ。

 

朝鮮人は中国人のためなら同じような状況でも喜んで働くだろう。したがって大きく言えば朝鮮にとって中国は代々の友人であり.日本は代々の敵ということになる。満州族が帝位に就くと,朝鮮の忠誠は1637年の条約で再確認され

た。そのときソウルの西側城壁の外に建てられた記念碑には,今でも判読できる文字でその事跡が記録されている。

 

 しかし,このように2つの火の間に置かれた国,今では第3の国ロシアも加わった隣国のどの1国にも太刀打ちできない弱い国は国としての性格を失うことを免れない。新しい朝鮮に起こったのはまさにそのことだ。

 

朝鮮は暗い忍従の気持で.敵対国の問でやり取りされる羽子の運命に甘んじている。強い方の国に頼りたいという気はあるが.各国の強さを判断し損なえば手ひどい報復を受ける危険がある。独立は問題外なのだから,朝鮮の統治者たちが.いちばん高い値をつけた者に自らを差し出すとしても許されると言っていいほどだ。

 

 

 - 戦争報道 , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

  関連記事

no image
世界、日本メルトダウン(1011)-「地球規模の破壊力示したトランプ─1人の人間が終末時計を進めたのは初めて」★『トランプ外交、親イスラエルが火種 エルサレムに大使館移転検討 中東諸国の反発必至』

 世界、日本メルトダウン(1011)- 「地球規模の破壊力示したトランプ──1人 …

no image
日本リーダーパワー史(849)-『安倍首相の「国難突破解散」は吉と出るか、凶と出るか、いずれにしても「備えあれば憂いなし」③ 』★『戦後の日本人は「最悪に備える」態度を全く失ってしまった。』★『「ガラパゴスジャパン」(鎖国的、伝統的、非科学的、非合理的な日本思考)から脱さなければ、未来(希望)の扉は開けない』★『明治維新、倒幕の原因の1つとなった宝暦治水事件』

日本リーダーパワー史(849)  安倍首相の「国難突破解散」の判断は吉と出るか、 …

no image
日本メルトダウン( 986)-『トランプ次期米大統領の波紋』 ●『トランプ次期大統領「就任初日にTPP離脱通告」 2国間協定交渉へ』★『【社説】浮上するトランプ政権の全容 次期閣僚への打診を本格化、意外な名前も』●『オピニオン:トランプ不安、日本の「改憲」後押し=エモット氏』●『尖閣で日米同盟が試される…米メディア』▼『ポピュリストの波、メルケル独首相も飲み込むか』◎『コラム:トランプノミクスは日本経済に追い風か=河野龍太郎氏』

   日本メルトダウン( 986)—トランプ次期米大統領の波紋    …

ダウンロード-1-150x150
 ★5日本リーダーパワー史(776)ー 『アジア近現代史復習問題』 福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む』(9)『金正男暗殺事件をみると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」● 『(日本軍の出兵に対して)彼等の驚愕想ふ可し』は現在の日中韓北朝鮮外交 に通じる卓見、戦略分析である』★『近年、日本のアジア政略は勉めて平和を旨とし事を好まず、朝鮮は明治十七年の甲申事変以来、 殆んど放擲し、清国関係には最も注意して事の穏便を謀り、言ふべきことをいわず、万事円滑 を旨としたのは、東洋の平和のため』★『傲慢なる清国人らの眼を以て見れば、日本人は他の威力に畏縮して恐るに足らずと我を侮り、傍若無人の挙動を演じている』

  ★5日本リーダーパワー史(776)ー   ★『アジア近現代史復習問題』 福沢 …

no image
日本の「戦略思想不在の歴史⑾」『高杉晋作の大胆力、突破力③』★『「およそ英雄というものは、変なき時は、非人乞食となってかくれ、変ある時に及んで、竜のごとくに振舞わねばならない」』★『自分どもは、とかく平生、つまらぬことに、何の気もなく困ったという癖がある、あれはよろしくない、いかなる難局に処しても、必ず、窮すれば通ずで、どうにかなるもんだ。困るなどということはあるものでない』

  「弱ったな、拙者は、人の師たる器ではない」   「それならいたし方ござりませ …

no image
日中近代史の復習問題/記事再録/日本リーダーパワー史(423)ー『現在進行中の米中貿易協議、米朝首脳会談』の先駆的ケーススタディ―」★『日中異文化摩擦―中国皇帝の謁見に「三跪九叩頭の礼」を求めて各国と対立』★『困難な日中外交を最初に切り開いた副島種臣外務卿(外相)の外交力』★『英「タイムズ」は「日中の異文化対応」を比較し、中国の排他性に対して維新後の日本の革新性とその発展を高く評価した』

日本リーダーパワー史(423)2015/01/01『各国新聞からみた東アジア日中 …

no image
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」/「日本側が伝えた日英同盟へのプロセス」⑥ー『各元老から日英同盟への意見聴取で賛成』★『伊藤公の外遊真相』●『桂と外遊中の伊藤との間に対英対露方針に関して、はからずも意見の食い違いが露呈』

★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本側が伝えた日英同盟へのプロセス」 …

no image
日本リーダーパワー史(919)記事再録『憲政の神様/日本議会政治の父・尾崎咢堂が<安倍自民党世襲政治と全国会議員>を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』②『総理大臣8割、各大臣は4割が世襲、自民党は3,4代目議員だらけの日本封建政治が国をつぶす』②

日本リーダーパワー史(919) 『売り家と唐模様で書く三代目』② 前坂俊之(ジャ …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑮『 戦争も平和も「流行語」と共にくる』(下)決戦スローガンとしての『流行語』

 『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑮     『アジ …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(31)★現代史復習『日清戦争は日本が完勝したが、実質は清国軍が戦闘能力なしの「鵜合の集団」『張り子のトラ」だったこと。現在の『中國人民軍』は果たして近代化し、最強装備になっているか、北朝鮮の軍事力は核弾頭搭載ミサイルの脅威のレベルは如何!

   日中北朝鮮150年戦争史(31)★現代史復習、 日清戦争の陸海戦 …