『台湾有事を巡る日中対立はさらにエスカレーション②』★『中国「ロックオン事件」と第3次世界大戦?』★『中国軍によるレーダー照射や危険な接近(インターセプト)は、日本以外でも常態化しており、オーストラリアやフィリピン、特に米国に対しては過去2年間で180回と常態化している』

2025年12月6日午後、中国軍機が自衛隊機に対して2回にわたって火器管制のレーダー照射「ロックオン」を行った。日本政府は①戦闘機から戦闘機への照射をしている②1回目は約3分、2回目は約30分と照射時間が長時間であることなどで偶発的衝突への危険が非常に高いとして、中国側に厳重に抗議した。
「ロックオン」とは武力行使のサインで、火器管制レーダー(FCR)を照射して、ミサイルなどの兵器の目標を追尾し、発射準備を完了する。いわば「引き金に指をかけた状態」をさす。このため、ロックオンをされた側は、攻撃の差し迫った脅威と判断し、自衛のために先に威嚇射撃やミサイル発射といった対抗措置をとる。
しかも、最長30分にわたる長時間の照射はロックオンされた側のパイロットに極度の精神的緊張を強いるため、一瞬の判断ミスや誤操作がおこり軍事衝突に直結する危険性が非常に高い。30分間に及ぶ軍事常識では考えられない異常な長時間の「ロックオン」は単なる威嚇を超え、日本側に先に手を出させて紛争の口実を作る『誘発行為』であったとの見方が強く、現場の自衛官の極限の自制心により、偶発衝突が避けられたといえる。
1962年のキューバ危機のケースを思い出した。危機1発の核戦争の瀬戸際で世界を救ったのは、ソ連の潜水艦B-59に搭乗していたヴァシーリ・アルヒーポフという一人の軍人だった。当時、キューバ近海を航行していたB-59は、アメリカ海軍による執拗な爆雷攻撃(停船命令)を受けた。潜水艦は深海に潜伏しており、モスクワとの通信が途絶。艦内は高温と二酸化炭素の充満で混乱し、サヴィツキー艦長は「すでに戦争が始まった」と確信し、核魚雷の発射を決断した。
ソ連の規定では、核兵器の使用には艦長、政治将校、副艦長の3人全員一致の合意が必要だ。艦長と政治将校は発射に同意したが、副艦長のアルヒーポフは、「これは米軍による挑発に過ぎない」と冷静に判断し、頑なに反対を貫いた。
彼の必死の説得により発射は見送られ、潜水艦は浮上。核による報復の連鎖が回避された。もし彼が賛成に回っていれば、第三次世界大戦は避けられなかったと言って過言ではない。「世界を救った男」として、彼の功績は後年になって高く評価されている。今回の場合も、自衛隊員の冷静な判断力、行動力が偶発戦争の危機を救ったともいえるだろう。

- 1000回上る自衛隊のスクランブル回数
2013年の中国「ロックオン事件」以降、中国とロシアによる日本近海での活動は、単なる通過から「共同行動」や「領空・領海侵入」を伴う実戦的な威圧行為へと質的に変化している。
自衛隊機のスクランブル回数も激増し、2021年以降では、毎年700回から1000回に達して常態化してきた。そのうち6,7割が中国で、南西諸島方面(沖縄など)での活動が常態化している。中国、ロシアの共同の軍事行動では、両国の爆撃機による日本周辺での共同飛行がほぼ毎年実施、中ロ海軍艦隊の計10隻による日本列島をほぼ一周する形で共同航行されている。
中国空軍の現在の状況は、単に「近づく」だけでなく、活動範囲を拡大し宮古海峡を抜けて太平洋へ進出するルートが常態化した。24年度には、中国の無人機に対するスクランブルが過去最多(30回)を記録。多方面からの同時威圧で北側(ロシア)と南側(中国)から同時にプレッシャーをかける動きを加速してきた。
以前は「偵察」が主目的だったが、現在は「日本の警戒能力の消耗」や「自国の行動範囲(既成事実)の拡大」へとエスカレートし攻撃的な運用に変化している。
尖閣諸島周辺における中国海警局(Coast Guard)の活動は、2012年の国有化以降、単なる「抗議の航行」から、「日本の実効支配を無効化する」ための常態的な圧力へと完全にレベルアップしている。
中国海警局船は、現在ほぼ1年中にわたって尖閣諸島周辺に居座り、「少しずつ既成事実を積み上げる(サラミ戦術)」により、日本の海上保安庁に強いプレッシャーをかけている。 元海軍のフリゲート艦を改造した海警船を投入、76mm機関砲(軍艦並みの火力)を搭載した船舶を常態的に配備しており、1,000トン以上の大型船の保有数は、中国海警局が約159隻、海上保安庁は約75隻の大差である。
2021年に中国で施行された「海警法」により、中国側が「管轄海域」とみなす場所では、外国船に対して武器使用を認めた。このため偶発的な衝突が軍事衝突に発展するリスクがより高まっている。2025年に入り、海警船は通常4隻で1組のローテーションだが、3月から計8隻を同時展開している。
初の中国空母「遼寧」、「山東」の活動は 年に数回、沖縄本島と宮古島の間の「宮古海峡」を抜け、太平洋上で数週間の訓練を行う。2024年から3隻目の空母「福建」は電磁カタパルトの搭載で日本の防衛にとって大きな脅威となりつつある。
中国軍によるレーダー照射や危険な接近(インターセプト)は、日本以外でも常態化しており、特にオーストラリア(1回)やフィリピン(1回)、特に米国に対しては南シナ海上空で、米軍のRC-135偵察機やB-52爆撃機に対し、中国軍機が数メートルの距離まで異常接近する事案が、過去2年で180件以上(米国防総省発表)と報告されている。
中国側は「自国の演習海域への侵入に対する正当な警告である」や「日本側が挑発した」と主張し、事実関係を否定または正当化する傾向にある。今回の12月の事案は、空自機に対するレーダー照射としては公にされた数少ないケースであり、日中間の緊張が一段階高まったことを示している。

- 中国軍の軍拡、軍事行動の威圧に対しての日本の防
- 自衛隊の「南西シフト」島々のミサイル基地化
中国の海洋進出に対抗するため、自衛隊は鹿児島県から沖縄県にかけての奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島、沖縄本島の5島にミサイル部隊を配備して「南西シフト」を引いている。
- 特筆すべき新能力「スタンド・オフ・ミサイル」
自衛隊は現在、これら南西諸島の部隊に、相手の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」の配備を急いでいる。これは射程が1,000km以上に及ぶとされ、中国艦隊への強力な抑止力となる。
- 「特定利用空港・港湾」の指定――2025年現在、基地建設だけでなく、有事に備えて民間の空港や港を自衛隊・海上保安庁が使いやすくする整備も進め2025年までに全国約28施設が指定の予定。
- 中国は空母を中心とした艦隊で「日本の南側(太平洋側)」に回り込み、日本を包囲する形(海の万里の長大船)での圧力を強めている。日本は島々にミサイル部隊を配置して、中国艦隊が自由に太平洋へ出られないように「壁(抑止力)」を築いている。「海を広げたい中国」と「島を盾にして守る日本」のせめぎ合いが激化している。

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