日本風狂人伝⑱ 『中江兆民奇行談』(岩崎徂堂著,明治34年)のエピソード 数々
前坂 俊之
先生はそこでサイフを逆にし、米樽を叩いて次々に窮してる奴を救ってやった、ちょうど二年余で世話した者は何百人もあったけれども、どうした事か一人として出世した者がない。先生そこで大にこれはダメだわいと悟ったので、やがて戸板ほどもある、大きな板へ、
そこで或人が「君もまた装飾を好むのであるのか」と質問した。所が兆民はさもおかしげな顔をしていたが、暫くして答へて云ふのに、「これは決して装飾を好む為めにする訳でない、不意に金銭を要する事がある時にはこれを売って金に換へる用心の為めである、と云はれたさうだが、思えばこれも最もの次第である、所が後ちに金鎖も売って、金煙管も処分してしまった、今は例の金時計しか残って居らない。
其初め東京に帰ったと云ふ事が諸新聞に現われると、居士の門弟や知友は車を飛ばして病床に見舞ふ者引きも切らざる姿であった。先生一々来客に接して筆談を試むるが、余り長くなつても客が気を利かして帰らないと、先生は立ち上がるかと思うと「墓所に行くから失礼する」と言いつつ、己れの書斎に入り込んでしまう。
先生は己れの書斎たる四畳半を墓所として既に千万億土にでも行った積りになって居るそうだが、訪ふ人毎に書斎を指して墓所だと語られておるのは如何見ても尋常人ではない。
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本近現代興亡史』(225)/★『明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破の交渉力」➃『『軍事、外交は、嘘(ウソ)と法螺(ほら)との吐きくらべで、吐き負けた方が大損をする。国家の命脈は1にかかって嘘と法螺にある。『 今こそ杉山の再来の<21世紀新アジア主義者 が必要な時」』
2014/08/09 /日本リーダーパワー史(520)記事再録 &n …
-
-
『オンライン講座/日本興亡史の研究 ⑮ 』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテリジェンス①>★『日露戦争開戦の『御前会議」の夜、伊藤博文は 腹心の金子堅太郎(農商相)を呼び、すぐ渡米し、 ルーズベルト大統領を味方につける工作を命じた。』★『ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の世界最強のインテジェンス(intelligence )』
2017/07/24 記事再録 ★ 明治裏面史『日清、日露戦争に勝 …
-
-
明治150年「戦略思想不在の歴史⒀」―『明治維新を点火した草莽の革命家・吉田松陰』★『「人に士農工商あり。農工商は国の三宝。武士は国の寄生虫なり。厚禄をはみ、おごりたかぶるはもってのほか』●『内政は貧院(生活保護)病院、幼院(孤児・保育)を設けて、上を損じ、下を益すにあり』
明治維新を点火した草莽の革命家・吉田松陰 今から150年前のこと、 「人に士農工 …
-
-
『Z世代のための日本インド友好史③』★『日本とインドの架け橋』―大アジア主義者・頭山満はインド人革命家・ボースの亡命を受け入れた』★『アジア解放の夢をボ-スに託し、亡命を受け入れて匿い「新宿中村屋」相馬愛藏の娘・俊子と結婚させて「オレが最後に牢屋にゆけばよいのじゃ」と大度量を示した』
2010/01/19 日本リーダーパワー史(33)記事再編集 前坂 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(164)記事再録/『袁世凱の政治軍事顧問の坂西利八郎(在中国25年)が 「日中戦争への原因」と語る10回連載』●『万事おおようで、おおざっぱな中国、ロシア人に対して、 日本人は重箱の隅を小さいようじでほじくる 細か過ぎる国民性が嫌われて、対立がエスカレーとし戦争に発展した』
2016/09/13日中韓 …
-
-
『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(51)』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス⑦』★『ルーズベルトの和平講和工作―樺太を占領せよ』★『戦争で勝ち、外交戦で完敗した日本』
日露戦争は日本軍の連戦連勝のほぼ完勝に終わったが、その裏には、川上操六前参謀総長 …
-
-
人気記事再録/日本天才奇人伝②「国会開設、議会主義の理論を紹介した日本最初の民主主義者・中江兆民―②<その眼中には、国家のほかは何ものも影じない。兆民は伊藤博文、大隈重信ら元老連をコテンパンに罵倒す>
前坂 俊之(ジャーナリスト) …
-
-
日本リーダーパワー史(605)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(元寇の役、ペリー黒船来航で徳川幕府崩壊へ)ー日清、日露戦争勝利の方程式を解いた空前絶後の名将「川上操六」の誕生へ①
日本リーダーパワー史(605) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 (元寇の …
-
-
日本リーダーパワー史(209)ー太平洋戦争敗戦時の畑俊六陸相(A級戦犯)の「国民に詫びる」
日本リーダーパワー史(209) <政治家・官僚・リー …
-
-
日本の〝怪物″杉山茂丸(すぎやま・しげまる)(一八六四~一九三五)
1 日本の〝怪物″杉山茂丸(すぎやま・しげまる)(一八六四~一九三五 …
