前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(343) 『最強のリーダーシップー西郷隆盛の国難突破力』 『情においては女みたいな人』(大久保利通の西郷評)

      2015/01/01

日本リーダーパワー史(343 
 『最強のリーダーシップー西郷隆盛の国難突破力』 

金も名誉も命もいらぬ人でなければ天下の
偉業は達成できぬ
●『廃藩置県の大改革ができたのは西郷の一言、
大度量によってのみ』
『情においては女みたいな人ですからね』
(大久保利通の西郷評)
 

前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
 明治四年の廃藩置県を断行できたのは西郷の一言で、気の小さい山県有朋が相談に行くと『わかり申した』と一言のもとに了解し、「もし反対する藩があれば、おいどんが成敗しもうす」と答えた。
 
 
 
この廃藩置県の結果、日本全体が天皇の統治に帰することになったので、翌五年から明治天皇の権力掌握の顔見せ巡業として西国巡幸が始まる。これが二度にわたる東京行幸などの大旅行計画の始まりだった。 西郷が、今度の行幸の最高指揮者たる統督としてえらばれたのだ。
 西郷は維新三傑の中でも、まず第一に指折って数えられる。維新の論功行賞も最高の貨典禄二千石を授けられた。大久保や木戸でも千八百石だったのである。
ところが、西郷はそれを返納し、自分は兵卒なみの八石しか受けなかった。そして維新の騒乱が片づくと、「これからは郷土のことが大切でござる」とさっさと育って鹿児島へひっこんでしまったのだ。
だから明治天皇は、西郷にはいたってなじみがうすかったのである。
 
 
 廃藩置県は、いわば三百諸大名の大政奉還である。もしそれらが一藩でも反抗したら、すぐ伝播して幕府方、諸藩の抵抗どころではなく、数が多くて、全国にわたり広がって抑え得られるどころではない。それをおさえる威望と勢力を持っているのは大西郷しかいないというのは衆目の一致した点で、故山に引っ込んだ西郷を無理矢理に新政府にひっぱり出したのであった。
 
●『命も名誉も金もいらぬ』という底無しの大度量の西郷は新政府に復帰するとその態度、リーダーシップは他のリーダー、役人とは全くかわっていた。
 
 たとえば、五百両の月給を一度受けとったきりで、あとは全く取りに来なかった。
「自分の生活費は月に十両もあれば足りる。政府の大切な金を余分にいただいては相すまない。
もちろん入用な人が月給を毎月ちょうだいなさるのは、あたりまえだが、少なくともおいどんは不要でごわす」
 
 というので、大蔵省では租税頭の渋沢栄一が、その処遇に困ってしまった。
 
 政府の首脳会議にも、味噌をまぶした握り飯をもってくるので、金蒔絵の重箱に山海の珍味をつめてくる三条実美(太政大臣=実質的な総理大臣)はいつも、その前で弁当をひらくのを、はばからねぼならなかった。
 
「それらの事が一々、天皇の耳にはきこえていたのだ。
 
 明治天皇は、軍艦のなかで、西郷と毎日顔をあわせ、天機奉伺の挨拶をうけているうちに、彼の人がらが、だんだんとわかってきて、日をふるにしたがって、西郷を好きになる気もちが強まってゆく。 他の人間のもたぬ温かさと厚味がある。いかにも誠実で、彼さえそばにいたら、たとえ天地がひっくり返っても大丈夫だというような安心感がもてるのであった。
 
                                                                                      (以上は木村毅『明治天皇』文芸春秋(昭和42年)を参照)
 
 
 
著者:樺山愛輔著 | 発行年月:1954年07月

大久保利通の西郷評は『情においては女みたいな人ですからね』
http://book.maesaka-toshiyuki.com/book/detail?book_id=26
 
 

 - 人物研究 , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
★『オンライン60歳,70歳講座/長寿逆転突破力を発揮し老益人になる方法』★『今からでも遅くない、70歳からの出発した晩年の達人たち』★『農業経済 学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後40冊以上の大著を完成』★『渋沢栄一(91歳)-計画を立て60から90まで活動する,90歳からスクワットをはじめ、1日3時間以上読書を続けた』

    2020/08/06 /人気記事再録 &n …

最高に面白い人物史①人気記事再録★「日本人の知の限界値」「博覧強記/奇想天外/抱腹絶倒」➂九十まで生きて思うよう仕事を完成して、死んだら頭の先から爪の先まで売り払って乞食にいっぱいのましてやると豪語

  2015/05/01   「先生は本 …

no image
『オンライン/最後の海軍大将・井上成美が語る山本五十六のリーダーシップ論』★『2021年は真珠湾攻撃から80年目、米中日本の対立は火を噴くのか!』

    2019/08/04 &nbsp …

no image
『世界サッカー戦国史』⑥『日本対ベルギー戦は3日(火)午前3時キックオフ!』★『日本が勝てば、今大会最大の衝撃!? 海外メディア「ドイツ敗退よりも驚くべきこと」

『世界サッカー戦国史』⑥   日本が勝てば、今大会最大の衝撃!? 海外 …

no image
太平洋海戦敗戦秘史ー山本五十六、井上成美「反戦大将コンビ」のインテリジェンスー「米軍がレーダーを開発し、海軍の暗号を解読していたことを知らなかった」

太平洋海戦敗戦秘史ー山本五十六、井上成美の  「反戦大将コンビ」のインテリジェン …

『オンライン講座/日本の国難突破力』★『明治維新の革命児・高杉晋作の「不惜身命」★『「風雲児」高杉の神出鬼没、快刀乱麻、勇猛果敢、飄々としたその国難突破力の不動の信念とは」★「平生はむろん、死地に入り、いかなる難局に処しても、必ず、窮すれば通ずで、どうにかなるもんだ。困ったなどとは決していうものじゃない」★『高杉晋作の生家・旧宅を訪ねる(動画)』

     2015/07/29日本リーダーパワー史 …

no image
人気リクエスト記事再録『百歳学入門(204)』★『日本の食卓に長寿食トマトを広めた「トマトの父」・カゴメの創業者蟹江一太郎(96歳)の長寿健康・経営訓10ヵ条』

人気リクエスト記事再録『百歳学入門(204)』   百歳学入門(70) …

no image
日本リーダーパワー史(106)伊藤博文③エピソード、女に殺された日本一の宰相

日本リーダーパワー史(106) 伊藤博文③エピソード、女に殺された宰相      …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(268)★「昆虫記(全10巻)を完成したファーブル(91歳)は遅咲きの晩年長寿の達人』★『56歳で第1巻を刊行、生活苦と無名の中で全10巻を30年かかってやっと完成した』★『どんな虫にも役割と価値があり、無駄な死などない』★『死は終わりではない、より高貴な生への入り口である』

 2013/07/30 / 百歳学入門(79)記事再録 ▼「 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(198)ー『日本敗戦史』㊱『来年は太平洋戦争敗戦から75年目―『日本近代最大の知識人・徳富蘇峰(「百敗院泡沫頑蘇居士」)の語る『なぜ日本は敗れたのか・その原因』②―現在直面している『第二の敗戦』も同じパターン』

    2014/12/03 /『ガラパゴス国家・ …