明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変④』★『連合国を救援するために日本が最大の部隊を派遣、参謀本部の福島安正情報部長が「各国指揮官会議」を仕切って勝利した』
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変④』-
連合軍の足並みの乱れは大きく、進軍は阻止されて混乱が続いた。
義和団事件勃発で、6月には北京の列国公使館が暴徒に包囲された。当時、北京在日公使館では、公使西徳二郎、駐在武官柴五郎中佐以下館員および居留民一同、公使館に籠城して防備を固めるといった非常事態を迎えていた。
北京の各国公使館は暴徒の襲撃を受けていっそう危険となり、日本としては取り敢えず碇泊中の軍艦を派遣し、太沽砲台を制圧して天津に向ったが、水兵等の兵力では弱小で間に合わず、遂に天津の手前で清国軍に阻止されてしまい、いよいよ列国は日本に対し至急出兵を再三要請してくる状況になった。
ドイツでは6月18日、ケッテレル駐清公使遭難が本国に伝わると独皇帝ウィルヘルム二世は激怒しロシアなどと手を組んで今次事変の発端がドイツ公使の殺害事件なので連合軍の総指揮権はドイツにあるとし、ワルデルゼー元帥を総司令官に指名する発表した。各国の要請により、最大兵力を出兵した日本への配慮は全くなく傲慢で一方的な態度だった。
しかし北京の情勢は龍城すでに約1カ月、いっそうの危険状態に追い込まれており、至急援兵をして救助しなければ、みな殺しにされる危険が迫っていた。
そこでイギリスをはじめ各国のやんやのSOSで、日本側も重い腰を上げた。閣議では7月6日にやっと出動命令を決定した。
古くから北京の各国公使館は、相互に利害が入り乱れて熾烈な情報・スパイ合戦を展開している危険な都市なので、陸軍参謀本部は語学の天才で、外交手腕のある第二部長(情報)福島安正少将(この四月に少将に進級)を指揮官として歩兵二個大隊基幹の兵力約二千の混成支隊の準備していた。
福島支隊は現地急行を命ぜられ、ただちに大沽に上陸し、ついに連合軍合軍の主力部隊となって、七月十四日、天津前面の清国軍を撃破、天津に入城した。
続いて、日本の混成一箇師団は七月十八日から大沽に上陸開始、21日
天津に到着した。他方、イギリス、アメリカ両軍の援兵もようやく多少ずつ来着してきたので、いよいよ実際の北京救出戦略を協議する段階となった。
ところで列国間の協議は北京攻略をめぐって断行論と慎重論の二派に分れた。国別でいうと、英米派とドイツ、ロシア、フランス、オーストリア(三国干渉)派である。最大出兵派の日本は『不言実行派」で、各国の態度を見守った。ソールズべリー英外相が『一刻も時間の猶予はない」と断行を主張し、ガゼリー英軍司令官も強硬だったので、次第に断行派が優勢となった。
アメリカ政府ははじめ慎重論に傾いていたが、コンガー駐清公使が一刻を猶予すれば大事去ると電報して、チャフィー将軍に断行を命じた。英米両司令官が断行を主張したので、大軍を派遣して決定権を握っていた日本、ロシア両軍司令官もこれに同意して、八月四日、出発と決定した。
ところで、各国連合軍の統一については、各国はいずれも他国の指揮をいさざよしとしなかった。このため、毎夕一回、司令官会議を開き、多数決をもって全軍の行動を定めることとなった。
師団長山口素臣中将の指導下になった福島少将は現地の実状を次のように報告している。
『日本が最大の兵力を持っているという理由だけで進んで連合指揮権を要求するよりも、むしろ列国の現地指揮官会議を開いて今後の作戦について打ち合わせをするのが良策である』.
この意見に山口師団長も同意、各国の賛同も得て、伝令を四方に派遣して「連合各国軍の指揮官集合」となった。
各国指揮官会議
この会議では英語、ロシア語、ドイツ語、フラン語、中国語の5ヵ国語にもに通じた福島少将が司会役となり、各国指揮官の立場を十分に尊重し、しかも作戦は一刻も早く籠城中の北京城内の各国公使館を急援するという迅速な処置を決定したので、各国指揮官の信頼と協力を得ることに成功した。
特に重厚なる山口第五師団長が日本軍を率いて主攻撃・正面突破の最も困難な戦線を引き受けたので、各国指揮官は日本軍を信頼し、期せずして山口師団長を連合軍総指揮官に推し、進んでその作戦指揮下に入ることを決議したのであった。
この会議で外国軍指揮官が最も驚いたのは、会議司会を担当した福島少将が五ヵ国語を自由に駆使して、まことに鮮やかな会議の進め方をしたことであった。しかも山口師団長と共に両将軍が、終始謙虚であったことには心から尊敬の念が集まったという。
日本リーダーパワー史(775)『 明治史の謎を解く』-『 日英同盟前史ー北清事変(義和団の乱)で見せた日本軍 のモラルの高さ、柴五郎の活躍が『日英同盟』締結の きっかけになった』
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/23511.html
連合軍の総指揮権を主張して、ワルデルゼー元帥を早々と指名発表したドイツはワルデルゼー元帥の到着が9月末になる予定なので『彼は早く、欧州から渡り鳥のように飛んでくるのであろうか」と皮肉くるイギリス軍将校もあった。
ドイツの強引なる態度に比べて、日本軍のナイト(騎士)の精神は大したものだと、好評だったのがこの会議であり、日本軍として最初の列国会議が、このようにスムースに進んだことで北京攻略は成功をおさめることになる。
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