前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本の「戦略思想不在の歴史⑼」『高杉晋作のインテリジェンスと突破力②』●『上海租界地には「犬と中国人は入るべからず」の看板。ここは植民地である』★『内乱を抑えるために、外国の経済的、軍事的援助を受けることは国を滅ぼす』★『大砲を搭載した蒸気軍艦を藩に無断で7万両で購入幕府軍を倒すことに成功した、倒幕の第一歩!』

      2017/12/01

 

1862年(文久2)5月6日に上海についた高杉一行はほぼ2ヵ月間、上海の植民地の状況を調査する。

その時の調査日記が「遊清五録」などで鋭く上海の植民地状況をとらえており、インテティジェンスの高さがうかがえる。

上海の港に近づくと、多くの外国商船や軍艦で埋まって、煙突や帆柱が林立、埠頭には、城郭のような高層建築がずらりとならび、アジアではなくヨーロッパ流の都市が建設されていたのに、一行は度肝を抜かれた。

「上海の実情と奴隷状態の中国人」ー表面はイギリス,フランスの植民地の威容、一歩裏に入ると塵糞の山、黄浦江には動物,人間の死体が浮いている酸鼻極まる」大宅壮一著「炎が流れる②」文芸春秋、1964年刊)

 

「千歳丸」が波止場にくると、中国人が大勢見物にやってきた。日本人が町を歩くと、あとからゾロブロとつきまとった。

中国人は日本人の頭のマゲをみて、これを指さしてわらいこけた。、日本人のほうでも、中国人は「頭に50㎝以上のしっぽをたれ(弁髪)、その姿に腹を抱えて笑いあった。

上海を豪壮だといっても、表通りだけで、裏街に入ると「塵糞(ゴミ・くそ)がうずたかく、足をふむところなし。人またこれを掃除することなし」というありさまであった。

一行がいちばん困ったのは水である。『黄浦江はきたなく濁っていて、イヌ、ウマ、ヒツジなどの死体が浮かんでいるが、これに人間の死体もまじっている。

しかも中国人はこの水をのんでいるのだ。当時、上海にはコレラがはやっていて、日本人のなかからも三人の死者が出た。

死体はムシロに包んで道ばたにすてられていて、炎暑のおりから「臭気鼻をうがつばかり、清国の乱政、これをもって知るべし」と「炎が流れる②」に書いている。

ところで、高杉らは、上海滞在中には精力的にあちこち見学してまわった。

町を歩いていて、西洋人が向こうからやってくると、中国人はたいてい道をゆずっているのを見て、高杉は憤慨した。租界地には柵があり『犬と中国人は入るべからず」の看板があった。ここは、植民地なのである。

「ここは中国の土地であるが、実質はまったくイギリス、フランスの属国である。もっとも、首都北京は遠く離れているから、あるいは中華の美風が残っているのかもしれないが、しかし、これは中国だけの問題ではない。

いまに、日本もこの国の二の舞いをふむことになりそうだから、ゆだんは禁物だ」と高杉は日記に書いた。

上海の城壁は、高さは約五メートル、周囲が約6キロ、ヤグラには清国旗がひるがえり、大砲をそなえつけているが、城門を守っているのは、英仏の軍隊である。そこにいあわせた中国人たちに向かって、高杉と同行したサムライが「中国では、どうして外人に城を守らせているのか」ときくと、みんなだまりこんだ。そのうち、一人が答えた。

「この前、〝長髪賊″(大平天国の乱)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E5%A4%A9%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B9%B1

が攻めこんできたとき、李鴻章https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E9%B4%BB%E7%AB%A0#.E8.AB.B8.E5.A4.96.E5.9B.BD.E3.81.AE.E5.A4.96.E4.BA.A4.E3.81.AB.E5.A5.94.E8.B5.B0

はこないし清国軍は遠くはなれたところにいたので、やむをえず英仏の力を借りたのだ」という。

「それにしても、どうして外人のバッコをおさえないのだ。これでは、かえって清朝が外人におさえられていることになりはしないか」これにはだれも答えるものはなかった。

以下、大宅本によると、別な日に、城内を見物してかえろうとすると、すでに城門がしまっていた。しかし、フランス人たちは日本人と見て、門を開いて通してくれた。

すると、土人(中国人)がこれに便乗して通ろうとしたが、許さなかった。ちょうど、そこへ中国の役人が外からカゴにのってやってきて、フランス人が制止するのもきかず、通りぬけようとしたので、仏人はムチでたたきのめし、ひききがらせた。

これを見みた高杉は「ああ清国の衰弱ここにいたる。嘆ずべきことなり」

と書き留めている。上海で高杉らの見たものは、日本に迫りつつある危機であった。

日本への侵略に危機感を一層募らせた高杉晋作。

高杉の上海滞在は約2ヵ月に及んだが、帰国すると『政治、軍事対策の報告書』を長州藩庁に提出した。

①西欧の近代的な軍隊組織、兵器、訓練を、清国軍や〝太平天国軍〃と比較して、日本軍の方が強いと結論したが、このままでは日本軍といえども、西欧の軍隊に歯がたたないから、兵器ばかりでなく、軍隊組織の大改革の必要である。

②新しい陸軍とともに、強力な海軍を持たねばならぬ。鎖国以後、日本には、幕府や各藩にも海軍がなかったので、そのあいだに世界の海軍は異常な進歩した。

③ 〝長髪賊〃【太平天国の乱】をめぐる内乱の実態と、西欧のアジア侵略との関係を研究し、近い将来に迫りつつある日本の姿をそこに見た。

内乱をおさえるために、外国の経済的、軍事的援助を受けることは、結局、国を滅ぼすことを痛感した。

この「自立,自尊,独立」「他力本願ではなく自力本願」「知合合一の吉田松陰,松下村塾の革命思想」を受け継いだ高杉のインテリジェンス、行動力こそが明治維新への原動力になり、日本の植民地化を防いだ。

凄い!高杉の行動力。帰港した長崎で即実行した。

上海港で、英仏の大砲をのせて蒸気軍艦の威力を目の当たりにした高杉は、外国船との海戦では、これがなければ太刀打ちできないと、藩庁の了解もとらずアメリカ商人から12万3千ドル(日本金にて約7万両)の蒸汽船を独断で買いつけた。

これには藩庁も唖然憮然。どこにそんな金があるのか、とかんかんに怒り高杉に破約を命じた。高杉は「破約せよというなら、腹をきるほかない」と断固拒否した。

この件で高杉と長州藩が大もめの事情を知ったアメリカ商人は驚き、自から破約を申し出たので、この取り引きは破棄されてしまった。

ところが、その後、日本を取り巻く軍事的な緊張は一層高まり、長州藩も横浜の英国商「1番館」を通じ、15万ドル(約8万両)を投じて、300馬力の「壬戎丸」を購入し、幕府軍を倒すことに成功するのである。

高杉のインテリジェンスと決断力、それに大胆不敵な行動力と突破力がなければ、維新の回天はあり得なかった。

                                                                     つづく

 - 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本メルトダウン( 975)―『トランプショックの行方!?』●『日本は孤立没落の危機!トランプ時代の世界はブロック化する』●『トランプ新大統領、中国には脅威と好機 経済的・地政学的には両面の影響がありそうだ』★『「悪夢」「ブレグジットよりひどい」 トランプ氏当選、世界に衝撃』●『トランプ政権で、対シリア政策はどうなるのか』◎『NYタイムズ、トランプ次期大統領の「公正な」報道を約束』◎『トランプ氏、大幅軍拡を宣言 対IS計画は「就任後に軍が策定」』

   日本メルトダウン( 975) —トランプショックの行方!? & …

『オンライン作家講座②』★『知的巨人の百歳学(113)・徳富蘇峰(94歳)ー『生涯現役500冊以上、日本一の思想家、歴史家、ジャーナリストの健康長寿、創作、ウオーキング!』

    2019/11/20  『リーダ …

no image
知的巨人の百歳学(131)-『石油王・出光佐三(95)の国難突破力/最強のリーダーシップ/晩年長寿力』★『『人間尊重』『つとめて困難を歩み、苦労人になれ』『順境にいて悲観し、逆境にいて楽観せよ』★『活眼を開いてしばらく眠っていよ』

2011/07/31記事再録/  日本リーダーパワー史(179) 『国 …

no image
日本リーダーパワー史(80) 日本の最強の経済リーダーベスト10・本田宗一郎の名語録

日本リーダーパワー史(80) 日本の最強の経済リーダーベスト10・本田宗一郎の名 …

no image
知的巨人たちの百歳学(184)再録ー『一億総活躍社会』『超高齢社会日本』のシンボル・植物学者・牧野富太郎(94)植物学者・牧野富太郎 (94)『草を褥(しとね)に木の根を枕 花を恋して五十年』「わしは植物の精だよ」

    2019/08/26 の記事再録&nbsp …

no image
知的巨人たちの百歳学(119)「江崎グリコ創業者・江崎利一(97歳)「健康第一の法」「噛めば噛むほどうまくなる」『健康法に奇策はない』

  知的巨人たちの百歳学(119)  江崎グリコ創業者・江崎利一(97 …

『オンライン講座ー★人生/晩成に輝いた偉人たちの名言①』●『日本一『見事な引き際・伊庭貞剛の晩晴学②『「事業の進歩発達を最も害するものは、青年の過失ではなく、老人の跋扈である。老人は少壮者の邪魔をしないことが一番必要である」』』

  2019/11/20 『リーダーシップの日本近現代史』( …

TOKYO/東京ーサクラ名所めぐり② 千鳥ヶ淵のサクラは満開(4/4)ー皇居を背景に絢爛豪華なお花見散歩?『『外国人観光客で人気沸騰だよ!』

TOKYO/東京ーサクラの名所めぐり② 千鳥ヶ淵のサクラは満開(4/4)ー皇居を …

no image
『百歳学入門』(166)『大成功した人たちが毎朝7:30前にしている7つのこと』★『 1日に3時間超の公演を次々こなす97歳、金子兜太の力の源泉』●『【書評】残酷な延命治療で「死なせてもらえない」高齢者たち』●『「もういい歳だから」が口癖の人ほど、どんどん老け込んでいく訳』●『目が死んでいる、早期リタイアした人々。その意外なデメリットは』●『10人に1人が100歳以上、イタリア「長寿村」の秘密 研究』●『ピンピンコロリの長野県、長寿日本一の秘密』●『なぜ、世界共通で「男性よりも女性の方が長生き」なのか?』

  『百歳学入門』(166)   大成功した人たちが毎朝7:30前にし …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(48)』★『地球環境破壊(SDGs)の足尾鉱毒事件と戦った公害反対の先駆者・田中正造①』★『鉱毒で何の罪もない人が毒のために殺され、その救済を訴えると、凶徒という名で牢屋へほう込まれる。政府は人民に軍を起こせと言うのか。』

2021/08/16 世界が尊敬した日本人(54)記事再録 (古河市兵衛)こんな …