「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本の新聞が伝えた日英同盟」③「協約は純然たる攻守同盟」-と加藤高明〔明治35年2月12日 時事新報〕★『常に『光栄ある孤立』を誇っていた大英帝国が、国を開きてわずかに四十年、欧米人の眼よりすれば小弱国、半開化の日本と一蓮托生の協約(日英同盟)を結んだことは、日清戦争、三国干渉、北清事変を通して日本の真価を認めたため』
2016/12/05
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-
「日本の新聞が伝えた日英同盟」③
「協約は純然たる攻守同盟」-と加藤高明〔明治35年2月12日 時事新報〕
①常に『光栄ある孤立』を誇っていた大英帝国が、国を開きてわずかに四十年、欧米人の眼よりすれば小弱国、半開化の日本と一蓮托生の協約(日英同盟)を結んだことは、日清戦争、三国干渉、北清事変を通して日本の真価を認めたためである。
②この同盟は決して一、二の邦国を敵として締結せしにあらずして、条文に明記せるごとく、清韓両国の独立と領土保全との外、他に意志なきものである。
➂我が国民たるものよろしく島人根性を脱却して、盛んに富国強兵の術を講じ、財政をして今日のごとく窮乏せしめず、大帝国と和親を結ぶ結果、国費の膨脹もまたやむを得ざる事なれば、国民たるものまた租税の増加をば今より覚悟すべきである。
日英協約に就いて(加藤高明氏談) 本日、貴衆両議院に於いて、桂総理及び小村外務両大臣のロより発表せられたる日英同盟協約は、実に完全無欠、一点の申し分なく、我が国の威望を高め、東洋平和を維持する上より、大いに欣喜措くあたわざることなるが、
まずこの協約の性質より論ぜば、純然たる攻守同盟にして、かの露仏同盟と云い、独、墺太利(オーストリア)、伊の三国同盟と云い、欧洲政治舞台の大立物となり、中心点とするものと、更に異なる処なし。
ただ、かの二者はその範囲を限定せず、これは東洋殊に清韓両国のみに区画せられたるの少差あるのみ。この協約の結果、英国の享受すべき利益の夥多なるは云うまでもなく、我が国の報償もまた実に非常なるものあるべし。
しこうしてもし協約の区域を限らざらんか、太陽の没せし事なき多大の領地を支配する英国の事なれば、勢い各列国と衝突馳駆する機会多く、従って時に干戈(かんか、戦い)を交えざることなしとも云うべからず。
或いは南阿(南アフリカ)に、北米に、或いは欧洲大陸に、英国が出師戦闘(出兵、戦争)をなすごとに、我が国が送兵するとせば、いかに財政余裕あり軍備充実するにせよ、ついに一国を挙げて破産せざるを得ず。
しかるに単に我が国の利害に最も切要なる清緯両国に対し、日英互いに手を連ぬるに到りしは、実に莫大なる外交上の成功と評せざるを得ず。
そもそも英国は、予の記憶する処によれば、その外交史上、かつて葡萄牙(ポルトガル)とこの協約に.類似の条約を締結せし事ありしも、一世紀以前の事にて、
その後ナポレオン戦争、クリミヤ戦争に際し、他国と同盟をなさざりしにはあらざりしも、ただ戦時に限りたるものにして、
平和克復後まで持続することなく、常に『光栄ある孤立』を以って旗織となせしに、たとい急速の進歩、文物の発達著大なりとは云え、国を開きてわずかに四十年、欧米人の眼よりすれば小弱国、半開化と目せらるるの我が国と、かくのごとく一蓮托生の協約をなして憚らざるに到るはなんぞや。
日清戦争、条約改正後、我が国の名声の発揚と同時に、真価も公示せられ、は進取開国の気象に富み、国は拡張せる軍備を以って強大にせられ、殊に常に局に外務に当るの大臣及び駐外公使のごときも、しし国威の宣揚に勉めもかば、日英同盟の暗潮は両国識者の胸中みなぎり、
殊に一昨年、清国に於いて義和団匪以来、清国の独立と領土の保全とは両国の政策に於いて期せずして会し、その後幾多の樽俎(そんそ)折衝上、或いは協議の結果によるものあり、
或いはなんら交渉を及ぼさざる事あるもその歩趨同一、ほとんどなんらかの黙契、日英両国間に伏在するにあらざるかと、他列国をして嫉視せもむるに到れり。
予輩のごときも、久しく英国に駐在したれば、同国の事情には比較的精通し、
かつは同国知名の士とも深交あれば、かつて日英同盟を論ぜも事なきも、
世人よりは該論者のごとく目せられ、英国崇拝熱に襲われたるもの上して、随分非難を蒙りし事ありしといえども、東洋の利益を維持する点より、米と云い、独、露、仏と云い、皆通商上末だ以って大いに論ずるに足らず。
ただ英国のみは、貿易上、統計表より視るも、実にこれら各国を合したるものと同じく、我が国と共に東洋の天地の和平すると紛乱せるとは、その利害関係上切要なるものなれば、
孤立独行せば兎も角、もしも提携を要せば、英国を措いて他になしと信じ、野に在ると朝に在るとを問わず、一日も懐いに放れたる事なかりしに、
今この協約に接す、実に予輩生平の希望を達するものにもして、この進行及び締結に直接関係な巷予輩は、敢えて他人の功を横奪せんとするの野心も存せずといえども、日英両国の機運をしてここに到らしめしてとに付いては、微衷与って力ありしと信じ、また世人もこれを以って敢えて僭越なりとせざるべし。
世間或いは説をなすものありて、盛者必衰の理に漏れず、英国も最近また昔日の勢力なく、国運日々に非なりと云い、南阿戦争のためにいっそうの非運を招きしなど云うものあるも、これは同国の実相を知らざるの論にして、一盛一衰時になきにしもあらざれども、英国が現時世界の覇たるは争うべからず。
いわんや東洋に於いては、その通商と云い、海軍と云い、いずれも重大なる勢力を支持し、他の列国のいずれも、これと比肩するものなし。
かくのごとく優勢を有する英国と、堂々たる我が帝国と同盟する事なれば、実に向かうところ敵なく、まさに猛虎に羽翼を附したるの観あり。
しかりといえども、この同盟たるや、決して一、二の邦国を敵として締結せしにあらずして、条文に明記せるごとく、清韓両国の独立と領土保全との外、他に意志なきものあれば、独立と保全とに危害を与えざるものは、友愛国として、与親国として、従来のごとく親愛の交をなさざるべからず。
一強国と同盟せば、他列国は敵視せざるべからざるの道理は、寸毫もあらざるなり。
いわんや今日に於いては、独、仏の二国は云うに及ばず、露国もまた清韓保全の軌道を歩行しっつあれば、これら各強国の大皮寛懐なる、必ずやこの協約に対し悪感情を抱かずして、賛成の意を表するは、予輩の確信する処なり。
前述せるごとく、富強天下に冠たる英国と、最近十年前までは強国の仲間入りをなさざる我が帝国と、一堂に担手するに到りしは、まさに我が真価の彼に識認せられしとは云え、この事ありしを以ってあたかも鬼の首にても取りたるごとく、
我が事成れりなど思惟し、枕を高くし、安眠を貪るがごとき不心得を抱くものあらんか、この協約はかえって我が国に不利を来たすものなり。
もしもかかる薄志弱行の国民ならんには、同盟の英国もついには厭嫌の情を惹き起し、条文定める所の五箇年の年期も、或いは短縮せらるるやも計り難し。
我が国民たるもの宜しく鳥人根性を脱却して、盛んに富国強兵の術を講じ、財政をして今日のごとく窮乏せしめず、大帝国と和親を結ぶの結果、国費の膨脹もまたやむを得ざる事なれば、国民たるものまた租税の増加をば今より覚悟して、他日増税案出ずるも、これがため喧騒ごうごうたるがごときことなきよう、切に希望する処なり。
終わりに臨み、我が帝国に取り前代未聞にして、東洋平和の確保たるこの協約を締結するに至りしは、ひとえに我が天皇陛下の聡明と稜威とによるものなるも、また桂総理、小村外務両大臣の輔弼の功や実に多とすべし。
しかれども直接英国に在りて盤根錯節に当り、屈せず撓まず、快腕と熱誠とを以ってこの大事を遂行して、些少も遺憾なからしめし駐英全権公使林董君の功勲や偉大なるものにして、我が国民たるもの宜しく感謝すべき価値あり。
予輩の外務省に在りし時、この事件に関し多少与る所なきにあらざりしも、ただ在りたりとせば、事の萌芽に過ぎざるのみ云々。
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