『Z世代のために<日本史上最大の英雄・西郷隆盛の即断・即決のリーダーシップ>の研究⑰』★『『山県有朋が恐る恐る相談すると、西郷は言下に「至極、結構なこと」と了解し、断固実行した」(徳富蘇峰『近世日本国民史』(明治の三傑))』
2012-03-24 /日本リーダーパワー史(246)記事再録
前坂俊之(ジャーナリスト)
今(2012年3月)の政治の混乱、混迷、惨状と政治リーダの不在、永田町の政治崩壊と物事が進まない亡国の惨状をみていると、明治維新を成し遂げた明治のリーダーの偉大さを痛感する。
明治維新の第一革命は徳川幕府の倒幕であり、第2ラウンドは廃藩置県である。数百年の因襲が続いた徳川250年でおらが藩に安住していた藩主、武士のわが藩をぶち壊し、新しく県をおいて中央集権的な国家に国内政治体制を180度変える大手術であり、倒幕以上に難しい大改革である。
なぜなら、維新の原動力の薩摩、長州、土佐にとっても下級武士の志士たちは自らの藩主、武士団らの身内を敵に回すことになるからである。現在の道州制の実施、行財政改革、地方自治の拡大、中央官庁統合撤廃再編がいかに難しく、実行できないかを考えれば良くわかる。
何度も、行財政改革は試みられたものの、いつも既得権、現体制の強烈な抵抗にあって、成功していない。余程の腕力のある、剛腕のリーダーで有無をいわせず実行するしかないが、そこまでの強力なリーダーパワーのある政治家は今の日本にはいない。それが民主党の迷走にも表れているし、鳩山、小沢、菅、野田の歴代リ―ダ―や自民党の「政治学芸会の悲劇」となるのである。
ここでは「廃藩置県」を成功させてスーパーリーダーシップの西郷隆盛の決断と実行についてみていく。
<徳富蘇峰『近世日本国民史』(明治の三傑)」(昭和36年刊)より>
西郷隆盛にかんする考察
世間では西郷といえば、大酒を飲み、巨体で肉を食らうあたかも『水滸伝』の人物ように考えている者もあるが、事実は決してそうではない。上野公園にそびえたつ西郷さんの銅像は、野人西郷を象徴したようなものだが、西郷本人にとってはありがた迷惑であろう。
西郷は若くして薩摩藩の小役人となったので地方の行政には最も通じている。また帳簿の記入、往復の文書等にも、多年の修練を経ている、りっぱなサラリーマンである。
明治の維新前後の志士達の手紙は、いずれもりっぱなものだが、とりわけ立派なるものは西郷の書簡で、その文体といい、文字といい、用紙,用墨といい実に整然たるものである。西郷その人はきちょうめんな人であり、決して粗枝大葉の人ではない。ただ彼の容貌は魁偉で、当時の横綱・陣幕久五郎と相対してもそん色なく、眼球は特別に大にして眼晴に光を放つものあり、一見してこの人は豪傑であると知ることができたから、このような大人物は小さなことには頓着しないと周りからは受け取られた。しかし、実際はそうではなく、相当、細かいことまで気がついた。
ただ、彼は少才小子風にはこせこせと立ち回らず、その運動は狐狸(こり)のように敏しょうではなく、あたかも巨象のごとく、したがって遠方から見た人々は、西郷のを紙芝居(現在のテレビ)の豪傑視(英雄)したものであろう。
彼の特質からいえば、彼は几帳面であり、また謹慎であり、何事もいやしくもしなかった。かって勝海舟は私(徳富蘇峰)に語って、「西郷と大阪ではじめて面会した時は、西郷は何やら大藩の留守居役とも見受けられる風采で、いわば世なれたる立派な当時の外交官であった」と言った。
彼は決して衣はすねに至り・袖腕に至るの隼人壮士の風采を当時の海軍奉行である勝安房守の席上に持ち込むようなことはしなかった。
辺幅を修飾することについては西郷は大久保ほど丹念ではなかったが、しかしよくその時・処・位をわきまえ粗頭・乱服で公の席に罷り出るがごときことはなかった。
彼の手紙の文句を見れば、あたかも彼その人を見るがごとき心地がする。よく情を尽くし、理を尽くし、しかも慇懃(いんぎん)・丁寧(ていねい)を尽くしている。時としては他を非難し、攻撃したことがあるが、それでもちゃんとその中には一種のユーモアを含めて、その攻撃・非難の毒気を去っている。
☆★不言実行のリーダーパワーの典型↓
◎「山県有朋が恐る恐る相談すると、西郷は言下に「至極、結構なこと」
と了解し、断固実行した」
本来、山県有朋にしろ、伊藤博文にしろ、容易に人をほめない癖がある。私は相当、長き期間、山県と接近する機会を得た。しかし、彼はその先輩にしろ、同輩にしろ、後輩にしろ、容易に他を推奨するがごとき文句を吐かなかった。ただ高杉晋作と西郷隆盛については、歎美(たんび)の情、禁じがたきものありと見えて,称賛の辞を惜しまなかった。
私はかって吉田松陰が門人中の双璧であると、高杉晋作ともに久坂玄瑞について山県に問うたが、山県は自己の意見を吐かずして、「高杉は久坂を評して記室(学問)の才であると言うた」と言った。
すなわち久坂は文筆に堪能で、秘書官あるということである。すなわち山県は、高杉の言をかりて、自らの言わんと欲するところを言うたものとして、予は受け取らざるを得なかった。
山県が最も西郷に敬服したるのは、明治四年七月の廃藩置県の一挙である。この議論は長州人の何びとはじめて発言したるかは知らないが、とにかく長州藩からでてきたものであって、その主動者はもちろん長州の諸有志である。
私はかつて井上馨から親し逸話を聞いた。ある日、鳥井小弥太、野村靖が井上を訪い来りて「今日は大事を君に図らんがために来た。君の返答次第では君の首をもらわねばならぬ覚悟をした」と言うたから、井上は答えていった。
「君らしばらく黙って、予が言うところを開け、思うにそれは廃藩置県の問題であろう」と言うたところ、両人手を打って、「全くその通りじゃ」と言う。井上は「そのことならば、予すでに考えておる、何ぞ君らの説法を待たんや」と言うて、大笑いして別れたということである。
こうして、長人(山口県人)の間に沸き起こってきた廃藩置県の問題につき、これを西郷に図るに当たっては、長人として西郷と最も親善なのは山県であるから、山県が特使として西郷に使いしたものであろう。
山県いわく、「当時、西郷は蠣殻町の邸にいたが、私が彼を訪ねた際は、何やら他にも取り込み中であったようだ。茶を喫し、待つこと少時には薩摩国産のいわゆるカルカンなるものが出ていた。
かくて西郷と相まみえたが、山県は言った。「今日は重要問題を折り入って御相談にまかり出たものである。
何やら御取り込みのように察せられるが、改めて罷り出ても差支えない』というや、西郷はおもむろに、『いやそれには及ばぬ。どうかお話し下され』というとであるから、予は廃藩置県の問題にについて一通り話したところ、西郷は一考する風もなく、即座に、『それは結構なことである」という。
予は余りに意表の返事であるから、多分、予の語るところを誤解したるか、あるいは不徹底あるかと思い、さらに前言をくりかえしたところ、西郷はまた、『至極結構』と言うから、今更、その上、談話を続ける必要もなく、『それではよろしく』ということで相別れた。予も今更ながら西郷の気宇の大なるには感心した」というようなことを語った。
西郷は当時の朝官が、維新政府創立の精神を、ややもすれば官規を紊乱し、しかも、旧主島津久光のごときは、西郷らが久光を無視して、勝手に廃藩置県を専行し、革新の政治を励行したことをきびしくとがめて、内外での不愉快なことが続いたため、ここにおいて西郷はむしろ一農民となって、北海道の開拓に従事しようと思慮しっつあったが、
その模様を見て板垣は正面より西郷に向かって維新当時の初心を語り、相ともにこの際、万難を排して、その初心を貫徹すべきこと語るや、西郷はおもむろにこれを聞き終わり、涙を流して、「板垣さんごもっともである。その通りにやりましょう」と答えたということである。
関連記事
-
-
『オンライン入門講座/シルバーYou tuber(前坂俊之チャンネル)になる方法』★『ネット動画の時代に乗り遅れる既存メディアー 情報をあまねく広げる「個人」の出現で社会が変わる』(2012年でのインタビュー)記事全文再録)
取材場所:日本記者クラブ (インタビューの聞き手:沖中幸太郎氏) …
-
-
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』ー『トランプ米大統領とホワイトハウスの内情を暴く『Fire and Fury』は全米でベストセラー1位に』★『ほら吹き、ナルシズム、攻撃的性格のトランプ氏の「精神状態」を専門家70人から「認知症検査」を求める声』
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 ドナルド・トランプ米大統領とホワイトハウ …
-
-
『巣ごもり動画で金閣寺を一挙公開(60分)』これを見るだけで観光には行かないでね』★『外国人観光客で超人気の春の京都・金閣寺の全光景4K撮影(2019/3/30)★『The Japanese Golden Templeー外国人観光客に圧倒的・人気ナンバー1の金閣寺へ向かう(2014/04/01)』
➀外国人観光客で超人気の春の京都・金閣寺の全光景4K撮影➀(201 …
-
-
百歳学入門(193)―『発明王・エジソン(84歳)ーアメリカ史上最多の1913の特許をチームワークで達成したオルガナイザーの人生訓10か条』
百歳学入門(193) 発明王・エジソンーアメリカ史上最多の1913の特許をチーム …
-
-
『2012/2021の稲村ヶ崎サーフィン・モンスターウエーブ動画特集①』★『Oct/ 19,/2012] Cool Kamakura!/ド迫力!今年一番.ー台風21号のクラッシュウエーブ』
☆稲村ヶ崎モンスターウエーブ・2014・10/12午前8時すぎ、つ …
-
-
『Z世代のための百歳学入門』★『昭和戦後の高度経済成長から世界第2位の経大国へ復活させたプロデューサー「電力の鬼」・松永安左衛門(95歳)の長寿10ヵ条①』★『80歳の青年もおれば、20歳の老人もおる、年齢など気にするな』
2015/08/13 晩年長寿の知的巨人たちの百歳学(111)記事転 …
-
-
『 オンライン動画<2012年5月7日・連休!鎌倉カヤック・ハッピー日記>『沈黙の鎌倉海で―「釣れなければよし、生物を殺生するなよ、地球環境破壊の外道たちの未来を考える』★『2021年連休、地球温暖化で鎌倉海の生物は絶滅中だよ,ホントの動画❣・・・』
2012/05/07 <鎌倉カ …
-
-
『Z世代のための百歳学入門』(229)-『 ルノアールの愛弟子の洋画家・梅原龍三郎(97)の人生訓と遺書』★『「一流のものを見よ、旨いものを食べよ、生き生きと仕事をせよ」』★『「葬式無用、弔問、供物いずれも固辞。生者は死者のために煩わされるべからず』
2018/05/27 『百歳学入門』(229 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(153)再録/『昭和戦前の大アジア主義団体/玄洋社総帥・頭山満を研究せずして日本の近代史のナゾは解けないよ』の日本リーダーパワー史(71) 『インド独立運動を助けた頭山満 運動翁<ジャパン・タイムス(頭山翁号特集記事)>
日本リーダーパワー史(71) 辛亥革命百年⑫インド独立を助けた頭山満   …
-
-
百歳学入門(45) 『日本長寿健康参考文献決定版90歳代、100歳越えの歴史有名人の関連本一覧』
百歳学入門(45) 『日本長寿健康参考文献決定版 90歳代、10 …
- PREV
- 『Z世代のために<日本史上最大の英雄・西郷隆盛の<敬天愛人>思想を玄洋社総帥・頭山満が語る(「言志録より」>)⑯』★『坂本龍馬は、その印象を「西郷は馬鹿である。大馬鹿である。小さくたたけば小さく鳴り、大きくたたけば大きく鳴る』★『日本史上、最大の行政改革の「廃藩置県」(明治4年)決定では「決断の一字あるのみ、反対は拙者が引き受ける」とこの一言で決まった。』
- NEXT
- 『Z世代への<日本史難問クイズ?>『リンカーン米大統領が奴隷の解放宣言をしたのは1862年(文久2年)ですが、日本で中国人奴隷(苦力)を解放したのは一体誰でしょうか⑲』★『西郷隆盛(参議・実質総理大臣)です。横浜港に入港した『マリア・ルース号事件』(清国人苦力=奴隷230人をペルーに運ぶ途中)で人権尊重の観点から外務卿・副島種臣に命じて停船を指示・船長を告発させ、裁判後に清国に送り替えした』★『「国の本来の政治は軍備の不備を恐れず、一国の運命をかけても、正論を以てこれを貫くべし」』
