前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「オンライン・日本史決定的瞬間講座①」★「日本史最大の国難をわずか4ヵ月で解決した救国のスーパートップリーダーとは誰でしょうか?」★『答えは・・◎〇●〇◎ですよ、知ってる人は誰もいない!よ」

      2021/09/29

 

 昭和天皇の「聖断」を演出した鈴木貫太郎首相の「玄黙」戦略とは何か

 前坂俊之(ジャーナリスト)

 

1936年(昭和11)年2月25日夜。親日派のジョセフ・グルー米国大使は斎藤実内大臣(前首相)と鈴木貫太郎侍従長夫妻を米大使館に招待して晩餐会を開きました。それまでトーキーを見たことがないという斉藤や鈴木のために、グルー大使は入念に準備して「海軍士官と家出したおてんば娘が恋に落ちるという米映画『浮かれ姫君』(1時間(1935年制作)を上映しました。

4人は目をまるくして熱中して見いった。いつもは午後8時ごろには帰宅する斎藤は、この日はトーキー映画を十分堪能したのか、会話に花を咲かせ午後11時半ごろようやく家路についた。その寝入りばなを、翌日午前4時ごろ陸軍反乱部隊に襲撃された2・26事件の発生です。

自邸のベッドの上で斎藤は反乱軍兵士から軽機関銃による47発の銃弾を浴びさらに日本刀によって惨殺されたのです。岡田啓介首相の私邸も同時に襲撃され、義弟で秘書官の松尾伝蔵が身代わりで殺されましたが、岡田首相は奇跡的に難を逃れ助かりました。斎藤はグルー大使が一番尊敬していた友人で、グルー日記には「われわれはどれほど彼を愛し、彼を尊敬したことだったろう。彼の顔からは愛想のいい微笑が消えたことはない」と「グルー日記」に書いています。

翌朝、グルー大使は戒厳令をものともせず、敢然と斉藤邸を弔問した。けがをした斎藤夫人が布をとった死顔を見て、グルーは昨夜の笑顔を思い浮かべて涙にくれた。グルー大使は鈴木邸宅をも相次いで見舞いに訪れ、救援に動く中で斉藤夫人、斎藤たか夫人たちの献身的な行動に武士の妻のサムライ魂と夫婦愛に深く感動し、より一層の日本理解を深めた。

また同時刻に、鈴木貫太郎侍従長官邸も反乱軍部隊に襲われました。「兵隊が乱入して来ました」とのお手伝いの悲鳴に、鈴木は納戸に日本刀を取りに入ったが、見つからない、探している内に兵隊の軍靴の音が近づいてきた。忠臣蔵で吉良上野介が納屋に隠れていて見つかり武士の恥辱を受けたことを思い出し、すぐさま八畳間も部屋に引きかえした。すると、2,30人の銃剣をつけた兵士たちがドヤドヤと入ってきて鈴木を取り囲んだ。鈴木は素手のまま先頭にいた反乱軍伍長と対峙しました。

鈴木は「静かになきい。理由を話し給え」と三度聞いたが、返事がない。無言の対決が十数秒続いた。伍長が「時間がありませんから射ちます」とピストルを構えた。「それでは撃ちなさい」―鈴木が平然と答えると、四発の銃弾を発射した。血しぶきを上げて、横転した鈴木に対して「とどめを……」と兵士の一人が叫び銃口を頚部に押しあてた。

 

その瞬間、「それだけはやめて下さい!」―4mほど離れて座り、一部始終を見ていた「たか夫人」が毅然と言い放った。指揮していた安藤輝三大尉はその一喝!に驚き「もはや生き返るまい」と思ったのか中止を命令し、血だらけで横たわる鈴木に、「閣下に敬礼!」と全員で捧げ銃をして引上げました。部屋はかけつけた医師がすべって転ぶほどの血の海になり、鈴木の心臓、脈も一時的に止まっていたが、奇跡的に一命だけは取り留めました。夫人の一言で九死に一生を得たわけですが、この時、いくつもの偶然が重なっています。

もし、納屋で日本刀みつかり、鈴木が応戦しておれば斎藤実、渡辺 錠太郎(陸軍大将、教育総監)同様に機関銃で惨殺されていたことでしょう。4発の銃弾はいずれも心臓を外れた。輸血協会の医師が脈の切れる寸前に車でかけつけてきた。赤坂見付の叛乱軍の前哨線でストップさせられたが、その歩哨が偶然にも医師の患者であったので、車を通してくれ、何とかぎりぎりで間に合ったのだ。しかも、輸血の青年の血液型も鈴木と同じO型で、奇跡の9連発で、まさに九死に一生を得たとはこのことです。

歴史に「if」は禁物ですが、もし、この時、鈴木が亡くなっておれば、昭和天皇の聖断による終戦はなかったでしょうし、まるで違った昭和戦後史になっていたことはだけは間違いありません。

  • 鈴木貫太郎首相(77歳)が登場、わずか4ヵ月で終戦を実現

1945年(昭和20)に入り日本の敗色はすでに決定的となってきた。3月10日には東京大空襲があり、罹災者は100万人を突破。沖縄戦は4月1日から米軍上陸作戦が展開され、戦死者は一般住民約9万4千人、日本軍9万4千人、米軍1万3千人の計約20万人が犠牲になりました。

4月7日、沖縄戦に特攻中の戦艦大和が撃沈され乗組員死者約3千余人。4月7日には8ヵ月続いた小磯国昭内閣がつぶれました。「後継内閣」として東條英機内閣を倒した岡田啓介元首相は強力に鈴木貫太郎を推薦したのです。この大国難を突破できるのは「第2の西郷隆盛」「不死身の貫太郎」とうたわれた鈴木以外にはいないことを知っていたのです。

4月7日、鈴木貫太郎内閣が誕生します。昭和天皇は信頼する鈴木枢密院議長を呼び、「総理就任を頼む、他にはいない。」というと、鈴木は「自分は一介の武人として、政界に何の交渉もなく、政見も持っておりません。政治に関与しないという明治天皇の勅諭を生涯守ってきました。どうか拝辞をお許しください」と固辞しました。

すると昭和天皇はニッコリ笑い、「そう申すであろうことは、わかっておった。しかしこの危急の時にあたって、今の世の中に他に人はいない。政治にうとくてもよい、耳が遠くてもよい。どうか曲げてでも承知してもらいたい」と異例の懇願をしたのです。77歳という高齢の鈴木は、国家存亡の危機に当たって天皇の真意(終戦)を「阿吽の呼吸」でくみ取り承諾します。日本憲政史上、最高齢の77歳で鈴木貫太郎内閣が誕生します。ちなみに、1932年(昭和7)の5・15事件で暗殺された犬養毅首相は76歳で首相になっています。

つづく

前坂俊之著「トランプ対習近平:貿易・テクノ・5G戦争(22世紀) Kindle版」

 

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
新刊発売『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・明石元二郎大佐』(前坂俊之著、新人物往来社、1600円)

  『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・ 明石元二郎大佐』(前 …

no image
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』-『2018年、米朝戦争はあるのか』⑥『「米朝戦争」の可能性は、なくなっていないこれから考えられる2つのシナリオ』★『 焦点:消えぬ米朝戦争懸念、トランプ政権にくすぶる先制攻撃論』★『元自衛艦隊司令官が警告「米朝戦争、空爆はこの時期に実行される」そのとき、在韓邦人は…』★『「米朝開戦の可能性は100%」元外交官がこう断言する理由金正恩政権「滅亡の日」は近いのかも…』

『2018年、米朝戦争はあるのか』⑥ 「米朝戦争」の可能性は、なくなっていないこ …

★『Z世代への遺言・日本ベストリーダーパワー史(3)ライオン宰相・浜口雄幸物語③』★『浜口雄幸内閣のロンドン海軍軍縮条約批准【1930年)に対して、海軍艦隊派が猛反対し統帥権干犯問題を起こし、軍部の政治介入を招き、 政党政治に終止符をうち、軍部専制を許す引き金となった』』

   2015/12/17  『昭和史のキーワード …

no image
『明治裏面史』 ★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー, リスク管理 ,インテリジェンス㊷『児玉源太郎、福島安正の防衛戦略』★『日露戦争の本質はロシアの清国、朝鮮、韓国、日本への侵略戦争に対する 日本の自衛戦争であり、全世界の被植民地の民族に希望を与えた』

『明治裏面史』   ★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,  リ …

no image
速報(301)『世界中から心配の4号機がピサの斜塔となる』『5月18日(4号機の)まだ壊れてない燃料を即移動せよ(小出裕章)』

速報(301)『日本のメルトダウン』 ●『世界中から心配されている4号機がピサの …

no image
速報(145)『日本のメルトダウン』☆『9/16福島原発の半年後の真実に迫る①②-小倉志郎、後藤政志氏に聞く』

速報(145)『日本のメルトダウン』   ☆『9/16福島原発の半年後 …

no image
 世界、日本メルトダウン(1035)–『朝鮮半島チキンレースの行方はどうなる』★『連日、報道されている北朝鮮情勢緊迫について、北朝鮮、米国、関係各国の情報操作、プロパガンダ、ニセニュースが横行中』●『戦争の最初の犠牲者は真実である』●『空母の朝鮮半島派遣でトランプ政権が釈明 「今は朝鮮半島に向け航行中」』★『北朝鮮のミサイル実験失敗、米軍のサイバー攻撃の仕業か』

 世界、日本メルトダウン(1035)– 『朝鮮半島チキンレースの行方 …

no image
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変⑦』-服部宇之吉著『北京龍城日記』(大正15年)より③」★『中華思想対西欧キリスト教思想の文明の衝突』★『自由、平等、人権、博愛精神の西欧思想が中国人には全く理解できずパーセプションギャップ(認識ギャップ)、コミュニケーションギャップが疑惑を増幅し戦争になった』

  明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変⑦』 支那(中国)人の脳中に …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑱』『米NYタイムズ、162年目の大改革』 ◎『スマホは人間をばかにする?』 

  『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑱』   &nb …

no image
『オンライン鈴木大拙講話』★「東西思想の「架け橋」となった鈴木大拙(95歳)―『★『禅は「不立文字」(文字では伝えることができない)心的現象』★『「切腹、自刃、自殺、特攻精神は、単なる感傷性の行動に過ぎない。もつと合理的に物事を考へなければならぬ」

★『死を恐れるのは仕事を持たないからだ。ライフワークに没頭し続ければ死など考える …