『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『2021年東京五輪は是が非でも開催、成功させて、日本のデジタル底力を発揮し世界の未来を明るくしよう』★『1964年東京オリンピックを成功させた田中角栄のリーダーシップと突破力』(7月1日)
1964年東京オリンピックと田中角栄
前坂 俊之(ジャーナリスト)
6月10日、来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックについて、大会組織委員会の森会長は「中止の議論は全くない。選手や観客などに安全・安心な環境を提供することを最優先課題とし、簡素な大会にして準備を進めている」と発表した。
IOCとの協議で簡素にする項目は①国立競技場や各競技場のコロナウイルス対策を想定して観客数、観客席数を大幅に削減する②チケットの販売の取りやめる➂開、閉会式のコンセプトを見直し規模を縮小④選手村やIOC委員や国際競技団体の役員など参加数、サービスの見直すーなどなど複雑、多岐にわたりる難題、課題が山積している。
観客、選手の安全を考慮して、無観客の競技も検討しているが、それでも全体の大会経費は1兆3500億円に増えるという。
東京五輪の準備状況を監督するIOCのジョン・コーツ調整委員長は5月28日、今年10月が開催可否を判断する重要な時期になると、表明した。これに対し、日本組織委は5月28日、10月期限を否定し、「今年の秋から年末にかけて開催へ向けてのロードマップを具体化する」と述べた。
それから1ヵ月。6月29日のWHOの発表では世界中の新型コロナウイルスの感染者数は1日、15万人規模で増え続けており累計で1千万人を突破、パンデミックの第2波が襲来しており、今後はさらに深刻化するとみている。感染者数の最も多い米国のハーバード大学国際保健研究所(GHI)所長や専門家たちは「ワクチン開発には1年以上はかかる」と口をそろえる。そうだとすれば21年夏の東京開催はいよいよ難しくなりつつある。
「中止は何とか避けたい」日本側にとっては、これからの半年間は世界各「パンデミック」に一喜一憂する艱難辛苦の時間が続きそうだ。安倍首相、小池都知事、森会長らトップリーダーたちのギリギリの決断力、国際交渉力が試される時期が近づいてきたといえる。
そんなことを考えながら、半世紀前の1964(昭和39)年の東京オリンピック開催(10月10日-24日)とその成功について、当時の政治家たちはどう行動し、リーダーシップを発揮したのかーを調べてみた。
当時は第3次池田内閣で大蔵大臣は田中角栄(46歳)だった。池田内閣は「所得倍増論」をスロガンにオリンピック開催直前の10月1日に「東海道新幹線」(東京―大阪間3時間)を開通させた。戦後わずか18年で廃墟から復興し「経済大国」に驀進する新幹線がそのシンボルとなった。
9月7日にはアジアで最初の国際通貨基金(IMF)、世界銀行合同総会が東京で開催された。
同会は世界中の財務大臣・中央銀行総裁、金融関係者、報道関係者などが一堂に会する。日本は戦後復興と経済成長を世界にアピールするためこの総会を五輪と並ぶ「ひのき舞台」と位置づけていた。池田勇人首相は開会式で「日本経済が昭和戦前の80年間で実現できなかったことを、戦後の20年足らずの間に実現した」と元気にあいさつした。
IMF・世界銀行東京総会では、田中角栄大蔵大臣は来日したジョージ・デビッド・ウッズ総裁を羽田空港で出迎えて、同乗し銀座までの八分間にわたる車中で、「あなたはとても顔色もよく御元気になられたようだ。これなら大丈夫、今後ますます活躍できますよ」とあいさつ、
ウッズ総裁が顔をほころばせたところを、すかさず五千万ドル(185億円)の融資の増額を切りだし、1兆円に上るオリンピック投資、五年後の東京の人口予想から、都市改造計画まで、田中式話術でまくしたてる「先手必勝の根回し作戦」をとった。会談前にいきなり増額を切り出されたのに総裁は驚いて、「今すぐには返事はできない」と、即答を渋った。
角さん流のスピードネゴシエ―ションの勝利
すると、田中は押しの一手で「実は九月には自民党の遊説があるので、ぜひ帰国までに回答してほしい。あなたのお土産は日本にいるうちに置いていく方が効果的ですよ」と、やんわと切り返し、これがみごとに成功した。正式の会談ではあっさり増額がを認められたのだ。角さん流のスピードネゴシエ―ションの勝利であった。
二人のやり取りを取材した経済評論家の三鬼陽之助は「まさに、名優の名セリフである。一高東大出身の秀才大臣には絶対見いだされない、ニュアンスがあふれ出るものを感じさせた一幕だった」と『先輩経営者の闘魂訓―覇者に興亡ありて』(廣済堂、1990年刊)で書いている。
これ以前にも、田中蔵相はワシントンのIFM総会に出席して、にわか覚えの英語でスピーチをやってのけた。田中は「オレの英語はわかったかときいたら、みなどうにか通じたらしい。ところが議長が、各国代表に向って、『質問がありませんか』といいだした。英語で質問が飛び出してきたら大変だと田中はドキドキしていたが、さいわいに質問はなかった」と大笑いした」という。
また、同総会の懇親パーティーで田中は列国代表を前に堂々と「吹けば飛ぶよな将棋の駒を…笑えばわらえ…」の[王将」をあのだみ声で元気いっぱいに歌たい、会場から拍手喝さいを浴びた。「田中はおもしろくて愉快な男だ」と評判となった。(戸川猪佐武「巷談田中角栄」(鶴書房、1966年刊)
「コンピュータつきブルドーザー」と評された角さんは数字にもめっぽう強かった。
国会で野党の追及されても、今流の答弁書を棒読みするのではなく、具体的な数字を1つ1つ上げながらていねいに説明した。そのすさまじい記憶力について、質問されると、『なあに、美人をみると顔だけでなく、その名前まですぐ覚えてしまう。それは不思議なもので、べつに覚えようとしなくても覚えいる。あれと同じだよ。しかし、本当を言えばだな!、私は、なまはんかな覚え方をしないんだ。このことは、今、覚ええておかなければ、二度とチャンスはないと思うと、いやでも覚えられるものだよ』」(戸川前掲書)といつものようにユーモアたっぷりに答え、大笑いしていた。
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