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日本メルダウン脱出法(642)「歴史無知の安倍お友達内閣と自民党の面々が近衛戦時内閣の『日中・日米外交の失敗』を再び繰り返すのか

   

日本メルダウン脱出はこれでは無理か!?(642)

「安倍お友達内閣と自民党の歴史無知が、

近衛戦時内閣の『日中・日米外交の失敗』を再び繰り返すのか

前坂 俊之(ジャーナリスト)

自民党女性局長の三原じゅん子氏が16日の参院予算委員会の質問で、『日本が建国以来、大切にしてきた価値観に八紘一宇がある。「世界を一つの家とする」という意味で、この「八紘一宇」の理念のもとに、世界が一つの家族のようにむつみあい、助け合えるような経済、税の仕組みを安倍総理こそが世界中に提案していくべきだと思う』との発言を行った。

●「三原じゅん子氏「八紘一宇は大切な価値観」予算委で発言http://www.asahi.com/articles/ASH3J6R68H3JUTFK00N.html

まったくあきれ返った歴史無知発言である。政治家としての最低限のTPOを心得ていない、日本の近現代史にまったく無知な発言である。「終戦70年安倍談話」なるものが、また、近隣諸国との間で火花を散らした「戦争認識問題」「歴史認識問題」がナーバスになっているこの時期の発言に、中国・韓国にとっては「飛んで火にいる夏の虫的」、日本にとっても安倍内閣が歴史修正主義と誤解される「オウンゴール発言」となることがまるで読めない発言なのである。

この発言は、三原氏の日本の近現代史への無知、不勉強をさらしているが、根底にあるのは外国理解、国際理解(世界では多くが多民族、多宗教、多言語、大陸国家である)の難しさであり、島国国家で単一民族、言語、宗教の日本人にとって最も苦手とするところです。三原氏の善意から出たと思われるこの発言が逆の悪意にとられる、誤解されることも政治家たるもの十分に計算しておかなければなりません。「価値観は国によって、民族によってそれぞれ違うからです」「八紘一宇」という日本の古い価値観の押しつけとうつるのです。その背景には各民族、国家とも「エスノセントイズム」(自文化優先主義)の傾向があるからです。異文化理解の難しさ、異文化衝突、異文化コミュニケーションギャップ(思い違い、誤解)異文化パーセプション(認識)ギャップなどなど、この複雑な問題の歴史のネジレへの認識が欠落していると思わぬ失言のワナに陥ち入ります。日本のものが一番良いとおもう単純な単眼的な見方から、相対的に物事を捉えて、自国から、他国から、世界から相対化して複眼的視点から考慮することが大切です。

では「八紘一宇では「」とは一体、どのような歴史文脈の中でで語られたのでしょうかー

「八紘一宇」とは大雑把に「世界を一つの家とする」という原始共同体的な概念で、「地球はまるい」(ガリレオ)という中世的な世界観や、「日本以外には世界中にいろいろな民族集団が存在する」近代国家なる概念などはないはるか大昔の「日本書紀」【721年)などに出てくる古代語ですが、これが政治的なイデオロギーとして使われたのは太平洋戦争1年半前の昭和15年(紀元2600年)7月26日に第二次近衛内閣が発足し、その「国策要綱」に、初めて「八紘一宇」の実現を明記し「大東亜新秩序の建設」「強力な新政治体制の確立」を定めたことに始まる。このあと、近衛内閣は日独伊三国同盟、仏印の軍事基地化、オランダ領インドネシアの重要資源の確保を推し進め、その結果、ABCD包囲網、米国から石油輸出の全面禁止を食らい、国際的に孤立してついに太平洋戦争という「オウンゴール戦争」に突入してしまったのです。

つまり、「八紘一宇」『大東亜共栄圏』は戦争中の国策スローガン、戦争推進用語の1つで「挙国一致」「尽忠報国」「堅忍持久」「ぜいたくは敵だ」など並んで大々的に新聞などで宣伝されたのです。日本がアジアの盟主となって八紘一宇の精神で「大東亜共栄圏」を建設するという意味なのです。「八紘一宇」の理解は米国、中国、韓国や日本の歴史学者の間でも「侵略のキーワードとなった」が定説です。
三原氏の質問は全く関係ない国際経済に「八紘一宇」を反対の意味に使った2重の歴史無知ミステークを冒したもので、終戦70年の安倍談話がナーバスな問題になっているこの時期に、グローバルな政治情勢の判断、思慮を欠いた不適切なものです。

さらに、問題なのはこれに答弁した麻生太郎財務相は

「八紘一宇は戦前の歌の中でもいろいろあり、メーンストリーム(主流)の考え方の一つなんだと思う。こういった考え方をお持ちの方が、三原先生の世代におられるのに正直驚いた」と、はぐらかし、発言容認とみられる答弁態度で、海外から見ると「右寄りとみられる安倍内閣」への誤解と不信をさらに増幅するのです、異文化コミュニケーションギャップ(思い違い、誤解)に三原氏同様に鈍感なのです。
この場合、麻生副総理が祖父の吉田茂首相(戦争中に憲兵隊に英米派として逮捕された)ほどの政治的、外交的器量があれば「八紘一宇の失敗をきちんと述べて、歴史勉強をするべきだとクギを指す「メッーセージ」を明確に発すれば、世界は「安倍内閣」の本質的な姿勢を誤解しなくなるのです。

安倍首相について1言。

この8月に「終戦70周年談話」なるものを発表すると、いう必要のないことを前もって発表したために、「中国、韓国、米国側からもその内容に反省、謝罪を盛り込め」と執拗に攻撃されて外堀を埋められ、自縄自縛されて、その術中に陥っています。宰相は思慮深く、しゃべりすぎてはいけません。官僚の作文の朗読が上手いだけではなおいけません、この安倍オウンゴール発言は近衛外交の「対支那政府(中国)は相手にせず」の大失敗の轍を踏んでいるのではと危惧します。

それと、政治にも外交にもスピードがなにより一番肝心です。世界の情勢変化に振り回されるからです。戦争でも外交でも「敵を知り、己を知れば百戦百勝」「敵を知らず、己を知らなければ必ず敗れる」「戦わずして敵を敗るのがインテリジェンスであり最高に重視せよ」とあります。

日本の最大の課題は国内問題で、日本の1000兆円にのぼる借金問題、少子超高齢化、人口激減社会の経済再生をどうするかです。中国、韓国と対立して解決に手間取っているヒマはないのです。

日中韓のトップ会談に対して「対話の門はいつも開いている」と安倍首相はこの2年間以上、いつもこのワンフレーズを繰り返し時間を空費し、経済再建をおくらせていますが、もっともっと積極的な外交、メッセージをあらゆる機会をとらえて発信すべきです。
安倍首相はA級戦犯の曽祖父・岸信介元首相だけではなく、父方の祖父・安倍寛(戦争中の反骨の政治家)についても大いにその精神を継承していることをアピールすべきと思います。

安倍寛、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%80%8D%E5%AF%9B

●「八紘一宇」持ち出した三原じゅん子氏に沈黙する国会の異常http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158149

●『三原じゅん子議員、「八紘一宇」発言を釈明 「侵略正当化したいとは思っていない」http://www.j-cast.com/2015/03/18230658.html

●「日本と過去:消化されていない歴史」(英エコノミスト誌)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43164

●「インタビュー:安倍首相、歴史修正主義の疑念払拭を=河野洋平氏
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0ME07K20150318

●「パラオ:慰霊碑修復が不評…防波壁新設「海見えづらい」」
http://mainichi.jp/select/news/m20150318k0000e040227000c.html

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