『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン(34)』『開戦2週間前の『ロシア・ノーヴォエ・プレーミャ』の報道」-『イギリスと米国に支援された日本とわが国の戦争が迫っている。日本はその過剰な人口を移住させるために朝鮮を必要としている。他の2国は商品を売るために満州と朝鮮の門戸開放を必要としている。
2017/08/19
『日本戦争外交史の研究』/
『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉞『開戦2週間前の
1904(明治37)年1月13日,露暦1903年12月31日
『ロシア・ノーヴォエ・プレーミャ』
『極東におけるロシアの任務はいかなる政策であるべきかー編集部への手紙』
新聞によって判断するなら,イギリスとアメリカ合衆国に支援された日本とわが国の戦争が迫っている。日本はその過剰な人口を移住させるために朝鮮を必要としている。他の2国は商品を売るために満州と朝鮮の門戸開放を必要としている。
だが,日本が中国と同盟を結んでもわれわれには恐るるに足らない。
中国は,∃一口ッパの指導員たちに訓練された軍隊をまだ創設していないからだ。しかし,旅順のわが国の艦隊を容易に封鎖してしまい,軍事行動に使えなくしてしまうこともできる第一級の海軍国と戦争になった場合,あるいは,そうした国が日本に物資の面だけでも援助した場合,事態は全く変わってくる。
そうなったら,そのような条件で戦争することがわが国の益となるのか,それがわれわれの手に負えるかどうか,考え込まないわけにはいかない。だから,当然次のような疑問が生じるのだ。
中国人匪賊の襲撃に対してわが国が何百万もの国家資金を投じた満州鉄道を守るということであれば,それが中国の手に余るような場合.わが国には当然そうするだけの権利と義務がある。だが,まだわれわれのものではない他国の一地方にロシアが選んだ商業政策を導入することが.公正かどうかは問わないまでも,はたして妥当なのだろうか。
ロシア本国だけを考えてみても.この政策は国家の生産力の発展と住民の幸福のための礎石として十分にその成果を上げたと考える根拠があるだろうか?
そして,またこの政策を自国で行うだけでなく,「私はここを絶対に動かぬ」というあのイギリスの原則に従って,われわれが確固とした足場を築こうとしている(しかもそれは将来のことなのだ)地域でも大胆に続けていくだけの十分な理由があるのだろうか。別に自由主義貿易論に与せずとも,このことには疑問を感じないわけにはいかない。
(中略)
かつてはロシアがヨーロッパの穀倉と考えられていた時代があったが,今では自国の農民たちさえ食うや食わずの状態だ。
つい最近まではわが国の皮,獣脂,その他の半加工製品なしでは,西欧諸国の大半は
ほとんど立ちいかなかったのだが,今では私たちがこうした品々を外国から毎年何百
万ルーブル分も取り寄せねばならない。
資本主義的な生産形態の発展をあまりにも熱烈に奨励した結果がこんな悲しいありさま
だとすれば,われわれは自分たちは誤っていないと確信して,荒涼とした満州にわが国の工業政策の旗を掲げ,この地を新しい生産に向けて目覚めさせることができるのだろうか。
自由貿易のために満州に門戸を開くなら.われわれは同時にイギリス,アメリカ合衆国、ドイツ,そしてその他のすべての西欧諸国をわが国の本当の同盟諸国にする ことになる。ロシアが満州を占領したのは全ヨーロッパ文明の利益になることであって.ロシアは自らの文化的な使命を果たしたのだということを彼らははっきりと理解するだろう。
古代の野蛮人たちがヨーロッパ進攻によってもたらした厄災を再び引き起こしかねない黄色人種がヨーロッパを侵略しないように監視している国として,ロシアにはまさにこのような文化的使命が課されているのだから。
われわれは,万事において盲目的に西欧を模倣することに慣れてしまっている。資
本主義国家にとっては新たな外国市場の開設はほとんど死活問題なのだ。だがわが国
にとってそれはよけいなぜいたくなのだ。
その重荷は全住民にのしかかり,ひと握りの資本家を支えるために,彼らはあらゆる
工業製品を高く買わねばならない。
わが国には,何百万という自国の農民の中にわが国に保証されたほとんど手つかずの巨大な市場があるというのに,こうした高くつく市場がわれわれに何になるというのか!われわれの緊急の課題は,わが国の住民たちの福祉を向上させることであり,そうすることによってわが国の産業の将来の発展のためのしっかりとした足場を築くことだ。
しかしながら.近く戦争が起こるかもしれないとなると(その恐ろしい幻影は日増しに強くなって近づいている),この偉大で責任重大な課題は,しばらくわきに置かれることに
なるだろう。
商人たちの利益のために,ロシアは.豊かさ故にではなく貧しさ故になされた国民の蓄えを大量に浪費しなければならなくなるだけでなく,血も流さねばならなくなるだろう。
この商人とは,ことわざの中の,自分が食うのでもだれかにやるのでもない干し草の上に横たわっている犬を思い起こさせるような輩なのだ。
国際的通商のために満州の門戸開放がなされるなら,ロシアの満州占領を擁護することは外国列強の利益にもなる。なぜなら、ロシア以外だれも真の厄災である中国の匪賊からこの国を救ってやることができないからだ。
身体の安全と財産の安全が保証されないところでは,だれが通商を行おうと発展は期待できないのだ。われわれが構想したように駒を運ぶなら,現在の外交ゲームにおいて政治的紛糾を引き起こすことは日本以外のどの国にとっても利益にならなくなる。
それは,そうした紛糾が満州での通商に関与しているほとんどすべての工業国のこの地域での通商の発展を滞らせることになるからなのだ。
競争者たちの力はこの点に関してはある程度までは互角なのだから,満州がそのうちの1国の経済的圧力を受けるようになるかもしれないなどと考える必要はない。
こんなわけで,わが国の経済政策の旗印になるべきなのは,海外市場の追求ではなく,国内市場の追求なのだ。この政策は日本にとっては致命的だが,ロシアの将来にとっては,そしてヨーロッパの安全にとっても,非常に有益なものなのだ。
わが国の著名な画家ヴェレシチャーギンは疑いもなく財政に破綻をもたらすロシア
と日本との戦争について警告して.数日前のノーヴォスチ紙上で,ロシアが満州占領
を断念し,鉄道とともに満州を中国に返還するという構想を述べた。
だがこのようなあまりにも短絡的な目下の政治的紛糾の打開策は.黄色人種の侵略に対してロシアの門戸ばかりかヨーロッパへの門戸をも開くことになりはしないだろうか。中国と日本を合わせた人口がほとんどヨーロッパ全体のそれに匹敵することを踏まえて考えれ
ば,今後はそうなり得ることも考えておかねばならない。
それらの国の軍事機構がヨーロッパ式に整備され.極度の人口過剰の状態になれば,東から西への民族の大移動が再びくり返されないとも限らない。われわれが満州鉄道を掌握しておくことを断念すれば,この鉄道を建設したことで全ヨーロッパ文明に「よけいなおせっかい」をすることになるだろう。
関連記事
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(125)』 <韓国ぶらり散歩> ー世界遺産の仏国寺に参拝した
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(125)』 <韓国ぶらり散歩> …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(189)』『FTの魅力で日経の価値が倍加しているという声が増えています』●『ジョージ・ソロス「英国の離脱はEUを救う」 改革の好機ととらえれば崩壊はない』●『リニア新幹線「国家プロジェクト」化、採算や経済効果危ぶむ声も』●『ローソンが中国で取り組む「先進店舗」の正体 中国のコンビニは日本より洗練されている?』
『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(189)』 FTを買った日 …
-
-
SEMICON JAPAN2018(12/12)-『人機一体ロボット』のデモ、身長4m「巨大人型重機」が人と機械の新たな未来を開く
SEMICON JAPAN2018(12/12、東京ビッグサイト)-『人機一体ロ …
-
-
『オンライン/現代版葛飾北斎の富嶽三十六景動画版』★『地球環境異変で鎌倉海から見る富士山の映像も変わってしまったよ』★『 鎌倉サーフィン(2021 /08/08/pm600)-ある夏の夕暮れの鎌倉材木座海岸の潮騒のセレナーデ,黄金色の夕焼けがまばゆいばかりの美しさ』
鎌倉材木座海岸からみる富士山(2021 /08/07/pm500 -江の島上空の …
-
-
百歳学入門(88)農業経済 学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後40冊以上の超人的な研究力
<百歳学入門(88)> 旺盛な研究力を支え …
-
-
日本リーダーパワー史(666)昭和の大宰相・吉田茂(89歳)の晩年悠々、政治・長寿健康法は『マッカーサーと昭和天皇の会談が13回、 吉田は合計75回も面会』●『「長生きの秘けつ」は「そりゃカスミを食うこと、いや人を食うことだな」
日本リーダーパワー史(666) 昭和の大宰相・吉田茂(89歳)の晩 …
-
-
知的巨人たちの百歳学(165)ー『一億総活躍社会』『超高齢社会日本』のシンボル・植物学者・牧野富太郎(94)植物学者・牧野富太郎 (94)『草を褥(しとね)に木の根を枕 花を恋して五十年』「わしは植物の精だよ」
94歳 植物学者・牧野富太郎 (1862年5月22日 …
-
-
百歳学入門(156)生死一如、生きることは毎日死に向かって行進中。 「生き急ぎ、死に急ぎ、エンディングス トーリー」を考える。『 健康寿命が真実を示す~日本は寝たきり年数ワースト1位!?』●『どうなる? 日本の「死」と葬儀』
百歳学入門(156) 生死一如、生きることは毎日死に向かって行進中。 「生き急ぎ …
-
-
百歳学入門(58)江戸城無血開城で百万人を救った勝海舟(75歳) 『長寿法などない」「南光坊天海(107歳)を論ず」
百歳学入門(58) 江戸城の無血開城で百万人の江戸ッ子を救った勝海舟(75 …
- PREV
- 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉝『開戦2週間前の「英タイムズ」の報道/★★『ロシアが極東全体を独占したいと思っており、一方、日本は,ロシアの熊をアムール川の向こうの自分のすみかに送り返して,極東における平和と安全を,中国人、朝鮮人,そして日本人のために望んでいるだけだ』
- NEXT
- 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン(35)』/『開戦2週間前の『仏ル・タン』報道ー『日本国民は自分たちの力と軍事力に対する節度の感覚を失っています。中国に勝利して以来,日本はロシアにも簡単に勝てるだろうと思い込んでいる』●『「対露同志会」がメンバーを旅順や満州,ウラジオストクに派遣して,極東におけるロシアの状況を調査している』