『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン(35)』/『開戦2週間前の『仏ル・タン』報道ー『日本国民は自分たちの力と軍事力に対する節度の感覚を失っています。中国に勝利して以来,日本はロシアにも簡単に勝てるだろうと思い込んでいる』●『「対露同志会」がメンバーを旅順や満州,ウラジオストクに派遣して,極東におけるロシアの状況を調査している』
『日本戦争外交史の研究』/
『世界史の中の日露戦争カウントダウン(35)』
『開戦2週間前の1904(明治37)年1月20日
『仏ル・タン』
『ロシア・レポートー画家ヴェレシチャーギンと露日戦争』
Wiki ヴェレシチャーギン
スコベレフの友人で,ロシア・トルコ戦争でその勇気を十二分に証明した有名な画家であるヴェレシチャーギンは,日本に対する戦争にきっぱりと反対の立場を表明した。
彼はロシア政府が満州を放棄するように勧めるのみならず,東清鉄道も売却し,その返還の見返りとして,ウラジオストクと旅順をつなぐことのできる帯状の土地を要求してはどうかと進言している。
「でも,ロシアの愛国者たちは反対するのではありませんか。ロシアは鉄道を建設して,それを売るような事業家ではないと……」「そんなことはないですよ」とヴェレシチャーギンは答えた。
「そもそも,わが国には前例があるのです。アレクサンドル2世がアラスカにあるロシアの領土がかえって国にはじゃまになると気づいたとき,彼は簡単にそれをアメリカに売却したことがあります。
満州の鉄道も役に立つよりも,むしろロシアを苦しめています。厄介払いすべきなのです。ただし.できるだけ有利な方法でね」
ヴェレシチャーギン氏の話には裏づけがある。彼は満州と日本を旅して帰ってくると.全世界の関心を呼んでいる事件が進んでいるその現場で得た感想をペテルプルグのノーヴォスチ紙に発表している。
『シプカでは,すべて平穏!』という有名な作品の作者は,中国が正式に参戦することはないだろうと考えている。中国は,ロシアの鉄道と軍隊によって占領されている地方を取り戻す希望をすべて失ったわけではないからだ。
むしろ敵対関係をはっきりさせた場合に,満州を決定的に失ってしまうことを恐れている。
中国が参戦したとしても,義和団による攻撃に限られるだろうし,中国政府は必要とあらば彼らを反乱兵として扱い,自国の兵とは認めないだろうという。
日本の態度はまた別問題だ。ヴェレシチャーギン氏は次のように言う。
「私はこの国に行ってきたばかりですが,大変すばらしい.印象を持ちました。美しい国で,実に文明化されています。国民は活気にあふれ,すぐれた能力を持っているのみならず,大変な知性と本物の芸術的趣味を備えています。
ただ残念なことに.この国民は自分たちの力と軍事力に対する節度の感覚を失っています。中国に勝利して以来,日本はロシアにも簡単に勝てるだろうと思い込んでいるのです。
どんなに説得してもこの傲慢な確信を揺るがすことはできないでしょう。
日本の世釜はあまりにも興奮し過ぎていますから,政府は何か思い切った手を打って,その興奮を静め,ありのままの現実の方に引き戻してやることがどうしても必要でしょう。
日本で最も大きい組織の1つに「対露同志会」というのがあります。この協会は自費で旅順や満州,さらにはウラジオストクに委員を派遣して,極東におけるロシア人の状況を調査しています」
ヴェレシチャーギン氏はこの派遣団の報告書の教範を引用する。
「ロシアには石炭が足りない。6万5000トンしかないのに,鉄道だけで月に1万5000トンも消費している。
ロシアは決して日本の艦隊を攻撃しようとはしないだろう。その軍隊も水兵もそれを知っているから,意気消沈している。
ロシアの将校はすぐれているが,兵士は訓練が行き届いておらず.愛国心にも欠けている。中国兵と同じ程度だろう。
こんな兵士をもってしては,ロシアは何もできず,日本は思うがままの成果を上げることができるだろう。
ロシアが唯一気にかけていることは,旅順に避難所をしつらえて,日本の手の届かないところにその艦隊をかくまうことだ。
さらに,日本人は戦争が長引かないことを確信しており,南アフリカの戦争で起こったこととは反対に,ロシアは日本がその首都に進撃するのを待つことはないだろうから,日本軍が満州からロシアを追い払えば,直ちに講和条約を締結しようとするだろう」
ヴェレシチャーギン氏は,この点で日本は幻想を抱いており,何をもってしてもこの幻想を打ち砕くことはできないだろうと考えている。
このロシアの画家はなんとか説得を試みてみたが,むだだった。日本の軍事的優位の確信は深刻な痛手を負わない限り,崩れそうにもないという。
あらゆる可能性を考えてみて,日本が朝鮮に上陸したとしても.ロシアはそのとき,
あえて宣戦布告しなくても,日本軍を兵糧攻めにし,何百万という金を浪費させ,ついには降伏させることができるだろうという。
ヴェレシチャーギン氏によれば,日本軍が満州に上陸すれば.その状況はさらに危うくなるだろうという。海からの退却が保証されない上に,ロシアの2つの要塞に挟まれてしまえば,状況はまさに危機的になるだろうし,満州に入り込めば入り込むほどそうなるだろう。
「それにもかかわらず,ロシアは満州の荷を降ろして,中国との友好を得た方がずっと有利でしょう」とロシアの画家は考えている。
M・プラディーヌ
関連記事
-
-
日本メルトダウン脱出法(765)「アベノミクスの矢がいつまでも的外れな「本当の理由」●「中国・韓国が日本に絶対に追いつけない歴史的背景 中韓にノーベル賞が取れない理由~陽明学と朱子学」
日本メルトダウン脱出法(765) アベノミクスの矢がいつまでも的外れな「本当 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(238)/『三井物産初代社長から61歳で財界を引退、あとは『鈍翁』と称して『千利休以来の大茶人』となった益田 孝(91歳)の晩晴人生』(上)★『 財界人として鋭く生きて早死にするより、鈍根で長生きして<晩晴>を尊ぶマイウエー』
2012/12/06   …
-
-
『2009/1/21/オンライン回想講座・静岡県立大国際関係学部教授・前坂俊之最終講義』★『ガラパゴス日本の没落』★『<ジャーナリスト、研究生活40年を振り返る>『グローバリズムで沈没中のガラパゴス・日本=2030年、生き残るか』
前坂俊之最終講義・ガラパゴス日本の没落 国際コミュニケーション論・最終講義(15 …
-
-
「Z世代のための日本最強リーダーパワーの勝海舟(75)の研究③』★『勝海舟の西郷隆盛バカ話はメチャおもしろい』★『ガザ戦争(死者3万5千人)フランス革命(約2百万人)、米南北戦争(61万人)と比べて、最も少ない明治維新(約7千人)の立役者は西郷隆盛と敗軍の将・勝海舟』★『明治維新は世界にも例のないほどの「話し合いによる民主的、平和革命」だった』
現在進行形のイスラエル対ハマスの「ガザ戦争」の死傷者数は5月13日 …
-
-
百歳学入門(98)「60、70 はなたれ小僧、はなたれ娘」<鎌倉アホ仙人「材木座海中温泉」入浴の巻 (8/16)
<百歳学入門(98)> 「60、70 はなたれ小僧、は …
-
-
百歳学入門(75) ●『三浦雄一郎さん、エベレスト登頂成功 史上最高齢80歳の記者会見動画(75分)
百歳学入門(75) &nbs …
-
-
記事再録/知的巨人たちの百歳学(135)-勝海舟(76歳)の国難突破力―『政治家の秘訣は正心誠意、何事でもすべて知行合一』★『すべて金が土台じゃ、借金をするな、こしらえるな』(これこそ今の1千兆円を越える債務をふくらませた政治を一喝、直ぐ取り組めという厳命)
2012/12/04 /日本リーダーパワー史(350) ◎明治維新から150年- …
-
-
『オンライン/国難突破力講座』★『敗軍の将・勝海舟の国難突破力⑥ 『金も名誉も命もいらぬ。そうでなければ明治維新はできぬ』 <すべての問題解決のカギは歴史にあり、明日どうなるかは昔を知ればわかる>
…
-
-
百歳学入門(44)カルピス創業者・三島海雲(96)の健康法>一に散歩、二に日光浴、三に食養生。早朝散歩と日光浴を毎日実行。
百歳学入門(44) <カルピス創業者・三島海雲(9 …