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池田龍夫のマスコミ時評(46)●『普天間飛行場・固定化」を危惧―★急浮上の「グアム先行移転」計画―』

   


池田龍夫のマスコミ時評(46)
 
普天間飛行場・固定化」を危惧―
★急浮上の「グアム先行移転」計画―

池田龍夫(ジャーナリスト・毎日新聞ОB
 
 
「米海兵隊のグアム先行移転」計画が急浮上して、その波紋が広がっている。果たして、米軍基地に悩む「沖縄」の負担軽減につながるだろうか。
…手詰まり状態の「普天間飛行場の辺野古移設」を打開するため、米国防総省が打ち出したもので、米軍再編計画のパッケージから「普天間」を切り離して、グアム先行移転で、日本政府を揺さぶる米側の深慮遠謀を感じさせる動きである。
 
「米軍の太平洋戦略」見直しの一環
 
日米両政府は2月8日夜、在日米軍再編見直しに関する基本方針を発表した。この発表に先立ち、玄葉光一郎外相は4日夜、緊急記者会見を開いて大筋を明らかにし、7日未明(日本時間)からワシントンでの「日米審議官級協議」で調整が行われていた。8日の外相会見によると、「今後数カ月間かけて精力的に協議して最終案をまとめ、今春の日米首脳会談で『新ロードマップ』として正式発表する運び」という。
 
「普天間飛行場移設問題」打開のステップとして、米軍再編計画から「普天間」を切り離すことに日米両国が合意。2006年に決めた「海兵隊約8000人のグアム移転」の人員を縮小、辺野古移設が進まなくても約4700人を先行移転させる方針が確認された。
残る約3300人は豪州などにある米軍基地にローテーションで分散配置してアジア太平洋の防衛を固める方向で大筋合意した。またグアム先行移転と同時に、嘉手納基地以南の米軍基地5施設・区域の返還も普天間移設と切り離して先行実施するという。
 
暗礁に乗り上げた難題解決への〝一歩前進〟と言えようが、なお大きな壁が残っている。それは、今回の日米合意文書に、「日米両政府は普天間飛行場(宜野湾市)を辺野古(名護市)へ移設する現在の計画が、唯一の有効な進め方だと信じている」と、一項を設けて強調している点である。また、7日朝刊各紙によると、「海兵隊のグアム先行移転」とは別に、岩国基地(山口県)に1500人規模の移転を日本側に打診していたことも明らかになるなど、米国の〝圧力〟が感じられる。
 
野田佳彦政権は昨年暮れ、普天間移設の前提になる辺野古・環境影響評価(アセスメント)の評価書を沖縄県庁に強行搬入して、仲井真弘多知事ら地元感情を逆撫でしてしまった。県側はやむなく評価検討に入ったものの問題点が多く、3月末までに公有海水面埋め立て申請は認めないだろう。
「沖縄県外、または国外移設」を求める沖縄県民の民意は固く、強行突破すれば〝流血の惨事〟も招きかねず、ここ数カ月の動向を見なければ、予測不能の雲行きになってきた。「辺野古移設」に固執する限り、この対立構造は無くならないとの悲観的見方が出るのは当然で、「普天間飛行場の固定化」につながると危惧する声が上がっている。
 
豪州・ダーウィンなどに分散配置
 
オバマ大統領は昨年11月に豪州北部のダーウィンへの米海兵隊駐留を表明。次いでパネッタ国防長官が1月26日、2013会計年度(12年10月~13年9月)から5年間の国防予算削減計画を発表した。世界に展開している米軍地上戦力を10万人削減する方針というが、在日・在韓米軍は維持して「アジア太平洋重視」戦略を鮮明に打ち出した。要するに、今回の「日米合意」は米軍再編計画の一環であり、米国主導で進められたことは明らかだ。
 
沖縄の民意は「普天間無条件返還」
 
琉球新報2月5日付社説は「日米協議入りは膠着状態を動かす一歩となるだろうが、問題はその方向だ。回避すべき最悪の筋書きは①普天間飛行場の固定化②辺野古移設計画の維持③嘉手納より南の土地返還凍結――を含む米軍再編の改悪だ。
これは断じて容認できない。米高官に『世界一危険』と言わしめた普天間飛行場の危険性除去を一刻も早く実現する。欠陥機と指摘される垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄への配備は、危険根絶の観点から拒否する。これが大多数の民意だ。日米が人命と人権を優先し、県民の信頼に支えられて日米関係を正常化したいのであれば、普天間飛行場の県外・国外移転もしくは無条件返還こそが賢明な選択だ」と指摘する。
 
沖縄タイムス同日社説も「計画の変更は、沖縄側に重大な影響を与える。にもかかわらず、地元はいつも蚊帳の外。住民とかけ離れたところで見直し協議が進み、そのたびに住民が振り回される。この構図だけは、少しも変わっていない。『2014年』という普天間飛行場の移設期限は撤回され、『できる限り早期に』という表現に変わった。……普天間の固定化は日米の責任放棄であり、あってはならないことだ。『普天間の早期返還』と『辺野古移設の断念』は、負担軽減のための車の両輪である。計画見直しで求められているのは、この二つのパッケージだ」と主張している。
 
〝米国主導〟の駆け引きに振り回される

「岩国基地への移転打診」との情報が乱れ飛ぶなど、「米国主導による海兵隊移転」の様相がますます濃くなってきた。岩国基地は既に厚木基地などからの米軍移駐を押し付けられており、それ以上の負担拡大に地元民の反対が強まるに違いない。

7日の参院予算委員会で野田首相は「岩国基地への分散移転案は協議していない」と野党質問をかわしていたが、玄葉外相は「沖縄の負担軽減という意味で、国外という面と全国で負担を分かち合うという両面がある」と答えており、「国内移設」に含みを残している。このような重要案件につき、地元・沖縄はもとより防衛省との協議も経ないまま、日米外務当局だけで話を進めていたに違いなく、普天間問題の行方をますます複雑にしてしまったように思える。
 

東京新聞2月7日付朝刊が、「米国防総省としては、普天間移設と分離したことで、グアム移転が大幅に進展する可能性が高まったとアピールし、昨年末削られた国防予算を復活させたかった。この時期に出てきたのは2月13日の『13会計年度予算』発表をにらんで、米国防総省が議会有力幹部に根回ししているうちに一部メディアに漏れたためだ」と分析していたが、日米共同発表を急いだ背景が透けて見えるではないか。
 
移転経費の見直しも必要
 
そもそも今回の米軍事戦略見直しの背景に、中国をにらんだ太平洋アジア戦略と財政赤字体質からの脱却という二つの命題が絡んでいることは明らかだ。海兵隊を豪州、フィリピン、ハワイ、沖縄などに分散配置し、防衛予算の効率的運用を目指すもので、同盟国への財政負担要請が却って強まるとも予想される。

日米が2006年に合意したグアム移転経費は総額102億7000万㌦で、日本側負担は融資を含め約60億9000万㌦に上る。日本側は12年度予算も計上しているが、米議会は財政難を理由に予算を削っており、移転経費の再検討も必要だ。当初予定より移転規模が縮小されたことに伴い、日本側は減額要求すべきだが、米側が応じるとは考えにくい。逆に、米側から「移転計画遅延の責任は日本側にある」との理屈で、減額どころか〝延滞料〟まがいの請求があるかもしれない。財政負担を考えただけでも、グアム先行移転の行方は険しそうだ。

 
「戦略なき安保」から脱却を
 
「米側が普天間問題と海兵隊移転問題などを切り離したのは、普天間の固定化もやむなしと判断した結果ではないか、との疑念はぬぐえない。沖縄が反対する『辺野古への移設』一辺倒の主張は、辺野古移設か固定化かという二者択一を沖縄に迫るものであり解決は困難だ。結果的に固定化の可能性が高まっている。

野田首相がそれを知らないはずはない。日本政府は、辺野古への移設が困難になっている沖縄の政治状況を米国に正確に伝え、見直しを視野に入れて再検討するよう強く申し入れるべきである。辺野古への移設でなければ抑止力が維持できないというのは、今回の見直しの経緯を見ても説得力に欠ける。共同文書で辺野古への移設を再確認したのは残念だ。

同時に普天間問題の解決には時間がかかることを考慮し、その間周辺住民の危険性を除去するため、普天間機能の分散などの対策を講じるよう改めて求める」――毎日新聞2月9日付朝刊に掲げた〈『戦略なき安保』脱却を〉と題する社説の一部だが、「日米共同文書」の問題点をズバリ指摘している。

米政府が昨年秋から急ピッチで米軍再編成計画を練っていたのに、日本側の対応は常に受身だったことが情けない。「普天間の危険除去」に向け、独自外交を推進する国民的〝覚悟〟なくして、解決の道は開けてこない。
 
                       * 新聞通信調査会「メディア展望」3月号から転載
 
▼参考資料
 
[在日米軍再編見直し日米共同文書](全文)
 
日本と米国は、日本の安全及び太平洋地域の平和と安全を維持するため、両国の間の強固な安全保障同盟を強化することを強く決意している。両国は、沖縄における米軍の影響を軽減するちとともに、普天間飛行場の代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区およびこれに隣接する水域に建設することに引き続きコミットしている。両国は、普天間飛行場の代替施設に関する現在の計画が、唯一の有効な進め方であると信じている。
 
両国は、グアムが、沖縄から移転される海兵隊員を含め機動的な海兵隊のプレゼンスをもつ戦略的な拠点として発展することが、日米同盟におけるアジア太平洋戦略の不可欠な要素であり続けることを強調する。
米国は、地理的により分散し、運用面でより抗堪性があり、かつ、政治的により持続可能な米軍の態勢を地域において達成するために、アジアにおける防衛の態勢に関する戦略的な見直しを行ってきた。日本はこのイニシアチブを歓迎する。
 
このような共同の努力の一環として、両国政府は、再編のロードマップに示されている現行の態勢に関する計画の調整について、特に、海兵隊のグアムへの移転およびその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことについて、公式な議論を開始した。両国は、グアムに移転する海兵隊の部隊構成および人数についても見直しを行っているが、最終的に沖縄に残留する海兵隊のプレゼンスは、再編のロードマップに沿ったものとなることを引き続き確保していく。
 
今後数週間ないし数カ月の間に、両国政府は、このような調整を行う際の複数の課題に取り組むべく作業を行っていく。この共同の努力は、日米同盟の戦略目標を進展させるものであり、また、アジア太平洋地域における平和と安全の維持のための日米共通ビジョンを反映したものである。
 
 

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