『リーダーシップの日本近現代興亡史』(220)/「2019年の世界と日本と地球はどうなったのか」(下)『気候非常事態と日本』★『「日本は安全、安心な国」とのイメージが強いが、「紛争や災害の脅威による都市リスクランキング」(2019年版)では東京がワースト1、大阪が6位』
いまや「巨大災害多発時代」「気候非常事態」に突入した日本
前坂 俊之(ジャーナリスト)
12月2日から13日までの予定でスペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で6日「2018年の気候被害が最悪だった日本」とドイツの環境NGO「ジャーマンウオッチ」が報告書を発表した。
それによると、気象災害による死者数や損害額など4項目で各国の被害状況を分析したが、日本が1位となり、2位はフィリピン、3位はドイツが続いた。18年には西日本豪雨で死者は200人以上、7月から8月は猛暑となり、全国で熱中症の死者が相次ぎ、9月の台風21号は、関西空港の滑走路やビルが浸水、各地でも大きな被害が出たのが原因。
いまや100年に一度の災害、異次元の災害が毎年、襲ってくる「巨大災害多発時代」「日本気候非常事態」に突入した。
今年も10月12に日本を襲った台風19号による水害などの被災範囲は「西日本豪雨」を超えた。死者は全国で93人。長野、福島など16都県で301河川の堤防が決壊。浸水被災数は住宅1万1千棟以上が全半壊し、床上浸水も3万1千棟。中小企業関係の被害額は総額4767億円。農林水産業の被害は合計3100億円を超えた。
「日本は安全、安心な国」とのイメージが強いが、英保険組織のロイズなどによる「紛争や災害の脅威による都市リスクランキング」(2019年版)では東京がワースト1、大阪が6位となっいる。ちなみに日本損害保険協会による「風水害等による保険金支払い支払い歴代ランキングでは①2018年台風21号 大阪・京都・兵庫など 1兆678億円 ②1991年台風19号 全国で 5680億⑥2018年台風24号 東京・神奈川・静岡など 3061億円などの順だ。
「地震保険による保険金支払い」も2011年東日本大震災 1兆2833億円は別格にして、2位は 2016年熊本地震 3859億円、3位は2018年大阪北部地震 1072億円などで首都圏直下地震も南海トラフ大地震(津波)も今後30年内に70%の確率で起こるという。
このため、今年度の補正予算案では、台風19号など一連の災害からの復旧・復興、国民の安全・安心の確保には、2兆3086億円が計上された。今後の温暖対策、災害対策費はうなぎ上りに増える見込みで、インバウンドで黒字を2、3兆円に増やしても、台風、災害の被害対策でふき飛んでしまう。
地球温暖化の非常事態は地球全体へ拡大、巨大化、スピードアップしており、小国も大国も世界中のいたるところで被災者が続出する。
世界中の温暖化、気象変化をウオッチしている「地球の記録、アース・カタストロフ・レビュー」(https://earthreview.net/)による、この半年間のニュースをみても、100年、数十年で1度の異常気象か、これまで経験したことのない異次元の超高温(40度以上)、超低温(マイナス48℃)、洪水、山火事、熱波、超寒波、超雨量、巨大台風が世界各地で頻発していることにショックを受けた。
そんな地球気候非常事態を話し合う190を超える国と地域が参加してCOP25は会期を2日間延長し、排出権ルールの見直しを論議したが、結局、合意に至らず15日に閉幕した。ネックとなった「排出権ルール」とはある国での二酸化炭素(CO2Jの温室効果ガス排出削減分を、「排出権」として別の国の削減実績に算入できる「市場メカニズム」のこと。
ブラジルや中国、インドなど新興国は、これまで削減目標の達成に使ってこなかった2019年以前の排出権を、来年以降も目標達成に算入することを求めていた。しかし、先進国など大多数の国が算入に反対、協議は2日間延長したがまとまらず、来年のCOP26に先延ばしした。会議のまとめの成果文書では「各国の削減目標はそれぞれの国の事情に応じて現在よりも前進させ、可能なかぎり高い野心を示す」という数値目標ではなく、努力目標となった。
日本は2度にわたって不名誉な「化石賞」を受けるなど、地球温暖化に背を向ける「環境後進国」のレッテルが張られた。小泉進次郎環境相の演説で、国際社会が求める脱石炭や温室効果ガス排出削減目標の引き上げの意思を示さなかったことなどがその理由。
冒頭にあげたドイツの環境NGO「ジャーマンウオッチ」は「気候変動パフォーマンスインデックス」(温暖化効果ガス排出削減貢献度)を発表したが、90%以上をカバーする61カ国中、日本は51位にランク。1~3位は該当国なし。4位グレタ・トゥンベリさん(16)の母国・スウェーデン。5位デンマーク、6位モロッコ、7位イギリス、9位インド、18位フランス、22位欧州連合(EU)、23位ドイツ、26位イタリア、30位中国、51位は日本、52位ロシア、55位カナダ、58位韓国、最下位の61位アメリカの順。
すでに、EUなどは温室効果ガス排出量を2050年まで実質ゼロにすることを目指している。合意前の11日の時点でも91か国のうち73カ国が目標を強化すると表明。50年までの「実質ゼロ」を掲げる国も70カ国以上に上った。
先進国の中で、「気候非常事態の被災ワーストワンの日本」の取り組みは世界から非難が集中した。
安倍首相は「経済成長主義のアベノミクス」を掲げているが、経済の成長発展の基礎の地球を食いつぶしては元も子もない、「地球儀外交」「価値観外交」「自由貿易資源外交」を展開し「国際法を守れ」と主張するが、地球環境や気候変動.環境保護、人権や難民、移民などグローバルな問題には関心が薄い。
今の若者、子供たちは自分たちの将来、地球の未来に不安以上に恐怖心を抱いているという。1千億円を突破した国債の借金とともに、これ以上の「汚れた地球」のツケを子孫に残してはならない。それこそが大人の政治家の責任、義務ではないか、と思う
(
関連記事
-
-
★『オンライン講座・吉田茂の国難突破力③』★『吉田茂と憲法誕生秘話ー『東西冷戦の産物 として生まれた現行憲法』★『GHQ(連合軍総司令部)がわずか1週間で憲法草案をつくった』★『なぜ、マッカーサーは憲法制定を急いだか』★
★『スターリンは北海道を真っ二つにして、ソ連に北半分を分割統治を米国に強く迫まり …
-
-
『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(41)』★『日露戦争開戦の『御前会議」の夜、伊藤博文は 腹心の金子堅太郎(農商相)を呼び、すぐ渡米し、 ルーズベルト大統領を味方につける工作を命じた。』★『ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の世界最強のインテジェンス(intelligence )』
2021/09/01 『オンライン講座/日本興亡史の研究 …
-
-
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変③』- 『ドイツ、ロシア、フランス、イギリスらの清国侵略に民衆が立ち上がった義和団事件が勃発』★『清国侵略の西欧列強(英国、ドイツ、フランス、ロシアら)の北京公使館は孤立し、敗北の危機に陥り、日本に大部隊の出兵を再三、要請した。日本側は三国干渉の苦い教訓からなかなか出兵に応じず・』
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変③』- 7月6日、日本政府は「 …
-
-
日中北朝鮮150年戦争史(13)日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。 日本最強の陸奥外交力⑥『北朝鮮は世界最悪の人権弾圧国家、腐敗国家であり、李氏朝鮮が今も続いているとみれば、納得できる。』●『朝鮮事情』(ダレ著、東洋文庫)『〝生き地獄″を生きた李朝朝鮮の農民たち』
日中北朝鮮150年戦争史(13) 日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇 …
-
-
『オンライン講座/野口恒の先駆的なインターネット江戸学講義⑯』★『諸国を遍歴、大仕事をした“歩くノマド”たち(下)』ー90歳まで描き続けた葛飾北斎』★『全国を歩いて学問を修め、数々の発明を成した破天荒の「平賀源内」』★『紀州藩御庭番として各地を遍歴、膨大な著作を残した「畔田翠山」』
2012/05/30 /日本再 …
-
-
日本リーダーパワー史(189)『真珠湾攻撃(1941)から70年―この失敗から米CIAは生れた。<日米インテリジェンスの落差>(上)
日本リーダーパワー史(189) 国難リテラシー 『真 …
-
-
『オンライン/米日豪印対中国の軍事衝突は日清戦争の二の舞となるのか』★『日中韓の誤解、対立はなぜ戦争までエスカレートしたか」ー中国・李鴻章の対日強硬戦略が日清戦争の原因に。簡単に勝てると思っていた日清戦争で完敗し、負けると「侵略」されたと歴史を偽造する」
『 日本リーダーパワー史(614)』記事再録/日本国難史にみる『戦略思 …
-
-
速報(58)『日本のメルトダウン』●(小出裕章情報2本)『★IAEA(国際原子力機関)という組織』『ゼオライトとバーミキュライト』
速報(58)『日本のメルトダウン』 ●(小出裕章情報2本)『★IAEA(国際原子 …
-
-
●「 熊本地震から2ヵ月」(下) 『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知にことごとく失敗した。(下)<なぜ地震学者は予知できないのか。ゲラー氏は 『地震予知は科学ではない』という>
「 熊本地震を考える」 『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込み …
- PREV
- 『リーダーシップの日本近現代興亡史』(219)/「2019年の世界と日本と地球はどうなった」(上)「米中貿易関税協議は一部で妥協したものの、米大統領選まで対立は続く」★『「香港選挙の勝利を確信していた習近平主席は大ショックを受け,誤判断した中国指導部も今後どう対応すればよいか混乱状態に陥っている」(香港大紀元』
- NEXT
- 『リーダーシップの日本近現代興亡史』(221)/★「北朝鮮行動学のルーツ(上)」-150年前の「第一回米朝戦争」ともいうべき 1866(慶応2)年9月、米商船「ジェネラル・シャーマン号」の焼き討ち事件(20人惨殺)の顛末を見ていく』★『そこには北朝鮮(韓国)のもつ『異文化理解不能症候群』が見て取れる。』