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地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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『リーダーシップの日本近現代興亡史』(219)/「2019年の世界と日本と地球はどうなった」(上)「米中貿易関税協議は一部で妥協したものの、米大統領選まで対立は続く」★『「香港選挙の勝利を確信していた習近平主席は大ショックを受け,誤判断した中国指導部も今後どう対応すればよいか混乱状態に陥っている」(香港大紀元』

      2019/12/26

2019年の世界と日本と地球①                            

2019年の世界は引き続いてトランプ米大統領の暴走、暴言ツイッターで振り回され続いた。

12月3日にはアルゼンチン、チリが為替操作をしていると非難、ブラジルとアルゼンチンの鉄鋼・アルミニウムに対する関税を直ちに復活させると、圧力をかけた。

「金持ち国はもっと防衛費を負担しろ」とトランプ大統領は創設70周年を迎えた「NATO」(北大西洋条約機構)加盟国(29ヵ国)に対して2024年までに防衛負担額を各国GDPの2%以上にすることで合意したが、13ヵ国は認めたものの、独、仏、伊、オランダなどはまだ達成しておらず、同大統領は「不公平だ」と激怒。

日本に対してはこれまでの4倍の8700億円の防衛分担金を要求、韓国には5倍の5100億円をふっかけ、要求に応じない場合には、米駐留部隊の一部引き揚げることを検討すると伝えた。

さらに、仏政府が米ハイテク企業を対象にデジタル課税を導入すると発表したことにもトランプ氏は「マカロン氏の愚行で差別的制裁だ」と怒り爆発し、フランス産ワインやチーズなど約2600億円相当に報復関税を検討すると発表した。仏ルメール経財相は12月3日、この米国の態度は「同盟国としてふさわしくない。EUも報復に出る用意がある」と反論し、米・EUの対立は深まっている。

今年末までに大まかにまとまるのではないかとみられていた米中貿易協議について米国が「香港人権・民主主義法」を成立させ、新疆ウイグルウ族への弾圧に反対する法案も米下院が可決したため、中国が猛反発。貿易協議は頓挫して来年11月の米大統領選後まで持ち越される可能性が高まったためではないかという。(11月14日までの見通し) 

これは11月15日に米中は一部の米中関税協定は引き上げを見送る妥協案がまとまったが、トランプ大統領は大統領選に勝利に向けて何点数を稼ぎたくぃ一心なので、揺さぶり戦術のディール攻撃先がEUや南米の同盟国にもふり向けたものとみられる。

一方、中国・習近平国家主席もトランプ同様に迷走中だ。11月25日ペンス米副大統領は「100万人以上の新疆ウイグル族を隔離弾圧し、何億台もの監視カメラで世界最悪の人権監視国家をつくった」と中国を全面批判したが、これに対して中国外務省は『中国の社会制度や人権、宗教の状況をねじ曲げており、政治的な偏見とウソに満ちている。台湾、香港、新疆などは純粋に中国の内政問題で外部勢力の干渉も絶対に許さない」と全面反論し、貿易協議にブレーキをかけた。

長引く香港デモに関しては中国共産党の4中総会は10月31日に「一国(中国)二制度(中国、英国)」は「一国」(中国)に従属し、「一国」から派生し「一国」の中に統一されなければならないと、あくまで香港はの中国の主権下にあると主張、愛国者(中国)を主体とする香港住民による香港管理を行うこと」を強調した。、つまりデモ隊の鎮圧行動を指示、強化した形だ。

その国際的な注目を集めた香港選挙(11月24日)は、いざフタを開けてみると、定数452議席のうち民主派が388議席と85%を獲得して圧勝した。建制派(親中派)は59議席と、投票前の292議席の5分の1に激減した。投票率は71.2%で投票率、投票者数とも過去最高を記録、デモに対する香港政府や警察の鎮圧行動によって、一層反中感情が高まって、これまで投票に来なかった若者たちの投票率の大幅アップが民主派の大勝につながった。

このサプライズ結果に、「勝利を予測していた習近平主席は大ショックを受け,誤判断した中国指導部も(今後)この問題をどう処理すればよいかわからない混乱状態に陥っている」(香港大紀元の電子版、2019年12月04日)という。

なぜ中国指導部は判断を間違ったか、その理由は

  • ①林鄭月娥長官が、市民がもう「火炎瓶の飛び交う街にうんざりしている」と誤判断し、親中派が有利と、指導部に伝えた。
  • ②7つの親中派の香港メディアが、選挙の「親中派勝利」の予定原稿を書き、北京の共産党機関紙の人民日報や中国日報(チャイナデイリー)も「勝利」の予定稿を準備していた。
  • ➂共産党指導部は香港の世論と民主主義の政治システムに対する理解の欠如が判断ミスを招いた。親中メディア、プロパガンダ部門、スパイから、フェイクニュース(情報)が北京に流れた。
  • 4フィナンシャル・タイムズは、米国高官の情報として「政治局員を含む上層部は下からフェイクニュースを受け取っている」、「非常に質の悪い情報、下の人が嘘ばかりついている、と報じた。
  • ⑤習近平体制後、中国共産党は中央集権、権威主義システムを強化し、反体制派を抑圧し、インターネットなどで情報検閲と統制を行っていることの弊害で原因で、下からは「おいしい話しか上がってこない。(香港大紀元より)

つまり、独裁的な権力を握ったランプ大統領の自ら発するフェイクニュースも、習近平主席の声明も共産党のプロパガンダニュース)も同じ類のものなのだ。真に自由で民主的な権力を監視するマスメディアにはかなわない。両人とも周りの茶坊主たちからの耳ざわりの良いニセ情報(フェイクニュース)しか入ってこない。その構造的な矛盾がミス判断の原因となる。

さて、安倍首相は2019年6月、大阪でG20サミットで習近平主席と会談した際に、日中関係を「永遠の隣国」と位置づけて互いの重要性を確認、強化したいと習近平氏の2020年春の国賓として訪日を約束した。ところが、香港で「反中国」の民主派が圧勝し、その後も「自由な選挙」を要求して香港市民の大規模デモが続いている。習近平主席来日はあと4ゕ月後に迫っており安倍首相が米中対立に挟まれれてどう対応するのか、注目される。

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