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日中北朝鮮150年戦争史(23)南シナ海、尖閣諸島での紛争は戦争に発展するのか。 『中国の夢』(中華思想)対『国際法秩序』(欧米思想)との衝突の行方は!(上)

   

  日中北朝鮮150年戦争史(23)

南シナ海、尖閣諸島での紛争は戦争に発展するのか。

―『中国の夢』(中華思想)対『国際法秩序』

(欧米思想)との衝突の行方は!?-(上)

前坂俊之(ジャーナリスト)

  ◎中国の領有権主張を完全に否定する裁定が下された。

南シナ海の90%の領有権を主張する中国に対して、フィリピンがオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所に訴えた仲裁で7月12日、中国の領有権主張を完全に否定する決定が出された。

『海の憲法』とされる国際海洋法条約では、自然の島は沿岸から12カイリ(22キロ)を領海、200カイリ(約370キロ)を排他的経済水域(EEZ)として認められる。

一方、人工島や満潮時に水没する低潮高地の場合には領海もEEZも認められない。 南シナ海の九段腺(中国が領有権を主張するため地図上に引いた境界線)についても法的根拠なしと否定した。

 

また、南沙諸島(スカボロー諸島)にあるすべてのリーフは法的には中国のEEZ(排他的経済水域)や大陸棚を生成しない『岩』であって島には当たらないとの裁定を出して、フィリピンの完全勝訴となった。

この中国対フィリピン(ベトナム、バックに米国、日本)との対立は『国際秩序対中華思想』の衝突―欧米中心の国際システムにいら立った中国の挑戦の構図なのである。

米ソによる冷戦対立が終焉を迎えてから四半世紀。アジアは再び2つの大国による主導権争いが激化しているのだ。

中国の勃興はアメリカの1国覇権主義への挑戦状であり、ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が過去500年の事例を調べたところ、『新興大国と既存の覇権国が激しく争った16のケースのうち、75%に当たる12件では戦争が勃発していた。

(『ニューズウイーク日本版』7月26日号)との調査結果が出ている。それだけに、今後の両国の出方によっては戦争勃発のリスクが高まったといえる。

この仲裁裁判所の判決は紛争当事国を法的に拘束する最終的なものだが、この判決を執行する手続はないので、中国の軍事基地化をストップさせ原状回復させることはできない。

しかも、中国は裁定前から、判決には一切従わないといけ猛々しい態度で、埋め立てと軍事基地化を強行しており、裁定後もその強硬的な発言、行動に変化は見られないので、今後、中国の国際判決無視の『無法国家』の暴走が繰り返されれば一触即発の事態も危惧される。

 

◎中国側の言い分、強引な埋め立て、軍事基地化の突貫工事

 

中国が南シナ海のほぼ全域を領海と主張する九段線は1947(昭和22)年に当時の中国国民党政権(蒋介石政権)が制定した「九段線」が根拠で、これが具体的に中国の地図に現れたのは1953年のことである。

南シナ海の大部分を占める九段線は緯度0度から北緯23度付近まで広がっている熱帯・亜熱帯の浅い海域で、水深はほぼ200m以下である。 スプラトリ―諸島付近は中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシアの5か国が入り乱れて実効支配している。

 

この海は、世界の漁獲量の1割を占める優れた漁場で、ベトナムやフィリピンの漁師が中国の漁船に締め出されたり、殺されたり、拿捕されたりという事件が頻発していた。 国際法上は、満潮時に水に潜ってしまう岩礁は「島」ではない。

そこをいくら埋め立てて「島」のようにしたとしても、国際法上は「領土」にならない。それを中国は無視して、領有権を主張して一方的に軍事基地化を強行してきた。

なぜ1953年ごろに中国は『領有権』の主張を始めたのか。それは海洋調査によって、南シナ海の海底には110億㌢以上もの原油や、約5兆4000億立方㍍に上る天然ガスの埋蔵量があることが判明したためだ。

そのため、強引に領有権を主張して紛争をエスカレートしてきたが、2014年6月にシンンガポールで開催されたアジア安全保障会議で中国側代表の王冠中・人民解放軍副総参謀長(当時) は、「南シナ海は2,000年以上前から中国の支配下にあった」と突然発言し、そのあまりの態度に、場内から失笑を買う一幕もあった。

◎中国共産党の『核心的利益政策』とは何かー

尖閣諸島問題も含む。

こうした中国側の強硬姿勢の背景には中国共産党の『核心的利益政策』がある。 中国は日本を抜いて世界第2の経済大国に発展し、2030年代には米国を抜いて世界一になるとの見通しのもとに、習近平主席は『核心的利益政策』を鮮明に打ち出した。

その国家の『核心的利益」とは・・・

①台湾問題

②チベット独立問題

③東トルキスタン独立運動

④南シナ海問題(九段線、南海諸島)

⑤尖閣諸島問題―

を挙げている。   これが、中国の国家主権と領土保全、安全維持、経済社会の持続的で安定した発展するための最重要課題、国益と位置づけているのである。

その点では絶対妥協できない領土紛争なのである。 この底には歴史的に清国末期に西欧列強の英国、フランス、ロシア、日本などに植民地され、領土を奪われた被害者意識とその恨み、敗戦劣等意識が入り混じっており、領土、国益の奪還運動でもある。

 

当時の国際法、国際法的秩序は西欧列強の植民地、侵略、帝国主義の別名でもあり、中国側の主張はこの恥辱と被害の回復運動であり、侵略される前の大清帝国の領土の復活政策が『核心的利益政策』であり、習近平主席のアメリカで語った『中国の夢』(強中国夢)の復活なのである。

2013年3月に習近平が国家主席となったが、習近平は国家主席就任以前から『中国の夢』(強中国夢)「中華民族の偉大なる復興の実現」を掲げており、2012年、国家副主席として初めて訪米した際には、ワシントンポストのインタビューで「中国とアメリカとで太平洋を二分すること」とのニュアンスの回答をしている。

 

2013年6月、国家主席就任してから訪米した際には、オバマ大統領に対して、「太平洋には両国(アメリカと中国)を受け入れる十分な空間がある」と明言。

さらに露骨な野心を見せつけた。   この背景にはGDPで日本を抜いて世界第2位となり、2020,30年までに落ち目のアメリカを抜いて世界一のGDP大国に躍進するという自信と民族的な誇り、ナショナリズムの高まりがある。

中国流の行動原理、それこそ『中華思想』によるものだが、3000年の歴史の中で一貫して受け継がれており変わらないものなのである。

 

  ◎『異形。異質国家』中国の恫喝、蛮声、暴力、

威嚇、謀略的行動は不変  

 

だからこの核心的利益のかかる南シナ海問題でも尖閣諸島問題でも一歩も引かず、南シナ海問題では最初から裁定を拒否し、裁判をボイコットした。

①  裁判には自国の主張の根拠となる歴史記録、資料を提出せず、判決には従わずと法治主義を否定する(もともと、中国は法治主義はなく、人知主義であり、物的証拠としての記録主義は存在しない)

②  外務省出身の柳井俊二氏が海洋法裁判所所長として一方的に中国不利の裁定人を5人を決定したと非難を繰り返す。(これは全くの出まで、裁定人の選抜は適正な法的手続きに決定された。

中国側は裁定をボイコットして、裁判に出廷して堂々と歴史文書を全面開示して主張すればいいものを、その他の場所でコソコソ、一方的に自己宣伝、主張して相手方を誹謗中傷する、いつもの中国流の謀略戦術なのだ)

③  中国伝統の『おらが大国、大将』的な大国主義、利己主義、ミーイズム、自分勝手方式)があり、南シナ海問題を金で釣ってアフリカの独裁国のモザンビーク、トーゴなどの支持とりつけに懸命になっているお粗末さで、明治維新当時に日本と同様に鎖国(中華思想)を自己改革して、西欧近代主義に脱皮できなかった失敗を再び繰り返している。

④  裁定が出ると、ボイコットした点を棚に上げて、不公正の裁定と非難の大合唱で、北朝鮮的なとんでもお笑い無法・暴発国家と同じパターンである。 その無軌道ぶりは世界のメディア、インターネットで赤裸々に暴露され、世界中はあきれ果てているのに国内のネット、メディアを完全に「ブラックボックス化」はしている、情報統制国家なのである。

これが中国流の『論理』、道徳、国家のモラル、国家の品格にふさわしいものなのかどうかは、言うまでもないであろう。

国際連合、国際裁判所というものは、人類の戦争の歴史の反省として、覇道(武力)ではなく、平和的な相互の『話し合い』によって、それぞれの主張の根拠を物的証拠(証言、文書を含む)を出し合って論争し、一旦、決定が出たならば、不服があってもそれに従うというのが、近代的な国際ルールである。

 

孫文いうところの『王道』の現在形である。  中国はいまだに古代からの『人知主義』『皇帝の王道という名の独裁主義』その現在形としての『中国共産党1党独裁・非民主主義国家』であり、法治国家ではないのだ。      

つづく    

 - 戦争報道, 現代史研究

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