歴史秘話「上野の西郷さんの銅像はこうして作った」「西郷さんと愛犬」の真相ー彫刻家・高村光雲が語る。
「上野の西郷さんの銅像はこうして作った」-彫刻家・高村光雲が語る。
銅像「西郷さんの愛犬」の真相はーー
「小樽新聞」(1936年(昭和9)1月7日付)
犬を引っ張って上野の山から東京中をにらみまわしている西郷さんの銅像は、お江戸名物の筆頭株に位するものだが、あの銅像が出来上ったのは明治27年頃で現帝室技芸員帝国美術院会員、高村光雲翁(82)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%9D%91%E5%85%89%E9%9B%B2
が壮年時代、大山厳、松方正儀、樺山資紀、西郷従道らの薩摩出身のそうそうたる面面に、榎木武揚らも加って銅像建設委員合が設けられ、その委嘱によって光雲翁が前後三年の苦心を払って完成したもの。
-ザヅト四十余年を春風秋雨、文字通りお山の大将として頑張っている訳だが戌年にちなんで光雲翁のロから「犬をつれた西郷どん」 の由来を聞いてみる。‥何しろ昔の話でくわしい事は忘れてしまったが、製作には相当苦しんだものだ、あのポーズにしてからが西郷さんという人は謹厳な人で和服の時は袴を放さなかったんだという様な非難も聞いている、どんな服装をさせるかということにも散々、頭をひねってね、御維新当時の服装でやってみたりしたが.一向に西郷さんの感じが出ない。
委員の間にも堅苦しくない、磊落な所がよからうという意見が出て結局、西郷さんが閑(ひま)を見てはよく出掛けた兎(うさぎ)の山狩のあの構図に決まった次第で、これには榎本武揚さんなんか大いに賛成してくれた。
あれを犬を連れて散歩しているんだなどという人があるが大間違いだよ、その証拠には、腰にはわなを作る縄の束がぶら下っているし、
小さな刀を差しているが、これも山狩の時、いばらや篠竹を切り倒すにのに使うものだ。あの犬は兎追いの犬で桜島産の独特の小さいが悧巧な奴で西郷さんもよく可愛がっていたものだそうだ。構図はさて決まったが、写真があるわけではなし顔には弱った。
人によっては西郷さんは目玉がらんらんと大きくて非常に恐ろしい顔つきをしている、にらまれるとすくみ上る様な顔だったというし、ある人は目の切れの長い聡明な顔で眉毛がこく口元は一文字に引締ってむしろ可愛らしい顔つきで笑うととても柔和だったともいうし、つまり御機嫌のいい時と悪い時の相違だったんだろうが、これ等の人の印象をまとめて、ああいう風に仕上げたのだが、次には身丈がどの位あったかという点で、また行きづまってしまった。
陸軍で調べてもらっても一向分らんし、西郷さんのきていた軍服や長靴、晴子などを取り寄せてもらって調べて見たところズボンはわたしの胸まで来るし、長靴はももまでもはいるという代物、帽子のあご革は西郷さんの汗や脂で、真っ黒になっていたが、これまたわたしの顔を一ト回り半もする長いものでとにかく非常に大男だったことは、はっきりしたわけだ。
結局身の丈を六尺(1m80)ときめ銅像はその倍の一丈二尺〔3m60㎝〕に作り上げることになった。その後出来る銅像は殆ど丈
二尺又は一丈六尺と極まってしまった様だが、あの銅像の一丈二尺
は今いった様に身長の二倍という根拠があるので、漫然と一丈二尺
に作り上げるのとは訳が違っている。
スネのはみ出したつんつるてんの着物はいかにも滑稽のようにも
思えるが、西郷さんという人は殿様から拝領の着物はそのまま縫直さずに着たものだそうで、従って人並はづれた西郷さんが着れば、そネもはみ出そうし、腕も出ようというものだ。
こんな訳でやっとあの西郷さんが出来上ったが、犬だけは鹿児島からワザワザ本物の桜島犬を連れて来てもらって写生した、もちろん西郷さんが飼っていた犬とは違うが、これだけは実物写生で西郷さんほど手を焼かずに済んだ。
思えば昔語だが、その当時は美術学校でも未だ今日の様なマネを知らなかったので、あの銅像の原型に木にぶっつけに彫り上げたもので、並並の仕事ではなかったのだが、此原型は多分今も鹿見島の光明寺に保存されているはずだ
関連記事
-
-
世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記(2015 /10/10-18>「ペルー・リマかクスコへ向かう」スゴイ、感動、感激!、陸野国男(カメラマン)①
★<世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記(2015 /10/10 …
-
-
「国難日本史の歴史復習問題」ー「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス⑦」◎「ロシアの無法に対し開戦準備を始めた陸軍参謀本部の対応』◎『早期開戦論唱えた外務、陸海軍人のグループ『湖月会』はどうしてできたか。』★『山座円次郎の外交力』
「国難日本史の歴史復習問題」ー 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパ …
-
-
『日本インド交流史①』★『インドの夜明けとなった日露戦争(1905-6年)』★『日露戦争はコロンブス以来500年史で西欧の白人人種が初めて有色人種に敗れた大戦争となり、その後の世界史を変えた」
今年は日露戦争120年、昭和100年、大東亜戦争(80年)の「日本の戦争の世紀」 …
-
-
日本リーダーパワー史(561)イチローは現代の「宮本武蔵」なり「鍛錬を怠るな<鍛とは千日、錬とは一万日(30年)の稽古なり>
日本リーダーパワー史(561) イチロー(41歳)は現代の「宮本武 …
-
-
『オンライン米大統領講座/トランプ米大統領の狂乱/断末魔、トランプ支持者が米議事堂に乱入、暴動!』★『1月20日以後はトランプ氏は反逆罪、脱税容疑など10数件の容疑で逮捕か?』★『トランプドタバタC級劇場の終焉』★『バイデン民主主義/修復劇場の幕開け!』
時代は急テンポで変化する。 後世の人々は「トランプ米大統領の暴走、 …
-
-
世界最長寿120歳の泉重千代さんの養生訓』★『①万事くよくよしない②腹八分か七分がいい③酒は適量ゆっくりと④目がさめたとき深呼吸⑤やること決めて、規則正しく⑥自分の足で散歩に出よう⑦自然が一番、さからわない⑧誰とでも話す、笑いあう⑨歳は忘れて、考えない⑩健康はお天とう様のおかげ』
2009/06/19 2025/04/25記事再編集 …
-
-
☆書評『新渡戸稲造ものがたりー真の国際人、江戸、明治、大正、昭和をかけぬける』(柴崎由紀著、銀の鈴社、定価1500円+税)
☆書評『新渡戸稲造ものがたりー真の国際人、江戸、明治、大正、昭和をかけぬける』( …
-
-
『Z世代のための百歳学入門』★『物集高量は(元朝日記者、大学者、106歳)は極貧暮らしで生涯現役、106歳の天寿を果たした極楽人生の秘訣①』★『父・高見は「学者貧乏、子孫に学者は出さぬ」と遺言したが、息子・高量のハチャ、メチャ流転人生』①
『日本一の大百科事典を創るため土地、家屋、全財産をはたいて破産した明治の大学者( …
-
-
『Z世代のための大谷イズムの研究』★『「神様、仏様、大谷様」―大谷が世界を変える』★『大谷の市場価値は「世界のトップへ」「MLBでは1位』★『真田広之の「SHOGUN 将軍」がエミー賞18部門を独占1』
10月には80歳(傘寿(さんじゅ)を超える私の「生きがい」と「元気」「やる気」の …
-
-
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑱日本帝国最後の日(1945年8月15日)をめぐる攻防―終戦和平か、徹底抗戦か➂』
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑱ 『日本の最も長い日―日本帝国最後の日 …
