『リーダーシップの日本近現代史』(307)★『国難リテラシーの養い方③/ 辛亥革命百年⑬/『インド独立運動革命家の中村屋・ボースをわしが牢獄に入っても匿うといった頭山満』★『ラス・ビバリ・ポースの頭山満論』
日本リーダーパワー史(74)記事再録
辛亥革命百年⑬中村屋・ボースと頭山満<ラス・ビバリ・ポースの頭山満論>
前坂 俊之ジャーナリスト)
大正四年の冬、インドの志士ラス・ビバリ・ポース(昔時の変名・タクール)が日本退去を厳命され、横浜出港のその乗船が上海,香港に寄港すると共に、その地の英国官憲の手に捕えられて無尋問のまま死刑を執行される絶体絶命の危機に陥った。
その生命は風前の灯となった時、大慈悲の人類愛に燃ゆる頭山翁の手が動いて、非常手段により神隠しを演じてポース氏を救助したことは頭山翁の眞骨頂を示す有名な話だが、ポースはこの大恩人たる頭山翁を始め、当時の同情者を毎年一度は欠かかさず招待して謝恩の会を、当時の隠れ家・新宿中村屋で開くことにしていた。したの写真は昭和七年のその会である。

(右から頭山翁夫人、犬養毅、その後はポース氏、頭山翁、内田艮平氏、大崎正吉氏、左は鈴木梅四郎氏で、いとも和やかを歓談の光景)
なおこの国際的大事件の眞相はすでに世人周知の事であらうが、ここに事件について努力された光輝あるその人々の芳名を記録して後世に伝えたい。
その第一は頭山翁その人である。翁が沈思黙考、この事のアジア民族の威信に関する重大案件たるを想ふと同時にその鉄石の意思は牢固として定まり、電光石火の間にこれに処すべき手配は定められた。
相手方は英国政府を代表する英国大使と石井菊次郎外相と日本政府であったが、これに対する頭山翁側でポースを援護のために翁の意志を体して起ったのは、
杉山茂丸、内田良平、寺尾亨、佃信夫、中村粥、宮川一貫、美和作次郎、的野半助、相馬愛蔵、大原剛、萱野長知、大崎正書、宮崎滔天、大川周明、本城安太郎、葛生能久、水野梅暁、白石好夫らの諸氏であった。
●世界の巨人頭山満翁について(ラス・ビバり・ボースの話)
私は一九一五年、政治上の理由の下に変名して日本に亡命避難した。当時、支那革命の巨頭・孫文も日本に来ておられた事を聞いた。偶然に或るインド人から孫文の居所を聞いたので面会に行ったところ孫文は大へん喜んだ。それ以来、孫文と親善の間柄になって度々往復した。
孫文の方から一度、私に向って、遅かれ早かれ貴君の本名が英国にわかるので英国として貴君を引渡してもらうために努力しないとも限らぬから、今の内に日本の有力者と知合になっていたらどうであるか、という話があって、孫文の友人であった宮崎滔天に連れられて頭山翁の宅を訪問し、日本語はわからぬので宮崎氏を通じて頭山翁と色々の話をした。
その時に私の感想としては、頭山翁に合うた時に、丁度インドの昔の仏教聖人に合うた時のような感じがした。白い髭を生やしてじっとして沈黙を守ってすわっておられる頭山翁の姿は、インドの古代の聖者を思いひ出させたのだ。その後日本政府から退去の命令を受け、危いところを領山翁に匿まわれ、後に自由になって今日に至っておる。
私が頭山翁を一番尊敬する点は、頭山翁の人類に対する愛情という事である。日本人であっても外国人であっても、何所の国の人でも悩み苦しんでいる人のために頭山翁は何時でも心配されておるのだ。翁の愛情は単なる人類界に限られておるというわけでなく、動物に対しても翁は同じ様を愛情を持っておるのだ。一度私はある米国人の友人を連れて行って、翁に紹介した事があった。その時に友人を翁に紹介して次の如き事をいうた事があった。
「先生、この人は人間が非常に好くって人にだまされてばかりいます』
翁はそれを聞いて静かに次のように言った。
「そうですか、それはだますよりだまされた方が好いです』
私がその事を英語で米国人の友人に通話すると、友人は涙を流しながら、「こういう言葉は私として始めて聞いたのだ、こういう場合に一般的な人は将来においてだまされない様にと云うべきものなのに、翁の
「だますよりだまされた方がよい」というた事を聞いて翁が精神的にどれ程、進んでおられるかという事を確信した」というのであった。
この一つの例によりても翁の人格がどれ程高いものかという事が証拠だてられておるのだ。郎ち、翁は精神万能主義の下に生活せられておるという事はこれによりて表されておる事だ。翁の言行が一致しておると云う事は翁の一つの特性である。
翁は何時でも犠牲心を充分に持っておる。自分の慾を犠牲にして個人のため社会、国家、全人類のためになる事なれば自己のすべてを捨てて犠牲になるという事が今日まで数多くあり、また、翁の一番の楽しみ得る事は、もらう事にあらず、与える事にある。即ち翁は自己を犠牲にし他を幸福にするという主義を持っておられるのだ。
人によっては、翁を浪人の親方、あるいは政治家である用に解する者もおるが、しかし翁はそれらよりも、ずつと優しくて全人類に対する愛情を持っておられる。故に寧ろ人類主義者と呼ぶ方が一番適当である。私は福島に講演に行った事がある。その時、福島のある友人は私に頭山翁は日本の大立者であるというた事があった。私はそれを反駁し、頭山翁は日本の大立者であるということは翁の人格を無視することに他ならない。
翁は日本の大立者でなく世界の大立者で、全人類界の大立であることを認めなければならない。翁は単なる日本の宝物でなく、世界の宝物であり、世界の巨人である。
<参考文献「頭山満翁写真伝」(藤本尚則著、昭和10年)>
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(680) 『日本国憲法公布70年』 『吉田首相のリーダーシップと憲法論と神学論争』吉田が偉大なリアリストであり国際政治経済への「先見の明」があったことは確かだ
日本リーダーパワー史(680) 『日本国憲法公布70年』 『吉田首相のリーダーシ …
-
-
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1052)>『世界から米国の「背信」、時代錯誤と大ブーイングを浴びたのが「パリ協定」離脱』★『環境破壊のならず者国家、1位米国、2位は韓国―パリ協定離脱宣言に非難ごうごう、 その当然すぎる理由』★『トランプはパリ協定離脱の正義を信じている 「核の脅威こそ究極の地球環境問題だ」』●『パリ協定「政権抜きで果たす」 米国の企業や大学で動き』
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1052)> 世 …
-
-
日本リーダーパワー史(183)『大アジア時代の先駆者・犬養木堂③』亡命イスラム教徒を全面的に支援した政治家
日本リーダーパワー史(183) <百年前にアジア諸民族の師父と尊 …
-
-
『新型コロナウイルス/オミクロン株のスピード動向①』★『オミクロン株が世界的に猛威を振るう』★『オミクロン株は2ゕ月遅れで日本に襲来』★『ブースター接種率は米EUは3,40%なのに、日本は先進国ダントツの最低0,5%にとどまる大失敗』★『再び、後手後手の対応のスローモー岸田政権』
オミクロン株が世界的に猛威 前坂 俊之(ジャーナリスト) 世界中で再び新型コロナ …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ(80)』 「 デーブ・スペクターの人気者としての実力は日本では無敵である”」(NTY)
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウ …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(892)金正恩委員長からの会談を要請に飛びついたトランプ大統領、「蚊帳の外」に置かれた安倍首相、大喜びする文在寅韓国大統領のキツネとタヌキの四つ巴のだまし合い外交が始まる②
世界/日本リーダーパワー史(892) 平昌五輪前後の韓国・北朝鮮・米国の三つ巴外 …
-
-
知的巨人の百歳学(137)-『六十,七十/ボーっと生きてんじゃねーよ(炸裂!)」九十、百歳・天才老人の勉強法を見習えよじゃ、大喝!』★『日本資本主義の父・渋沢栄一(91)の「生涯現役・晩年の達人」のノーハウ公開!』
記事再録・百歳生涯現役入門(176)『生涯現役/晩年の達人の渋沢栄一(91歳)① …
-
-
速報(98)『日本のメルトダウン』『事故4ヵ月、次々に未知なる混乱状況がうまれ、混迷の一途。50年単位で考えよ』
速報(98)『日本のメルトダウン』 『事故から4ヵ月、次々に未知な …
-
-
日本リーダーパワー史(803)ー『明治裏面史』★ 『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス⑲『日露戦争開戦6ヵ月前』★『6ヵ条の日露協定書を提出、露都か、東京か、の交渉開催地でもめる』
日本リーダーパワー史(803)ー『明治裏面史』★ 『「日清、日露戦争に勝利 …
-
-
『日本の運命を分けた<三国干渉>にどう対応したか、戦略的外交の研究講座①』★『リーダーシップの日本近現代史』(55)記事再録/<日本外交大失敗の「三国干渉」歴史に学ぶ」『「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)せよという」-三宅雪嶺のインテリジェンス』ー 現在の超難関を突破するため、『坂の上の雲』の 知恵と勇気の古典に学ぶ①
リーダーシップの日本近現代史』(55)記事再録/<日本外交大失敗の「三国干渉」歴 …
