鼎談『幕末から昭和・日本を変えた30人の男を選ぶ』〈保坂正康×前坂俊之×原武史〉「週刊現代」(8月14日号)で鼎談をおこなう
2015/01/02
『幕末から昭和・日本を変えた30人の男を選ぶ』〈保坂正康×前坂俊之×原武史〉
「週刊現代」(8月14日号)で鼎談をおこなう
<前坂俊之の発言要旨>
① 『現状認識について』
来年(2011年)は清朝が倒れ、中華民国が作られた辛亥革命からちょうど100年、真珠湾攻撃(1941)から70年目になります。日米中の開係を考ぇると、ひとつの節目の年ですよね。今回の座談会にあたって、いろんな人物を思い浮かべたのですが、幕末から明治にかけて軍人が宰相になり彼らの息子の世代が太平洋戦争で日本を潰し、明治の遺産を台無しにする。その後、なんとか立ち上がって経済復興を遂げますが、今度は太平洋戦争世代の息子たちが、平成不況で公的債務が約1000兆
円というような国にした。いまは太平洋戦争に続く第二の国家破産を迎えつつあると認識しています。
円というような国にした。いまは太平洋戦争に続く第二の国家破産を迎えつつあると認識しています。

② 『戦後の政治家はだれがナンバーワンか』
私も戦後の首相を一人だけ挙げるならば吉田茂を挙げます。政治テクニックやリーダーシップという点では、田中角栄も非常にあったと思います。ただ、政治哲学や倫理観を持っていたかというと疑問です。
その他の戦後の首相ならば、鳩山一郎はソ連との国交回復をやったという点で評価できると思う。あと、中曽根康弘でしょうね。中曽根さんは自分が総理大臣になって何をやるかというのをじっくり考えながら登場し、真っ先にやったのは日韓関係の修復だった。韓国を訪問して、自ら勉強したき韓国語で挨拶しました。そういう面では『風見鶏』と批判されましたが、政治的リーダーシップとツーダーパワーを兼ね備えるえた戦後の代表的な政治家であったと思いますね。
③ 「最高の外交官は・・」
陸奥宗光は西南戦争で西郷隆盛に内通していた容疑で監獄に入れられ、それから伊藤博
文の引きでイギリスに留学する。そこで猛烈に勉強して、その後、外務大臣になりますが、彼の書斎には万巻の洋書が棲まれて死ぬまで猛勉強していた。「政治家は実学を持ち、世の中に習熟した人ができる。机上の空論をもてあそぶ人間にはできない」と官僚や世襲議員を否定しています。
小泉純一郎さんや麻生太郎さんとか休みの日に本屋さんで新書を10冊かか20冊買ってきて読んだという記事を読みましたが、そんなの昔の政治リーダーとは勉強の程度深さが全然違う。
④ 『明治以来の経済人ベスト10を私の独断と偏見でのランキングでは・・・』。
「やはり1番目が日本の資本主義のゴッドフアーザーで、右手にソロバン、左手に論語という経済と遺徳の合一主義を説いた渋沢栄一。2番目がミキモトパール御木本幸吉で、3番目が丁稚奉公から鈴木商店の大番頭になり大正時代に三井を凌ぐ大会社に育てた金子直吉。4番目がトヨタグループの礎を築いた豊田佐吉と豊田喜一郎の父子鷹、5番目が「電力王」と呼ばれた松永安左工門。6番目が出光興産創業者の出光佐三で、7番目は岡崎嘉平太です。
彼は昭和30年代の全日空の社長ですが、日中国交回復にあたり100回中国へ渡って周恩来と親密を関係を築いた。田中角栄はその上に乗っかって日中国交正常化をやったわけです。
8、9、10番目は、戦後の高度成長期を代表する創業者とし松下幸之助、盛田昭夫と井深大のコンビ、それに本田宗一郎の4人です」
「御木本幸吉を2番目にしたのは、どういう理由からかーでいうと、彼は明治の半ばに真珠の養殖に成功していますが、これにはかのエジソンもびっくりして、こんなことは自分にもできない、世界的な発明だと感心しているんですね。まだ鉄道が通ったばかりの120年前の貧乏で困難な時代に、世界的な発明によって二品二村連動の町おこしをやったわけで、現代人はもう一度、自分たちの足元を掘り起こせというメッセージのように聞こえるんです。それと番外で、現在の経営者からソフトバンクの孫正義を加えたい。いまの日本の閉塞状況を打ち破ってくれそうな経営者は、彼以外に見当たらない」
⑤ 『最強のリーダーパワーを発揮したのは誰か』
再評価ということで言うと、日清戦争のときの陸軍参井本部次長だった川上操六。彼はのちに参謀総長になりますが、私は戦前の軍事リーダーとして球、この人が最強だと思っているんですね・。
日清戦争では広島に大本営を作って、そこで川上は海軍も含めて一本化して総指揮を執った。日露戦争の準備も、ドイツ陸軍参謀総長のモルトケに弟子入りして、2年間じっくり戦略を学んで、対露戦争の情報戦略を彼が一人で練り上げています。
国内では、まだ薩長藩閥人事が跋扈していたときに、派閥を超えて参謀本部に秀才、俊英を集めた。骨のうえで、諜報網を大陸から世界各地に張りめぐらせて情報を収集し、通信網の整備、兵站、補給、輸送までを整備して日露戦争に傭えた。川上は日露戦争の5年前に亡くなってしまうんですが、日本に『インテリジェンス』を持ち込んだ川上のおかげで日清・日奮戦争の勝利があった。
この間、管内閣が国家戦略室を格下げしてしまいましたけど、国家戦略なき今の時代にあって、つねに国家戦略を考えて任務を遂行した川上操六は、もっと再評価きれるべきです。
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(65)記事再録/ 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(55)『三国干渉』後に川上操六はスパイ大作戦をどう組み立てたか『日英同盟締結に向けての情報収集にエース福島安正大佐 をアジア、中近東、アフリカに1年半に及ぶ秘密偵察旅行に派遣した』
2016/02/25   …
-
-
日本リーダーパワー史(862)『日本の「戦略思想不在の歴史⑯』まとめ記事『世界史の中の元寇の役(文禄の役、弘安の役)6回』
日本リーダーパワー史(862) まとめ記事『世界史の中の元寇の役(文禄の役、弘 …
-
-
『Z世代のための日中韓外交史講座』㉒」★『 日中韓150年史の真実(7)<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は、主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回帝国議会で演説した』(カット写真は大阪駅前の高層ビル群6枚掲載)
『オンライン講座/現在のミサイル防衛・抑止力論議の先駆的事例の研究』★ 2020 …
-
-
『オンライン/75年目の終戦記念日/講座➂』★『1945年(昭和20)8月、終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ」発言』★『徳富蘇峰の語る『なぜ日本は敗れたのか➁』「リーダーシップ・長期戦略の欠如である』
★『1945年(昭和20)8月、終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「 …
-
-
日本風狂人伝(43)ジョークの天才奇才(1)内田百閒のユーモア『美食は外道なり』(1)
日本風狂人伝(43) ジョークの天才奇才(1)内田百閒のユーモア 『美食は外道な …
-
-
日本世界史応用問題/日本リーダーパワー史『日米戦争の敗北を予言した反軍大佐/水野広徳の思想的大転換②』-『軍服を脱ぎ捨てて軍事評論家、ジャーナリストに転身、反戦・平和主義者となり軍国主義と闘った』
2018/08/19 …
-
-
知的巨人の百歳学(126)『天才老人/禅の達人の鈴木大拙(95歳)の語録』➂★『平常心是道』『無事於心、無心於事』(心に無事で、事に無心なり)』★『すべきことに三昧になってその外は考えない。結果は死か、 生か、苦かわからんがすべき仕事をする。 これが人間の心構えの基本でなければならなぬ。』
記事再録/百歳学入門(41) 『禅の達人の鈴木大拙(95歳)の語録』 …
-
-
日本リーダーパワー史(752)–『プーチンにやられた12・15 安倍「北方領土交渉」無残な結末 「2島返還+α」から「0島返還」へ』★『 プーチン来日でも進展困難な「北方領土問題」 経済協力活動は主権がどちらかでもめる』●『北方領土返還やっぱりプーチンに騙された“お坊ちゃま首相”』★『トランプ政権誕生で潮目の変わった北方領土 様子見を決め込むプーチン、安倍首相へのお土産あるか』●『CIA調査「トランプ氏勝利のため露が大統領選に干渉」、米紙報道』★『プーチン氏はアスペルガー症候群、米国防総省が研究報告』●『日露開戦までのいきさつーロシアは再三再四の遅延、引き延ばし、恫喝外交を展開、 日本側は妥協し、忍耐して交渉を続けるが、ロシア軍が侵攻した時点で堪忍袋の緒をきって開戦に踏み切る』』
日本リーダーパワー史(752)– 「日露外交交渉で安倍首相はオウン …
-
-
『オンライン講座ー★人生/晩成に輝いた偉人たちの名言①』●『日本一『見事な引き際・伊庭貞剛の晩晴学②『「事業の進歩発達を最も害するものは、青年の過失ではなく、老人の跋扈である。老人は少壮者の邪魔をしないことが一番必要である」』』
2019/11/20 『リーダーシップの日本近現代史』( …
