明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変⑦』-服部宇之吉著『北京龍城日記』(大正15年)より③」★『中華思想対西欧キリスト教思想の文明の衝突』★『自由、平等、人権、博愛精神の西欧思想が中国人には全く理解できずパーセプションギャップ(認識ギャップ)、コミュニケーションギャップが疑惑を増幅し戦争になった』
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変⑦』
支那(中国)人の脳中には、西洋の宣教師はいずれも、キリスト教徒を清国皇帝の統治より奪い去らんとするものとの疑いをもった。
これらの事実と疑念とが結合して、布教に対する当初の疑念に力を得て、布教はその実は野心の方便であると信じるに至った。
第二に、布教の方法がまたまた支那人の疑惑を増し、西教(キリスト教)反対の気勢を盛んにした。
はじめ宣教師は、キリスト教徒以外からの妨害があること危惧して夜間にもって教徒を集めたことがあった。
また、他人の気づかぬ秘密の場所に集めたこともあったが、この方法は、その昔、ローマにおいてキリスト教徒が政府の嫌疑を受けたのと同じように、社会からキリスト教に対し疑惑を抱かせる原因となった。
そのうえ、支那では、男女席を同じくすることは古代より禁じられていたのに教会堂では、家族、同族でもない男女が、膝を交えて肩を接して席に並んだことにより、キリスト教徒でない人々から種々の非難を招いた。
元来、造言蜚語(根拠のない嘘や作り話)の癖のある支那人のこととて、キリスト教徒の集会の方法が、自分らの眼にいかにも奇怪に映ずるのに、揣摩憶測(しまおくそく、自分だけの判断で物事の状態や他人の心中などを推量すること。当て推量)を逞しくして種々のデマを伝え、秘密に悪事を企んでいるように言い噂し、また、教キリスト教徒が妖術をもって婦女を辱かしめているとも言いふらした。
流言に動かされやすき支那人は、これを事実としていい伝え、ついに虚をもって実となすに至り、この謬見妄説(びゅうけん・もうせつ、まちがった考えや見解)は意外にも、西教に対する一般の疾悪嫌忌(しつあくけんき、憎しみと憎悪、忌みきらわれること)を醸成した。
その名を西教の流に託して世を騒がしたる白蓮教
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E8%93%AE%E6%95%99
・天理教
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%90%86%E6%95%99_(%E4%B8%AD%E5%9B%BD)、
八卦諸教
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%8D%A6
のごとき、また近くは太平賊
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E5%A4%A9%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B9%B1
のごとき、みなキリスト教をもって危険の分子を含むものとの疑念を巻き起こした。
またキリスト教宣教師は、早くより布教の副手段として、病院、育児院、訓衆院などを設置経営したが、これもまキリスト教に対する疑惑の一因となった。
支那(中国)人は、無報酬にて他人に恩恵をほどこすことを理解できず、宣教師らが、いくたの資材を投じて病院などを建設し、無報酬で病気治療にあたり、育児、幼児、子供を養成・教育するに努力を見て、ますます怪訝(けげん、不思議で納得がいかないこと)思えた。
いわんや支那における道釈(道教と仏教)二氏の徒にして、かかる事業をなすことは、ほとんど見たことがないためだ。
支那には、あるいは半ばは政府の資本により、あるいはまったく私人の資産提供によりてできた救済所、育嬰堂(孤児院、捨て子院)および義学は、いたるところに設けられていたが、支那人は病院、育児院などの性質は、つとにこれを承知しているが、外来の宣教師らによる行為を見ては、とうてい疑惑を起こさぬはずはなかった。
その理由は、支那にて育嬰堂・義学などに損資する人は、功名富貴の点において、多少、傍輩に優るところある人々にして、支那人は、古来、天が少数者に富を授くるは、彼らをしてさらに多数の貧民を済わしめんがためなり。
すなわち富者は貧者を救済すべき義務ありと信じ、また出資捕助の人は、その義挙によりて、さらに自己の福利を増進するものと、われも人も信ずるをもって、功名富貴を得たる人が、育嬰堂、義学などのために資を損するは当然のことと思えり。
天すでに中外を限る以上、彼我たがいに相干与せず、相求めざるべきはずなるに、いま外国の宣教師らは、中国に来たり、痛癢(つうよう 精神的、肉体的な苦痛や、物質的な損害)を相関せざる中土の人のために出資損助することは、支那人にはとうてい理解を超えたことであった。
関連記事
-
-
日本のメルトダウン(526)「エネルギー革命と地政学:アメリカ石油国(英エコノミスト誌) 「アベノリンピック」で景気拡大(竹中平蔵)
日本のメルトダウン(526) ◎「エネルギ …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ビジネス・ ウオッチ(222)』-『TV局の電波利用料は、携帯の十分の一に驚愕、既得権、現行規制撤廃の最大の対象です』★『電波オークションの導入により、電波社会主義から脱し、電波の民主化・市場化を促進せよ!』
『F国際ビジネスマンのワールド・ビジネス・ ウオッチ(213)』 電波利用料の …
-
-
百歳学入門(188)★『日野原重明先生(105歳)』★『92歳の時の毎日の生活ぶりだが、そのエネルギーと分刻みの緻密なスケジュールと仕事ぶりはまさに超人的!』
百歳学入門(188) 日野原重明(1911-2017、105歳) https:/ …
-
-
日本リーダーパワー史(573)「日中戦争リテラシー 「近衛外交」の失敗は なぜ起きたかー河辺虎四郎少将回想応答録(昭和15年
日本リーダーパワー史(573) 「日中戦争リテラシー」 支那事変(日中戦争)での …
-
-
『リーダーシップの世界日本近現代史』(285)/★『新型コロナウイルス戦争について歴史的に参考にすべき日本インテリジェンス(常在戦場の胆力)』江戸を守った山岡鉄舟の国難突破力④ー『常在戦場の胆力、まず走りだしてから考えろー』
福島原発事故から3ヵ月後 2011/06/20 …
-
-
野口 恒のグローバル・ビジネス・ウオッチ③『コンテンツ産業で急がれる海外で稼げるビジネスモデルの構築』
野口 恒のグローバル・ビジネス・ウオッチ③ 『コンテンツ産業で急が …
-
-
『Z世代のための昭和史失敗復習講座』★『ガラパゴス・ジャパン・シンドローム(日本敗戦病)の研究』★『国家統治中枢部の総無責任欠陥体制ー太平洋戦争下の『大本営』『大本営・政府連絡会議』『最高戦争指導会議』 『御前会議』のバカの壁』★『今も続く『オウンゴール官僚国家の悲劇』
逗子なぎさ橋通信(24年/7/14/pm800富士山はお隠れ 20 …
-
-
『世界一人気の世界文化遺産「マチュピチュ」旅行記』(2015 /10/10-18>「朝霧の中から神秘に包まれた『マチュピチュ』がこつ然と現れてきた」水野国男(カメラマン)⓶
2015/11/02★<世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記 ( …
-
-
『Z世代のための安保防衛(戦争)論の歴史研究講座』★『世界・日本リーダーパワー史(537)三宅雪嶺(第一回文化勲章受章)の「日英の英雄比較論」―「東郷平八郎とネルソンと山本五十六」
2015/01/15日本リーダーパワー史(537)記事再録 三宅雪嶺 …
