前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

 ★5日本リーダーパワー史(776)ー 『アジア近現代史復習問題』 福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む』(9)『金正男暗殺事件をみると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」● 『(日本軍の出兵に対して)彼等の驚愕想ふ可し』は現在の日中韓北朝鮮外交 に通じる卓見、戦略分析である』★『近年、日本のアジア政略は勉めて平和を旨とし事を好まず、朝鮮は明治十七年の甲申事変以来、 殆んど放擲し、清国関係には最も注意して事の穏便を謀り、言ふべきことをいわず、万事円滑 を旨としたのは、東洋の平和のため』★『傲慢なる清国人らの眼を以て見れば、日本人は他の威力に畏縮して恐るに足らずと我を侮り、傍若無人の挙動を演じている』

      2017/03/07

  ★5日本リーダーパワー史(776)ー 

 ★『アジア近現代史復習問題』

福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む』(9)

「北朝鮮による金正男暗殺事件をみると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」

『(日本軍の出兵に対して)彼等の驚愕想ふ可し』は現在の日中韓、

北朝鮮外交に通じる卓見、戦略分析である。

 ➀近年来、日本の東洋政略は勉めて平和を旨として事を好まず、朝鮮は明治十七年

の甲申事変以来、殆んど放擲し去りて他の自由に一任した。

②清国との関係には最も注意して事の穏便を謀り、言ふ可きことをいわず、

なす可きこともなさずして万事円滑に経過したのは、東洋の平和を維持するため。

③平素より傲慢なる清国人らの眼を以て見れば、日本人は他の威力に畏縮して力もない。

 恐るに足らずと軽蔑の念を長じて我を侮り、傍若無人の挙動を演じている。

④その理由は日本に於ける国会開設で、彼等は議場の言論の放縦、

過激にして国会紛擾の一事を見て、政府の威令行はれず、

民心は四分五裂の有様で、日本はもはや亡国も同然。

⑤身分上下関係など、幾千百年来の儒教主義(と中華思想)の紋切形に

脳髄を刻まれたる支那人等の眼より見れば、いわゆる処士の横議

(士官しない武士の放談)にして綱紀紊乱の極致と誤認した、

パーセプションギャップ(思い違い)である。

 

『(日本軍の出兵に対して)彼等の驚愕想ふ可し』(時事新報、明治27年6月30日付)

 

 今回、朝鮮への出兵は、彼地の内乱に付き我居留官民保護のためにして、特に支那政府に向って其事を通知したるは天津條約の規定に従ひたるのみ。

彼の東学党の乱に裁ては、朝鮮政府の微力なる、自家の防禦さへもおぼつかないと云ふ。まして他国人を保護する如き、到底行届かざることなれば、いやしくも他国人にして生命財産を彼地に托する者は、其国カを以て自から保護するの外ある可らず。

我国の出兵は即ち之がためにして、支那人の挙動とても同様の次第なる可し。

尋常一様の事にして毫も怪しむに足らざるに、然るに我国に在る支那人、朝鮮人は今回日本政府の決断を聞て大に驚愕の色あるよし。

単に廟議の一決を聞いて驚くが如きものならんには、我兵隊軍艦がいよいよ彼地に到着して実際に其勢力の如何を目撃し、又これを伝えへ聞くに至るば、彼等の狼狽は如何なる可きや、今より想像す可きなり。

近年来、日本の東洋政略は勉めて平和を旨として事を好まず、東洋と云へば日本支那朝鮮三国の関係なれども、朝鮮の事は明治十七年の事件以来、殆んど放擲(ほうてき、投げ捨てること)し去りて他の自由に一任し、

支那との関係の如きは最も注意して事の穏便を謀り、言ふ可きことをいわず、なす可きこともなさずして万事円滑に経過したるは、只管東洋の平和を維持するの意に出でたることなれども、

平素より傲慢なる彼国人等の眼を以て之を見れば、日本人は他の威力に畏縮して最早やなすこと能はざるものと認めたることならん。

 

次第に軽蔑の念を長じて我を侮り、時としては傍若無人の挙動を演じて、其事案の認む可きもの少なからざるのみならず、近来に至りては、殊に甚だしきものあるが如し。

抑も日本国人の侮る可らずして恐る可きは、従来の歴史に徴しても、彼等の明に知る

所にして、憚りたるものが、遂に一変して反対に之を侮るに至りしは如何なる次第なるや。近来、我国勢振るはざるの事実を示したることにてもあるやと云ふに、或は十七年の始末を以て日本の畏るるに足らざるを速了したるならんかなれども、

彼の始末の如きは日清両国の実力を較したるものとは見る可らず、只少数なる彼我の兵隊が銃砲に火を点じたるまでのことにして、戦を交えたる次第に非ざれば、流石の支那人と錐も、彼の一事を以て仝体の軽重を速了するが如き浅墓なる推測はなさゞることならん。

然るにその挙動の傍若無人なること斯くの如しとは、自から他に理由の存するものなきを得ず。

我輩の所見を以てすれば、其理由は日本に於ける国会開設の一事にして、彼等は議場の言論の放縦過激にして政府に反抗するの事実を認めて、之を判断するに自家固有の見識を以てして、以て日本のなすことあるに足らざるを鑑定し、我を侮るに至りしには非ずやと敢て測量するものなり。

 

国会開設は即ち立憲政治にして言論の自由は其政治の本色なり。日本の国会はいやしくも帝室の尊厳を犯さゞる限り、如何なる事を議し如何なる事を論ずるも自由自在にして毫も制限せらるる所なし。

政府の政略を攻撃し,当局者を罵り倒すが如き尋常の事にして敢て奇と為るに足らざれども、君臣の分、上下の別など、幾千百年来の儒教主義の紋切形に脳髄を刻まれたる支那人等の眼より見れば、走れぞ所謂処士の横議なるものにして紀綱紊乱の極と認めざるを得ず。

不屈至極の言論を逞しうして反抗を試みる不逞の徒さへ圧すること能はざる日本政府が、外国に兵を出すなどは叶はざる次第なりとて、一概に軽蔑したることならん。

或は我国に在留する彼国人等が本国への内報の如きも、国会紛擾の一事を見て、政府の威令行はれず、民心は四分五裂の有様なり、日本は最早や亡国も同然、決して畏るるに足らずなど真面目に報告して、ますます本国人をして日本を侮るの念を長ぜしめたることならん。

然るに其亡国の政府が今回の事件には廟議即決して出兵の軽重甚だ盛なりと云ふ。俗に云ふ足許から烏が立つの諺に違はず。彼等の驚愕も決して無理にあらず。

周公孔子の末流が化石の如き脳髄を以て漫に今世の観察を逞しふし、自から事の眞相を誤りながら今に至りて狼狽するとは唯失笑に堪へざるのみ。

 

抑も立憲国に於ける人民の言論は甚だ自由なり。自由なるが故に時としては甚だ劇烈にして、政府に反抗するのみならず或は政府を倒すこともある可し。

誠に殺風景なれども、政府の一起一伏は政海一時の波瀾に過ぎず。仮令ひ幾回の更迭あるも、政府は政府、大臣は大臣にして、政権の弛張、国力の消長に関係するものに非ず。

内の政治に就ては千萬無量の反対攻撃あるも、一旦急要の場合には一命の下に陸海幾万の兵を動かすこと甚だ自由なり。

自からこれ憲法の規定する所にして、立憲政治の本色なり。儒流国人(清国、朝鮮)の知る所に非ず。今日となりては、彼等も自から自家の無智無学を悔ゆるの外なかる可し。

              〔六月十三日〕

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『オンライン講座/日本興亡史の研究 ⑩』★『児玉源太郎の電光石火の解決力➅』★『児玉は日露外交交渉は不成立の見通しを誤った』★『ロシア外交の常套手段である恫喝、武力行使と同時に、プロパガンダ、メディアコントロールの三枚舌外交に、みごとに騙されたれた』』

 2017/05/31  日本リーダーパワー史(818)記事 …

no image
<日本最強の参謀ー「杉山茂丸」の経済雄弁術⑦ 細かい数字を百年の国策に取り交ぜ、談論風発、相手を煙幕に巻く。

 日本リーダーパワー史(481) <日本最強の参謀は誰か– …

no image
世界/日本リーダーパワー史(915)-『米朝首脳会談(6月12日)で「不可逆的な非核化」 は実現するのか(下)

世界/日本リーダーパワー史(915) 一方、日本の対応と、日中のパワーバランスの …

『第2次世界大戦終結(1945年)・日本敗戦から80年を回顧する』★『太平洋戦争と大本営発表の真相』★『言論死して国ついに亡ぶ(拙著)より』

<2005年1月> 拙著『兵は凶器なり』(15年戦争と新聞メディア 1935-1 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(83)記事再録/ ★『ブレブレ」『右往左往』「他力本願」の日本の無能なリーダーが日本沈没を 加速させているー 日本の決定的瞬間『西南戦争』で見せた大久保利通内務卿(実質、首相) の『不言実行力』「不動心」を学ぶ③

2016/11/02/日本リーダーパワー史(694)再録 『ブレブレ」『右往左往 …

no image
終戦70年・日本敗戦史(76)大東亜戦争開戦「朝日,毎日の紙面」ーマレー、シンガボール、フィリピン戦線

   終戦70年・日本敗戦史(76)  大東亜戦争開戦の「朝日,毎日などの新聞紙 …

no image
日本リーダーパワー史(191)真珠湾攻撃(1941)から70年ー情報統合本部の有無<日米インテリジェンスの決定的落差>(中)

日本リーダーパワー史(191)   国難リテラシー   『真 …

no image
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑥-『朝鮮の各国との通商こそ,国土保全の所以である(上)』(1882/12)

  『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 日中韓のパーセプ …

no image
知的巨人たちの百歳学(126)『野上弥生子』(99歳)「私から見るとまだ子供みたいな人が、その能力が発揮できる年なのに老いを楽しむ方に回っていてね」

   知的巨人たちの百歳学(126) 『野上弥生子』(99歳 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(159)再録/知的巨人の百歳学(113)ー徳富蘇峰(94歳)ー『生涯現役500冊以上、日本一の思想家、歴史家、ジャーナリストの健康長寿、創作、ウオーキング!』

    22018/12/01知的巨人の百歳学(1 …