前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「電子書籍に関する統一中間フォーマットの検討」―政府での議論は再びガラパゴス化しないのかー

   

「電子書籍に関する統一中間フォーマットの検討」―政府での議論は再びガラパゴス化しないのかー
              前坂俊之(ジャーナリスト)
 
政府の『デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告(案)』http://www.soumu.go.jp/main_content/000071341.pdf
 
今年は電子書籍元年。iPad(アイパッド)や新たな電子端末の登場で、書籍のペーパレス化、電子化が本格的にはじまった。
米国より遅れていた日本の取り組みも、遅まきながら、国立国会図書館や文部科学、総務省などが音頭をとって、新聞、出版社などマスコミ各社と連携して『電子書籍の流通促進のためのルール作り』が検討されてきた。
6月末にまとまった文部科学、経済産業、総務の3省による『電子書籍の流通促進のためのルール作り懇談会』の報告書(朝日新聞6月22日付)によると
    国立国会図書館が出版社などと連携し、蔵書の全文検索サービスの実験を始める方針を打ち出した。
    、作家や出版社などの合意を得た範囲内で、同館が電子化した蔵書や、出版社が提供する電子化した書籍の本文を、パソコンなどで検索できるようにするもの。
    、ただ、この電子化した蔵書を一般の人にネット経由で有料公開する構想に、講談社など大手は反発しており、実験に参加するかどうかは不透明。
    、電子時代の図書館のあり方を検討する協議会の設置。書籍の電子化が進むことで、図書館のサービスの利便性が高まり、書籍を買わない人が増える、との懸念を出版社などが訴えたためだ。
     書籍を電子配信する際の著作権処理のコストを下げるため、著作権を集中管理するしくみを、著作者や出版社などによる会議を設けて検討する。
    、作家や出版社などが各自で著作権を管理し、IT(情報通信)技術を駆使して効率的に処理する実証実験もする
などである。
とくに、この中で問題となるのは
    技術面では、電子書籍を様々な端末で利用・提供できるよう、日本語表現の中間(交換)フォーマットの統一規格策定に向けて、「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」を設置し、EPUBなど海外の標準規格との変換に関する技術なども検討の上、国際標準化活動を展開していくとしている。
点である。ここでもケイタイと同じ日本の技術のガラパゴス化の心配が指摘されている。グローバルスタンダード(国際標準化)を市場に任せず、日本独自の官庁は過去に何度も失敗した護送船団方式で無理押ししても、うまくいかないのは目に見えている。今回も、国会図書館が日本語の縦組みにこだわって独自の方式を検討しているのは危惧される。
次のような指摘も出ている。
「電子書籍の政府での議論が心配だ」

 
資料を見てみると、本当にこの方向でいいのだろうか?と感じるポイントが2つありました。それを読者のみなさんと共有したいと思います。
① 権利の集中化は歓迎すべきか?
「著作物・出版物の権利処理の円滑化推進に関する検討会議(仮称)」を設置し、検討の場を設け、具体的な検討に速やかに着手する。
しかしその方策として本当に(おそらくは巨大になる)組織が必要なのでしょうか?また、これらはこれまでの出版社だけでなく多くの個人や小さな組織の存在が大きくなろうとしている電子出版で本当に適切な方策なのか? 現実的なものなのか? 疑問に感じます。
② 国が支援するのは「XMDF+ドットブック」形式
2つ目に指摘したいのは電子出版におけるフォーマットの方向性です。
20ページから始まる「文字文化の独自性、固有性を発揮できるフォーマットや文字コード等の在り方」の項目の中で、ファイルフォーマット、文字コードについては、関係者において、検討の場を設け、具体的な検討に速やかに着手する。国としてもこうした取組を側面から支援することが適当である。
電子出版での日本語基本表現に実績を有する関係者において、「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」を設置し、我が国における中間(交換)フォーマットの統一規格の策定に向けて具体的な検討・実証を進め、こうした民間の取組について国が側面支援を行うことが適当である。
電子出版市場の世界的な拡大を見据えて、我が国のソフトパワーの発揮、国際競争力の強化を図る観点から、海外の閲覧フォーマットとして有力なフォーラム標準のひとつであるEPUBについても、日本語表現への十分な対応が可能となることが期待されるが、W3CにおけるHTML5の策定状況も踏まえつつ、出版物のつくり手の理解を得ながら、必要な取組を検討することが必要である。

③ SSはこの先500年使われる技術」という認識

将来の電子書籍はアプリケーションと見分けがつかなくなるものだと思っています。電子書籍は自分の思考を深めるためのさまざまなアプリケーションと連係したり、考えを共有する他者とのコミュニケーションの一部となっていく。CSSの発案者であり、いまもCSS3の議論の中心的な存在であるオペラソフトウェア CTOのホーコン・リー氏は、「活版印刷が発明されて500年。HTML/CSSもこれから500年先まで使われる技術」と言い、知識を表現するための重要な技術だとHTML/CSSを位置づけています。
こうした認識で議論されている(そして本当にこの先500年使われるかもしれない)国際標準のど真ん中に、いま日本語の縦書き組み版が入るかどうかを議論しているときに、国はXMDF+ドットブックを国際標準へ支援するという方向で本当にいいのでしょうか?
 
こうした全体的な電子書籍の日本におけるルールをつくる報告書の全文を以下に掲げておく。大いに論議すべきであろう。
 
<政府の『デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告(案)』http://www.soumu.go.jp/main_content/000071341.pdf
 
 
 
 
 
 

 - IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『昭和戦後の戦略的宰相の系譜講座』★中曽根康弘元首相の戦略とリーダーシップ』★『「戦後総決算」を唱え、国内的には明治以来の歴代内閣でいづれも実現できなかった行財政改革「JR,NTT,JTの民営化」を敢然と実行』★『「ロン・ヤス」の親密な日米関係だけでなく、韓国を電撃訪問し、日韓関係を一挙に改革し、胡耀邦氏と肝胆合い照らす仲となり、日中関係も最高の良好な関係を築いた、有言即実行型の戦後最高の首相だった』

    2019/12/14 &nbsp …

no image
『オンライン日本の戦争講座①/<日本はなぜ無謀な戦争を選んだのか、500年間の世界戦争史の中から考える>➀『大英帝国の植民地主義への道』★『ロシアの大膨張主義が日露戦争の原因』

2015年7月24日世田谷市民大学・戦後70年の夏・今を考える講義『太平洋戦争と …

no image
『縦割り110番/オンライン/デジタル庁はすぐ取り組め動画』ー日本の最先端技術「見える化」チャンネル 『働き方改革』EXPO(幕張メッセ20201/9/16)での「スーパープレゼン」紹介― ドレ ロドリゲス グスタボCEOによるアルバイトの入社手続きをラクに、簡単に、シンプルにできる「WelcomeHR 」(クラウド労務サービス)」

日本の最先端技術「見える化」チャンネル 『働き方改革』EXPO(幕張メッセ202 …

★スクープ写真『2011年3月11日福島原発事故約1ヵ月前の『鎌倉カヤック釣りバカ快楽日記』★『老人と海、大カサゴのお出まし』★『若者は書を捨てて大海に出よ』★『ネットサーフィンをやめて、海でサーフィン、カヌーをやれ、そのあとにネットサーフィンやれば、もっとエキサイティングに世界一周できるぜ!』

2022/09/20 記事再編集 前坂 俊之(ジャーナリスト) 『三寒四温』とは …

「75年たっても自衛権憲法を全く変えられない<極東のウクライナ日本>の決断思考力ゼロ」★「一方、ウクライナ戦争勃発3日後に<敗戦国ドイツ連邦議会>は特別緊急会議を開き、防衛費を2%に増額、エネルギーのロシア依存を変更した」★『よくわかるオンライン講座/日本国憲法制定真相史②』★『東西冷戦の産物として生れた現行憲法は・・わずか1週間でGHQが作った憲法草案 』

日本リーダーパワー史(356)●『東西冷戦の産物として生れた現行憲法」 『わずか …

『Z世代のための日中韓三国志の<福沢諭吉の脱亜論>の研究講座②』★『  福沢諭吉はなぜ「日清朝の提携」から「脱亜論」に180度転換したのか②』

  2019/08/09日本リーダーパワー史(765)記事再録 今回の …

no image
片野勧の衝撃レポート(43)太平洋戦争とフクシマ⑯<悲劇はなぜ繰り返されるの「ビキニ水爆と原発被災<下>(16)

  片野勧の衝撃レポート(43) 太平洋戦争とフクシマ⑯ ≪悲劇はなぜ …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 日本メルトダウン(1063)>★『日本の「無子高齢化」は、政府が非常事態宣言を出すべき深刻度 』★『日本の余命はあと8年!? 政府の楽観予測が示す「暗い未来」』★『ひとり暮らしの40代が日本を滅ぼす』★『 少子高齢化がもたらす衝撃の未来予想図--「縮むこと」を恐れるな』★『2035年には人口の半分が独身! この先、必要になる「ソロで生きる力」』

★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 日本メルトダウン(1063) …

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(196)★『ぶらりグアムの旅びっくり印象記』-このままでは韓国の植民地?(笑)になりそうです。

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(196) ★『ぶらりグアムの …

no image
日本の最先端技術「見える化」チャンネル /「AI・人工知能EXPO2019」(4/5)-『<才能もシェアする時代>データサイエンティストが世界的に不足している中、日本最大のAI開発人材ネットワーク(1万7千人登録)のSIGNATEによる開発、運用」のプレゼン

日本の最先端技術「見える化」チャンネル 「AI・人工知能EXPO2019」(4/ …