前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(62) ●『「プロメテウスの罠」に新聞協会賞』(9,8)●『危険な「オスプレイ配備」を急ぐな』(9・3)

   

池田龍夫のマスコミ時評(62)
 
●『「プロメテウスの罠」に新聞協会賞』(9,8)
●『危険な「オスプレイ配備」を急ぐな』(9・3)
 
 
                                  池田龍夫(ジャーナリスト) 
 
「プロメテウスの罠」に新聞協会賞98)
                                 
 日本新聞協会は9月5日、2012年度の新聞協会賞を発表。編集部門で朝日新聞の長期連載企画「プロメテウスの罠」が受賞した。

他社の4件も受賞したが、昨年10月3日から朝刊3面に連載を始めた朝日新聞の企画は現在も続いている。福島原発事故を丹念に取材し、問題提起した力作で、編集局が総力を挙げて取り組んできた努力が評価されたことを称えたい。未曾有の原発事故の背景を探って、多角的な取材手法によって、新聞の力を読者に印象づけた功績は大きい。

 

「たね蒔きジャーナル」に坂田記念ジャーナリズム賞
 
関西の優れた報道に贈られる坂田記念ジャーナリズム賞特別賞に、毎日放送(大阪)の「たね蒔きジャーナル」が選ばれた。2009年から始めた番組だが、福島原発事故以降、京都大原子炉実験所の小出裕章助教らが出演して事故の状況を分かりやすく伝え、関西の人気番組になっていた。ラジオというオールドメディアが、原発報道で見せた努力は称賛に値する。筆者もインターネットを通じて知り、特異な〝斬り口〟に惹かれた。
 
 
 
危険な「オスプレイ配備」を急ぐな(9・3)

 米国防総省は8月30日、今年6月米フロリダ州で起きた垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ墜落事故につき、気流への対応を誤った操縦士の「人為ミス」が原因とする調査報告書を公表した。これより先、モロッコでのオスプレイ墜落事故について「機体自体が事故の要因となったとは認められない。副操縦士のマニュアル違反による人的要因が大きい」として、操縦ミスと結論づけている。
 
       沖縄県知事ら、森本防衛相の要請を蹴る
 
 防衛省は独自調査を一応行ったものの、米側の調査結果を追認して「機体に問題ナシ」との見解を公表。森本敏防衛相は8月29、30日、10月配備予定の沖縄県と一時駐機している山口県を訪問、本格運用への理解を求めた。
 
 問題はオスプレイを普天間飛行場(宜野湾市)に強引に配備しようとしていることだ。同飛行場周辺には約9万人が居住、120以上の公共施設が密集している。また米空軍は本土数カ所の山間部での低空飛行訓練を計画している。
誰が見ても危険な区域で、仲井真沖縄県知事、山本繁太郎山口県知事らが「配備ありきの説明だけでは反対せざるを得ない。我々が納得できる安全性を示してもらわない限り受け入れられない」と防衛相に配備反対を示した姿勢は、自治体の責任者として当然だろう。
 
      米ハワイ州などでは環境に配慮し、訓練中止
 
 毎日新聞8月23日付朝刊は、「米政府がハワイ州の2空港で予定していたオスプレイ着陸計画を取り下げた」と特報した。空港周辺の歴史的遺産に与える影響や騒音に関する住民意見に配慮したためという。これより遥かに危険な宜野湾市では、米軍は一切住民の意見を聞く環境審査を行っていない。米国民へは配慮するが、〝従属国〟日本国民には配備を押し付ける姿勢が透けて見える。
 
 日経新聞8月31日付朝刊「記者手帳」が、「6月の就任からオスプレイ対応に忙殺される防衛相には『オスプレイ担当の広報大使』との声も与党内から漏れる}と記していたが、
同様の印象を受ける。安全性の徹底検証を求めるのは当然で、十分な環境調査を米側に要請する責務を防衛相は果たさず、米側の意のままに右往左往している姿が悲しい。
 
 毎日新聞9月1日付社説は、「米海兵隊は最近、ハワイの2空港でのオスプレイ訓練を中止した。6月にはニューメキシコ州で、環境アセスメントに対する住民意見を受けてオスプレイの低空飛行訓練を延期している。米国内なら柔軟に対応するが、日本ではそうはいかないということなのか。普天間配備を強行してはならない」と主張していたが、もっともな指摘である。
 
      ほかの航空機より危険が大きい
 朝日新聞9月2日付朝刊は、レーガン政権で国防次官補を務めたロ-レンス・コープ氏へのインタビュー記事を掲載。「オスプレイは海兵隊の存在意義のため重要だろうが、ほかの飛行機やヘリより危険が大きい。

ヘリから飛行機に転換するというのは新しい技術で、ほぼ100%正しく操縦しないと問題が起きる。…普天間飛行場は荒野にあるわけではないから心配だ」と警告していた。ともかく、「10月配備」は見直してほしい。

 
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
 
 

 - IT・マスコミ論 , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『オンライン憲法講座/<エピソード憲法史>④』★『現憲法はペニシリンから生まれた?>』★『毎日新聞スクープから始まった憲法草案!』★『天皇日蝕論』★『白洲次郎のジープ・ウェー・レター』★『『アトミック・シャンシャイン』★『憲法問題の核心解説動画【永久保存】 2013.02.12 衆議院予算委員会 石原慎太郎 日本維新の会』(100分動画)

   2006年8月15日「憲法第9条と昭和天皇」/記事再録 …

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(101)』「パリぶらぶら散歩(2015 /4/30-5/3)★『パリ・オペラ地区の大衆レストラン、シャルティエは 百年以上パリ市民から愛されてきた名店,銀座にこんな居心地のいい親しみやすい店はない』

逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/11/am700)  &n …

『日中台・Z世代のための日中近代史100年講座④』★『宮崎滔天の息子・宮崎龍介(東大新人会)は吉野作造とともに「大正デモクラシー」を牽引し「柳原白蓮事件」で「大正ロマンの恋の華」となった」★『炭鉱王に離別状を朝日新聞に大々的に発表、男尊女卑の封建日本を告発した<新しい女の第一号>で宮崎龍介と再婚した』

  2014/07/23    …

no image
野口恒のインターネット江戸学『江戸から学ぶウェブ社会の活力②江戸は日本人が最も旅行した時代

日本再生への独創的視点<インターネット江戸学連続講義>   『江戸から …

★『Z世代のための日本政治史講座㉒』★『歴代”宰相の器”とな何か!』★『日本の近代化の基礎は誰が作ったのか』★『わしは総理の器ではないとナンバー2に徹した西郷従道』★『なんでもござれと歴代内閣に重宝されて内務大臣三回、海軍大臣七回、陸軍大臣(兼務)一回、農商務大臣などを歴任、縁の下の力持ちに徹し、有能人材を抜擢した』

     2012/09/09 &nbs …

no image
新刊『明治お雇い外国人とその弟子たち―日本の近代化を支えた25人のプロフェッショナル』(片野勧著)

新刊 『明治お雇い外国人とその弟子たち―日本の近代化を支えた25人のプロフェッシ …

no image
わが「古本狂」の『一読速断』書評300冊>『瀬島龍三―参謀の昭和史』保阪正康著』●『空のスパイ戦争』(ディック・アート著、江畑健介訳)

       わが「古本狂」の愛読、乱読 …

no image
『地球環境大異変の時代③』ー「ホットハウス・アース」(温室と化した地球)★『 日本だけではなく世界中で、災害は忘れたころではなく、毎年、毎月、毎日やってくる時代に』突入!?』

  『災害は忘れたころではなく、毎年やってくる時代に』         …

★『大爆笑、メチャおもろい日本文学史』⑤『アイヌ「ユーカラ」研究の金田一京助はメチャおもろい』講義は人の3倍の情熱、純情一直線の金田一先生』

  2016/02/21 『大爆笑、メチャおもろい日本文学史 …

no image
日本メルトダウン(950)『福島原発のアンダーコントロールは「うそ」-小泉元首相が特派員協会で原発批判』(動画)●『東日本大震災 福島第1原発 凍土壁2カ所、溶けた状態に』●『財政再建へ独立機関設置を、IMF、日本に提言』●『小池知事、報酬半減案を提出へ9月議会に』●『日本人アスリート初! 本田圭佑、マサチューセッツ工科大の特別研究員に就任』

   日本メルトダウン(950)   アンダーコントロールは「うそ」- …