前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

百歳学入門(235)★『住友財閥の中興の祖『幽翁』伊庭貞剛の日本一見事な引き際、晩晴学①』★『人を使うには4つのしばりつけに注意すべきだ★『 リーダーは『熟慮・祈念・放下・断行』せよ』

   

 /『 リーダーシップの日本近現代史』(158)再録

前坂 俊之(ジャーナリスト)

住友家総理事・伊庭貞剛(1847.弘化4.2.19~1926.T15.10.23)

滋賀県近江八幡の生まれ。叔父の広瀬宰平の後を継いで住友の近代化を成し遂げる。重工業化の路線をしいた。伊庭は「心の人、徳の人」で伝記「幽翁」は住友精神の糧としていまもなお読み伝えられている。

伊庭は滋賀県近江八幡の生まれ。明治2年に裁判官となったが、失望し12年にやめたところを叔父の広瀬から誘われ住友に入った。本店支配人になり、経営能力を発揮していた27年、住友を揺がす広瀬弾劾事件が別子銅山で起こり、不穏なムードに包まれた。伊庭は責任者として別子銅山におもむき、禅体験による徳で見事に解決した。

以後、住友銀行、住友倉庫、住友伸銅場、鋳鋼場など工業化を断行、住友財閥の基礎を固めた。老人ばっこの弊害をいさめ、58歳で総理事をしりぞき、あとは悠々自適の生活を送った。

113718263554a5e8be57c669.19971778701099590

  • 伊庭は禅の修行をした人物で、その禅のでもって経営にあたった。 

明治27年、住友の本山・別子銅山で大争議が起き、容易におさまらなかった。この住友を揺がす難局を打開するため、伊庭は別子鉱業所支配人に任命された。47歳の時である。

伊庭は新居浜におもむき、まず四畳半の草堂を築いてこれに起臥し、少しも騒ぐ様子はなかった。毎日、散歩をし、山に登っては降り、草堂に帰ってはしきりに謡曲をうなった。山を散歩するのと、謡曲をうなる以外は何もしなかった。手ぐすねひいて伊庭を待ち構えていた労働者や会社側は何たるのんきさかと呆れ返ってしまった。

伊庭は何を言われようと毎日の日課はかえず、山を散歩し、坑夫や人足に会うと「やあ、今日は」「御苦労」とあいさつをく。返した。そのうち不思議なことに人心は鎮静し、大紛争もいつの間にかおさまった。
離散した人心を一つにまとめるには、伊庭の人格を自然とみんなにわからせる以外になかった。気長く根気よくそれを続けたのである。

② 人を使うには4つのしばりつけに注意しろ

伊庭は住友の近代化を成し遂げ、住友財閥の基礎を固めた人物である。彼は〝心の人、徳の人″として、住友精神の創設、実現したいわば創業者である。同時に稀代の人遣い名人でもあった。そのリーダーシップとリーダーパワーが大住友の土台石を作ったのである。彼の伝記「幽翁」は今も古典として住友人に読み継がれている。
伊庭は総理事に就任した時、幹部に対して、部下を使う心得を訓示した。

 

① しきたりとか、先例に従えといって、部下のやる気に水を差すな。
② 自分が無視されたといって、部下の出足を引っ張るな。才能のない上役ほど部下が新い
やり方をしたり、積極的にいい仕事をすると、逆に足を引っ張ったりする。
③ 何事も疑いの目で部下を見て、部下の挑戦欲を縛りつけるな。
④ 注意をほどほどに。くどくど注意して、部下のやる気をくじくな。
四つの縛りつけ″を厳重に、戒めた。

部下を信頼して「目をつぶって判を押さない書類は作るな」

伊庭の哲学がこれであった。
「目をつぶって判を押せないような書顆なら、はじめからつくらせぬがよい。また、そんな書類しかつくれぬ部下なら、初めから使わぬがよい。本当に、重役が生命がけで判を押さねばならぬのは、在職中にたった二度か、三度あるくらいのものである。五度あれば多すぎる。それ以外は、目をつぶって判を押して差しっかえない」

これは部下を信頼せよという教えでもある。また、部下を水準以上に鍛えて、黙っておいてもよい状態に、日頃から教育しておけ、という教えにも通じる。
伊庭のこうした哲学によって、逆に部下は皆が知恵を絞って良案の上に良案の書類をつくり出した、という。

④ リーダーは『熟慮・祈念・放下・断行』せよ
 
伊庭は「熟慮・断行」だけでは足りない、「熟慮」と「断行」の間に「祈念」と「放下」の二つをインサートしなければならぬ、とよく言っていた。
彼は熟慮したあと、断行しょうとする際には、必ず実相寺にあった住友家の墓前に、額ずいて奉告し、祖先の霊に断行の可否を懇祈された。そのあと、すべての思量を絶ち、一切放下して、念頭からすべてが去るのを待った。
このあと、明鏡止水になった時、もう一度事の当否を検討し、その結果、いよいよこれが最善の策であるという確信を持った階段で、初めて敢然とこれを実行した。

大事はこの「熟慮、祈念、放下、断行」の順序で決行すべきだ、と伊庭は日ごろから説いていた。祈念、放下とはいわば機が熟するのを待つ、思念の塊が段々熱せられてエネルギーを帯びてボルテージがあがって行動へと噴火する、その過程である。

「世の多くが「熟慮」=理論、「断行」=実践のみですましているが、この間に祈念、放下という大事なものが、欠けているために、しばしば、間違った決断を下す」と伊庭は言っていた。

 - 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

CEATEC JAPAN 2017(10/5)-『Panasonicのプレゼン「Smart Aging Care System」★『omronのブース『ピンポンロボット(フォルフェウス)の第4世代機を発表』

 日本の最先端技術「見える化』チャンネル 「CEATEC JAPAN 2017」 …

『オンライン講座/作家・宇野千代(98歳)研究』★『明治の女性ながら、何ものにもとらわれず、自主独立の精神で、いつまでも美しく自由奔放に恋愛に文学に精一杯生きた華麗なる作家人生』『可愛らしく生きぬいた私の長寿文学10訓』

    2019/12/06 記事再録  …

『オンライン講座/独学/独創力/創造力の研究④』★「日本人の知の限界値」 「博覧強記」「奇想天外」「抱腹絶倒」「大英博物館をわが書庫にして研究三昧した世界一の読書家と自慢した」<南方熊楠先生書斎訪問記はめちゃ面白い

2015/04/29 の記事再録 酒井潔著の個人雑誌「談奇」(1930年(昭和5 …

『NHK(2023年5年26日午後10時-10時45分)放送の『アナザーストーリー”妖婦”といわれた女「阿部定事件」と昭和』が再放送された★『日本恋愛史における阿部定事件ー「私は猟奇的な女」ですか「純愛の女」ですか』

「以下は 2020年12月23日書いた」。 NHKBSプレミアム(2020年12 …

no image
120歳のギネス男性長寿者・泉重千代の健康長寿養生訓

120歳のギネス男性長寿者・泉重千代の長寿養生訓 前坂俊之(ジャーナリスト)

『オンライン/鎌倉カヤックーカワハギ釣りバカ日記』(2012/10/27)★『10年前の鎌倉海は<豊穣の海>だった』★『「コツ」「カキン、グイッ」と一閃居合い釣り』★『鎌倉カヤックフィッシングー稲村ガ崎へパドル1万回、筋肉マン誕生だよ』

鎌倉カヤックーカワハギは「コツ」「カキン、グイッ」と一閃居合い釣り •2012/ …

no image
人気記事再録/世界が尊敬した日本人(54)地球温暖化、地球環境破壊と戦った世界の先駆者/田中正造―『ただ今日は、明治政府が安閑として、太平楽を唱えて、日本はいつまでも太平無事でいるような心持をしている。これが心得がちがうということだ』」

   2016/01/25世界が尊敬した日本人(54) 月刊 …

no image
日本メルトダウン( 989)–『トランプ次期米大統領の波紋』★『 TPPより怖い2国間交渉、トランプのしたたかさを侮るな』●『焦点:マイノリティに不人気のトランプ氏、米国の分断深めるか』★『コラム:TPP米離脱で中国が負うアジア自由貿易推進の使命』◎『中国共産党は自らの“正統性”強化にトランプ当選をこう使う』●『埋蔵金と日銀の国債購入で日本の借金は消えるのか?高橋洋一教授に反論!』★『中国の大気汚染、貧富の差で吸う空気が違う不平等』★『中国は頓挫寸前のTPPを笑っていられるか』

日本メルトダウン( 989)–『トランプ次期米大統領の波紋 』 TP …

『リモートワーク/京都世界文化遺産/外国人観光客へお勧め/豊臣秀吉ゆかり醍醐寺をぶらり散歩動画(2016/09/04 /30分)』★『桃山時代の面影を残す秀吉ゆかりの古刹』★『秀吉が設計した三宝院の庭園の天下の名石・藤戸石』★『秀頼の作った西大門から入り広大な伽藍に向かう』★『本堂の金堂(国宝)は秀吉の命で紀州湯浅から移築、本尊の薬師如来像がある』★『西大門の仁王像、運慶、快慶以前の現物残る傑作、なぜ国宝でないのか』

★⒑外国人観光客へお勧めベスト①『京都古寺・醍醐寺」のすべて➀桃山時代を残す秀吉 …

『オンライン/ベンチャービジネス講座』★『日本一の戦略的経営者・出光佐三(95歳)の長寿逆転突破力(アニマルスプリット)はスゴイよ➄★ 『徳山製油所の建設で米国最大の銀行「バンク・オブ・アメリカ(BOA)」からの1千万ドルの融資に成功』★『出光の『人間尊重』経営は唯一のジャパンビジネスモデル』★『独創力は『目が見えないから考えて、考え抜いて生まれた』★『87歳で失明からよみがえった「奇跡の晩年長寿力!」』

  アニマルスプリット(企業家精神)を発揮 その後、出光はすることなす …