『リーダーシップの日本近現代史』(250)/『2020年元旦/保釈中の日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の前代未聞のレバノンへの国外脱出劇 』★『現代版モンテクリスト伯の<ガラパゴスジャパン>への復讐計画が始まるのか①』
前坂 俊之(ジャーナリスト)
2020年の元旦の祝賀ムードは、保釈中の日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告のレバノンへの国外脱出劇に完全に吹き飛ばされた。
このニュースを見た瞬間、私はフランス大衆冒険小説「モンテクリスト伯」(アレクサンドル・デュマ原作、1844年、日本版は黒岩涙香「巌窟王)の脱獄復讐劇を思い出し、ゴーン被告自作でこのトリックスター自らが演じたのではないかと、一瞬わが目を疑った。
案の定、翌2日付の「米ニューヨーク・タイムズ」によると、ゴーン被告は昨年12月、東京都内の保釈中の高級住宅でハリウッドの映画プロデューサー、ジョン・レッシャー氏(2015年にアカデミー賞作品賞など受賞の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のプロデューサー)と面会して、今回の不当な拘束と収監と戦って自分の無実を証明する体験を映画にすれば、観客の共感、同情を呼ぶかどうかを聞いたという。この映画で悪役の日本の司法と戦い、驚くようなストーリーの展開を準備していた」という。
東洋経済オンラインニュース(1月2日)『逃亡後のゴーンが明かした日本への「復讐計画」』では「脱出したレバノン・ベイルートでの友人たちの新年祝賀パーティで、友人の執筆による自身の状況に関する本と、これをベースにした映画の制作に出資する計画を明らかにした」仏紙ルモンド(1月3日付)によると、この映画企画は米動画配信最大手、ネットフリックスと独占契約を結んだ』と報じている。
ウオールストリートジャーナル紙などによると、ゴーン被告は当初は法廷闘争をする予定だったが、裁判の開始が予定よりさらに遅れる可能性があることを12月25日に知り、海外逃亡という「プランB」に切り替えた。
同ジャーナル紙(6日付)は、ゴーン被告の逃亡計画は数カ月前から計画され、多国籍の10、15人のチームが関与。20回超の訪日を行い全国各地10空港の下見を行い、関西空港で脱出可能な保安上の「大きな欠陥」を発見、ここから脱出する計画を練っていという。
ゴーン被告の制作、監督、主演で日本が一年中で最も混雑する12月29日夜を狙って実行した。28日には救出作戦チームが日本に集結、米警備会社に所属する有名な元米陸軍特殊部隊隊員のマイケル・テイラー氏ら2人が加わった。
新幹線で大阪へ、音響機器運搬に使う黒い大型ケース1身を隠して、X線を通らずPJ機に
朝日などによると、12月29日午後2時半ごろ東京都内の住居を1人で外出し、港区内の高級ホテルで男2人と合流。同日夕、3人でJR品川駅から東海道新幹線で新大阪駅へ向かい、午後8時ごろ関西空港近くのホテルに到着した。ここで大型車にのりかえて、ゴーン被告はコンサートの音響機器運搬に使う黒い大型ケース2個の1つに身を隠して関西空港に向かい、同空港のX線による検査を受けずに(大型の場合はX泉の検査装置にはおさまらない)、トルコのビジネスマン所有の大型プライベートジェット機(PJ・乗員含め20人乗り)に乗り込み、12月29日午後11時10分に関空を出発、約12時間後にイスタンブールに到着。別のPJに乗り換え、30日にレバノンのベイルートに入国したという。
中東メディアのインデペンデント・アラビーヤ(電子版)は、「マイケル・テイラーの軍事関連会社」が実行し、「2000万ドル(約22億円)以上の費用がかかった」と報道。トルコ警察は2日、この事件に関係したパイロット4人、3人の地上業務員を逮捕した。
問題のパスポートは昨年5月以降、東京地裁の許可を得て、弁護人が管理する鍵が付いたケースに入れて携帯していた1冊が使用された可能性があるとみられている。ゴーンは出国直後にネットで声明文を発表した。
「日本の司法制度は国際法、条約下における自国の法的義務を著しく無視、有罪が前提で、差別が横行し基本的人権が否定されている。私は正義から逃げたわけではない。不公正と政治的迫害から逃れたのだ」と挑戦状をたたきつけた。日本との闘争(逃走)宣言を世界に大々的にアピールしたものだが、日本側は祝賀ムードに包まれた元旦に虚を突かれて形で茫然自失となった。
このゴーン氏の脱出劇は「大金持ちの大仕掛けの国際スパイもどきの犯罪だ」、「いや、モンテクリスト伯の現代版だ」と国際世論でも賛否両論の真っ二つとなっている。フランス・フィガロ誌のオンラインでの統計では82%がゴーンの逃走に賛成し、アメリカのウォールストリートジャーナルも、元旦社説で、「日本の司法制度に鑑みればゴーンが日本から逃亡したことは理解できることだ」とも書いている。
なぜ、ゴーンは逃亡したのか、8日(日本時間午後10時)からゴーン被告はレバノンで記者会見するが、、弁護団の1人・高野隆氏はブログ(1月3日)で個人的な見解だとして次のように述べた。
- 「テロリストも盗人も政治家もカリスマ経営者も、みんな逮捕されたら、23日間拘禁されて、毎日5時間も6時間も、ときには夜通しで、弁護人の立ち会いもなしに尋問を受け続ける。罪を自白しなかったら、そのあとも延々と拘禁され続ける。誰もその実態を知らない」と日本の刑事裁判、人質司法の実態を聞いて絶望感をふかめた。
- また、国際人権規約に違反する「キャロル夫人との接触禁止の保釈条件が、どんなに手を尽くしても解除されないことに絶望を感じての逃亡だった。
- 海外では使用されている電子ブレスレットやアンクレットの被告人の位置を特定できるツールをゴーン氏側は保釈条件として認めたのに裁判所は保釈の条件とはしていなかったーなどが、逃亡につながったとみている。
元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏は「政府、司法当局の大失態で危機管理(IT,インリジェンス化)の欠如した日本の旧弊的なアナログシステムは世界の笑いものとなった」と指摘している。
2020年の日本にとって最大記念行事の東京オリンピックでは年間で訪日外国人観光客は3600万人になると見込まれている。このセキュリティー体制が心配になってきた。
「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけない
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200107-00000029-zdn_mkt-bus_all&p=4
つづく
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本世界近現代史』(297)『歴史は繰り返されるのかー1940年「東京オリンピック」は日中戦争により返上したが、その二の舞になるのか!』★『新型コロナウイルス感染症の「パンデミック化」(世界的大流行)によって、東京オリンピック開催も中止の議論が起こってきた①』★『世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は27日、パンデミックになるつつあることを初めて認めた』
歴史は繰り返されるのかー1940年「東京オリンピック」は日中戦争によ …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ(80)』 「 デーブ・スペクターの人気者としての実力は日本では無敵である”」(NTY)
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウ …
-
-
『鎌倉材木座海岸ウインドサーフィン』(2020/3/19/1600)-.20度も気温が上昇し、春の嵐の再来に怒涛の大波とたたかうサーファー勇者たち、スピード、スリル満点、見てるだけでエキサイティング
鎌倉材木座海岸ウインドサーフィン②(2020)/3/19/1600)-.20度も …
-
-
日本リーダーパワー史(228)<リーダー不在の人材倒産国・日本の悲劇①>『昭和の日本を亡ぼした無能リーダーたち』
日本リーダーパワー史(228)   …
-
-
近現代史の復習問題/記事再録/日本リーダーパワー史(82)尾崎行雄の遺言「日本はなぜ敗れたかーその原因は封建思想の奴隷根性」
日本リーダーパワー史(82)尾崎行雄の遺言「日本はなぜ敗れたかーその原因は封建思 …
-
-
『新型コロナウイルス/オミクロン株のスピード動向①』★『オミクロン株が世界的に猛威を振るう』★『オミクロン株は2ゕ月遅れで日本に襲来』★『ブースター接種率は米EUは3,40%なのに、日本は先進国ダントツの最低0,5%にとどまる大失敗』★『再び、後手後手の対応のスローモー岸田政権』
オミクロン株が世界的に猛威 前坂 俊之(ジャーナリスト) 世界中で再び新型コロナ …
-
-
知的巨人たちの百歳学(108)ー『世界天才老人NO1・エジソン(84)<天才長寿脳>の作り方』ー発明発見・健康長寿・研究実験、仕事成功の11ヵ条」(下)『私たちは失敗から多くを学ぶ。特にその失敗が私たちの 全知全能力を傾けた努力の結果であるならば」』
再録・ 百歳学入門(96) 「史上最高の天才老人<エジソン(84)の秘 …
-
-
『世界史を変えるウクライナ・ゼレンスキー大統領の平和スピーチ』★『日露戦争に勝利した 金子堅太郎の最強のインテジェンス(intelligence )⑨終』★『ポーツマス講和条会議始まる』★『大統領に条約案をみせて相談、ー『償金やめて払い戻し金に』●『談判決裂を心配したル大統領―3人委員会をつくる』
2017/06/28 日本リーダー …
-
-
『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑪』★『米民主党は中間所得層への底上げで、富豪や大企業に対する法人税を28%(+6%)に引き上げ』★『トランプ氏はイーロン・マスク氏を閣僚に起用、ロバート・ケネディ・ジュニア氏も招へいか?』
米国民主党の全国大会が8月19日、シカゴで開催された。ハリス副大統領がサプライズ …
-
-
速報(173)『日本のメルトダウン』『明日の日本の現実!ーギリシャ国民を待ち受ける苦難』【社説明責任を回避する日本企業』
速報(173)『日本のメルトダウン』 『明日の日本の現実!-ギリシ …
