『リーダーシップの日本近現代史』(249)/百歳学入門(46)原安三郎(98歳)「いつでも平常心を持って急迫の事態にも冷静に対応し、判断せよ」長寿10ヵ条とは
百歳学入門(46)記事再録
原 安三郎(98歳)1884・3・10-1982・10・21
日本化薬会長、東洋火災海1保険会社初代会長、日本化学工業協会会長、政府
税制調査会会長など歴任。会社再建に手腕を発揮。
原の「長寿十ヵ条」は次のとおり
① 時間は短くてもよく眠れ
② 食事は少なくせよー朝はパンとオートミールと野菜と牛乳。昼はヌキ。夕食は米を一碗。
③酒、タバコは呑まない。
④物事をすべてその場で処理せよ。
⑤心配はしても心痛はするな。
⑥決して物にとらわれるな、物に支配されるな。
⑦六十歳過ぎると義理や見栄、メンツで頭や身体を便わぬこと。少しでも気にそわぬこと、いやだと思うことをあえてするな。
⑧会合や人の依頼も気特ちにそわぬことはドシドシ断れ。
⑨物事を正直に、いつも良心に照らして遺憾のないように。
⑩思いついたことは遠慮しないでドシドシしゃべれ。
前坂俊之(ジャーナリスト)
名言①『若いときは百万円の益を得るより千万円の損をするほ
うが貴重な経験になる』
原安三郎は明治の末期から大正、昭和三代にわたって活躍した稀有の経営者。昭和10 年から同48年までの、実に三十八年間も日本化薬社長の座にあった。また昭和57年に98歳で他界する直前まで、財界最長老、財界の重鎮として積極的に発言を続けた。
九〇歳代の昭和五〇年代まで現役社長を勤める息の長さもさることながら、倒産会社の整理や再建屋として数多くの他人の跡始末を手がけた経営力でも傑出している。
原の企業遍歴は三歳のとき流行性関節炎で左足と右腕の自由を失った病気にに端を発する。明治四三年、早大商科を首席で卒業した原は総長高田早苗から山本条太郎・三井物産常務(その後、満鉄総裁、政友会幹事長)を紹介されて、三井物産の入社試験を受けるが、面接した庶務課次長が原の身体の障害に難くせをつけたのに憤慨し、自分から入社を辞退した。
ところが、その根性を認めた山本が採用して、秘書にして目をかけた。ここで、山本から仕事術、人使い術を徹底して仕込まれた。
以後もっぱら山本が関係していた不振会社の跡始末を託され得難い体験をすることになる。栃木県薬丸金山を手初めに金港堂、日本硫黄、才賀商会など、関連会社を含めると、数十もの会社を整理あるいは再建し、最後に鈴木商店の整理を手伝ってその傘下会社の東工業擬革、帝国染料をみずから買い取ったのが、今日の日本化薬の母体である。 原は、ボロ会社立て直しの名人といわれ、財界長老として活躍した。
「若いときは百万円儲けるより千万円損したほうが貴重な経験になる」という名言は倒産会社の凄絶な修羅場から学んだものである。「百万円儲けたという経験は、その人が十億円儲ける、という経験にはならないが、一千万円損した経験は、むしろ十億円を儲ける経験につながる」と述べている。
百万円を儲けたといっても、一億、十億円という金とは次元が異なり、儲けるには新しいノウハウを必要とする。
ところが、失敗の経験は原因を十二分に反省して、二度と繰り返すまいとすれば、その失敗の十倍、百倍に相当する体験をつかむことが出来る。
それが、逆に成功へのヒントとなり、儲けることのチャンスへとつながるという逆説的な表現である。
原は「会社は仕事の性質さえよければ、煙突が立ち機械がすわるれば、よほどの見込違いがない限り必ず再建できる。信念を持って、失敗を踏台に建設に向かうべきだ」との経営訓を残している。
また、数十社もの企業を再建した経験から、その多くが経営者が自分の経営力を過信して手を広げすぎたゆえに失敗したものが多かったので「最近の若い経営者は、フレッシュで、何かしなきやならんという積極性に富んでいる。だが、その半面、天下を取ろうとして不必要に手を伸ばしすぎる。伸びるためには縮むことも大切、経営者は足踏みすることを知らなきやダメだ」とも語っている。
関連記事
-
-
『世界サッカー戦国史』⑦『ベルギー戦・西野ジャパンは2-3で惜敗するも大健闘!』★『グローバル化する世界で多民族国家がほとんどの中で唯一の「ガラパゴス・ジャパン」(ほぼ単一民民族国家日本)の永遠の課題がこの試合でよく見えた』
W杯サッカー、西野ジャパンの惜敗するも大健闘! 予選敗退確実とみら …
-
-
★『ある国際ビジネスマンのイスラエル旅行記④』★『エレサレムの旧市街の迷路を歩く』★『発掘されたエルサレム 各統治年代によって重層化した地盤』★『究極の聖地周辺は今も大規模な発掘が進行中』★『呼び込みの激しいバザール』
2018/03/24 『F国際ビジネスマンの …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(964)ー2019年は『地政学的不況』の深刻化で「世界的不況」に突入するのか』➂『●ファーウェイ事件で幕を開けた米中5G覇権争い』
世界/日本リーダーパワー史(964) ●ファーウェイ事件で幕を開けた米中5G覇権 …
-
-
記事再録/知的巨人たちの百歳学(126) <カルピス創業者・三島海雲(96歳)の健康法> ①『必要な金はどこからか自然に湧いて来る ②一に散歩、二に日光浴、三に食養生。 ③早朝散歩と日光浴を毎日欠かさず実行。
2012年8月8日 /百歳学入門(44)   …
-
-
日本リーダーパワー史(944)「日中平和友好条約締結40周年を迎えて、日中関係150年の歴史を振り返る」★「辛亥革命百年ー中国革命の生みの親・孫文を純粋に助けた宮崎滔天、犬養毅、頭山満らの熱血支援』
日本リーダーパワー史(944) 日中平和友好条約締結40周年の祝賀記念行事が各地 …
-
-
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか⑬「朝鮮王子,死の宣告について当地で語る(ニューヨーク・タイムズ」(1907年8月2日付)
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙は「日韓併合への道』をど …
-
-
日本メルトダウン脱出法(770)「仏治安当局の悪夢が現実に、パリ同時襲撃事件」★「パリ連続襲撃事件、実行犯は「シリア介入」が動機と語る」★「「イスラム国」が犯行声明、127人死亡のパリ同時多発攻撃」
日本メルトダウン脱出法(770) 仏治安当局の悪夢が現実に、パリ同時襲撃事件 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(264 )/『日本画家・奥村土牛(101歳) は「牛のあゆみ」でわが長い道を行く』★『スーパー長寿の秘訣はクリエイティブな仕事に没頭すること』★『芸術に完成はあり得ない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである』
2019/01/11 知的巨人 …
-
-
正木ひろしの戦時下の言論抵抗(正木ひろし伝Ⅱ)(下)
1 <静岡県立大学国際関係学部紀要『国際関係・比較文化研究』第3巻第1号(200 …
