前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(251)/東武鉄道創業者/根津嘉一郎(79)ー「借金が恐ろしいのではない。利子が恐ろしい」「克己心」(己に克つこと)こそが健康長生法」★『長生する大欲のためには、日常生活での小欲を制しなけれならぬ』

   

 

  

知的巨人たちの百歳学(116)記事再録

 根津嘉一郎(1913年(大正2年)9月 – 2002年( 平成14年)2月)

 東武鉄道の創業者。ほかに北関東一帯の鉄道網を傘下にしていたほか、九州鉄道、大阪高野鉄道、東京地下鉄をも傘下に組み入れて、″鉄道王〟とうたわれた。根津は事業経営の秘訣を問われて次のように答えている。

「借金が恐ろしいのではない。利子が恐ろしい」

「私は、金を借りる時、無担保で借りることしない。その代わりに無担保で借り入れるよりも、ぐっと安い利子にしてもらう。世間では担保に入れるものを持ちながら、無担保の方へ多く飛びつきたがる。利子の高いのを案外、平気でいるのである。そんなことでは、良い仕事はできない」「借金が恐ろしいのではない。利子が恐ろしいのである。私は、巨額の金を無担保で貸すといってくる人の話は、てんで受け付けないことにしている」

「克己心」

人間も7、80まで生きたらいいだろうという人がある。私は意気地のないことをいうものだと大反対である。せっかく、この世に生まれてきたのに、それではあまりに情ない。人間はできるだけ養生をして、元気で働きつづけていれば、90 や100はむろん、130までは大丈夫と私は考えている。

少なくとも、それぐらいの意気ごみでなくちや長生きはできん。

私は別に健康法といったものはやっておらぬが、強いて申せば「己に克つ」ことがつまりは健康長生法の第一ではあるまいか。

たとえば、うまい物があればウンと食いたい。好きな酒ならウンと飲みたい。煙草もやめられぬ。また遊びたいだけ遊びたい。朝寝もしたければナマケもしたい。

そんなことで、どうして健康が保てよう。長生きができよう。私は若いころから弱く、婦人科以外の病気は何から何までやってきたのだが、すべて、己に克つことで、病気に勝ちぬいてきた。80をすぎていよいよの元気が自覚される。

「大欲と小欲」

あるところで、「人間も90まで生きられたらいいだろう」という話が出て、席上の大部分は、それは望んでもなかなか達せられまい、いや、70、80で大満足だという意見だった。

私はそれに大反対で「80や90で死んではつまらぬ、どうでも100まで生きなきゃウソだ」といった。

みんなはそれは欲が深すぎると笑った。私は笑われようと、なんであろうと、100まで生きる欲をはって、せいぜい養生につとめている。

人間の養生は克己心を第一とする。なんでもしたい放題をしていては養生にならぬ。つまり長生をしようという大欲のためには、日常生活での小さな欲を制しなければならぬのである。じつをいうと、私は40ころまではあらゆる小欲に負けて、病気という病気は婦人病以外なんでもやって、人の見る目にもヒョロヒョロしていた。

やがて湧いてきたのが長生きの大欲、それで救われたのだ。

「心配ごと」

いろいろ心配事が相ついで起こってくることがある。その心配事に負けては、ついつい体がもたなくなる。食事がうまくない、胃腸のはたらきが弱く神経がたかぶる。むやみに怒りっぽくなる。

こんな場合、人は何か散歩をこころみたり、芝居や映画をみたり、ときには酒をあおることもあるようだが、とにかく静かに気を落ちつかせるのがいちばんよい。

私は心配事に対しては、その問題と真正面から取り組んで、少しでもそれから逃げるような態度はしない。

ぐっと丹田(下腹)にカを入れて、その際の最善最適の手段を考える。思わず深呼吸をすることもあるし、にきりこぶしをかためることもある。

いわば土俵の上の立ち合いで、その場で何もかもきめてしまう。自分でもこれがいちばんよい方法だと確信するので、あとへだらだら持ち越すことがない。そうして心配事は一切忘れさって、さっとまた別な事にうつる。食事も進まぬことはなく、夜もぐっすりよく眠られる。

 - 人物研究, 健康長寿, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「Z世代のための日本リーダーパワー史研究』★『電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の75歳からの長寿逆転突破力③』が世界第2の経済大国』の基礎を作った』★『人は信念とともに若く、疑惑とともに老ゆる』★『葬儀、法要は一切不要、財産は倅(せがれ)、遺族に一切やらぬ。彼らが堕落するだけだ」(遺書)』★『生きているうち鬼といわれても、死んで仏となり返さん』

2021/10/06  「日本史決定的瞬間講座⑫」記事再録 …

no image
<まとめ>『日本興亡学入門』2018年は明治維新から150年目ーリーマンショック前後の日本現状レポート(10回連載)

 <まとめ>『日本興亡学入門』 5年後の2018年は明治維新から150 …

no image
日本リーダーパワー史(343) 『最強のリーダーシップー西郷隆盛の国難突破力』 『情においては女みたいな人』(大久保利通の西郷評)

日本リーダーパワー史(343)  ● 『最強のリーダーシップ …

no image
96歳のカルピス王・三島海雲の長寿養生訓

96歳のカルピス王・三島海雲の長寿養生訓   前坂俊之(ジャーナリスト …

『オンライン講座/ウクライナ戦争と安倍外交失敗の研究 ➅』★『だまされるなよ!と警告したのに、見事に騙されてしまった安倍外交の無惨完敗』★『 ロシアは一を得て二を望み、二を得て三を望む恫喝・強欲・侵略国家なので、対ロシアで日本のハードパワー(武力)を示さずして 協調することは彼らの思うツボの侵略に同意することになる』(ロシア駐在日本公使・西徳二郎)』』

     2016/10/17  日本リ …

no image
 日本メルトダウン(1007)ー『揺れる「穏健なドイツ」、テロ事件の巨大衝撃 極右派の台頭も懸念される事態に』●『対岸の火事ではない、厳戒下で起きたドイツのテロ 右傾化を煽るように欧州で頻発、東京五輪の警備に抜かりはないか』●『米国メディアの評価は「ロシアが日本の希望を粉砕」 領土問題で少しも妥協を見せなかったプーチン大統領』●『2017年の世界は型破りトランプ政権を中心にこう変わる』●『中国の覇権主義は底堅い経済を背景にますます強固化する』●『コラム:元安容認とAIIB出資、米中取引あるか=村田雅志氏』

  日本メルトダウン(1007)   揺れる「穏健なドイツ」、テロ事件 …

「Z世代への遺言」「日本を救った奇跡の男ー鈴木貫太郎首相③』★『鈴木首相の「玄黙」「治大国若烹小鮮」「汐待ち」』★『鈴木首相と昭和天皇の「阿吽の呼吸」で、戦争に終止符を打った日本史上最大の決定的な瞬間です』

  昭和天皇の戦争責任について、 さて、天皇の戦争責任について未だに論 …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(15)日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。日本最強の陸奥外交力⑧『「蹇蹇録』の結論「他策なかりしを信ぜむと欲っす」(これ以外の策はなかった)最後の1戦だった」

  日中北朝鮮150年戦争史(15) 日清戦争の発端ー日本最強の陸奥宗光の外交力 …

知的巨人たちの百歳学(114)長谷川如是閑(93歳)「他からわずらわされぬ悠々自適の暮しが健康法」「「老人になって子供に帰ったのではなく、20歳前後の気持を持ち続けているだけ」

  知的巨人たちの百歳学(114) 長谷川如是閑(93歳)の悠々自適 「他からわ …

『超高齢社会のパスポート-晩晴学のすすめ』★『<〝晩成〟はやすく〝晩晴″は難し>』★『晩晴は人生そのものを第一義とし、真に老いに透徹した達人でなければ達し得ぬ人生最高の境地こそ〝晩晴〟である』

  2012/12/29  百歳学入門( …