前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

100歳現役学入門―団塊世代は元気な百歳をめざそう<健康長寿の達人へ>

   

100歳現役学入門―団塊世代は元気な百歳をめざそう
 
                           前坂 俊之
                        (静岡県立大学名誉教授)
 
 
<「百寿者百話」前坂俊之 海竜社(2008年)まえがき>より
 
 
晩年こそ新たな人生の始まり・自らの意思で、よりよく生きてこそ真の長寿
 
 世の中で、長寿を望まない人はいませんが、ただ長生きすればよいというものでもあり
ません。生命体として生かされた結果、長生きしたというのでは、単にこの世に長く生存
したというだけに過ぎません。
 
 人間としていかに生くべきか、必死に努力して自らの意思で、よりよく生きてこそ、真
の長寿に値するものですし、最期まで元気で天寿をまっとうできれば、こんな幸せなこと
はありません。
 人類は大昔から長寿を夢見てきましたが、人間は果たして何歳まで生きられるのでしょうか。
専門家の研究では、百二十歳までは生きられるというのがどうやら定説のようです。
 
 日本はいまや世界一の長寿国であり、二〇〇七年の平均寿命は女性で八十五・五歳、男
性は七十九・五歳です。また、人口の約四人に一人が六十五歳以上という世界一の〝超高
齢社会″を迎えようとしています。
 
 
↑松原泰道、100歳で1時間元気に講演

百歳以上の人は英語で(センティナリアン=Centenarian)(百寿者)といいますが、日本の 
「センティナリアン」は約三万二千人にのぼり、毎年増加の一途です。つまり、日本では誰もが
平均寿命より少しがんばれば、「ノナジェナリアン=Nonagenarian (九十歳人、卒寿者) 
や「センティナリアン」 の仲間入りができる時代になったわけです。

 
 このせいもあってか、わが国では老人問題がいまや重要なテーマになっています。社会
保険庁の年金記録問題や、老人の介護問題、後期高齢者医療制度、健康で長生きするには
どうすればよいか、老後の健康、生活をどうするか、アンチエイジング、おひとりさまの
老後、美容、健康本、長寿食などなど……、老いも若きも最大の関心事となっています。
テレビ、マスコミはこうした問題を連日大きく取り上げていますし、書店に行っても大き
なコーナーに平積み状態です。
 
 ところで、ひとつ不思議に思うことがあります。これらの本の多くが、平均寿命の半分
ほどの若い専門家や医者らによって書かれていることです。自ら主張する健康法を実践し
た結果、九十歳、百歳まで長生きしたというのであれば、信頼性はより高まりますが、そ
のような例は少ないようです。
 
「医者の不養生」という言葉があるように、実際に百寿者や「ノナジェナリアン」たち自身から、その健康法、
処世訓を開きたいのですが、残念ながらこの手の実証的、歴史的な「センティナリアン」研究が日本には
まだ少ないのです。
 これまで日本では千年以上も短命時代が続いていたためで、ついこの三十年ほど前から
急激に訪れてきた世空の長寿国、超高齢化社会の到来に、老生学が追いついていないの
が実状です。日本の歴史の中で、どのような長寿者が実在していたのかを調べた長寿歴史
学さえありません。
 
 真の長生きの秘訣は首寿者に聞け
 
確かに若い人の研究やマウスを使った実験結果も参考にはなりますが、元気な百歳おじ
いちゃん・おばあちゃんの体験談、健康法のほうこそが実践に裏打ちされているだけ千鈞の重み
があります。
 
人間、年をとるのは誰もが初めての経験ですし、死ぬのも初めての経験です。それだけ
に、病気は医者より病人に、人生は老人から、長生きは実際に長寿の「センティナリアン」
「ノナジェナリアン」から聞くのが筋ではないでしょうか。
「おじいちゃん、おばあちゃんの口癖」1じいさまのカミナリ、小言」1おばあさんの知恵 袋」こそ、長寿の秘訣の
宝庫なのです。この本は「天寿の秘訣はセンチィナリアンに聞け」
をコンセプトに作ったものです。
 
八十、九十歳を超、毒もなお生涯現役で活躍した人たち、百歳を超、享ライフワーク、
創作活動に最後まで励んでいた画家や芸術家、五十歳過ぎから起業して世界的な大企業に
発展させた実業家、百歳まで世界の山々を滑走した冒険スキーヤー、票てますます活躍
した政治家、作家、市井の人たちなど、日本の近現代社会で花開いた健康長寿、生涯現役
の達人たちを調べてみました。
 
 その中から、五十、六十代の人たちに大いに参考になる生き方、養生法を実践した七十
人を選びました。そこに共通するものはちょっと意外な事実でした。
 
①丈夫に生まれて、病気にかからなかった元気者は意外に少ない。逆に、病弱だったが、
 病気を克服して天寿をまっとうした人が多い。
 
②食事は粗食、腹八分、少食のほうが、長生きし、創造的な活動を続けられる。
 
③したいことをやる、したいことに熱中していると年も忘れて長生きする。百歳近くまで
 生きた人の最期は自然死、大往生する例が多い。
 
④物事を悲観的に考えるよりも楽観的で前向きな人、明るく陽気な性格の人、済んだこと
 をクヨクヨ考えない人が長生きする。肝心なのは気持ちの持ちようである。
 
⑤画家、彫刻家などの芸術家や学者で、創造的な仕事をした人は長生きである。これは長
 生きしたので大きな仕事ができたともいうことができる。
 
⑥日本の伝統的な食事は世界一の長寿食である。
これらは本文を読んでいただければ、こと細かに紹介しています。
 
 日本の百寿者の原型があった
 
 今や日本の「センティナリアン」は三万二千人に達したといいましたが、一九六六(昭和四十一)年はわずか二百五十二人です。
その全員のアンケート調査 (回答率は全体の八〇%、二百一人) があります。
 
 これは、日本では最初の全国百歳調査と思われますが、現在のように長生きさせる医療
技術が発達しておらず、飽食の時代、健康長寿が騒がれていなかった時代のものだけに、
百寿者のナマの姿を知るうえでもたいへん貴重なデータです(『われら百歳』大平陽介編/家の光協会)。
一九六六(昭和四十一)年で百歳ということは一八六六(慶応二)年生まれです。
 
明治維新(一八六八―慶応三)年)前で、この時の平均寿命は三、四十歳に満たないことを考えると、
百歳とはそれこそ稀有な年齢で、平均寿命八十歳以上の今の百歳とはまるで違うのです。それだけに、
日本人のセンティナリアンの原型がここにあります。その内容を見てみましょう。
 
①尊属者(父母、祖父母)に長寿者(七十歳以上)がいる人の割合は、三五%で三分の一
 にのぼり、長寿には遺伝の要素が大きいことを示している。
②健康状態の質問では「どこもなんともない」という完全な健康状態が四分の一。「耳が
遠い、聞こ、妄いのが」八〇%、「目がかすむ、見えない」四五%、「入れ歯」四〇%「体
 が不自由」三三%。
③食べものでは、間食する者が五六%、間食しない者三三%。案外、間食が多い。食べ物
 の好き嫌いは、好き嫌いのない人七三%、好き嫌いのある人二七%で、当然のことながら好き
嫌いのないほうが栄養が片寄ら千健康によいことを示している。
④「好きな食べもの」で「毎日のように食べているもの」は野菜、魚、果物、菓子、卵、
 漬けもの、みそ汁、牛乳の順。「毎日食べてはいないが好きなもの」では、魚、餅、肉、
 菓子、果物。「嫌いなもの」は肉、魚、あぶらものの順、長寿者は嫌いなものがあまりな
 いことを示している。
⑤食事量では「腹八分」が七五%、「腹七分」一五%。「腹いっぱい」六%。
⑥酒を飲む人は二五%、飲まない人は四四%で、飲む人も一、二杯が大多数である。
⑦入浴は好きな人が六五%、嫌いな人五%で、圧倒的に入浴が健康によいことを示した。
⑧性格については「ものごとにクヨクヨしない」五三%、「仕事好き」四六%、「他人にす
 ぐ同情する」四二%、「世話好き」三八%、「何でも心配する」二三%、「人のことはかま
 わない」一〇%。
「物事にクヨクヨしない」、つまり神経質でなく、気持ちがおおらかで、楽天的な人が多
い。また「仕事好き」が男女ともに相当数を占めており、百歳現役の意欲的な生活態度が
うかがわれる。その一面、世話好き、他人への同情心など、あたたかい心の持ち主であっ
た。
 
百寿者を目指すための六つのアドバイス
 
佐藤一斎の『言志晩録』第六十条に、「少くして学べば、則ち壮にして為す有り。壮にし
て学べば、則ち老ゆとも衰へず。老いて学べば、則ち死すとも朽ちず」とあります。
一斎は徳川幕府の儒学者の最高権威で八十六歳の長寿を保ちました。「若くして学べば、
成人して何事か成し遂げるであろう、壮年にして学べば、年をとっても老いない、老いて
学べば死んでも、その志は受け継がれていく」というもの。まさに、このとおりではない
でしょうか。
 
 五十歳、六十歳からでも強い志を持って学び続ければ、老いても衰えることなく、充実
した輝かしい人生を送ることができるのです。「五十、六十、痍たれ小僧、八十、九十人間
ざかり、わしも百歳これからこれから」という平櫛田中の有名な言葉があります。
 
 団塊世代が大量に還暦を迎えますが、六十歳などは、老後の始まりではなく、まだまだ
第二の成人式。「黄金の晩年」 に向けスタートしたばかりの青年期といってよく、これからがいよいよ
人生本番です。「晩年こそ新たな人生の始まり」なのです。
 
 長生き、長寿達成も富士山登山と同じです。富士登山五合目の駐車場までは車で簡単に
誰でも行くことができます。還暦を迎えた人々は、ここからは自分の足で一歩一歩しっか
りと、まずは平均寿命の八合目の 「オクタジェナリアン (Octagenarian)」(傘寿者・八十歳入) 
を目指して登るのです。ついで九合目の 「ノナジェナリアン」を (これは富士山では四五度の急角度
の山道となりますが、これも) 克服し、何とか頂上の「センティナリアン」を目指しましょう。
 
 この本は天寿を極めるためのガイドブックとして作りました。読んでますます元気がわ
いてくる、勇気を与えられる本になれば、こんな幸せはありません。
 
 最後に、アメリカのセンティナリアンたちからのプレゼントです。「百歳まで生きる六つ
のアドバイス」を紹介しましょう(『100万人100歳の長生き上手』トーマス・T・パールズ著、
日野原重明監訳/講談社)。
 
①年齢によって生き方を変えないこと。逆に、その可能性を最大限活用しましょう。
 
②圧倒的多数の人が八十五歳まで生きる遺伝子を持っています。健康的な生活があなたと
 センティナリアンの遺伝的な差異を補い、人生における病気と無縁の期間を最大限、延ばすことができるのです。
 
③高齢になるほど、体力と筋力を維持するトレーニングが大切です。増加した筋組織は脂
 肪を燃焼させ、心臓病になる危険性を減少させます。
 
④常に、新たなことに挑戦しましょう。脳の異なる部分を使うこと。第二の職業についた
 り、ボランティア活動、音楽指導、著述、旅行などをするのもよいことです。
 
⑤果物と野菜を重点的にとり、肉、バターなどの飽和脂肪酸、マーガリンなどの水素添加
 脂肪(硬化脂肪)、甘いお菓子を極力減らして、肥満を避けましょう。
 
⑥ストレスをうまく解消しましょう。センティナリアンはごく自然に心理的ストレスを排
 除できるのです。ユーモアや瞑想、運動、楽観主義などはストレスを発散する重要な手
 段となります。
 
では、みなさん、一緒に「センティナリアン」を目指して、長生きの富士山に一緒に登ってみませんか。
本書における年齢の表示は、二〇〇八年七月一日現在での満年齢で表記しています。
 

 - 健康長寿 , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

  関連記事

no image
百歳学入門(55)作家・宇野千代(98歳)『生きて行く私』長寿10訓ー何歳になってもヨーイドン。ヨーイドン教の教祖なのよ。

     百歳学入門(55)   作家・宇野千代(98歳)『生きて行く …

no image
百歳学入門(158)★『昭和戦後日本経済成長の立役者』松下幸之助(94) 『病弱だったことが私の成功の最大の秘訣!ー『私1人でできんのでみんなに任せてやってもらった。」

百歳学入門<158> 『昭和戦後日本経済成長の立役者』松下幸之助(9 …

no image
日本リーダーパワー史(955)大隈重信の人格と人心収攬術、談話と交際の名人、125歳まで長生きするという智慧

日本リーダーパワー史(955) 物集高見(107歳)の思い出話は超リアルだよ。 …

no image
百歳学入門(60)「ミスター合理化、財界の荒法師、行革の鬼」といわれた土光敏夫(91歳)のモーレツ経営10訓

百歳学入門(60)   「ミスター合理化、財界の荒法師、行革の鬼」 と …

no image
日本メルトダウン(923)『だから中国は嫌われる、まだ気づかないのかー中国の外交は“中国版ネトウヨ”の機嫌とりだ まるで戦前の日本、幼稚な世論に従うマスコミと政治家」●『橋下徹「ついに営業利益『成田超え』! 関空再生の秘密を教えます」』

  日本メルトダウン(923)   中国、南シナ海領有権否定判決で日米がとるべき …

41G9W+aLBFL
☆電子書籍で新刊を出版しました。『新聞記者の冤罪: 死刑追求の旅』 (22世紀アート) Kindle版』

☆電子書籍の新刊出版。『新聞記者の冤罪: 死刑追求の旅」 (22世紀アート)&n …

ダウンロード
百歳生涯現役入門(177)ー『晩年の達人の渋沢栄一(91歳)②』は70歳で、自ら創立した59の会社と17の団体役員から身を退き、76歳で完全に実業界から引退』★『86歳以後、彼の公共的な肩書、社会的貢献事業は50近くあった』●『会社の用はわがものと思え。会社の金は人のものと思え』★『楽隠居的な考えをせず、死ぬまで活動をやめない覚悟をもつ』

2017年8月6日/百歳生涯現役入門(177) 渋沢栄一1840年(天保11)3 …

no image
World Robot Summit 2018(10/17)-ARアドバンストテクノロジー、島津製作所によるAI搭載の診療科推論ロボットのプレゼン

日本の最先端技術「見える化」チャンネル Japan Robot Week2018 …

no image
『百歳学入門(205』ー 日本の食卓に長寿食トマトを広めた「トマトの父」カゴメの創業者/蟹江一太郎(96)の長寿健康/経営10ヵ条』★『でんでん虫、そろそろ登れ、富士の山」』★『日本一 前後かわらぬ トマトかな」その理念は『正直、感謝、共存共栄、漸進主義』●『人の一生は重荷を負うて、遠き道を行くが如し(家康の遺訓)』★『長寿はトマトを売り歩いた苦労のおかげ』

  百歳学入門(70) 日本の食卓に長寿食トマトを広めた「トマトの父」 …

ダウンロード (1)
知的巨人たちの百歳学(112)「日本開国の父・福沢諭吉」寿命の長さ【長寿】ですべて良しとせず、平生の心身の働きを大にして、寿量(生涯の質量)を多くせよ。

          知的巨人たちの百歳学(112) 「日本開国の父・福沢諭吉(6 …