前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日米の歴史パーセプションギャップ・誤解の原因は②・・ダンスは野蛮・国会は魚市場のセリと同じ

   

日米の歴史パーセプションギャップ・誤解の原因は・・②
<ー1860年の日米通商条約から150年―>
 
           前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
 
ダンスとは・・・・
 
 使節団一行に対するアメリカ側の歓迎はたいへんなものであったが、レセプションのあとでは、必ずダンスがつきものであった。このダンスにはビックリ仰天して、コマネズミが回るがごとしと評している。

一行の感想は、二つに分れた。老人たちはダンスなんていうものは騒々しいばかりで、少しも面白くない、逆に若いものは「まるで夢の中の天女の舞のような美しさ!」と絶賛し、その印象を記録している。

 
 
 「やがてまたあなたへ案内にて行くば、一席、板敷をいときよらかにして、かたわらに『ミユンツキ』(音楽の意)とて胡楽に胡弓やうのものを添えてはやしけるが、男はイボレットを付け、太刀を働き、女は両肩をあらわし、多くは白き薄ものをまとい、腰には例の袴のひろがりたるものをまとひ、男女組合(くみあわせ)で、足をそばだて、調子につれてめぐること、こまネズミの回るが如く、何の風情、手品もなく、幾組もまわり、女のすそには風ふくみ、いよいよひろがりてめぐるさまいとおかし。

これをダンスとて踊の事なるよし。高官の人も老婦も、若きも皆、この事を好でするよし。数百人の男女彼の食盤(テーブルのこと)に行て酒肉を用いては、この席に来り、かわりかわり踊る事とて、終夜かく興ずるよしなれども、おのれは実に夢か、現(現実)か分らぬばかりあきれたるまでなり。」(尾佐竹猛『幕末遣外使節物語』講談社学術文庫1989年)

 そして、「許しがたい野蛮、非礼な態度」と結論しているのがなんとも面白い。
 
「おおよそ礼なき国とはいヘど、外国の使節を宰相の招請せしには不礼ととがむれば限なし。礼もなく、義もなく、誰親の一字を表すると見て免し置ぬ(許しおかぬ)。」
 
 これに対して、『トミー』こと立石斧次郎を筆頭に数少ないが若い者の印象ははそうではなかった。
 
「その舞容(まいよう)我国と雲泥の異なり。何曲たるや、更に解する能はざ
れども、何れも美顔白玉(色白美人)の如く、加うるに美装を以てす。その容
色何物にかたとうべきや、誰あって驚かざるものなし。」(玉虫誼著『航米日録』)
 
「天然の麗色雪よりも白く、玉よりも麗(うるわしく)く、実に神仙境に入
天女(てんにょ)もかくやと訝(いぶか)る。」 (亜墨利加渡海日記)
 
「旋転百出、楓葉の風に翻(ひるがえ)へるが如く、胡蝶の花に狂するに
似たり。」 (亜墨利加渡海日記)
 
その後しばしば夜会に招かれてダンスをみせられているうちに、一行でのトミ―はその若さと、ハンサム、社交性によってアメリカ婦人たちの間で大もてで、ひっはりだこになったことは、これまでにも紹介した通りである。
 
 
②  次は国会を見た時の印象である。封建時代の政治感覚では全く何のことか理解できなくて、魚市場のセリと勘違いしていることが何とも面白い。いまの政治家のレベルとどこまで差があるのかを考えるとさらに面白い。
 
 国会を見学、大声での議論のやり取りを日本橋の魚市場のセリと勘違いする
 
アメリカ側では使節団がせっかく来てくれたのだからというので、いろいろなところを案内した。ところが国会を見学したときのかれらの感想が振っている。かれらはそれをみて、日本橋の魚市場の風景を連想しているからである。
 
 「例の人々が案内して車にのりて七八町東へ行ば、コンゲレス館(国会議事堂)に至る。長さ二町(218m)ばかり、中は一町(1町は109m)ばかりもある三階造の高堂、惣体白きマルメレン石もて造り、屋根め上に丸き大なる櫓の如きもの今普請中にて、半(なかば)組たてたり。正面の石の階段を登るに二丈(6m)もあるべし、入口正面に華盛頓(ワシントン)初の図、その他さまざま
 
の額を掲げ、所々、見巡るに口々に番兵(警察官)有、評議の席とて案内するに二十間(18m)間もあるべき板数にして四方折廻し、二階数にして合天井の如く、格子に組て金銀彩色の模様ある瑠璃の板を入、高き事二丈余も有べし、正面高き所に副統領(ワイスフレッシテントという)、前に少し高き台に書記官二人、
 
そのく椅子を並べ、各机書籍を彩く設け、およそ十人も並居てその一人立つて大音声に罵(ののしり)、まねなどして、狂人の如し、何か云い終りてまた1人立て前の如し、何事なるやととひければ国事を衆議し、各意中を残さず建白せし、副統領聞きて決するよし、二階桟敷(さじき)集して耳をそばだてて聞たり。
 
かかる評議の席のかたはらに聞てゐが、何なり問うべき由云ぬれど、もとより言語も通ぜず、又問うことはりもなければ、そのまま出ぬ。二階に登りて、また桟敷にてこ見せよとて椅子にかかりて見る。衆議最中なり、国政のやんごとなき評議なれど、例の股引、腰掛、筒袖にて大音に罵るさま、副統領の高き所に居体杯、わが日本橋の魚市のさまによく似たりとひそかに語合たり。」
 
 
③ 次は博物館の見学で驚きで、「切腹」「ハラキリ」が本文のサムライがミイラをみて野蛮と憤っているのもパーセプションギャップを感じる。
 
 
ミイラをみて、人骸の乾物を置くとは野蛮国も極まれり!
 
人使節たちが博物館に案内されて人体のミイラを置られたときめおどろきも、こんなものを陳列して人にみせるなんて言語同断であると、憤慨した。
 
 「隅に硝子を覆いたる中に人骸の乾物三つあり、千年を経しものといふ。野晒しの如きものにてはなし、肉皮とも乾きて全骸立たり、男女といえども
見わけがたし、天地間の万物を究理する故、かくの如きに至るといえども、鳥獣虫魚とひとしく、人骸を並べて置くは言語に絶たり、すなわち夷荻(野蛮)
の名はのがれぬべし。」
 
ァメリカはどう考えてみても、野蛮国だというわけ、文化・文明の認識の差、いわゆる、パーセプション・ギャップである。
 
 
④約300年の鎖国・日本の封建社会からいきなり、アメリカの文明・近代化社会のなかにとびこんでいった使節団一行は

見るもの、聞くもの、珍しいことばかだったが、一行初めて見るものを真剣に観察して、かれらなりに必死で読み解こうとしていた。日本人の異文化認識能力・異文化コミュニケーション能力のレベルとすれ違いが次の用語に現れており、これまた大変おもしろい。

 
<日米珍語一覧>
 
(日本語)          (米語)
筒袖………………………………洋服の上着
股引き……………………………ズボン
蒸汽車…………………………・・汽車
口吸……………………………・キッス
写真鏡……‥…・………………・写真機
釣燈籠(つりとうろう)………シャンデリア
大統領入札…・………………・…大統領選挙
ミユンツキ・……………………・音楽
奇術………………………・…科学実験
袴(はかま)のすそのひろがりたももの・・…・スカート
腹掛け……………………………チョッキ
食盤………………………………テーブル
 いかづちの串…・………………・・汽車
口吸………………………………キッス
釣台…・……・……………………・バルコニー
戸張・……・・……………………カーテン
百物館・・…………………・・……博物館
国事館……・………………・……・国務省
人骸の乾物・……………………・‥ミイラ
木造の十手・・………………・・…:警棒
 
 
(以上の参考文献は具島兼三郎「幕末外交史余話」評論社、昭和49年刊)
 
                              (つづく)
 

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(673) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(55)『三国干渉』後に川上操六はスパイ大作戦をどう組み立てたか『日英同盟締結に向けての情報収集にエース福島安正大佐 をアジア、中近東、アフリカに1年半に及ぶ秘密偵察旅行に派遣した』

 日本リーダーパワー史(673) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(55)   …

ダウンロード
日本リーダーパワー史(925)人気記事再録『戦時下の良心のジャーナリスト・桐生悠々の戦い②』★『権力と戦うには組織内ジャーナリストでは不可能とさとり、フリージャーナリストとして個人誌「他山の石」(いまならSNS,ブログ)で戦った』★『言論機関は今、内務省と陸軍省の二重の監督下にある。私たちは『三猿』の世界に棲む。何事も、見まい、聞くまい、しやべるまいむ否、見てはならない。聞いてはならない。しやべってはならない「死の世界」に棲まされている』★『「言論の自由を圧迫し、国民をして何物をもいわしめない。これが非常時なのだ」』★『「畜生道に堕落した地球より去る」と 69 歳で壮絶死』

2010年1月26日  日本リーダーパワー史(34) 日本リーダーパワー史(34 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(225)』<日馬富士暴行傷害事件の問題点>『急速な少子化、サッカー、野球などの他スポーツへの若者の傾斜、過酷な肉体労働の忌避など、乾坤一擲の策を講じても「日本人中心の相撲界」の将来性は相当厳しいのではと感じられます』

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(225)』  <F国際ビジ …

no image
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-「日英同盟の影響」⑧ 1902(明治35)年2月20日『タイムズ』『ロシアが支配した満州』/『米国は満州の公平な門戸開放を要求』★2月25日『タイムズ』ー『三国干渉を『臥薪嘗胆』して、敵愾心を抑えたのは日本の政治家と国民の賢明な愛国心だった。』/『日本が侵略的だとか,そうなろうとしているとか想像する理由は少しもない』

 ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の影響は」⑧  1902( …

no image
★人気記事再録『国葬にされた人びと』(元老たちの葬儀)『伊藤博文、大山厳、山県有朋、松方正義、東郷平八郎、西園寺公望、山本五十六、吉田茂の国葬はどのように行われたか』

『国葬にされた人びと』・・元老たちの葬儀 <別冊歴史読本特別増刊『ご臨終』200 …

no image
速報(467)◎「シリア危機はどうなるのか」「東京、2020年五輪の招致に自信」「マルクス主義学習の中国の国営

   速報(467)『日本のメルトダウン』 &nb …

no image
知的巨人の百歳学(141)-日本画家・奥村土牛(101歳) は「牛のあゆみ」でわが長い道を行いく』★『スーパー長寿の秘訣はクリエイティブな仕事に没頭すること』』

  『60歳から代表作を次々に出した奥村土牛』 芸術に完成はあり得ない …

no image
  日本メルトダウン(999)―『孫・トランプ会談、米メディアも高い関心 M&A加速と分析も』●『嘘か真か、トランプ流「ツイート砲」がメディアを圧倒』●『トランプ政権の命運を握る“超保守派”の懐刀ーメディアを操り過激な政治主張を繰り出すバノン氏(古森義久)』●『日銀がETF買いで「日本企業の大株主」になることの大問題』●『北方領土返還やっぱりプーチンに騙された“お坊ちゃま首相”』●『ガラパゴス日本の文化や技術が世界標準を目指すべきでない理由』

   日本メルトダウン(999) 孫正義氏,携帯再編、規制緩和狙いか…トランプ氏 …

no image
速報(58)『日本のメルトダウン』『放射能汚染水(殺人水)の海への流出を防げー梅雨と台風で困難な状況が続く』

速報(58)『日本のメルトダウン』 ●「放射能汚染水(殺人水)の海への流出を防げ …

no image
F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(238)ー『サウジ執行部とトランプは益々窮地に追い込まれています。』★『MBS(ムハンマド皇太子)とネタニャフの二人が一遍に失脚すると、米の対イラン戦略は完全に 空洞化します』

風雲急を告げる中東情勢 ≪F国際ビジネスマンの情勢分析≫ CIAによる、MBS殺 …