前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『野口恒の原発ウオッチ③』『福島原発』考(1)―『電源喪失による炉心溶融も、水素爆発も起こらない原発は可能か?』 

   

『野口恒の原発ウオッチ③』
 

福島原発』考(1)電源喪失による炉心溶融も、水素爆発も
起こらない原発は可能でしようか?
』   
 

 

野口恒(経済評論家)
 
 次世代のエネルギ-として、私が原子力発電に不安や疑問を感じるのは、つきつめていえば、次の2点であります。
 
(1) 原発は確かに非常に強力で効率的なエネルギ-であり、またCO2も排出せず、環境負荷も少ないように思いますが、しかし石油や石炭のように現在の人類の技術や科学で完全にコントロ-ルできないエネルギ-であることです。
将来もコントロ-ルできるかどうか分からないエネルギ-に自分たちの生活や人類の未来を託すことが果たして正しいだろうか。
 
(2) もう一つは、原発は今回の福島原発の事故でも分かったように、一度大災害が起こった場合、その破壊的な被害とダメ-ジは石油を始め他のエネルギ-のそれとは比較にならず、大げさに言えば回復・修復不可能、人類を破滅に導きかねないものだということです。
 
 そんな不安や疑問をずっと持ち続けていたのですが、そうかといって現在のわが国のエネルギ-事情からいって、すべての原発をすぐに廃棄することは現実的には難しい。脱原発依存しか他に道はないと言い切れる確たる見通しや展望が見当たらないのが実情です。そう思っていたら、最近非常に気になる記事やレポ-トを読みました。
 
(1)それは、次世代原発では福島原発の原因にもなった地震や津波による全ての電源を喪失しても「炉心溶融(メルトダウン)」や「水素爆発」が起こらない次世代原発の開発が進んでいて、実用化間近だという内容です。
 
 福島原発事故では、大地震や大津波の影響で全電源を喪失して冷却機能を失った原子炉と使用済み核燃料の温度が上昇し、水素爆発により建屋上部が破壊され、大量の放射性物質が大気や海に流出し続けるという最悪の事態が起こりました。
次世代原発では、そうした事故は起こらないというのです。
 
(2)一つは、電源が一切失われない、炉心溶融の危険性のないとされる「高温ガス炉」を使うので、次世代原発はより安全だという内容です。現在の軽水炉型原発は冷却材に水を使っています。そのため、核分裂が終わった後も、炉心溶融を防ぐため、電気を使って冷却水を注入し続けねばならない。

それが最大のボトルネックになっています。高温ガス炉なら、冷却材にヘリウムガス、炉心にはセラミック材を使うので、電源による冷却水の注入は必要なく、また冷却がたとえ止まっても炉心で放出される熱は原子炉の容器表面から放出され、自然除去される「きわめて安全な原子炉」だといわれています。

 
(3)もう一つは、現在の軽水炉型原発では原子炉の中に水素が溜まると水素爆発を起こすので窒素注入して爆発を防いでいるのですが、次世代原発ではたとえ水素が発生しても、発生した途端酸素と結合させてH20にしてしまい、原子炉に水素が溜まり、水素爆発を起こすのを未然に防ぐ装置が開発され、採用されるので安全だというわけです。
だから、水素爆発による放射性物質の大気や海への漏出もないといわれています。
 
私たち原子力についての科学的・技術的な知見も少なく、まったく素人にはこうした先端技術や科学を採用した次世代原発は本当に「安全な原発」といえるのだろうか。現在人類の科学技術の力や水準で、原発を確実にコントロ-ルでき、破滅的な事故を未然に防ぐことが本当にできるのかどうか、まだ確信が持てません。

再生可能な自然エネルギ-が本格的に次世代エネルギ-の主流になるにはまだ時間がかかりそうですが、その間に原子力エネルギ-の平和利用である原発の安全性が、科学技術の進歩でどこまで担保できるのか、知りたいところです。この点についてくわしい人の意見や専門的な知見を聞きたいと思っています。

 - 現代史研究 , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
記事再録/日本リーダーパワー史(575)明治維新革命児・高杉晋作の「平生はむろん、死地に入り難局に処しても、困ったという一言だけは断じていうなかれ」①

  2015/07/29  日本リーダーパワー史( …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(157)』 『イスラエルに魅せられて再訪(2016/1)」レポート(5)『死海(Dead Sea)、30 年ぶりの浮遊体験』ー平均1年、1mのペースで湖面が低下している。

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(157)』  『イスラエルに魅 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(102)記事再録/『明治以降、日中韓(北朝鮮)の150年にわたる対立、紛争、戦争のルーツは『朝鮮を属国化した中国」対「朝鮮を独立国と待遇した日本(当時の西欧各国)」とのパーセプション、コミュニケーションギャップの衝突である』★『 明治9年の森有礼と李鴻章の『朝鮮属国論』の外交交渉の見事なすれ違いにルーツがある』

 2017/03/16日本リーダーパワー史(780)記事転載 前坂俊之 …

no image
『リーダーシップの日本近現代興亡史』(212)『今から100年前の大正時代に世界一の<巨大商社/鈴木商店を作った>財界のナポレオン・金子直吉伝』①

福沢桃介著『財界人物我観」ダイヤモンド社、昭和5年版が原典よりの我流現代文になお …

『オンライン/東京五輪講座』★『ロンドン五輪(2012)当時の日本のスポーツと政治を考える』★『日本失敗の原因はスポーツ人と政治家の違い。結果がすべて実力のみのスポーツ人に対して、結果責任を問われない政治家、官僚の“無責任天国”なのが大問題!』

  2012/10/10  日本リーダーパワー史(333)< …

『大谷翔平<3打走投>流の「YAKYUDOU」(野球道)とは何か』★『ベースボールと野球道の違い』★『大谷のルーツは宮本武蔵の二天一流兵法(「五輪書」を書いた霊巌洞の動画あり)』★『「打撃の神様」の巨人・川上哲治の「ボールが止まって見える」(心技体一致)』

激動の2024年を振り返って、私を一番「ハッピーな気持ちと元気にしてくれた」のは …

no image
『百歳学入門(197)』-『本当は「長生き」なんてどうでもいい (1/4)』★『“認知症患者700万人時代”にIoTで切り込む 超高齢化社会ニッポンで求められる対認知症サービス3選』★ 予防医療が日本を救う!医療・ヘルスケア・ライフサイエンス分野の国内外事例10選』★『「認知症」最新記事一覧』

 『百歳学入門(197)』 本当は「長生き」なんてどうでもいい (1/4) ht …

no image
★『2017年は世界大乱、アジア激震の幕開け』-『トランプ大統領誕生で『日本沈没は加速されるか』、「しぶとく生き抜くか」の瀬戸際』(上)

  トランプ大統領誕生で『日本沈没は加速されるか』「しぶとく生き抜くか」の瀬戸際 …

no image
★『世界を襲う地球温暖化による異常気象』-『“ヒートドーム”に閉じ込められた北半球、史上最高気温続出』★『世界人口は2055年には100億人を突破。燃え上がる地球で人類は絶滅種族に向かう』

『青い地球は誰のもの、 青い地球は子どものもの、 青い地球はみんなのもの、 人類 …

no image
速報(43)『10分ですぐ分かる』◎日本民族の生死がかかる!『浜岡原発の虚実』『必見ビデオー広河隆一が語る』

速報(43)『10分ですぐ分かる』◎日本民族の生死がかかる!『浜岡原発の虚実』 …