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高杉晋吾レポート⑥日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、企業の利益を守る立場で出発①

   

高杉晋吾レポート⑥
 
日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、
企業の利益を守る立場で出発①
 
高杉晋吾(フリージャナリスト)
 
1964年、福島第一原発の建設にあたって、東電は取得した35mの高さの土地を25mも削って高さ10mと低くして立てた。なぜこんなバカなことが行われたのか>。
 
 
東京新聞の5月5日の記事は称賛に値する
 
皆さんもご覧になったことと思いますが、「津波軽視25メートル削り建設」という記事が東京新聞2011年5月5日号のトップに載りました。
この記事を要約すると福島第一原発の建設にあたって、1964年に東電が取得した土地は当時、35メートルの高さだった。ところが津波に襲われた2011年3月11日には現在の10メートルの高さになっていたというのです。
 
 なぜそんなに低くなっていたのかというと、その土地は35メートルの高台だったのに25メートルも削った。理由は主にコスト削減だったとこの記事は書いています。
「原発が大量の冷却水を必要としているので、その採取のためには海面に近い方が、効率が良い。船で運搬される核燃料の荷揚げにも効率が良い」などの理由からだったと。
この証言はこの立地の計画メンバーだった豊田正敏元副社長の話です。
 
この理由のほかに「当時、現場の地質は地盤の弱い粘土や砂岩層が広がっていたので、地震対策上、地表から25メートル下の比較的しっかりした泥岩層まで掘り下げることが必要だと判断した」「今考えると台地を削らず建屋の基礎部分を泥岩層まで深く埋めれば、地震と津波の両方の対策になっていたかもしれない」と豊田氏は悔やんでいるそうです。
皆さんはこの記事をご覧になってどういう感想をお持ちですか?
 
この削減立地を許可した経済産業省の理由
私は、
第一に「東電の津浪に関する認識がどうだったのか」ということ、
第二に「この建設にあたって国がどういう条件で許可したのか?」
ということを国に問いたいと思いました。
 
 東電は津波に関する認識不足からこんな無謀な建設をあえてしたのでしょうか?そうではないでしょう。東電は、当然津波の歴史は重々承知の上で無謀な建設をいさめる声を無視して建設したのです。
 
1933年昭和三陸地震には大船渡市で28,7メートルの津波、1896年の明治三陸地震では38,2メートルの津波が発生しています。経済産業省の原発の安全性を検討する審議会の席上で産業技術総合研究所活断層研究センター所長の岡村信行所長が『450年から800年周期で津波が発生している』と津波の危険性を指摘したが、東電側は
「そんな被害は見当たらない。設計上考慮する必要はない」
 
とこの指摘を無視したのです。厳然たる歴史上の事実を、原発建設推進のために無視することができる日本国の支配者たちの姿を見ていると中世の愚昧なカトリック支配者の天動説を思い浮かべます。地球が動いているという地動説を唱えたガリレオガリレイを押さえつけて天動説を押し付けた支配者たちは、後に世にも愚昧な支配者のモデルとして天下の笑い物になった。ガリレオガリレイは『それでも地球は動いている』と云ったと云いますが、『それでも津波は原発を襲うよ』と岡村信行さんは考えたのでしょう。
 
今の時代にも天動説を唱えているかのような愚昧な支配者がいるのには魂消ますが、笑ってはいられません。この愚昧さによって苦しめられるのは住民です。
東電は津波の認識がなかったのではなく、指摘されても平気でこれを無視するのです。
問題なのは、福島原発の土地の高さを25メートルも削減したという津波の現実を無視した建設という記事が、東日本大地震による津波大被害という争いようのない現実が発生し、東電の認識と行動の愚劣さを余すところなく証明してしまったことです。
 
此処で、なぜ東電が津波についてこんな住民の安全無視の態度をとり続けることができたのかという点を考えてみたいと思います。
 
住民の命を奪う早明浦ダム、高水論の現実は地獄、
 
話は突然変わりますが、国が治水を考える際の許可行政の在り方を考えるうえで、だむの許認可を考える必要があるので、ダム問題を考えてみたいと思います。
私は四国の高知県と徳島県の県境、吉野川源流に作った早明浦(さめうら)ダムの取材をしたことがあります。あのダムは当時としては最新のコンピュータ操作による最新鋭ダムと建設省はうたっていました。

 

早明浦ダムは1973年に建設され「80年に一回の洪水でも大丈夫」という数量を条件にして許可されました。建設省が県議会などで説明していたこのダムが、建設して僅か二年後の1975年と76年に台風によって、目も当てられないすさまじい大被害を上流下流に発生させました。『80年に一回』と云う住民への宣伝がまずお役人の妄想であったことが証明されてしまったのです。

 

早明浦ダムについては、水資源公団のパンフレットには、「洪水調節は早明浦ダムに流れ込む最大流入量は毎秒四七〇〇トンだ。ダムより下流に放流する量は最大でも毎秒二千トンにする。それによって毎秒二千七百トンをダムに溜めて洪水を押さえる」と書いてありました。それで80年に一度の洪水でも大丈夫と宣伝した。それが建設省と公団の計画だったんです。

 

所が二年後に実際に起こった豪雨が、この定量的な計画を完全にインチキだったことを完膚なきまでに証明してしまったんです。
早明浦ダムの建設にあたってダム直下に住み、ダム推進委員長だった亀井謙一さんは「洪水時でもダムを超えて流れる水量は毎秒二千トンと云う約束でしたが、何と3500トン流れたんです。その恐怖は数字で言っても分かりません。私の家も周辺の家も一気に押し流されるんじゃないと思いました。

腹の底からえぐられるような轟音と震動です。川岸はどんどん崩れてきました。水の中を這いずって逃げました。地獄でした。皆公民館に避難しました。その後清流吉野川はミルクチョコレートのようにものすごく濁り、漁業はほろび、ダムの上の大川村は激しい崩落にさいなまれ、村は壊滅的に人口が激減したんです。」と私に語ってくれました。

 

私はこの誤りが全国のダムに共通するものだということを、その時、『日本のダム』(三省堂選書、1980年)に取材した熊本の川辺川ダム、荒瀬ダム、天竜水系の泰埠(やすおか)ダム、平岡ダム、松川ダム、佐久間ダム、秋葉ダム、船明(ふなぎら)ダム、関東利根川源流の諸ダム、足尾鉱山周辺の鉱滓ダム、などの取材を通じて理解しました。

 

これら天竜水系のダムはすべて建設省等の「予測」に基づいて建設されたダムですが、建設後、すさまじいダム洪水に見舞われ、多くの周辺で死者を出し家財を流され、自殺者を出すなどの苦しみを周辺住民に押しつけながら、役人は『国がやることにとやかくの文句を言うな、天災だからしょうがない』と住民に怒声を浴びせました。

 

今回の東日本大震災の津浪でも、予測不可能な津波を、予測したと称して企業に湾口防波堤建設を許可した国の、住民の命を守るのではなく、企業の利益を守ることを最優先した治水政策を進めてきたことが明らかになったのです。

 

 

国家は何を基準に河川海岸湖沼に巨大構築物建設を許可する?
 
そこで国は、どういう条件でこんな津波対策の無い土地の上に建てられた原発を許可したのかという問題に触れてみます。。
国が原発建設を許可する基準は原子力安全委員会が決めている「原発の安全設計審査指針」があり、詳しく原発建設の時、どうやって安全設計をするのか、という条件を規定しています。地震、津波、洪水など自然現象についての安全設計の条件が、
『指針2、自然現象に対する設計上の考慮』
という項目で書かれています。
 
その内容をかみ砕いて書くと
「原発を洪水、津波、風、凍結、積雪、地滑り等から守る。そのために、過去のこれらの災害記録をくわしく調べて、どんな過酷な災害にもそれぞれに対応できる設計をする」
と書かれているのです。
 
さて、この指針に書かれていることが守られたのかと言えば先述のように津波の歴史を調べていさめた人を「えい!原発促進の邪魔をするな!」とばかりに鼻の先であざ笑って無視し福島第一原発が設計され建設されたのです。
 
35メートルの台地だった同原発の敷地をわざわざ25メートルも削って原発敷地を造成し、15メートルの津波に襲われて大被害を出し、住民を果てしない死と逃げ惑う恐怖にさらし続けるというのは、まったくこの安全設計指針に反した結果でありのその罪科は万死に値し、社長が住民に土下座したからと言って済むはずがありません。
 
これらを許可した国の原子力安全委員会は、大企業が「原発を建設する」と云ったら何も言わずに許可してきました。
「安全設計に関する指針2」などは、偽善も甚だしいお飾りだったのです。というのはこの基準を作ったのは経済産業省ですが、これを破ったのも経済産業省であり自民党等の政治です。自分で作って自分でこれを無視し、指針を破棄してしまうのですから、この事実を知れば自分たちは悲喜劇的な愚者に支配されていることに改めて怒りを覚えるでしょう。
そのことを証明したのが今回の大津波であり、人間が証明したのではなく、地球が証明してくれたのです。
 
★河川砂防技術基準の偽善性。「洪水の歴史を無視する」
 
この、国による国民の命を「いけにえ」にする許可は、原発だけにとどまらず、あらゆる河川湖沼に巨大企業が建設するダムや河川施設の許可がすべてそうだといえます。
 具体例として今まで私が書いてきた巨大ダムの許可の実例から書いてみます。
ダムを許可する国の基準は国交省の『河川砂防技術基準』(以下、「基準」と略)です。
その2・7項にこういう意味のことが書かれています。
 
原文のままでは官僚の特権文章でわざと分かりにくくしてありますから、かみ砕いて書きます。
「ダムを作るため降雨基準(基本高水=洪水量)は、この土地で起こった昔の最大洪水や、計画対象施設《ダム》の性質等を全体的に判断して決める」と書かれています。
このように基準には「昔の大洪水の歴史的事実を調べなければならない」ということが書かれているのです。しかし、この決め方には重要な問題があります。というのは支配者が勝手に水害の数量を予測していることです。この「予測数量」が基になって、ダム建設が決められ、その規模が決められるということが、今まで国が膨大な数のダムを全国に作ってきたすべての出発点だということです。
 
私はこのことを川辺川ダム計画ストップ、荒瀬ダム撤去をかち取った球磨川周辺の住民、農民、魚民、リーダーたち、淀川水系流域委員会で大戸川ダム計画の中止、槇尾川ダムの中止をかち取った人々、リーダーたちから教えていただきました。
この教えの中心的なポイントは、定量的な予測を巨大ダムや堤防の構築のための根拠にする「定量治水」の誤り、江戸時代などの先人達が築き上げた霞堤や野越堤など、地球のの動きに逆らわず、時には洪水などを田畑を豊饒にする恩恵として歓迎する知恵、「非定量治水」の提唱として実ろうとしています。
 
国が進めてきた「定量治水」は地球が起こす現象について人間が予測して治水するということです。しかし、地球が起こす事柄を人間が数量的に予測することができると思いますか?例えば津波を数量的に予測できますか?そんなことはできないという事実を今回の東日本大震災の津波が証明しているのではありませんか?
地球の起こす様々な現象を数量的に予測することなどできないことを地球が実証してくれたのです。
 
★思いあがった基準、治水のためにこれから降る雨の量を「決める」?
 
もう一つ重要な基準があります。
例えば、第二章に河川計画という項目があります。その中に基本高水決定の手法と云う項目があり、そこには「基本高水を決定する手法としては、一般には対象降雨を設定し、これにより求めることを標準とするものとする。基本高水は計画基準点ごとにこれを定めるものとする」と書かれています。
 
基本高水というのは例えば『この河川では、昔これだけの大洪水があったから、その水量をカットしなければならない』という水量の数字です。先に書いたように、『ダム作りのための降雨量の基準』ということです。
洪水というものは渓流や河川から工場があり、人の住んでいる地域に水が溢れ出る現象だから、これを食いとめる為には、洪水の水量を予測し、この水量をダムや河川の拡幅などで食い止めよう、というのが国家の治水計画です。
 
この数字をもとに今後の洪水の数字を『予測』してその予測にも基づいてその洪水を食い止めるダムの規模を決め、上流にダムを作る。このための数字を計画高水量と言っています。
この計画高水量については『基準』の2.8.1項に「洪水防御計画においては、基本高水を合理的に河道、ダム等に配分し、主要地点の川道、ダム等の基本となる高水流量を決定するものとする」と書いています。洪水を予測しダムと下流河川の治水施設などで洪水を封じ込めよう、というわけです、
 
しかし、既に明らかなように、人間が地球の起こす森羅万象を予測することなど不可能です。今の日本では国は予測不可能なことを予測するという愚劣な治水政策が主流です。だが、この国の技術基準を粉々に打ち砕いたのが、今回の東日本大震災による大津波です。今回の津波はこの「予測」が不可能であることを立証しました。私は、この「予測」なるものが不可能であることを証明し後述します。
 
                              (つづく)

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