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高杉晋吾レポート⑦日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、企業の利益を守る立場で出発②

   

高杉晋吾レポート⑦
日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、
企業の利益を守る立場で出発②
 
高杉晋吾(フリージャナリスト)
 
★企業の儲けのため「治水計画は経済的に調和をとる」?
 
 
今問題になっている八ッ場ダムの基本高水もこの「技術基準」によって決まったのです。こんなものを後生大事にマニュアルとしてダム作りが始まるということは不思議なことではないですか? お役人はこの規定に従ってやっていれば、後で災害が起きても、お役人は『はい、さいなら!』で済むのですかと、あっけにとられます。
 
「技術基準」の前文に「洪水防止計画はこの計画によって設置される施設が水系を一貫して相互に技術的、経済的に調和が取れ、」と書かれています。
この「経済的調和」という『カッコいい』言葉が曲者です。それは「企業が儲けることができる」と読みかえればすっきり分かります。
 
東電が福島第一原発の建設にあたって、わざわざ巨大津波が予想されているのに、土地の高さを25メートルも削った理由は、海から汲みあげる水の費用的効率、船舶から搬出する素材などの費用、つまりコスト問題であったことを思い出していただきたい。
つまり「コスト問題という経済的調和」こそが歴史上証明されている津波の危険を東電が無視した理由なのです。このことからも東電が25メートルも土地の高さを削った事実が、住民の命よりも利益ひいてはコストが大事だったということ、そのことを国家が黙認した構造的な背景が浮かび上がってきます。
 
★洪水や津波を『数』で測れるか?定量治水というものの謎
 
 原発問題で国民からあざ笑いの対象となっているのが『想定外の津浪だった』という言葉です。「津波が自分が考えていたよりも大きかったのだから、自分には罪がない』という免罪符ででもあるかのような言い分です。
「じゃあそんなことをなぜ考えた?」
誰でも、国民の税金をざぶざぶ使って研究したはずの最高の治水対策が一挙に目の前で吹き飛ばされ、家族を失い、親族は津波に流され、住民が逃げ惑い、おまけに住宅も町も全滅し、前途の希望を失い、ストレスに悩まされる避難生活の日々をいつ果てるともなく続けさせられている。電力会社や原発に対する怒りが盛り上がるのは当然です。
 
そこで問題になるのは、なぜそんな治水対策を『考えた』のかということです。
「津波の高さ、洪水の水量」「予測」「歴史上最大の津波や洪水モデル」などというキーワードが浮かび上がってきました。
 
 そこで「数量、高さ、過去最大の」などという数量で立てる治水対策では駄目ではないのか?という疑問が浮かび上がります。
なぜ予測できず、数量も決められないはずの治水計画を企業にどんどんやらせることができるのか?
 
簡単に言うと、建設業界などに出せる国や自治体の財源、建設費は数量で決まっています。だから、どのような巨大な津波や洪水が来るかもしれないから、果てしなく巨大な治水施設を計画しても、財政上限度があります。
 
治水ダムを作る企業の事業もダムの規模、使用するコンクリートや鉄の数量で決めなければなりません。また利益を見込まなければなりません。だから現状の社会での治水は数量こそが決めてであり、数量で治水計画を立てるのです。
 
★企業は定量化しなければダムも防波堤も作れない。
 
私は『お役人にとってダム作りの出発点は数量、定量化こそが治水計画の出発点だ』と書きました。だが、お役人の背後にいる企業こそが『数量による定量治水の首謀者』なのです。
 
その理由は次の通りです。
 
ダムや防波堤を作るのは企業です。企業はどんな商品を作るにも、材料、購入、設計、製造、検査、納品、融資、すべてが定量化していなければ動けません。ダムも防波堤も同じです。ダムを作る場合でも、企業は発注者に「どんなダム計画か、そのダムはどんな規模か」と聞きます。これが治水プロジェクトに関わる企業の絶対条件です。
しかし、東日本大震災での津波被害を見れば分かるように、どんな規模の津波が襲ってくるかどうか、実際は予測できない。したがって、水害規模の定量化もできないから、お役人は許可も出せないはずです。
 
しかし現実にはダムや防波堤が国や自治体によって許可され、企業がどんどん治水施設を作っています。国は予測できない洪水や津波を「予測した」と称して、許可を与えているにすぎません。原発を作ることを至上課題にして予測しないで許可を出しているとしか言いようがありません。
 
だから予測できない津波の規模を予測したと称して建設の許可を与え、あのような被害を住民に与えたのです。私は、洪水も津波も予測できないと云いましたが、それは私の取材で多くの証拠に基づく具体例を上げることが出来ます。
 
★国家治水は建前上『住民の命を守る』が治水の原則。しかし実態は
「企業のいう通り」定量治水が治水の国家原則。
 
以上、東京新聞011年5月5日の記事で、福島第一原発の土地が原発計画当時は35メートルの高台だったのに原発建設にあたって25メートルも削って海抜10メートルの低い土地になっていたことが福島第一原発の津波に起因する大災害につながったという事実の記事を紹介しました。私はその背景と理由を縷々と述べましたが、簡略にまとめるとつぎのようになります。
1)          地球が起こす諸事象《人間社会では災害と呼ぶ》を定量的予測することは不可能。
2)          その反面、治水施設を企業が造る場合には、定量化しなければ治水施設を作ることはできないことは明らかです。
 
3)          予測できない洪水や津波に対する治水施設の建設許可をする行政は、水害の規模を予測し、治水施設の規模などを定量化して許可しています。
4)          政治家はこの定量化を含めて一切を法律的にも政治・社会的にも積極的に推進し、膨大な政治資金を獲得します。
 
5)          この許可と業界の建設の動機は住民の命を守るという建前であるが、真の動機は企業の利益を守ることにあります。企業は自分が造った治水施設が全く治水の役に立たなくても一切その責任を負いません。
6)          行政は「想定外の天災だった」と責任を回避します。
 
7)          こうした結果、被害住民は果てしない苦しみに突き落とされています。
8)          この事態を国交省と反対運動が定量化の枠の中での争い、裁判の中で高水論の「過大である」「いや、過大ではない。もっと大きな洪水対策こそが必要なのに反対者は過小な治水対策を主張している」などと数字の緻密さ正確さなどの空中戦を机上の空論で行っているのは間違っています。
 
9)何が間違いかといえば「定量化」を認めた仲間内の争いになっているということが間違いなのではないでしょうか。
京都大学土木工学の、今本博健名誉教授は「非定量治水」という治水方法を提唱しておられます。洪水も津波も地球が起こす現象については、まず逆らえない現実として素直に受け入れること。そして逃げること。その中で被害を最小限に少なくすること。逆に地球が起こす現象は、肥沃な土砂を田畑にあたえ、後に豊かな田畑をはぐくんでくれるという側面を持っていること。
 
 10)   私も、こうした非定量治水の知恵を先人達が霞堤や野越堤等で教訓として残してくれていること、地球が持っている力に逆らって巨大構築物で押さえつけよう等というごう慢さを投げ捨てて、地球と共存しつつ、その力を発展させてゆく現代的知恵を発展させるべき時ではないかと思います。

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