前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(115)●「安倍妄言」に、米韓両国も戸惑う(7/30)」○「沖縄知事選の動向を気にする安倍政権(7/28)」

      2015/01/01

  

池田龍夫のマスコミ時評(115


 

 

●「安倍妄言」に、米韓両国も戸惑う(7/30)

○「沖縄知事選の動向を気にする安倍政権(7/28)

●「日中韓3国は、欧州(EU)の和解に学べ(7/23)

 


池田龍夫(ジャーナリスト)

 

  

 安倍晋三首相の妄言・虚言は止まることなく、国際的信用失墜が懸念される。朝日新聞726日付朝刊が、米国、韓国政府が困惑していると報じた。

 

これより先、718日発売の岩波新書で、豊下楢彦、元関西学院大学教授(国際政治論)が画期的論文を発表し、安倍首相の「集団的自衛権」を厳しく批判していた。一般的認識の蒙をひらく具体的内容に感銘したので、プロローグの概要を紹介させていただく。

 

 「アングロ・サクソン系友好国の救済に当たる」

 

 「安倍首相は『緊急時に日本人を乗せた船を米艦が守ってくれる』と説明しているが、こうした事例は全く起こり得ない。なぜなら、在韓米軍が毎年訓練している『非戦闘員避難救出作戦』(NEONon—combatant Evacuation Operation)で避難させるべき対象となっているのは、在韓米国市民14万人、友好国の市民8万人の22万人(2012年段階)であり、この友好国とは英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランというアングロ・サクソン系諸国なのである。

さらに避難作戦は具体的には航空機によって実施される。つまり、朝鮮半島有事において米軍が邦人を救出することも、ましてや艦船で避難させることも、絶対にあり得ないシナリオなのである。

有事において在韓邦人は、まずは韓国の市民と共に避難行動をとらねばらないのであり、だからこそ、日韓両国の友好関係の構築が課題なのである。(中略)米艦船による邦人救出という〝架空のシナリオ、北朝鮮によるミサイルの脅威の喧伝と原発『再稼働』という根本的な矛盾、あるいはホルムズ海峡での機雷掃海という〝幻のシナリオなど、なぜ集団的自衛権を巡る議論はこれほどにリアリティーを欠いているのであろうか。

 

本来であれば何らかの具体的な問題を解決するための集団的自衛権が、自己目的となっているからである」――「安倍妄言」を厳しく批判した姿勢に注目した。

 

 朝日新聞が、詳細に報道

 

 7月26日付朝刊で批判した朝日は、1面で4段扱い、4面に詳報を掲載した。米韓両国の外交当局者にも取材。「米側は日米ガイドライン交渉の際、米軍による日本人救出を拒んだ」と証言したという。

 

一方、韓国は「日本政府が示した集団的自衛権の大半は、朝鮮半島での有事(戦争)が前提だ。それなら当事国である韓国との連携が欠かせないはずだが、首相は国会でも『韓国の理解を得ていきたい』などと述べるにとどめ、詳しい説明を避けてきた」と不信感を表明している。

 いずれにせよ、両国の安倍首相への批判は根強く、国際的信用にかかわる大問題だ。

 

 

 

沖縄知事選の動向を気にする安倍政権(7/28)

 

滋賀知事選敗北で大慌て

 

 集団的自衛権や原発再稼働を目論む安倍晋三政権の強引な政治運営に〝怪しさ〟を感じる国民が増えてきた。安倍政権はやっと世論を気にし始めたのだろうか。

 

その第一に挙げられるのが、滋賀県知事選挙(713日)での自民党敗北である。「卒原発」を唱える嘉田由紀子知事の後任に指名された三日月大造氏(元民主党)が、自公民推薦の小鑓隆史氏を僅差で破ったことに与党陣営は慌てている。

 

1026日に福島県知事選、次いで1118日には沖縄知事選が行われる。来春には統一地方選を控えており、与党は〝安倍不人気〟を重大視。政府が秋の臨時国会に安全保障に関わる法案の一部を提出する予定を、来年の通常国会への提出に変更するなどの対応策を出したのも、沖縄知事選などへの悪影響を意識したものに違いない。

 

 「佐賀県にオスプレイ移転」も考慮

 

 一方、政府は22日、佐賀県に対し普天間基地で運用している米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイ受け入れを要請した。

 

これも沖縄知事選をにらんだもので、移転予定地の名護市辺野古沖の工事を促進させる狙いもある。オスプレイ受け入れ先の自治体に交付金を拡充するというが、住民の反対が強く、今後の展開が危ぶまれる。

 

 安倍政治の〝右寄り〟を警戒

 

 サンデー毎日83日号の「倉重篤郎の時評」は、滋賀県知事選について、「この選挙の特徴の一つは、事前の世論調査のデータが目まぐるしく入れ替わったことであった。元民主党国会議員は出馬表明(59日)段階ではその露出先行でややリードしたが、自民が政権与党として本腰を入れると途端に逆転をくらい、一時は2桁ポイントまで差をつけられた。

 

ところが、告示(626日)を挟んで次第に差が縮まり、7月に入ると両者は拮抗、追い越してそのまま逃げ切った形だ。元民主陣営の裏選対を仕切った馬渕澄夫民主党選対委員長によると、そのトレンドは昨年暮れから始まっていた。安倍政権が国家安全保障会議設置、特定秘密保護法強行、武器輸出の解禁、靖国神社といった一連の保守・右寄りの政策、言動を連射するに従って、国民世論にそれを牽制するアンチ安倍パワーが芽生えた、というのだ」(要旨)と断じている。

 

 自民党本部にも焦燥感

 

 仲井真弘多沖縄県知事は726日、11月の知事選に三選を目指して立候補の意向を表明した。辺野古移設推進派の仲井真氏に対し、反対を唱える翁長雄志氏が立候補する公算が大きく、保守分裂選挙になりそうだ。日経723日付朝刊によると、自民党県連の一部には翁長氏を推す動きがあって混乱。朝日新聞27日付朝刊も「自民党の情勢調査では仲井真氏が劣勢とされ、党本部側には慎重論がある。辺野古移設を進めたい安倍政権にとって、知事選で敗れればダメージは大きい。ただ仲井真氏に代わる候補者が見当たらず、混迷状態だ」(要旨)と分析していた。

 いずれにせよ、秋の国会運営は波乱含み。自公民にとって重大な局面になってきた。

 

 

      日中韓3国は、欧州(EU)の和解に学べ(7/23)

 

 

 「私は、『歴史的事実を歴史問題として日中戦争70周年に触れない菅義偉官房長官のコメント』に、違和感を覚えた。去る66日、フランスで開かれたノルマンディー上陸作戦70周年記念式典を思い起こした。

 

日本と同盟国だったドイツやイタリア、米国や、ウクライナ問題で非難されているロシアの首脳が式典に参加したのである。戦勝国と敗戦国の枠組みを超えた参加国はファシズムを倒し、自由と平和の尊さの思いを共有したのだ。日本は来年、戦後70周年を迎える。歴史を直視し中韓と話し合い、一致点を見出す努力が信頼関係を醸成する。ノルマンディー作戦70周年の東アジア版が実現することを願ってやまない」(要旨)

 

――朝日新聞718日付「声」欄に載った投書(長崎県高校教員)に活目させられた。来年、日中韓3国共催の式典が開催できたら、アジア安定の端緒になるに違いない。

 

 欧州の和解については、新聞通信調査会が発行する「メディア展望」7月号に小林恭子さん(在英ジャーナリスト)が「第1次大戦から100周年の欧州」と題する論文を書いていた。

 

「戦後の欧州は、第1次と第2次大戦で敵国同士だったドイツとフランスが50年代に手をつなぎ、後に『欧州連合』(EU)となる流れができていく。現在のEU93年発足)には英国、旧東欧諸国など23カ国が加盟している。

 

EUは12年度のノーベル平和賞を受賞。ドイツ、フランス、英国などのいわゆる西欧の主要国が軍事的手段を用いて互いに戦うという選択肢は、EUの存在によって事実上消えた。(中略)欧州内の若い世代、戦争を知らない世代に過去に何が起きたかを伝えることは重要だ。特に、70年以上、戦争をしていない日本の若い世代に欧州での2つの大きな戦争について知ってもらうことは意義があるだろう」(要旨)との指摘からも学ぶべきことは多い。

 

 東アジア安定のため、日中韓の歴史認識の差を話し合いでどう決着させるか。3国とも世界平和のため、EUをモデルに外交交渉を加速してもらいたい。

 

 - 現代史研究 , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための日中韓外交史講座』⑭』★『中国紙「申報」からみた「日中韓150年戦争史」★『(日清戦争開戦2ヵ月後―「罪言―中国の敗因は旧弊の悪習を改め、汚職官吏を除くこと」(申報1894年10月5日)★『この130年後も習近平主席の終わりなき汚職撲滅の闘いが続く」』

   2015/01/01「申報」からみた日中韓のパーセプシ …

『Z世代のための新日本・世界史クイズ?『「歴史の研究」(12巻)などの世界的歴史学者アーノルド・トインビーは「織田信長、豊臣秀吉、徳川家康をしのぐ業績を上げた」と最大評価した日本史上の偉人とは一体誰でしょうか?③」★『答えは「電力の鬼」・松永安左ェ門で昭和敗戦のどん底ゼロからわずか20年で世界第2の経済大国にのし上げた奇跡の名プロデユーサー兼監督です』

『電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の75歳からの長寿逆転突破力③』が世界第2の経 …

no image
速報(180)『日本のメルトダウン』『原発リスク・フクシマの教訓と新小型原子炉』『原発事故の子供、経済への影響 ―チェルノブイリ』

速報(180)『日本のメルトダウン』   『原発リスク―フクシマの教訓 …

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ回想録③』★『パリ美術館ぶらり散歩』★『ピカソ美術館編④」★『ピカソが愛した女たちーその多種多様、創造的インスピレーションには本当に圧倒されますね』』

2015/06/15  『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッ …

『オンライン講座/今、日本に必要なのは有能な外交官、タフネゴシエーター』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス⑧』★『ル大統領、講和に乗りだすーサハリン(樺太)を取れ』●『外交の極致―ル大統領の私邸に招かれ、親友づきあい ーオイスターベイの私邸は草ぼうぼうの山』 ★『大統領にトイレを案内してもらった初の日本人!』

 2017/06/28日本リーダーパワー史(836)人気記事再録 <日 …

百歳学入門(189)『大隈重信(83歳)の人生訓・健康法』➀語学の天才になる。②コミュニケーションの達人になる③楽天的、陽気な、話好きになり「大風呂敷を広げる』④『わが輩は125歳まで生きるんであ~る』⑤『人間は死ぬるまで活動しなければならないんであ~る』⑥『恐れるな、愚痴をいうな、過去を忘れよ』⑦『将来に望みをおけ、人のために善をなせ』

百歳学入門(189) 『早稲田大学創設者・大隈重信の人生訓― ➀語学の天才になる …

『Z世代のための明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力講座⑦』★『古旅館のボロボロの6畳間で「玄洋社社主」頭山と会談、意気投合』★『才は沈才たるべし。勇は沈勇たるべし。何事も気を負うて憤りを発し、出たとこ勝負で無念晴しをするな』★『名誉を欲せず富貴を求めず終生、黒衣に徹し、国家国民のために奔走する決意を固めた』

1887年(明治20)3月。杉山茂丸(23歳)は同郷の大先輩で「怪物」「玄洋社代 …

no image
速報(305)『日本のメルトダウン』☆★<チェルノブイリの『内部被曝の衝撃』とはー『福島の子供たちはどうなるのか!』>

速報(305)『日本のメルトダウン』   <チェルノブイリの『内部被曝 …

no image
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-「日英同盟の影響」⑧ 1902(明治35)年2月20日『タイムズ』『ロシアが支配した満州』/『米国は満州の公平な門戸開放を要求』★2月25日『タイムズ』ー『三国干渉を『臥薪嘗胆』して、敵愾心を抑えたのは日本の政治家と国民の賢明な愛国心だった。』/『日本が侵略的だとか,そうなろうとしているとか想像する理由は少しもない』

 ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の影響は」⑧  1902( …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 東アジア・メルトダウン(1070)>★『北朝鮮の暴発はあるのか?』★『人間は後ろ向きに未来に入って行く(ヴァレリーの言葉)』●『過去の歴史的な知見にたよりながら未来を想像し、後ろ向きに歩むので、未来予想は誤りやすい』★『それでも、北朝鮮の認識と行動のルーツを知ることは一歩前進ではあろう』

C  1894(明治27)年の日清戦争のそもそも原因は、朝鮮に起因する。 という …