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速報(129)『日本のメルトダウン』<座談会・フクシマの教訓④>エネルギデモクラシ―の確立、フクシマの教訓を徹底討論』(下の終)

   

 
速報(129)『日本のメルトダウン』
 
<徹底座談会・フクシマの教訓④>
 
『事故の近因、遠因、原子力村の体質、事故処理のシステム、低線量被爆、エネルギデモクラシ―の確立、フクシマの教訓を徹底討論』(下の終)
 
<座談会「原発体制の臨界」は季刊誌『日本主義』主催で7月2日>

座談会出席者(敬称略・アイウエオ順)

 勝原光治郎(市民エネルギー研究所・原子力工学専攻)
 後藤政志(元東芝・原子炉格納容器設計者)
 古川路明(名大名誉教授・原子力資料室理事、放射線科学専門)
 前坂俊之(元毎日新聞記者、前静岡県立大学国際関係学部教授・戦後社会史)
 渡辺幸重(前畿央大学教育学部教授、フリージャーナリスト)

司会・前坂俊之 
(雑誌発売は8月24日)
 
 
「エネルギー・デモクラシー」の確立を
 
勝原 私は、今回のような事故を再び起こしてはいけないという観点で考えるなら、この事故は、「一見津波が原因である、津波対策さえしっかりしていればよかった」という見方がありますけれども、実はそうではないと考えています。私は、事故の再生産過程、事故が繰り返し繰り返しつくられる可能性がある。
 
その過程が今の原子力社会の中にあるのではないか、ということです。
 それは何かというと、絶対安全イデオロギーというやつです。「国が安全と審査したのだからこれは安全だ」ということで、いったん安全審査をパスしたら、その後どんな問題があろうと、これはもう事故は起こさないんだと、という考え方ですね。事故が起こったときにロボットで掃除したり修復したりさせる必要があるじゃないかといっても、いやそれは事故は起きないのだから、そのロボットの開発は必要ないんだとか、全てが、「安全と前提をされた以上、文字通り安全なんだ」という体質です。そして、「原子力は安全である」ということを批判する人がいたら、そこからはじき出すという態勢です。
 
今回の事故でも、メルトダウンの言葉を経産省の審議官がちょっと口にしたらすぐ左遷されたということなんかにも、非常に端的に表れているだろうと思います。
 そういう意味で事故の再生産過程である「原子力村」 の体質、これを問題にしなければいけないんじゃないか。もちろん津波だけではなく耐震性とかそういう問題も当然あっただろうし、そのほかの問題もたくさん挙げることができる。例えば原発は「負の核兵器」と言われていて、自分自身は爆発しなくても、あるいは特段のことをしなくても、敵対国からロケット弾をぶち込まれたら、もう国中てんやわんやで、国防上大変な損失を受ける。こういう代物なのです。
 
 そのほかにもたくさん例を挙げることができるし、原因はいくらでもありうるので、事故を起こす体制、それ自体が問題である。これをなくすようにしていかなければいけないだろうと思います。
 
本誌 現在の事故処理ととともに、二度とこういう事故を起こさない体制づくりが必要、ということですね。
 
勝原 
そうですね。それに関連して私が思うのは、国は、国民を守るために一体何をしなければいけないのか、という観点で、国の政策、色々な法律、行政をやるべきだし、政治家も国民を大事にしていくということをやっていかなければいけない。
 
 同じように、国民それぞれが自分のいるところで、国や地域や周りの人びとの安全を大切にするという考えを持つ必要があると思います。例えば、原子力安全・保安院の人だったら、自分の役所が、原発は安全だ、安全だと言うばかりで、原発に危険があるということを言う人がいたら、すぐ放り出して左遷してしまうというような体質があったとしたら、そのことを反省する、そういうことを自分のやっている仕事の場でもう一回考え直す。企業の経営者も、政治家も、消費者団体についてもそうです。
 
農業の生産者にしても、汚染されたものをみんなには食べさせたくないと、きれいなものにしたいと、畜産業者もそうだし、漁業者もみんなそうだろうと思います。その原点に立ち返って考えていく。
 今回の事故処理にあたっても、復興にあたうても、一体どういう考え方をすべきなのかという、その考え方自身が大事なのであって、そういう意味では、放射能を超えた民主主義といいますか、職業倫理というか、そういう民主主義の原理・原則みたいなものが国民の中に考えられていくということが、これからの社会をつくっていく一番の基本ではないかと私は思います。
 
 先ほど渡辺さんが言われましたけれども、色々なところで色々な意見が出ています。雑誌を見ても色々な意見があります。色々な人が色々な意見を言って、それでそれをみんながまとめていくという形の作業がこれからの日本の社会にとっては必要なんじゃないか。そのためにどんどんどんどんみんな遠慮しないでものを言う、そういう必要があるのではないかというふうに思います。
 
渡辺 私も、勝原さんがおっしゃった民主主義の問題が一番大きいと思うのです。例えば福島で、放射線量の高い数字が挙がってきても、そのたびに「大丈夫だ」 と専門家のコメントが出る。最初メルトダウンかどうかすら、否定していたのが、そのうちに部分的に炉心溶融が起きている可能性があるとなった。そのうちにだんだん慣れてしまって、この前メルトダウンということが報道されてもそんなに大騒ぎしなかった-
-というようなことが続いています。
 
 結局、福島ではだんだん安全でないというようなことは分かってきたはずなのですが、それに対して住民避難の話が出てきたときに、「福島市内、福島県内の人口はこれだけあるのだから、沿岸の小さな町村は避難できるけれども、これだけ人口があったら逃げられ
ない」ということを前提にして言う人がいる。あるいは、「工場が移転したら、その工場はもう復活できなくなる、産業が壊滅的になる。だから逃げられない」、といった議論がなされている。
 
「安全」 に対して対置する論理が違うと思うのです。安全というのは人の命が基本的に守られるべきものであるのに、それに対置される政策が違う。 原発を続けるかどうかということについても、エネルギーが足りないから原発を続けようだとか、雇用がなくな
るからとか、日本の国際的な競争力を失ってはならないから、といった議論ばかりがなされるが、それは対置するものが違うのではないか。命ということ、安全ということを言うのであれば、そういう経済的な条件は関係なく、命をどうするか、国民の安全、子どもたちの将来に対して、自分たちがどう責任をとるかーというふうに考えて決めるべきであって、そのように考えれば結論はもう明らかではないかと思うのです。
 
 それから、原発のような大きなテーマに関して合意形成システムが日本の社会にあるのかどうか。ドイツやイタリアはどうしてすぐ脱原発への転換ができるのかといったら、「エネルギー・デモクラシー」がある。日本にはエネルギー・デモクラシーがないのではないか。
 
確かにこれまで色々な国民合意形成のシステム、例えば憲法改正のための国民投票といった議論がありましたけれども、原発の件に関しては国民投票をするシステムがない。県民レベルで住民投票を請求しても議会で否決されてしまうというようなことがある。
 ですからわれわれは、国や東電など、情報を握っている機関が、正確な情報をオープンにすること、情報公開をきちんと行うことを要求していく。そして、われわれ自身が主体的に考え、勉強し、判断し、決定していくというシステムをきちんとつくっていかないと
いけないのではないでしょうか。
 
これからのエネルギー政策、再生可能エネルギーにしても、ただ闇雲にバラバラにやるというのではなく、そういうシステムの中できちんと将来を見越して決めていくべきではないか、それが復興につながるのではないのかと思っています。
 
後藤 
私はエネルギーとは何ぞや、ということから考え直したい。原子力というのは、たかだかエネルギーですよね。われわれの生活の中にどれだけエネルギーが必要かと考えたときには、日常生活で、あったら便利だけれど、所詮は食べるとか、普通に生活をするのに便利なものという位置づけであって、生死に関わるものではないというふうに理解しています。
 
もちろん、医療関係とか、一部にないと不便なことがありますから、一概には言えませんけれども、電気エネルギーの必要性を現代生活のプライオリティーにするのは違う、というように私は思っているのです。
 そう考えると、そのことのためにここまでリスクのある原子力をなんでやるか、本当に自分でも今までなんでこんなことに真面目に取り組んできたかのと、不思議な気がするのです。電気エネルギーを必要とするのは産業面です。産業を発展させるためにやはりエ
ネルギーはいる、という話になっている。
 
しかしそれも、私は産業構造のつくり方の問題だと思うのです。日本は大量生産大童販売のシステムでやってきましたから、そうなっているだけであって、それこそ今から歴史的な転換を図ればいいというふうに思っています。そういう方向への努力を並行しながらやっていくことが一番重要なのです。最近ソフトバンクの孫正義さんとお話をする機会があったのですけれども、そのとき非常に強烈なメッセージがありまして、そういう印象を強くしました。
 
前坂 孫さんは、かなり具体的な構想を持っているんでしょうか?
 
後藤 かなり具体的な話をしている。全世界の原発をゴビ砂漠に対応して、ヨーロッパレベルのネットワークをつくれば原理的に世界中の電力が賄えるはずだと。それを日本に応用すると、北海道の一部のエリアくらいの面積で、具体的には苫小牧の休養地とか、そう
いうところを使えば具体的にできるとか、そういうことを提言しはじめている。政治家に働きかけはじめています。
 
前坂 孫正義ならぬ孫悟空になって(笑)、古い日本をぶち壊してもらわないと。他にそういう人がいないですもんね。
 
損害賠償をきちんとやることが次の事故を防ぐ
 
勝原 私は、損害賠償をきちんとやるということが、次の事故を起こさないために一番大事なことだと思います。
損害賠償をきちんとやるという前提に立つと、「万一事故が起こったらこれは大変な出費なる」ということで、その企業は事故を起こさないように万全の努力をするという過程が社会的につくられます。
 
 損害賠償額が明らかになれば、その額を保険にかけるよう、原子力損害賠償法を改正しなければいけません。
 例えば食品工業を取り上げると、日本の食べ物は、かつては安全できれいなものだという「ラベル」があったと思うのですけれども、今回の事故で「日本の食品はダーティだ」というラベルが貼られてしまい、食品業界の損失というのは計り知れないものがあると思
います。自動車にしても、日本からの輸出については、自動車工業会が全部放射能検査をして、その書類を一定のフォーマットにして相手国に示して、輸出をするというような体制をとるとかの動きがあるようですが、そうした損害をきちんと計上する制度を早急に
つくらなければならないのではないか。
 
損害賠償はできるだけ広く救済すべきこと、それと、事故に一端の責任がある原発メーカーも供出をすべきではないか、と思います。
 事故調査委員会がやるかどうかそれは分かりませんけれども、とにかく全体の損害額をきちんと明確に計上してほしいです。
 
本誌 政府は、風評被害についてもきちんと調査し、補償しなければいけませんね。
 
渡辺 実は妻の弟が伊豆のホテルで働いているのですが、観光客が全然来ないんですよ。休業したホテルもあります。それで今、町民が泊まれば1泊2食4000円、というサービスをやっています。役場が補助を出すらしいのですけどね。日本中でそうでしょう。日本人が自粛し外国人が来なぐなったわけですから。損害賠償問題は、全国全産業にわたるのではと思います。
勝原 そういうのを、全部損失に計上しなければいけませんね。計画停電だがありますよね。
前坂 中国の観光局のトップが、中国人は、地震については自分で大きなのを経験してるから何ともないと言っている。ところが放射能は怖いんだと。チェルノブイリを経験しているし、さらにそれ以上の事故が起こったということで、これはなかなか日本観光には来ませんよ。確かにそうですよね。
 
われわれだって、チェルノブイリに観光にいらっしゃいと言われても行きたくないものね。京都は関係ないとはいっても、やはり日本は中国の10分の1の小さな国ですから、中国人には一つの州くらいにしか見えないでしょう。
 
勝原 伊豆半島とか、横浜とか、西の方が結構汚れているのです。静岡のお茶もやられている。私は、放射性物質が一度、わーっと太平洋のほうに行って、それから戻って来たかと想像しました。東京の放射能の数値を見ると3月15日ぐらいに高いのはもちろんある
のだけれど、あと20日くらいのところで、もうひとつ山があるのです。
私はプロットしていたら、これが風で来たのかなと思ったのだけれども、そうじゃないのではないかという話が今、ネットでたくさん出ているのです。
 
溝辺 和歌山県の方でも出たと言っていますよ。
古川 出てもおかしくないですね。
前坂 全部の病院に放射能計数器を配布すべきですね。
 
あらゆる手を尽くして被曝計測の徹底を図れ
 
勝原 私は、政府は国民一人ひとりの被曝量調査を行い、一定被曝量以上の被曝者には被曝手帳を交付して、一生、追跡調査と医療保障をすべきだと思います。広島の被爆者援護法を適用するとか、そういう動きにやがてなると思いますよ。個人がどれだけ被曝したか
というのは、どういう生活をいつどこでやったのかということを記録して、内部被曝も含めて算定をするという作業が必要なのです。
 
これをやるのは大変なことで、これは放医研みたいな組織ができるのか、あるいは別組織をつくって、住民一人ひとりに対応して計算をしてあげて、手帳にバーツと書いていくとか、そういう被曝量の計算をする組織が必要なんです。
 
渡辺 福島では全県民やると言っていますね。
勝原 でもそれをやるには、それだけの人間が必要なのです。そのためには、フォーマットというか、どういう計算の仕方をするのかということを政府が決めなければいけないのです。これが全然できていないのです。
古川 ただ、人がいるよ。あれは。
勝原 ものすごい人がいりますよ。被災地の人間でも1万人以上いるのに。
渡辺 今発表されている文部科学省などのデータの中には、事故があった3月日日から爆発があった3月中旬までの値が抜けているのがあるので、今の値からさかのぼってそれぞれの地域での放射性物質の量を推測し、決めないと個人の計測も意味がないですね。
勝原 そのとおりですね。
渡辺 行動が分かってないといけないし、原発の爆発を基点に計算しないといけないでしょうけど、それが実際は爆発がいくつかあったりしたら、総合するとまた放射性物質の放出量が違ってくるじゃないですか。
 
勝原 東電の方でも情報を隠してよく分からないというのがあるからね。だけど、個人個人も、時間が経てば経つほど、「何月何日はどこにいたっけ」なんて話になっちゃうんですよね。
 本当にやらなければならないことがたくさんあるのに、何もしないというか、ボーッとしているのが今の日本の国のありさまですね。
 
渡辺 研究者はすごくやりたいんじゃないですか。
 
勝原 自分の専門というより、もっと大局に立ったものの考え方で、その上で自分が一体何をすべきなのかを考えるべきなのです。測らなきゃ全ては始まらないという局面があります。例えば自治体が、レベルは低くても、この保育園の砂場が汚れているとか、どうかのデータを出す。うちの孫も2歳ですけれども、そしたらどこで遊んだらいいんだろう、ということの目安になる。

何丁目のどこは汚れているけれども、ここは汚れていないというところはたくさんあるわけですから、自治体としては、市民に対して、危ないところはここです、ここに気を付けてやりましょうとか、そういうことをやらなければいけないわけです。だけれども自治体の職員というのは頭がそこまで働いていないのです。
 

 ひとつの町でやれば、同じフォーマットでほかのところでもできるはずなのです。でもこれを日本全国一斉にバーツとやるとか。東日本のほうは一斉にやるとか、そういうことを早くやらなければいけないです。でないと、一番大事なのは子どもです。子どもに対して気を遣わなければいけないと思います。逃げるときはお年寄りですけれども、被曝ということに関しては子どもだと思います。
 
古川 私は、汚染水の問題は長くかかりますし、これからも注目していきたいと思います。もうひとつ、私は埼玉の加須というところに廃校になった高等学校で、そこに双葉町から避難された人たちが暮らしているところに行く機会がありまして、これは大変なことだと感じました。そのような人たちが、各地にたくさんできている。多くの家族は、家は一応しっかりしていて、車も別に壊れていないけど、そういうものはみんな置いてきている。戻るにしても、わずかの間だけしか戻れない。
 
そんな生活をいつまで続けることになるのか、今後どうなるのか、いつまでたってもはっきり情報が伝わってこない。こうした避難者の方々の問題が、今後重要だと思います。ましてや小さな子どもたちなどは教育の面ですごい影響を受けているわけです。東京に住んでいる人間は、そう関係ないと思っていますけれども、やはり現地に近いところは結構大変で、そのことが気になっています。
 
渡辺 今、側溝の汚泥を、住民が取って除染しようとしても、基準がないから待てと言われて取れないようです。
勝原 あれはゴミではないのです。もう放射性物質なのです。レベルが高いから。だからどこかへ行って捨てたら、それは法律違反になるのです。
古川 ただおかしいのは、法律では、放射性物質取り扱う場所(原発とか、原子力関係施設)以外で放射性物質が出たときの基準がないのです。建前として、私も取扱主任者をやっていたから分かるんだけれども、「ある場所で、管理区域で扱う」とあるのです。管理
区域の外に行ってしまったらどうするかというと、排水と廃液の基準はあるのです。
 
汚れたものを持ち出してはいけないとかの基準はある。しかし、そこから飛び出したときの基準が何もないのです。だからこれは超法規的に新たに考えてやらなければならない。
 
勝原 これもやはり国が考えるべきですね。
渡辺 友人が道路の工事をやっているのですが、すごく問題だと思うのは、今回の汚染された下水、汚泥を、溶融炉で溶融スラグにしているわけですよ。すると放射性物質がすごい濃度になる。それを市町村が業者に条例で義務付けて、アスファルトの中に砂の代わりに入れろとなっているのです。
 
勝原 怖いですね。
渡辺 調べてみたら基準がないのです。そしたら道路で被曝するかもしれない。今、業者はそれを拒否しているらしいのですけれども。
勝原 それはまともな業者ですね。

 

古川 それは一定の温度になると、セシウムなどが飛びますよ。きっと、そういう問題も出てくる。おそらく1000度で飛ぶでしょう。その上に性能のいい防護フィルターみたいなものを付けないと無理でしょう。それも大変でしょう、新たにそういうところに設置する
のは。その間題があるんです、確かに。
 
本誌 そろそろ時間がまいりました。まだまだ語りつくせないことが多く、あらためてぜひ、話を持つ機会をつくらせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。
       

 

72日、日比谷にて)
 
 
 
 

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