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日本リーダーパワー史(48)名将・川上操六のインテリジェンス④藩閥・派閥を超えた徹底した人材抜擢法とは

      2015/02/16

日本リーダーパワー史48名将・川上操六のインテリジェンス④
明治陸軍空前絶後の名将・川上操六の人材抜擢法とは④・・・
前坂俊之(ジャーナリスト)
明治十七年、川上操六は大佐として、陸軍中将三浦梧楼、陸軍少将野津道貫、陸軍大佐桂太郎らと共に大山陸軍卿に随行して、欧州各国の兵制を1年余にわたって視察し、十八年一月に帰朝した。
同年五月、陸軍少将兼参謀本部次長に任ぜられ、十九年に近衛第二旅団長となりヨーロッパに派遣、ドイツに留まること二年、ドイツ参謀本部のインテリジェンスを徹底して学び、同時に世界の大勢、各国の軍事・政治動向に目を配り、列強帝国主義の餌食となっていたアジア大陸の悲劇を目のあたりにしながら帰国した。
 
明治二十二年、再び参謀本部次長に補せられ、対ロシア戦略を練りながら毎年大陸沿岸の要地および各地方を巡視し、同二十六年には清韓両国を巡遊した。
明治の陸軍は、明治4年(1871)2月の御親兵の新組織として発足、やがて鎮台組織によって全国的防備態勢をととのえた。兵隊も、藩兵から徴兵制度にきりかえられた。この間、萩の乱・佐賀の乱・秋月の乱・神風連の乱などの旧士族による各地の反乱を制圧し、最後に西南の役を鎮圧することで、明治新政府の国内体制を盤石なものにした。
 この陸軍創設の功績は山県有朋を筆頭に、西郷従道・鳥尾小弥太・三浦梧楼・山田顕義・谷干城・大山巌・野津鎮道らに帰するが、このなかには軍令の功将いない。いずれも勇猛果敢な闘将ばかりで参謀の不足とと参謀組織の不備は目を覆うばかりであった。
 西南戦争の反省から、明治二年(一八七八)一二月、陸軍省の別局であった参謀局が廃止、新たに参謀本部が設けられた。軍令機関の参謀本部が、軍政機関の陸軍省と併立して設けられ、陸軍・軍事の2チャンネル制となり、その後の昭和の陸軍の暴走、分裂、アウト・オブ・コントロールの原因がここに作られることになる。
参謀本部の最初の陣容は陸軍中将大山巌が参謀本部次長に、陸軍卿陸軍中将山県有朋が参謀本部長に、陸軍卿の後任には、文部卿陸軍中将西郷従道がついた。
 さらに明治18年、参謀官の教育機関として、陸軍大学校が開校され、20年、最初の校長には監軍部参謀長歩兵大佐・児玉源太郎が就任した。この陸軍大学校こそ、陸軍の軍令界に大きな貢献したが、一方では陸軍軍閥の根源ともなった。開校に当ってはドイツから参謀少佐メッケルを招聘して、兵学および軍制の教官としたが、それまでのフランス方式からモルトケ・ドイツ兵学へ陸軍の戦略戦術を大きく転換することになった。
この陸軍軍令部門・参謀本部を発展・育成させ、日清戦争・日露戦争の勝利の基礎を固めた男こそ川上操六その人である。
明治陸軍の軍令府は川上によって代表され、「軍令の川上」は、「軍政の桂」と並び称せられた。
 明治一八年五月、川上は陸軍少将に昇任し、参謀本部長山県有朋の下で、参謀本部次長となった。山県は内務卿を本職としていたので、次長の責任は重く、誰れが座るか注目されたが、先輩をごぼう抜きして川上が抜擢された。翌年三月、近衛歩兵第二旅団長に転出したが、この閑職を利用して、ふたたびドイツに1年以上も留学し、同国の参謀総長モルトケ、次長ワルデルゼについて用兵作戦の徹底した手ほどき、インテリジェンスの要諦をたたきこまれた。
明治二二年三月、参謀本部条例の改正によって再び参謀次長となり、このときの参謀総長は有栖川宮親王だったが、これは名目上で川上が参謀本部のトップに立ち、全力を傾倒して、参謀本部の充実にまい進した。

 
 川上は参謀本部の拡大充実のため、まず最初に取り組んだのがひろく人材を集めること。それまでの陸軍は薩長藩閥の独占物と化していた。どんな有能なものでも薩長閥以外の者はある程度以上は昇進できなかった。熊本籠城の猛将・谷干城は、大臣子爵にはなったが、軍人の階級は中将どまりだったのは、土佐出身だからだ。山地元治が古今の名将といわれながら中将で終わったのも土佐生れだったためだと言われる。
 立見尚文も戦略家で山地に劣らず、大将の呼び声があったが、幕府の親藩桑名の出身で、賊軍として東北に転戦し、山県有朋を手きびしく敗走させた戦歴がたたったと言われる。しかし日露戦争では弘前師団をひきい、黒溝台の役で大危機におちいった時、七倍の敵をむかえて、孤軍奮闘して撃破した。この殊勲がは誰れもみとめないわけにゆかず、薩長閥外の出の最初の大将になった、と言われる。薩長の特権意識は抜きがたいものがあった。
川上はこうした旧弊、藩閥派閥意識を打ち破った。先輩のやったことは、自分では今更どうにもできぬが、自分が新たに作る参謀本部だけでは、若き有能な人材を藩閥に一切拘泥せず、門戸を開放した。
川上が最も信頼していた田村怡与造は甲州出身。本人は神主の子で維新のおり官軍についたといっても、甲州勤番という幕府直轄地の出である。また福島安正大尉はそのとなりの信州生まれだった。
 東条英教(英機の父)ほ、維新の賊軍仙台藩の出だったが、陸軍大学一期の一番でメッケル将軍からスエズ以東第一の軍事的頭脳とほめられた英才で、特に抜擢した。また日露戦争のときになって東条以上の作戦的実績をあげた松川敏胤もおなじ仙台なのである。
岡山出身の若き少尉宇垣一成も、川上操六がこの出来る青年を万一、失うことがあってはならぬと惜しんで、日清戦争に出征させず、とぐに目をかけて自分の幕下においた。
このように。日本の参謀本部は川上によって初めて薩長の軍隊から、真の日本軍隊に生まれかわったといってよかった。

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