前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

わが愛する逗子市小坪の昔話―1970年(昭和50)のお年寄りのはなしだよ

   

 

                                                      2009、7,31
 
逗子市小坪の昔話―昭和50年のお年寄りのはなし
                         

                                                       前坂 俊之
 
私は逗子市小坪に住んですでに30年近くになる。山に囲まれ、今年は冷夏で8月になろうかというのに、ウグイスがよく鳴いて、耳を楽しませてくれる。南風にのって相模湾の海風が年中、心地よい。
 
散歩好きには10分も歩けば、光明寺裏山の隧道をぬけてか鎌倉材木座の海岸に到達し、江の島の上にはるか富士山を望むことができる。魚もこんなうまいところもない。

そんな小坪で暮らせる幸せをつくづく感じるにつけて、小坪の歴史をもっと詳しく知りたい気持ちが大きくなってくる。逗子図書館で調べてみると、昭和51年、逗子教育研究調査部がまとめた「としよりのはなし(3)」という冊子が見つかった。

このなかに、昭和50年6月に小坪のお年寄り(明治29年から37年に生まれた5人)の聞きが載っており、大変参考になったので、紹介します。
 

小坪について1970年(昭和50)ごろの話

 
 小坪は地理的に不便だったため、つい最近までは他地域との交流が比較的少なかったところです。そのため、今も昔ながらの風俗、習慣が多く残されています。
 
 小坪にはいつの頃から人が住みついたか、はっきしたことはわかりません。前には豊かな海の幸、後ろには多くの谷戸、昔はどの辺まで海が入りこんでいたかはわかりません。
 
おそらく、谷戸を開墾し田をつくり、港の魚や貝類をとって生活をしていた弥生時代の人間がいたことを想像するのは無理なことではないでしょう。

しかし、この時代の人々が、どのようにして小坪の住人として定住してきたのか、くわしく知る資料はありません。鎌倉時代になると当時の書物にも小坪のことが記されているので、小坪の様子を少しは文書上で知ることができます。

 
江戸時代になると小坪は漁村として急速に栄えたようです。特に、江戸中期以後は三百戸ぐらいの集落として栄えたことが記されており、その数は大正時代の頃まではほとんど移動がみられません。

昭和時代にはいり、戦前戦後を通して大きく変ったのは何といっても一〇年ほど前の昭和四〇年頃からの開発が進められてからでしょう。

 
山を切りくずして家が建ち並び、海を埋め立ててレジャーマンションが建ち並び(逗子マリーナのこと)、これらは、それまでの小坪を急速に都市化しました。
 
山だったところは亀ヶ岡、TBS、南ヶ丘、西部の四つの団地ができ、そこは東京や横浜に通勤するべッドタウンとなり。それにともない昔の風俗や習慣がだんだんと消えつっあります。しかし、漁師の間には昔ながらの風俗や習慣は今もなお行われているものもあります。
 
 小坪のとしよりの話には、手でこぐ櫓の船で大島沖まで何日もかけてかつお漁に出かけた話や、今では全く姿がみられず、値上がってしまった伊勢えびがたくさんとれた話など興味深いものがたくさんあります。
また、昔は小坪に質屋が七軒もあったと言います。それは、漁師は大漁のときには景気よく金を使いぜいたくをするが、三日もしけが続けばすぐに生活に困り、なべ、かままでの類を質屋に入れてその場しのぎをする「夜ごし銭はもたない。」という江戸っ子と同じようなきっぶの良い面もあったと伝えられています。
 
しかし、海を埋めたてられてからは、わかめの養殖やレジャーブームにのって釣り船の収入などで生活も安定してきました。その反面、小坪の漁獲高は減少しており、漁師の今後の生活は必ずしも安定したものとは約束できないようです。
 
 漁師の間に「板子一枚・下は地獄」ということばがあります。彼らの生活は常に生命を失う危険を伴い実際に海で命を落とした人も少なくないと思います。そのような土地だから信仰もあついし現在でも正月の竜神様、お盆の浜念仏などの行事が行われるのせしょう。
 

 - 湘南海山ぶらぶら日記

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『May in KAMAKURA SEA』=『海は大波、小波で魚は御留守!じゃ』<『沈黙の春』が依然続くね>』

『May in KAMAKURA SEA』=『海は大波、小波で魚は御留守!?』< …

no image
鎌倉カヤック釣りバカ番外編>冬の葉山は素晴らしい。シ―カヤックに挑戦,エンジョイ!マリンライフだよ②

<鎌倉カヤック釣りバカ日記-番外編>   <『美しい海と海岸の冬の湘南 …

no image
『6月から海シーズン。早朝は材木座沖でカヤックフィッシング、午後は鎌倉古寺をぶらぶら散歩、これ至上の快楽なり』

 <『いよいよ夏、鎌倉の海と山』スペシャル!(5・31)> &nbsp …

no image
『百歳学入門』(224 )『60,70歳から先人に学ぶ百歳実践学』➀『高齢化率は日本 26.6%で世界一、百寿者は6万7824人、90歳以上は約200万人』★『「六十、七十 はなたれ小僧、八十,九十男盛り、女ざかり、百歳わしもこれから、これから』<彫刻家・平櫛田中(107歳)>の烈語!

『60,70歳から先人に学ぶ百歳実践学入門』 前坂俊之 (静岡県立大学名誉教授、 …

no image
<鎌倉カヤックフィッシング>『早春の鎌倉材木座海岸沖で大メバル(春告魚)をゲット!こいつは春から縁起よし』

<鎌倉カヤックフィッシング>   『早春の鎌倉材木座海岸沖で大メバル …

no image
◎『夏だ!サーフィンだ。いざ鎌倉』『Kamakura Best Surfin』(7/13/14)『台風7号接近、七里ヶ浜、稲村ヶ崎などいいよ」

 ◎『夏だ!サーフィンだ。いざ鎌倉へ!』   『Kamaku …

no image
『猛暑を涼しくクール・カマクラ・ ネイチャーライフ(8/17)』鎌倉神秘の町―里山の<せせせらぎ>をめぐる(8/17)』

 『猛暑を涼しくクール・カマクラ・ネイチャーライフ(8/17)』 &n …

no image
『カヌーで鎌倉沖・ぶらり・フラリ・涼しいよ日記』-『大暑一番!』―カツオが爆釣!その猛ファイトにしばし暑さも吹き飛んだよ

  「カヌーで鎌倉沖を、ぶらり・ふらふら・涼しい日記」   …

no image
日本リーダーパワー史(844)ー『デービッド・アトキンソン氏の『新・観光立国論』を100年以上前にすでに唱えていた日本の総理大臣は誰だ!』『訪日客、2割増の1375万人=消費は初の2兆円超え-上半期』★『『外国人が心底うらやむ「最強観光資源」とは?日本は「最も稼げる武器」が宝の持ち腐れに』(アトキンソン氏)

日本リーダーパワー史(844)   ●観光庁は20日、訪日外国人旅行者が、今年1 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(201)』-冬の京都・三千院、比叡山延暦寺、湖西の石山寺、三井寺を周遊、『この数年ヨーロッパばかり回り、石造り建築の露骨な存在感に食傷しておりましたので、自然と一体となった日本の寺院建築の楚々とした佇まいに改めて魅了されました。』

    2017/02/23 &nbsp …