『リーダーシップの日本近現代史』(170)記事再録/「プラゴミ問題、死滅する日本周辺海」(プラスチックスープの海化)ー世界のプラゴミ排出の37%は中国、2位のインドネシアなど東南アジア諸国から棄てられた海洋プラゴミは海流によって日本に漂着、日本の周辺海域は「ホットスポット(プラゴミの集積海域=魚の死滅する海)」に、世界平均27倍のマイクロプラスチックが漂っている』
「プラゴミ問題」(日本海はプラスチックスープの海)
G20エネルギー・環境関係閣僚会合は2019年6月15、16日、軽井沢で開催され、プラスチックごみ削減のため、日本は来年4月にもレジ袋を有料化し、国際的に取り組むためインドネシアにある国際機関「東アジア・東南アジア諸国連合経済研究センター(ERIA)」に情報集約の拠点を設置することなどが決まった。G20サミットではこの海洋プラスチックごみ問題を最大のテーマにしている。
私が海洋プラスチックゴミに注目したのは30年ほど前からボート、カヤックによる海釣りをしていて、青い海で次々にプラスチック、ペットボトルなどのプラゴミたくさんが漂流していることに驚いたことからだ。その量は30年間でうなぎ上りに増えており、逆に釣れた魚の数は減る一方。昨年から今年などはサバ、キス、カワハギ、イワシなどほとんど釣れなくなりっており「死滅していく海」の異変を実感していた。
先週、テレビで見た熱海魚市場関係者の話では、今年のカタクチイワシの漁獲量はなんと例年の0・4%にまで激減、仕入れ値も10倍にハネ上がった。マイワシも激減したが、全国の魚獲高は例年より増えており、寒い北海道、東北などで多く取れているという。2017年の海水温は観測史上最高を記録しており、中でも大西洋と南極海の水温が最高でタイセイヨウサバが大西洋のアイスランドでたくさん獲れるという異変が続いている。
米国の研究者によると、世界中の海洋には毎年、800万トンものプラゴミが浮遊しており、これまでに1億5,000万トンが堆積、2050年にはプラゴミの量は海にいる魚と同じ量まで増えるというから恐ろしい話だ。
プラごみは、5mm以下の細かい粒子に分解され、有毒物質を含む『マイクロプラスチック』にかわり、世界の海を回遊し、最終的に海生物、それを食べた人間の体内にも蓄積する。
高田秀重東京農大教授によると「プランクトンよりも漂流プラスチックの方が多い海域もあり、こうした海域はプラスチックスープの海という。海の生物たちはこのプラスチックを餌と区別がつかず、誤飲・誤食する」(高田教授のWebサイト)。
これが食物連鎖で最終的に人間の体内に蓄積される。
海だけではなく、陸上でも世界文化遺産の奈良公園の鹿が観光客のあたえるエサの入ったプラ袋まで食べて9頭も変死したという。その鹿を解剖すると胃袋から何と4キロもの茶色に変色したプラゴミが出てきた映像をテレビで見て私はショックを受けた。
世界のプラゴミの37%排出する中国、2位のインドネシアなど東南アジア諸国から棄てられた海洋プラゴミは海流によって日本に流れ着く。いわば日本の周辺海域は「ホットスポット(プラゴミの集積海域)」となっており、世界平均の27倍のマイクロプラスチックが漂っているというショッキングな報告も出ている。
この方面の研究はまだまだ進んでおらず、総合的にプラゴミ問題を明らかにするためにインドネシアに、情報集約の拠点を「ERIA」を設置し、日本からの技術移転、開発も行う方針だ。
地球温暖化の問題はCO2の排出量の増大によって気温、海水温の上昇、南極北極の氷が解けてさらに上昇を加速するという悪循環に陥っているが、プラゴミ問題がこれに1枚加わってきた。日本はプラスチック製造大国であり、この便利で軽量であらゆる面に応用できるプラスチック材がいろいろな製品となって多用されている。日本人1人当たりのプラごみの発生量は、米国に次いで世界第2位。国内で1年間に使用されるレジ袋使用枚数は約400億枚、1人当たり1日約1枚を消費しているという。
レジ袋やペットボトル、プラゴミの利用、過剰包装を削減、ゼロにすることが、国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)となっており、EUをはじめ各国で取り組みは日本をはるかに先行している。
2018年の国連環境計画(UNEP)の調査によると、すでにプラ製のレジ袋の規制をしている国は127カ国に上り、そのうち83ヵ国がレジ袋の無料を禁止している。EU各国ではフランスが2020年からレジ袋を含む使い捨てプラスチック容器の使用禁止を決定、21年からEU市場全体で使い捨てプラ容器を禁止する方針を打ち出している。カナダも使い捨てプラの禁止を21年から実施すると発表した。
日本政府は具体的な対策では買い物袋の有料化と共に微生物の働きで自然分解する「海洋生分解性プラスチック」の素材開発に取り組んでいるが、まだまだ分解率などの点で技術開発の見通しは立っていない。
パリ会議でのEU対米国の対立は尾を引いており、各国のプラゴミ事情も大幅に異なるため、今回の仲介役の日本側がまとめた共同宣言では、米を含む合意を優先し、有料化よりもプラゴミ削減を優先する方針は打ち出せなかった。
高田秀重東京農大教授はWebサイトで➀使い捨てプラスチックを削減する。②過剰な包装から脱却し、持続的な流通システムを作る③紙や木などのバイオマスを上手に使う技術や代替技術の開発を行う―などを提言しているが、国民的運動としてすぐにでも取り組まなければ「海洋国家日本」「魚食民族日本人」の明日はないとの強い危機感を抱いた。
「プラゴミ問題」(プラスチックスープの海)ー今すぐにでも取り組まなければ「海洋国家日本」「魚食民族日本人」の明日はないと危惧する
関連記事
-
-
日本メルトダウン脱出法(753)「国立大学に文系の学部はいらないー 私学助成もやめて幼児教育に投資せよ(池田信夫)」●「野草で飢えをしのいだ」「病気を治すカネがない」 ルポ・下流老人~9割が予備軍。転落は、突然やってくる」
日本メルトダウン脱出法(753) 国立大学に文系の学部はいらない …
-
-
★『オンライン講座・吉田茂の国難突破力③』★『吉田茂と憲法誕生秘話ー『東西冷戦の産物 として生まれた現行憲法』★『GHQ(連合軍総司令部)がわずか1週間で憲法草案をつくった』★『なぜ、マッカーサーは憲法制定を急いだか』★
★『スターリンは北海道を真っ二つにして、ソ連に北半分を分割統治を米国に強く迫まり …
-
-
『日中韓150年戦争史年表』-『超大国・英国、ロシアの侵攻で「日中韓」の運命は? ―リスク管理の差が「日本の興隆」と「中・韓の亡国」を招いた』
日中韓150年戦争史年表 超大国・英国、ロシアの侵攻で「日中韓」の運命は? ―リ …
-
-
昭和外交史① 日本で最も長い日 1945年8月15日の攻防
1 昭和外交史① 日本で最も長い日 1945年8月15日の攻防 ―――<和平か、 …
-
-
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』< 日本メルトダウン(1060)>★『週刊ニューズウィーク日本版 』特集『2050 日本の未来予想図』★『『日本を待ち受ける2つの未来』<中国の機嫌をうかがう衛星国か、平等な世界における中堅国になるか>』★『先進国陥落は間近!戦後幻想の終焉(デービッド・アトキンソン)』★『座して死を待つ<自死>の国/日本の惨状!終焉のベルはなる』
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 日本メルトダウン(1060) …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(122)/記事再録☆日本一の「徳川時代日本史」授業④福沢諭吉の語る「中津藩で体験した封建日本の差別構造」(旧藩情)を読む⑤☆『なぜ徳川時代はダメなのか、一番よくわかる福沢の解説』
2014/01/26   …
-
-
『リーダーシップの日本世界近現代史』(297)『歴史は繰り返されるのかー1940年「東京オリンピック」は日中戦争により返上したが、その二の舞になるのか!』★『新型コロナウイルス感染症の「パンデミック化」(世界的大流行)によって、東京オリンピック開催も中止の議論が起こってきた①』★『世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は27日、パンデミックになるつつあることを初めて認めた』
歴史は繰り返されるのかー1940年「東京オリンピック」は日中戦争によ …
-
-
終戦70年・日本敗戦史(109)日本兵はなぜ「バンザイ突撃」「玉砕」「餓死」など 「死んでも戦った」のか。その秘密は「戦陣訓」と「内務班」の日本兵残酷物語にある。
終戦70年・日本敗戦史(109) 日本兵はなぜ「肉弾突撃」「バンザイ突撃」「玉砕 …
-
-
『Z世代のための安保防衛(戦争)論の歴史研究講座』★『世界・日本リーダーパワー史(537)三宅雪嶺(第一回文化勲章受章)の「日英の英雄比較論」―「東郷平八郎とネルソンと山本五十六」
2015/01/15日本リーダーパワー史(537)記事再録 三宅雪嶺 …
-
-
新刊発行★『決定版ムック 日本人「再生」と「復興」の100年』=近未来へのヒントを過去100年から学ぶ。
過去を振り返れば未来が見えてくる。 これまで日本は多くの天災、人災 …
- PREV
- 『リーダーシップの日本近現代史』(169)記事再録/『亀岡市レジ袋禁止条例ガンンバレ』★「30年間カヤック釣りバカ老人の鎌倉海定点観測」-『海を汚染、魚を死滅させる有毒マイクロプラスチックが食物連鎖で最終的に魚食民族・日本の食卓を直撃する』★『プラスチックを規制し、1人年40 枚にレジ袋を減らす規制をしたEU対1人が年300枚のレジ袋を使う日本はいまだ規制なし』
- NEXT
- 『リーダーシップの日本近現代史』(171)記事再録/<日本最強の外交官・金子堅太郎①>『日露戦争開戦と同時に伊藤博文の命令で米国に派遣され、ハーバード大の同窓生のルーズベルト大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の驚異のディベート・テクニック①』