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「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本の新聞が伝えた日英同盟報道」①『日英の友好深まり、同盟の風説しきり〔明治31/1/20 ) 国民新聞〕●『露、独に対抗し日本と同盟すべしと英紙]』(31/1/26 国民〕●『イギリス誌、ソールズベリの同盟論を支持〔明治31/2/19 国民〕』●『<スクープ>英政府、日本に正式に同盟を申し込む〔明治34/12/27 二六新報〕』

      2016/12/05

 

★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-

「日本の新聞が伝えた日英同盟」①

 

日英同盟の報道

 日英の友好深まり、同盟の風説しきり〔1898年(明治31)1月20日 国民新聞〕

 

極東いよいよ多事にして、日英同盟論が追々盛んになりつつあり、日本政府とイギリス政府との間に協同運動に関する根本的評議ありとは、容易に速断すべからざること云うまでもなけれども、局部局部に於ける同盟説はいよいよ高まりつつあり。

すなわち日本に於ける同盟説ははな一はだ寂蓼なる間に、日英代表者の交情親密なる局部、もしくは日英の利害一致を感得せる局部に於ける同盟説は、いよいよ高まりつつあるを見る。

例えば同盟の風説が、概して政府一部の人士と公使館との交情親密なる倫敦より起り、或いは日英代表者の往来頻繁なる京城より起り、日英の利害一致を感得せる香港、上海等に盛んなるがごとし。

  倫敦に於ける同盟説

倫敦に於ける同盟説の由来は一朝一夕にあらず、英国政府の一部と倫敦公使館との交情は、日清戦争の当時より漸を以って親密を加えたり。

英国前内閣の外務大臣にして日英改正条約の調印者たるキンバレー卿のごとき、同情を日本に寄すること最も深さものにして、英国の内閣は更迭、倫敦公使館はその主人を代えたるも、

英国政政府の一部と日本代表者との交情は、むしろ親密を加うるものありて、トランスバール事件の紛雑を極めたる時のごとき、英国政府の一角より漏らされたる意向は、日本の代表者もしくは日本政府をして、ほとんど一驚を喫せしめたるものありと云う。

 

富士艦上の饗応、英皇即位六十年祭、ウェールス親王の観艦等が両国の交情を密にしたることは、今なお世人の記憶に新たなる所にして、富士艦上の饗応にはチェンバレーン氏、ゴッシェン氏等の名士来会するあり、

六十年祭祝賀の大使有栖川宮殿下に対する英皇室の待遇は、優握を極めたるものあり、次いでスピットヘットの観艦式には、皇太子ウェールス親王が富士艦に来たりて、我が友邦の軍艦とまで語らるるありき。

去る十一月、加藤高明公使が倫敦市公館の饗応に於いて、首席公使とし一てソールスベリー卿の祝杯に答え、

 

「予が本国(日本)と英国との関係に到っては、予は非常に親厚にしていささかの遺憾な嶺を明言せざるを得ず、予が国人は英帝国及び英国人に対し、心より嘆美尊敬の念を懐けり。

 

しかして彼等の感情は、英国人もまた全く同様の感情を有せざるにあらざるを知るにより、いっそう深くなれり」と演説したるは、多少人目を惹きたりき。

かかる交情結ばれでより、露国が朝鮮に権を専にせんとし、英国及び日本の利益脅かされんとするあり、独逸の膠州湾占領、露国軍檻の旅順口碇泊あり、日英同盟の風説大いに起り、十二月二十七日のロイテルは、「近時の極東変局に対し、日英間に協約成りたりとの風説しきりなり」と報ずるに至りぬ。

一月一日のロイテルが、またベレスフォード卿のヨークに於ける日英同盟説を電報したるーにつきては、軽々の観察を下すものなきにあらざるも、ペレスフォード卿の海軍に於ける地位、及びヨーク撰挙区の英国に於ける地位を熟知するものは、ロイテル、の特電に重きを置かずんばあらざるべし。(後略)

 

露、独に対抗し日本と同盟すべしと英紙 (明治31年1月26日 国民〕

 

「モーニング・ポスト」の日英同盟論 去月七日発行の同紙は論じて日く。ドイツが東洋に根拠を求めんとするは一日にあらず、日清戦争の当時は台湾を得んとし、日清戦争後は北清海岸に於いて求むる処ありき。されどその求むるは、単に商権を拡張せんがためのみあらずして、かえってこれとともに政権を得、軍艦碇泊所を得んとせり。

 

膠洲湾事件が迅雷の勢いを以って進行せしものは、実に十年の志一時に発したればなり。すでに東洋に領地を拓く、すなわち極東に勢力ある露、仏と和熟せざるを得ず。

露、仏、独の三国同盟は、遼東半島当時に於いてよりはかえって今日に於いて親密となり、効力あるものなりしを見る。その親密有効の度と比例し、英国はますます孤立なり、またいよいよ勢威を減ぜり。

されば英国は露、独の跋扈、清、韓のすい沈を見て、これを等閑に附し去るべきにあらず、しこうして日本もまた実にこの志あり、勢合し時至る、すべからく日英同盟して、以って極東今日の事局を済うべきなりと。

 

 「ガゼット」が日英捷携論を主張〔明治31年2月10日 国民)

「ジャパン・ガゼット」は、英国が東洋に於ける現今の困難を救うは、日本と提携するの外他に道なしとて、再び日英提携説を主張せり。

 

イギリス誌、ソールズベリの同盟論を支持〔明治31年2月19日 国民〕

 

近着「エコノミックス」は、東洋に於けるソールスベリー卿の政策につきて、賛成して日く。

英国の進取的態度を取る事の各国の畏るる処なるは、露独新聞が仮声を作って、英国を脅迫せんとするにても明らかなり。英国はただに各国の畏るる処となるのみならず、

もし一度起って日本と同盟せば、三国同盟を破るに於いて容易なるものあるなり。この必勝の勢いによって英国の沈静動かざる所以のものは、北清に於ける露国の利益と、膠州湾に於ける独逸の利益の、ついに相客るるものにあらざるを知ればのみ。

露独ついに衝突すべきものなるを信ずればのみ。殊にその同盟せんとするというは、日本の果して英国とともに三国と戦うの心あるや否や明らかならず、

故に一方盛んに軍艦を増遺して、機至る時は一挙して敵を圧し得べきの準備を全うし、一方露独の関係の変遷に注意し、更にまた日本の真意ある処を探らんとす。

 

ソールスベリー卿の用意また周到なりというべし。英国を以って怯懦するとなし、終始動かざるものなりとなすがごときは、真に英国を知るものにあらざるなりと。

 英紙がドイツを含む三国同盟を主張〔明治 31年6月4日 国民〕

英国に於いては、近時日、英、独同盟説、ようやく勢いを得んとするの模様あり。「デーリー・テレグラフ」のごとき、前号に示せしごとく、熱心にこれを主張するに到りしが、

 

なお近着「ブラック・アンド・ホワイト」誌のごときは、ただにこれを主張するのみならず、三国提携の議に付き、英独両外務省間、及び独帝とバルフォーア氏との間には、しきりに電報の往復をなし、よほどその歩を進めたりとの記事を掲げたり。この事や未だにわかに信ずべからざるも、また決して軽々看過すべからざるものたり。

<スクープ>英政府、日本に正式に同盟を申し込む〔明治34年12月27日 二六新報〕

外交上の一警報……英国政府正式に我に同盟を申し込む……:英国政府は、このほどマクドナルド公使を経て、正式に我が政府に向かって同盟-東洋に於ける攻守同盟―を申し込み我が政府は直ちにこれを陛下に奏聞し奉り、

御前会議を開きて決せんとしたるに、畏れ多くも陛下には、取り敢えず伊藤の意見を問い合わせ、しかる後にせよとの御詮を賜り、桂首相は早速長文の電報を伊藤侯の旅行先に致したり。

(世上誤り伝えて、政友会に関する件なりとせるものこれなり)侯の返電いかんは、未だ詳かにするあたわざれども、内閣員の多数、特に小村外相のごときは熱心なる可同盟説なりといえば、侯の返電いかんに拘わらず、存外速く彼の申し込みに応ずることとなるべしと伝う。

英国政府申し込みの箇条は秘密にして、未だ詳かにするあたわざれども、万一.に際し、英国はその東洋艦隊の全力を挙げて日本を授け、日本はその陸兵を以って長江流域に於ける英の急に趨く等のとときは、:言うまでもなき所と知るべし。

外交の事、裏に裏あり、底に底ある例なれば、英国政府の同盟申し込み、また必ずしもオイソレと歓迎すべきものとも限られず、彼はこれを以って一面、露を脅かすの材料となし、他方に於いて巧みに英露協商を遣り遂げんとするにあらざるなきかと言うものあり。

 - 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

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