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日本リーダーパワー史(353)野田総理のリーダーシップ>『石原氏の尖閣発言なぜ首相は止めぬ』『日本は15年はかかる』(キッシンジャー)

   

 
日本リーダーパワー史(353)
 
             <野田総理のリーダーシップとは>

●『石原氏の尖閣発言なぜ首相は止めぬ。世界の信を失う』
『日本は当たり前のことさえ決めるのに15年はかかる』
           (キッシンジャー)の衰退国家から脱却できるか。                           


前坂 俊之(ジャーナリスト) 
安倍自民党政権が誕生、2度目の船出をする。激動する世界政治、経済、外交の荒波で再び難破しないか、これまでのように漂流を
続けないかー国民はかたずをのんで見守っている。今、日本丸が浸水している亀裂は4重苦である。
 
① 超大国アメリカの衰退、中国の大躍進と超大国化、EUの混乱
② 日本の最重要課題は「人口減少」「少子超高齢社会」からくる諸問題
③ 「1千兆円の国の債務」は本当に返せるのか、国債の利息は上がらないのか
④ 「原発廃炉まで50年」「迫りくる巨大地震の恐怖」である。
 
これに新たな「尖閣、竹島の日中韓冷戦勃発」が加わった。
英国週刊誌『エコノミスト』は「2050年の世界」の中で「日本は没落、衰退国」の第一にあげており、世界は日本を危機的状況とみて、心配しているのである。
 
それなのに、難題に小田原評定を繰り返し右往左往していた日本政治がまたまた『オウンゴール』したのが「尖閣、竹島の日中韓冷戦勃発」である。
 
辛亥革命から100年、日中国交回復から40年の節目の年に、外交的な大失態を再び繰り返した。この事件について『朝日新聞』(2012年12月21日朝刊)はオピニオン欄に1頁にわたって『石原氏の尖閣発言なぜ首相は止めぬ世界の信を失う』『日本嫌い 裏返せば 嫉妬や尊敬の念―安倍氏も耐えて』とズバリ題して前中国大使 丹羽宇一郎氏のインタビュー記事(取材・坂尻真義記者)が掲載された。
この記事は当事者の語る時機にかなった出色のインタビューであり、「日本外交に求められるもの」「リーダーとはいかにあるべきか」ーを丹羽氏も腹をくくって歯に衣着せぬ、それこそリーダーとしてあるべき態度でズバリと語っている。坂尻真義記者のインタビューも要を得ており、「今後の外交の基本」になる内容である。
 
この中で丹羽氏は「石原さんは、地方政府のトップでした。知事が国益にかかわる発言や行動をしたとき、どうして一国の首相が『君、黙りなさい。これは中央政府の仕事だ』と言えなかったのか。ほかの知事たちも東京と同じような行動をとろうとしたら、日本の統治体制はどうなるのか。世界の信を失いかねない深刻な問題です」とはっきり述べている。

 
野田元首相のリーダーシップのなさをついているが、これが日本の総理大臣に共通する経綸のなさであるし、
決断力のなさである。
 
速報(347)『日本のメルトダウン』★民主、自民両党首選の『この国のイカれた惨状!』②
 
 昭和史を眺めると、この2重3重外交の弊害を昭和戦前の統帥権を総覧した昭和天皇も、中央政府もただせず、軍部の下剋上と関東軍ら現地軍の暴走、独走を食い止められなかった。独走した官僚、軍人をクビにして、強いリーダーシップを発揮したトップは数少ない。その結果、悪化した状況を追認して、しりぬぐいにおわれる。またまた暴走して衝突し修復できない状況になる。ところが、結果責任を追及せず、うやむやに処理して、問題先送りする「ドロナワ国家」が続いているのだ。
 
昭和戦後の政治体制でもこの構造に変化なし。官僚各省(戦前の軍部官僚と同じ)が国益よりも省益を優先し、各省庁の分捕り合戦(陸海軍がことごとく対立し、最後まで一体的な作戦を組めなかった)と同じ状態となり、膨大な国債の発行、借金の山を築き、稼せぐことの大変さをしらず、税金、国債をつかうだけの省庁はその最終処理(出口戦略)を考えずに、問題先送り、1千兆円と返せる見込みのないところまで膨らんだのに、アジア太平洋戦争での余りに広大で補給不可能な占領地域を類似ケースとして見る思いである。
 
●―中国交正常化40周年についても、丹羽氏は
 
40年間の努力が水泡に帰すことがあってはいけない。どれだけの政治家が苦労して正常化を実現したか。先人の努力を無にする権限が誰にありますか。習近平さん、野田佳彦さん、そして安倍晋三さん、両国の首脳には、あなたがたの責任は国民を幸せにすることで、ときには耐え難きを耐え、冷静沈着に外交を行うことが必要ですと申し上げたい」という。これもその言やよしである。
 
<辛亥革命百年(27)内山完造『日中コミュニケーション突破力』
http://maesaka-toshiyuki.com/detail/584
 
 
●石原氏が米国で「尖閣諸島の都による購入」を宣言して以来、中国国内での猛反発ぶりは日本のメディアではあまり報じられなかった。次なる日本側の行動には大きなしっぺ返しが来ることは、当然予想できた。日中韓の紛争の歴史をみれば対立のエスカレーションは火を見るより明らかであったが、国内は鈍感であり、中国側の反日意識を見誤った。
 
石原氏の行動はかっての軍人たちが「軍人は政治に関与せず」(軍人勅諭)を破った暴走行為と同じ種類のものだが、多くの諌言すべき政治家、経済人、メディアは止めなければいけないのに、石原氏を恐れて見ぬふりをして、止めなかった。
 
「歴史を学ばない国民は滅びる」とは自民党の基礎を築いた吉田茂の言葉である。メディアも両国のキャッチボールを、その先に待っているものを予見する歴史的な眼力もなく、センセーショナルに報道して対立感情を煽るのみでマスコミの戦争報道の失敗を繰り返した。
 
このとき、かつての日中戦争の発端の既視感があった。
 
1931年(昭和6)9月の石原莞爾らの関東軍の謀略で起こした満州事変によって、昭和15年戦争が勃発したが、この場合も若槻礼次郎内閣、当時の幣原喜重郎外相、元老の西園寺公望らは「陸軍の独断、暴走」にストップをかけてが、関東軍、現地軍が暴走を繰り返して、これに「強硬論を展開するマスコミ」が一体となって陸軍の暴走を支持してキャンペーンをはって、反中的な世論をマッチポンプする。
これに、軍の暴走を体を張って止める勇気とリ―ダ―シップのある政治家はおらず、軍を支持するメディアのミスリードが強硬論の国民世論を作り上げて戦争に発展する。たわいのない事件の衝突で、先の読めない政治家とメディアが興奮して口論を始めると、それが次に殴り合いの暴力から、戦争にまで発展していくケースは世界史の中では枚挙にいとわない。
 
●<謀略で起こされた満州事変とメディアの失敗>
 
丹羽氏のいう通り、野田首相は石原慎太郎氏の出すぎたマネの2重外交(挑発外交)をピシリと抑えて、国民の前に一国の総理としてのリーダーシップを示すべきであった。

そうすれば野田人気は上がっただろう。絶好のチャンスを小沢一郎氏の処分問題、原発問題でも逃してしまった失敗のリーダーシップ、敗軍の将なのであり、この不信で民主党は惨敗したが、当然のことである。

ただし、ここでも明治から続く日本の政治的、選挙制度の弊害が表れた。小選挙区制度の弊害で自民党の得票数は前回の選挙と余り増えていないのに、当選者が過半数を占めたのである。投票者の意志以上に自民党が当選する、民意の反映の逆結果となった。
 
ここで転がった選挙のサイコロの目で決まった安倍政権は民意を誤解する。日本の国力低下を防ぐ長期戦略を組んでの政治の優先順位決定というプロセスが必要なのに、そのアジェンダセッティングを間違えてしまう危険性を安倍政権ははらんでいる。
 
同じ時期に選挙のあった中国、韓国、アメリカなどの任期4,5年の指導者、リーダーシップの発揮しやすい固定化した大統領制などの政治制度に改革しなくては、1年賞味期限の日本の弱体総理大臣は繰り返されるであろう。
こんな自明なことさえ『日本は当たり前のことさえ決めるのに15年はかかる』とはキッシンジャーの言葉らしいが、政治家も官僚もメディアも国民もきめられず、無駄話と無駄使いの天国、やがて地獄なのである。
 
 
◎『丹羽前中国大使、尖閣巡る日本政府の対応に苦言』

 
 
 
 
 

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