前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代への<日本史難問クイズ?>『リンカーン米大統領が奴隷の解放宣言をしたのは1862年(文久2年)ですが、日本で中国人奴隷(苦力)を解放したのは一体誰でしょうか⑲』★『西郷隆盛(参議・実質総理大臣)です。横浜港に入港した『マリア・ルース号事件』(清国人苦力=奴隷230人をペルーに運ぶ途中)で人権尊重の観点から外務卿・副島種臣に命じて停船を指示・船長を告発させ、裁判後に清国に送り替えした』★『「国の本来の政治は軍備の不備を恐れず、一国の運命をかけても、正論を以てこれを貫くべし」』

      2024/04/11

 日本リーダーパワー史(858)/記事再録
 
「世界史の英雄・西郷どんー奴隷解放に取組む」               
「西郷隆盛は世界的な英雄だった」とは明治文化研究会、評論家・木村毅(1894- 1979)の「世界人としての西郷南洲先生」(昭和28年)での弁である。

西郷はアメリカ独立戦争の英雄で初代大統領ワシントンやナポレオンらを尊敬しており、壁に肖像画をかけて、封建武士階級社会を打破し、自由・人権・平等社会を希求した。

ワシントンは元は黒人奴隷農場の牧場主であったが、1789年の第一回米国議会で初代大統領に選ばれ、2万5千ドルの給与が決定された。ワシントンは無私の公僕精神からこの給与を辞退した。
西郷も同じく陸軍大将に任じられた時の給与(五百両)を辞退しており、無私の精神は共通しており、奴隷解放にも取り組んでいる。
当時、世界的に有名だったイタリア建国の父・ガリバルディは、南米各国の独立運動にも活躍して「二つの世界の英雄」とも呼ばれていた。
西郷とは同時代の英雄で、その悲劇的な最期でも共通しており、日本でも有名だった。評論家・三宅雪嶺は「西郷が民主的思想の持ち主で、人格高潔でもはるかに上回る」と高く評価した。
世界史18、19世紀では日本が徳川幕藩体制に眠っている間、英国は産業革命が発展し、フランス市民革命(1789-99)、米国は南北戦争(1861―1865)、ドイツ統一(1864-1871)などのグローバリズムの大波が日本にも押し寄せてきて、西郷ら明治の志士たちによって明治維新が実現した。

「西郷を日本開国の父」とすれば、その思想的リーダーは福沢諭吉である。

福沢は『門閥制度は親の敵(かたき)でござる』と封建徳川時代を激しく批判した。

「生まれた段階で身分が決まる封建階級社会で下級武士の父親は学問を志しながらも、下積みの仕事しか与えられず、無念のうちに45歳の短い生涯を終えた」ことへの強い怒りだった。
福沢は「学問のすすめ」(明治5年)の冒頭で『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』という有名な言葉を書いた。人間はすべて平等であり、貧富・家柄・職業・社会的身分などによって差別することに反対して、父の敵(かたき)を討つたのである。
この決めセリフは米国独立宣言(1776年)の中の『すべての人間は生まれながらにして平等であり、生命、自由、幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている』の一節を福沢が翻訳、自己文章化したものだ。
福沢は西郷の行動に共鳴して、明治10年、西南戦争で敗北した後も『丁丑公論(ていちゅうこうろん)』で西郷を一貫して擁護し、最後まで支持していた。2人は真からの民本主義者(民主主義者)であったのだ。

 

ところが、西南戦争以後、明治政府は西郷に国賊・反逆者・軍国主義者のレッテルを張り、今日に及んでいる。西郷の真の姿は平和主義者、非戦論者だったことは、次の事実にも示されている。

  • 勝海舟との2人だけの会談で「江戸城無血開城」を1言のもとに了承し、江戸を戦火から守った。世界史でも稀な和平会談であった。
  • 廃藩置県で専制君主(藩主)を倒して、士農工商制度を廃止し、人権平等社会を実現した。
  • 関東、奥州三藩の反抗諸藩を戦後、寛大に処置した。
  • 征韓論は韓国との戦争を避けるために、武力派を抑え、文官として西郷が単身で交渉派遣に臨んで説得することに端を発した。
さらに『奴隷解放』のマリア・ルス号事件がある。

西郷参議(総理)中の1872年(明治五)六月四日、ペルーの帆船「マリア・ルス号」が清国人苦力(奴隷)二百三十二人をのせて横浜に入港した。この清国人は、ぺルーに売られていく奴隷であることがわかった。外務卿・副島種臣はこの非人道的行為を見逃さず、神奈川県参事の大江卓に命じ、同船の差し止めと同船長を告発した。

 

神奈川県令・陸奥宗光や司法卿・江藤新平らは、国際問題に発展することを恐れて、副島の措置に反対したが、副島は特設裁判所を開かせ、大江卓を裁判長として審理させた。

独、仏、伊、デンマーク、ポルトガルの五領事は反対し、米、オランダの二領事は中立、英国領事は外務省の意見に賛成した。日本政府の陪審判事3人も不干渉論を唱えたが、副島は裁判長大江卓の意見どおり裁判させ、清国人解放の判決を下し、全員、中国に送還した。

奴隷売買が世界的に横行していた時代に、大国に追随せず正義と人権を守り通した判決が出たのは、西郷参議が副島の意見を全面的に支持して、断固として反対派を押さえたためであった。

「国の本来の政治は軍備の不備を恐れず、1国の運命をかけても、正論を以てこれを貫くべし」というのが西郷の持論であった。同年10月の芸娼妓解放令に至る契機ともされる。

一方、岩倉西欧使節団から帰国した大久保利通、伊藤博文らはすっかり『外国恐怖症』になり「外交を事なかれ主義」「追随外交」に舵を切っていった。これが日本外交のルーツである。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための日本近現代興亡史講座(下)』★『「日露戦争の日本海海戦で英海軍ネルソン提督を上回る完全勝利に導いた天才参謀・秋山真之のインテリジェンス②』★『ジョミニ(フランスの少将)、クラウゼヴィッツ、マハン、山本権兵衛の戦略論』

  ロシア海軍を視察、極秘中の極秘の「一等戦艦の図面」を1分間ほど見せてくれたが …

『外国人観光客へのおすすめスポット」★『後楽園(名園)・旭川(清流)・岡山城(鳥城)』の3拍子揃った『歴史文化景観スーペース』は世界の都市の美的景観に引けを取らない』

  後楽園、右上の白い輝く三角の光は岡山城のライトアップ、5月末に撮影 …

no image
『「申報」からみた「日中韓150年戦争史」(68)『(日清戦争開戦2ヵ月後「罪言―中国の敗因は旧弊悪習を改め、汚職官吏を除くこと」

     『「申報」からみた「日中韓150年戦争史 …

no image
日本リーダーパワー史⑬ 100年前、地球環境破壊と戦った公害反対の先駆者・田中正造

日本リーダーパワー史⑬ 100年前、地球環境破壊と戦った公害反対の先駆者・田中正 …

★『大爆笑、メチャおもろい日本文学史』⑤『アイヌ「ユーカラ」研究の金田一京助はメチャおもろい』講義は人の3倍の情熱、純情一直線の金田一先生』

  ★『大爆笑、メチャおもろい日本文学史』⑤ 「言語学者・金田一京助」 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(148)』「ISと云うイスラム原理主義組織の現在の破壊力、 近未来の戦闘能力がどの程度のものになるのか?」

  『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(148)』 「 …

no image
日本リーダーパワー史(257) ◎<まとめ>『日本を救った男とは・・空前絶後の名将・川上操六とは何者か(1回→10回)」

     日本リーダーパワー史(257)    ◎<ま …

no image
速報(155)『日本のメルトダウン』 ☆『イノベーションのジレンマに負けたコダック』★『金融市場に悲観まん延、実体経済にも悪影響』

速報(155)『日本のメルトダウン』   ☆『イノベーションのジレンマ …

no image
日本リーダーパワー史(315)「全政治家必読の(現状分析・国家戦略論)を読む」『大日本主義の幻想(中)』を読む③

·     &n …

no image
速報(225)●(必見動画)『低線量長期内部被曝を防ぐため子供、被曝弱者を移住させよー『内部被曝研』が緊急提言』

速報(225)『日本のメルトダウン』 政府は『内部被曝』の危険性を直視せよ &n …