池田龍夫のマスコミ時評(31) 「TPP」に潜む問題点を探るー菅政権は、性急すぎないかー
その第一項目が「平成の開国」であり、「環太平洋経済連携協定(TPP)」参加への意欲を強調したものなので、その冒頭部分を紹介して本題に進みたい。
不安定な国際情勢にあって、政治や社会の構造を大きく変革し、創造性あふれる経済活動で難局を乗り切ったのです。私は、これらに続く『第三の開国』に挑みます。……開国の具体化は、貿易・投資の自由化、人材交流の円滑化で踏み出します。このため、包括的な経済連携を推進します。経済を開くことは、世界と繁栄を共有する最良の手段です。この方針に沿って、WTОのドーハ・ラウンド交渉妥結による国際貿易ルールの強化に努めています。
一方、この10年、2国間や地域内の経済連携の急増という流れには大きく乗り遅れてしまいました。そのため、昨年秋のAPECに先立ち、包括的経済連携に関する基本方針を定めました。今年は決断と行動の年です。昨年合意したインド、ペルーとの経済連携協定は着実に実施します。また、豪州との交渉を迅速に進め、韓国、EUおよびモンゴルとの経済連携協定交渉の再開・立ち上げを目指します。さらに日中韓自由貿易協定の共同研究を進めます。環太平洋パートナーシップ協定は、米国をはじめとする関係国と協議を続け、今年6月を目途に交渉参加について結論を出します」。
当初は問題視されなかったが、米国が08年3月に参加を表明すると、同年11月にはオーストラリア、ペルー、ベトナムが、10年にはマレーシアも参加、現在9カ国に拡大した。にわかに脚光を浴びている「TPP」だが、通常「環太平洋経済連携協定」とされ、「戦略的=Strategic」の表記が無いのが、何故か気になる。中国の台頭に備え、太平洋にシフトした米国の戦略が読み取れるからだ。
「関税撤廃によって輸出が拡大する」というTPP賛成派と、「外国の農産物流入で、日本農業(特に米作)はピンチ」との反対派の2項対立がクローズアップされているが、対象は関税撤廃だけでなく、サービス・電子取引・投資・知的財産権・政府調達の規制緩和など24項目にも及んでいる。参加九カ国の主導権は米国が握っていることは明らかで、巧妙な戦略を分析し、慎重に対応しないと禍根を残す。
交渉項目は、米国の「対日年次改革要望書」に似ている。貿易の関税撤廃は一部に過ぎず、経済のルール全般を共通にすることを目的にしている。BSE(牛海綿状脳症)問題のあった牛肉などの食品や、工業製品の安全性なども日本独自のものでなく、同じ基準の受け入れを求め、米国経済への一体を求めるものです」と、金子勝・慶大教授は指摘(『毎日』2・4夕刊)しているが、米国の狙いを的確に衝いたものだ。
単に農業問題だけではなく、日本の経済全体、特に金融、IT等のサービスセクターにも影響が及ぶ可能性がある。……オバマ政権が突如PTT戦略を持ち出した動機は,国内的には中間選挙を控え支持率低下を防ぐために『強い米国』を誇示する政策とらざるを得なかったこと、リーマン・ショック以降低迷を続ける経済不況を脱するため景気対策としてとらざるを得なかった面があろう。
アジア太平洋地域の中で最初のターゲットは日本であるが、本命というべきターゲットは中国であろう。現在のところ、中国は米国のTPP戦略に対して何の反応も示さず、冷静に構えている」と、谷口誠・前岩手大学長は、米戦略の狙いを分析(『世界』3月号)
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(105)/★『記事再録/ 『日本国憲法公布70年』『吉田茂と憲法誕生秘話①ー『東西冷戦の産物 として生まれた現行憲法』『わずか1週間でGHQが作った憲法草案』①
2016/02/28/日本リーダーパワー史 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(227)』『日本復活のためには先進各国から多様な人材を受け入れて彼らとの多国籍討論の場に日本人を引きづりだすこと』☆『日本人同士では通用している事がダイバシティ環境では時代遅れで全く通用しない事を思い知らせること』
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(227)』 日本を舞台に選 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(910)-米朝首脳会談(6/12日)は「開催されるのか」×「延期になるのか」②『米国と北朝鮮は激しい外交的駆け引きを展開中』★『金正恩の心変わりは習近平の後ろ押しでトランプ大統領は習近平氏を「世界レベルのポーカーの腕前の持ち主だ」(グローバルクラスのポーカー・プレーヤー)と皮肉った。』
世界/日本リーダーパワー史(910) 米、北朝鮮の非核化「リビア方 …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(118)●『高速増殖炉「もんじゅ」撤退は当然』(9/29)『安倍首相の言動に警戒信号』 (9/26)
池田龍夫のマスコミ時評(118)   …
-
-
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン㊱』/『開戦2週間前の『申報』の報道ー『『東三省(満州)を放棄し.境界線を設けて中立とするは良策にあらざるを諭す』
『日本戦争外交史の研究』/ 『世界史の中の日露戦争カウントダウン㊱』/『開戦2 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(197)『直近のNYTは大隅教授のノーベル賞受賞を多角的に報道(Yoshinori Ohsumi of Japan Wins Nobel Prize for Study of ‘Self-Eating’ Cells )日本の科学ジャーナリズムの貧困とは大違い』●『「社会がゆとりを持って基礎科学を見守って」大隅さんは会見で繰り返し訴えた』
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(197)★ Yoshino …
-
-
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』ー『トランプ大統領は認知症なのかどうか』★『レーガン元大統領はアルツハイマー病を告白した』★『認知症ではないが、アルコール中毒の病歴があったブッシュ大統領(第43代)』
CNNは1月15日、「トランプ米大統領は認知症ではないのか」と米、 …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(40)☆『普天間辺野古移設は困難―新打開策提示し〝沖縄差別〟払拭をー』
池田龍夫のマスコミ時評(40) ☆『普天間辺野古移設は困難―新打開 …
