前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン/ベンチャービジネス講座』★『日本一の戦略的経営者・出光佐三(95歳)の長寿逆転突破力、独創力はスゴイよ④』★ 『国難に対してトップリーダーの明確な態度とは・・』★『終戦の『玉音を拝してー➀愚痴を止めよ。愚痴は泣き声である②三千年の歴史を見直せ➂そして今から建設にかかれ』★『人間尊重の出光は終戦であわてて首切りなどしない。千人が乞食になるなら、私もなる。一人たりとも首を切らない」と宣言』

      2021/12/27

 

  • 国難に対してトップリーダーはいかにあるべきか

1945年(昭和20)8月15日に歴史は大転換した。日本歴史上は始まって以来という敗戦、国難に見舞われ、出光は莫大な海外資産を一挙に失い、国内の石油精製施設、タンカー、港湾施設もほ破壊された。この時、出光は還暦60歳。 長年血みどろの苦労を重ねて築き上げてきたす財産も事業も従業員も失ない、二百六十五万円の借金が残された。

敗戦で社会は大混乱に陥り、日本政府も政治家も軍人も官僚も国民のほとんどが茫然自失、意気阻喪した。将来の見通しや、生活再建の方法など五里霧中のなかで、出光ただ1人といってよいくらい、終戦2日後の8月17日に次のような意気天をつく訓示を行っています。

  • 終戦『玉音を拝して』

この文章は『わが60年間第1巻』(非売品、社内用,昭和56年)に全文掲載されています。私(筆者)これを読んだ瞬間、へきへキするほどの天皇崇拝者、愛国主義者ながらその底に流れる一貫したヒューマニズム(人類愛)と人権尊重、公共精神と、満々たる自信と勇気、そのインテリジェンス(先見力)に感動しました。第4章で取り上げた渋沢栄一に共通する「道徳経済合一主義」と「公益資本主義」を100年前にすでに実践した先駆者ではないかと思いました。

この文章は明治生まれの旧漢字調の難解な文体ですが、当時の戦争中の大人がどのような意識であったのかがよくわかるので、ほぼ原文のまま掲載いたしました。

 

「15日畏(おそ)れおおくも玉音(昭和天皇の言葉)を拝し、御詔勅(ごしょうちょく、天皇の意思表示)を賜はり涙の止まるを知らず、言い表すべき通常なる言葉を持ち合せませぬ。私はこの際、店員諸君に3つの事を申上げます。

➀愚痴を止めよ。愚痴は泣き声である。亡国の声である。断じて男子のとらざる所である。ただ昨日までの敵の長所を研究し取入れ、己れの短所を猛省し、総てをシツカリと腹の中にたたみ込んで大国民の態度を失うな。

②世界無比の三千年の歴史を見直せ。三千年の歴史を見直してその偉大なる積極的国民性と広大無限の抱擁力と恐るべき咀嚼力(そしゃく)とを強く信じ、安心してゆうようせまらず堂々として再建設に進まねばならぬ。

➂そして今から建設にかかれ。しかしながら、焼け野が原におけるドン底生活、さらに加わわる新たなる負担、突破せねばならぬ建設の苦しみ、これらにたえ得るかの不安である。私は創業2、30年前、人生はかくも苦しいものか、死ななければこの苦しみより逃れる事はできないと苦しみ続けた。連続した苦しみは私を今日にしておる」

「艱難(かんなん)汝を玉にす」。苦労はつとめめてせよとは、店是であり私の座右銘。こん後の苦労が国家の前途に大なる結果をもたらすことになるならば我々はいかなる苦しみも堪(たえ)忍ばねばならぬ。

出光は、終戦の二日後に不安と途方にくれる従業員に対して「愚痴をいうな。世界無比の3千年の歴史を見直せ。そして今から建設にかかれ。」と高らかに宣言、聞いた従業員さえ驚くような意気軒昂ぶりでした。

  • 「人間尊重で、一人たりとも首を切らない」

  • 1945年9月からは中国や海外から約800人もの社員と家族がぞくぞくと引き揚げてきた。

  • 焼け野原と廃墟に化した国内は大混乱と食糧難のどん底で社会には失業者があふれ、出光にも仕事は全くなかった。

  • 9月15日には、「人間尊重の出光は終戦であわてて首切りなどしない。千人が乞食になるなら、私もなる。一人たりとも首を切らない」と宣言した。

  • 社員への月給は、戦前戦中に買い集めた書画骨董類を売ったり、借りられるところから借りられるだけ借りて社員の月給を出し続けた。

  • 目がますます見えなくなる中で、出光は足を棒にして仕事探しに奔走した。当時800万台あったラジオの3分の2は、使いものにならなかったが、GHQの依頼でラジオ修理を始め、旧海軍の山口県徳山燃料タンク(高さ10m)の底油の危険な回収作業にも命がけで取り組んだ。印刷、農業、水産、醗酵などあらゆる分野に参入して再建の足がかりをつかんでいった。

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
百歳学入門(28)『女性センテナリアンからの百歳名言③』飯田深雪、片岡球子、長岡輝子ら

百歳学入門(28)   『女性センテナリアンからの百歳名言③ &nbs …

no image
日本リーダーパワー史(907)昭和戦後の高度経済成長の立役者・中山素平の経営哲学10ヵ条「大事は軽く、小事は重く」★『八幡、富士製鉄の合併を推進』『進むときは人任せ、退く時は自ら決せ』★『人を挙ぐるには、すべからく退を好む者を挙ぐるべし』

日本リーダーパワー史(907) 日本興業銀行特別顧問 中山 素平(1906-20 …

『葛飾北斎の「富嶽三十六景」を追跡―富嶽を撮影する湘南絶景ポイントを紹介』②『鎌倉から見る富士山絶景チャンネル』この冬一番の寒波の中で鎌倉材木座海岸からみた富士山サンセット』(2023年1月25日)

 

百歳学入門(102)日本最長寿の徳川家三代指南役・南光坊天海(108歳)の養生訓ー上野公園内の「墓碑」で長寿健康を祈る

百歳学入門(102) 日本最長寿の徳川家三代の指南役・南光坊天海(108歳)の養 …

no image
★日本リーダーパワー史(579)◎(再録)<日本歴代最高の戦略家>「日清・日露戦争の勝利の方程式を解いた川上操六(陸軍参謀総長、日本インテリジェンスの父)とはいったい何者か(1回→46回)一挙大公開、

            &nb …

『オンライン現代史講座/2・26事件の原因の1つは東北凶作による女性の身売りが激増』③『アメリカ発の世界恐慌(1929年)→昭和恐慌→農業恐慌→東北凶作ー欠食児童、女性の身売り問題→国家改造/超国家主義/昭和維新→5・15事件(1932)→2・26事件(1936)、日中戦争、太平洋戦争への道へと転落した』

昭和七年(1932) 悲惨、娘身売りの残酷物語ー売られ行く娘たち  凶作地の惨状 …

世界が尊敬した日本人ー『日本海軍の父』山本権兵衛―日露海戦に完勝したその『リーダーパワー』に学べ

世界が尊敬した日本人 (再録)『日本海軍の父」山本権兵衛―日露海戦に 完勝したそ …

no image
日本リーダーパワー史(921)-「売り家と唐模様で書く3代目」―『先進国の政治と比べると、日本は非常識な「世襲議員政治』★『頭にチョンマゲをつければ江戸時代を思わせる御殿様議員、若様議員、大名議員、お姫さま議員がまかり通る不思議な国『時代劇ガラパゴスジャパン政治』』

  〇「売り家と唐模様で書く3代目」―『総理大臣は8割が世襲総理、 4 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ(69)』W杯決勝戦はドイツの優勢か?日本は47位のサッカー後進国を痛感した

     『F国際ビジネスマンのワールド …

『オンライン作家講座①』★『史上最大のジャーナリスト・徳富蘇峰(94歳)の研究』★『近世日本国民史』(戦国時代から徳川時代末(全100巻)と明治期の人物伝などは約500冊近い本を出版』★『その長寿人生作家論の秘密』★「体力養成は品性養成とともに人生の第一義。一日一時間でも多く働ける体力者は一日中の勝利者となり、継続すれば年中の勝利者、人生の勝利者となる』

    2022/04/14 &nbsp …